表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
流刃争記  作者: スマイロハ
初任務編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/26

第二十三話【成長の証】

昨日だ。家に帰る途中、私服警察を名乗る男に会った。

警察手帳なんて当てになら無いな。

で、そいつが言ったんだ。

「碧蛇流我は犯罪者なんだ。今この街を襲っている謎の宗教、それは碧蛇が人知れず持ち込んだもので、十分に広まったから帰って来たんだ。」

こんな状況で里帰りなんて、怖いもの知らずの無用心だと思ったっけ。

2年前、急に街を出て以来家族とも殆ど連絡を取っていない。

更にランキングにも載って無い。

「証拠はこの通りだ。恋くん、協力してくれるかな?」

俺が考えてたらソイツは、アイツのことを出してきて。

「宮本一花さん。彼女は酷く心酔しているとか。碧蛇から彼女を守れるのは、君だけなんだ。」

ズリィだろ。その言い方。

俺がアイツを好きなの何で知ってんだよ。

何で警察が脅してくんだよ。

何で俺は受けたんだよ!!

…。

それで、良い感じに分かれたから、先輩に1人で来るよう言って、ニセクソヤロウを呼んで…。

そっか。

先輩は最初から分かってたのか。

俺が先輩にくだらん対抗意識燃やしてたのも、先輩を部長とくっ付けたがったのも、そりゃ不自然だもんな。

「良い関係ですね!」って、「良い関係だと困るんだよ!!」つって考えてたのも、マジでガキ過ぎる…。

不自然な俺が変なことしてるの分かってて、ワザと乗って、そんで1人で解決か…。

やっぱ先輩ってスゲェ。

俺もこの人みたいに成りたい。

成れるか?…でもせめて、力に成りたい。

「危険だから、護身用にナイフの一本でも持っておくと良い。」

「何、作戦に必要なんだ。咎められることは無いよ。」

西側レジデンスエリア。住宅街。

高層マンションの最上階に敵は居る。

鍵の掛かったドアを無理矢理開け、少年はナイフを振る。

ーーー裂風ーーー

金属音に阻まれ、風は敵に届かない。

(何だ?今ナイフが金属に当たったぞ。これじゃそよ風だ。)

流我に気付いた敵は窓から飛び降りる。

外を見ると、パラシュートでも付いている様に低速落下する敵が居た。

今日は春風が吹いている。気持ちの良い青空だ。

(空中でこの距離。ナイフの刃渡りじゃ当たらんな。当たったとしても、さっきので防御されれば、決定打にはならない。か。)

流我は躊躇無く跳び降りた。

敵は一足先に地へ付ける。

風で加速すれば、空中でぶつかれたかも知れない。

ただここは都市の住宅街。平日の昼間でも人は多い。

(人を襲う素振りを見せたら斬る。)

追い掛けながら何度か裂風を撃つも、謎の金属音に阻まれ届か無い。

それに、敵は走るのが速い。

まるで背中を押して貰っている様に…。

(金属を操っているのか。飛ばないならパワーはそこそこ、視えないなら小さい粒か?)

ナイフ一本の流我なら、そんなにキツい相手では無い筈。

逃げているのでは無く、何処か有利な場所へ向かっている。

(それまでにケリを付けたいが…。逃げ方が上手い。)

両者の差は一向に縮まらず、気付けば北側に入っていた。

敵は工場跡の地下室へ行き、流我もそれに続く。

幸いか否か。恋が指定した工場跡は遥か先だ。

「碧蛇流我だな?用があるのはお前の妹だ。随分離れて大丈夫か?お兄ちゃん。」

敵は無数に置かれたドラム缶のひとつに手を置き、流我に語り掛ける。

「勝ち誇っている。」そう感じる言葉だ。

どうやら、詰みらしい。

「コイツらの中身は全部金属粉だ。…あーいや、そうじゃ無いのもあったな。まぁそれはいい。」

敵は置いた手を一度上げ、下ろし、缶を叩いた。

流我は裂風を放とうとするが、それよりも速く棘が頬を掠める。

巨大な、金属粉で出来た棘が無数に流我を狙っている。

(マジかよ…!)

1本。

2本。

足を切り、腕を裂き、腹を削る。

敵は急所を狙って来なかった。

「ハッハッハッハッ!!!!逃げろ逃げろ!助けは呼べないだろ!?みんなお前より弱いもんなぁ!!」

ナイフ一本なんて言い訳になら無い。

電流に勝てたのは運が良かっただけだと思い知らされる。

次第に増える棘と、擦り傷が命を削りかける寸前…

(…攻撃が止んだ?)

敵のスマホが鳴った。

逃げるなら今しか無い。

「逃げただと?碧蛇旻渡が!?お前らの警備はどうなってるんだ無能が!!!!」

ミントはロゼが助けた。

言われた通り、ミントを一度部室に戻し、ロゼにしっかりと預けてから恋の元へ向かったからだ。

おそらく、ロゼがミントを囮に使って、敵の居場所を暴いたのだろう。

ミントはロゼにも良く懐いている。

「だから嫌なんだよ下等生物は!!!!!!」

敵が叫ぶと同時に、型取った棘が粉に戻る。

「逃さねぇからな。」

次の瞬間、大量の粉は通路から一気に外へと抜け、巨大な砂霧を生み出した。

「先輩!」

霧はだんだんと広がっている。

彼女の表情を見る暇も無い。

「目閉じて、歯食い縛って、しっかり掴まって。」

流我は一花をお姫様抱っこし、全力で走る。

傷から血が出る。歯を食い縛るのは自分の方だろう?

霧は半径1km程で落ち着いている。

この辺りは人が少ないから、保管場所に選んだのだろう。お蔭で被害は少なそうだ。

だが確実に出ている。

流我の傷が痛み続ける。

「ねぇ、先輩…。こんなになっちゃってますけど…私は先輩が大好きですよ?」

腕の一花が耳元で囁く。

「私の名前、一花。一番綺麗な花に成るって意味なんです。そしたら、私『華に成る』って…。」

耳元の一花が心臓で囁く。

「先輩。私を華にしてくれませんか?」

霧から大分離れたところでロゼとミントを見つけ、一花を預けて流我は戻る。

人が少ないだけで、居ない訳では無い。

それに気になる事もある。

ドラム缶の中身は大体金属粉だったが、異なる中身もあった。

敵が開けなかった缶に注目して中身を探ったところ、粉が殆どだったが、粉に埋もれて人間の死体が入っている物もあった。

そもそも、粉を操る能力であの宗教は成り立た無い。

麻薬の様に拡がっていると言っていたし、あれだけの数ドラム缶を開けておいて、開けなかった缶は全て端に纏まっていた。

麻薬を造る敵と能力は別にあって、麻薬を流通させたのが砂霧の敵。そう考えるのが妥当だろう。

ただ一つ問題がある。

「砂霧は麻薬を含むか」だ。

霧は本体を中心に半径1kmで構成されるとして、敵が動けば霧も動く筈。

全てでは無いにしろ、衰弱死させる麻薬を含んでいるなら止めなければなら無い。

流我なら、風で少しは止められる筈だ。

求められるものが規模なら、ナイフも太刀も変わりはしない。

流我は砂霧の前に立ち、コンクリートを赤く染め目の前の強大な敵に集中する。

「やっぱり変わって無いね…。君は勇者に成れ無いよ。リュー。」

次の瞬間。

霧は端から円を描く様に収束し、曝け出された敵は自身の粉と風に斬り裂かれる。

「遅くなった。被害を留められたのは君の功績だ。流我。」

優しい声に気が抜ける。

「やっぱ、師匠は凄い…です……。」

流我は貧血で気を失った。

内臓にまで棘は届いていないから立っていられた。本当に遊びだったのだ。

流我が目を覚ますとそこは、もはや見慣れた部室で、師匠の姿は無かった。

「おはよう。もう動けるんだ。」

ロゼが紅茶を嗜んでいる。

「…まあな。」

ジッと見るミントの頭を流我は撫でて、「一杯くれ。」と言う。

「そろそろ帰って来るよ。」

上着を着て紅茶を一口。

少し緩い気がして、飲み終わった所で扉が開く。

警察の事情聴取を終え、一花と恋が帰って来た。

一花は近くに居たと言うだけで、殆ど聞かれることは無い。

一緒に帰って来たのはつまりそう言うことだ。

「先輩、目が覚めたんですね。良かったです。」

「また一花を助けて貰ったとか。自分からもお礼を言わせてください。ありがとうございます。」

恋は本当に、もう大丈夫な様だ。

「先輩!またありがとうございます。貸し二つ目ですね!」

一花も、今日の朝と変わり無い。

本部から送られて来た情報では、大きめの砂嵐が発生した事になっている。

目撃した人も少なかった為、後は流我を見た人だけだが。

一花と恋についてはロゼが責任を持つとの事。

色々気になる事はあるが、姫が責任を持つと言うなら騎士は信じるだけだ。

他に見た人や警察も、騒動が収まれば風化して行くだろう。

これ以上は、本当に戦闘員の仕事で無い。

流我の初仕事はこうして幕を閉じた。

「見送りのパーティーぐらいさせてよ。」

駅の改札口一歩手前でロゼが話し掛ける。

「そんなもん。一度だってした事ないだろ。」

幼馴染との別れはいつも唐突だった。

「だね。」

ロゼは少し笑って続ける。

「またね。リュー。ミントちゃん。」

軽く手を振り再会を誓う。

「またな。ロゼ。」

ミントはこちらを見て、流我は後ろ向きに、二人は手を振り行路に着くのだった。


暗く、狭い様にも、広い様にも感じる部屋。

その中心に小さな机。その上に旧式のデスクトップPCが置かれている。

コードの先は暗闇で見えない。

『薬剤師さんよ。アンタの部下がヘマしたって?』

何人居るのか。誰の言葉かは分からないが、画面には会話文が表示された。

『想定の内です。心配は入りませんよ。元より成功するとは考えていませんので。』

『やったのは「剣豪」と呼ばれる男です。』

『碧蛇流我の実力はまだ成長途中と言うべきでしょう。現状では脅威になり得ないかと。』

『碧蛇旻渡はどうするんだ?』

『剣豪が出張ってるなら、連中に盗られる心配は無さそうだが。』

『貴方のものではありませんよ。』

『誤字だ。アホ。』

『丸付けてるだけありがたく思え。』

『句読点ですよ。これが無ければ伝わらない。』

それ以上の書き込みは無かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ