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流刃争記  作者: スマイロハ
初任務編

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22/26

第二十一話【再会】

2026年 3月

帰郷。

少年は母校であり、故郷であるこの場所に帰ってきた。

「近年、子供たちの関心は世界にも地元にも向けられていません。インターネットの普及によって、全てのことが簡単に調べられるからです。眼に映る事も、耳で聴いた事も、ネットの情報量に劣っている。小さく薄い機械、それと通信環境さえ与えられれば、子供たちは史上最も賢い人間になることが出来るでしょう。」

世界教育機関は、未来を担う子供たちを成長させるため、人類の進化を止めないため、世界中の教育方法を見直すことにした。

「『調べないと分からない』時代は終わりました。これからは、『調べても分からないことを分かる』時代です。子供たちは、人類は、次のステップに進むべきだ。」

そして学校は創られた。

【世界立特別教育学校】

人を育てる為に、一つの都市が丸ごと「学校」として機能している。

仕事で一番行きたくない。けど仕事で一番行きたい所。

国際色豊かなその故郷に流我は帰ってきた。仕事で。

[変な宗教が流行っているから、その正体が敵かどうか調べる。]

本来は戦闘員の仕事でないのだが、新人にいきなり戦わせる事はしない、組織の意向である。

武器等の携帯無し。戦闘は必要最低限に限る。また、必ず応援を呼ぶこと。

受付嬢に貰った携帯端末には、そんなことが書かれている。

見た目は完全に黒色のスマホなので、捕まらない限りは怪しまれないだろう。

交通費や着替え等、他にも受け取った物はあるが、持ち物を調べられても粗が出ないようになっている。

これらが詰められたキャリーケースを持って、流我は新幹線を降りた。

始発だからか、火曜日だと言うのに駅内は静かだった。

「お帰りー!!」

駅の改札口を出ると両親の姿が無かった。

代わりにニコニコ笑顔で、黒髪黒目の女性が1人。流我に手を振り呼び掛ける。

それ程距離も無いし、人も居ないのに。

「平日の朝だからね。普通にお仕事でーす。」

聞いてない事を答えてくる。

久しく感じなかった日常に、つい惹かれそうになってしまう。

「ロゼ。2年ぶりだな。一応聞いとくが元気にしてたか?」

ニックネームで呼び合うのは幼馴染だけ。

学校生まれの為、所謂クラスメイトが全員「幼馴染」に該当する。

「元気にしてたよ。」

「ミントちゃんも久しぶり。」

そんなに身長が変わらないミントの頭を撫でながら、ロゼは話す。

「ロゼって呼ばれるの久々だよ。」

「学校に残ってるメンバー、私だけになったから。」

幼馴染は殆ど、学校の外で活動している。

勿論、流我もその一人だ。

「目的を達成する時、最高の環境は最低になりやすくなる。」

「多少時間を無駄にした方が、返って効率的になるってことだね。」

私は寂しいよ。とロゼは冗談を言った。

「はい。コレあげる。」

ロゼはスマホを取り出した。

「私のは登録したから、他は自分で頑張ってね。」

黒色のスマホは丁度、組織の携帯端末と同じデザインだ。

「この時代に手紙でやり取りしてるなんて、モテないよ?」

「それに、親を心配させたく無いでしょ?」

どうせ学校に居るから必要無い。と所持していなかったそれを、数日で2つ持つことになった。

「ありがとう。」

ロゼからスマホを受け取って、内ポケットに入れる。

「家帰る前に、ちょっとついて来てよ。」

ロゼを先導に歩く。

「最近何かあったか?」

宗教のことも、ロゼなら知っているだろう。教えてくれるかどうかは別だが。

「そうだねー。」

「【恒星の上】は替わって無いしーー」

三人が駅から出たところで、スーツを着た中年の男が包丁を持ち、奇声を上げて襲って来た。

刃が天を向くように、右手で逆さに持った包丁をロゼに振りかざして走る。

直ぐに流我が男とロゼの間に入ると、男は流我の肩目掛けて包丁を振り下ろした。

流我は左手で男の包丁を持つ握り拳を上から掴み、そのまま男の両手を持って背後に回し、地面に押さえ付けて包丁を奪う。

男はブツブツと何かを言い続けていた。

「あー。これのこと忘れてたー。」

ロゼは、まるで今思い出したかの様に手を叩く。

そして、「話聞いてみたら?」と流我に言う。

「オッサン。何でこんな事したんだ?」

男を押さえ付けたまま聞く。

「カミが啓示を与えるのだ。ぼくはその啓示に従っている。それがカミの望む事だからだ!カミがぼくを必要としている!此れに勝る快楽など無い!!!」

帰郷して早々、当たりが引けた様だ。

男を警察に引き渡し、軽く事情を話してから再びロゼの先導に従う。

「今のは?」

またロゼに聞いてみる。

「オリジナルの宗教を創作するのが流行ってるんだよ。」

「信者は自分1人。自分で造った神様に縛られて、殺人事件を起こす。」

ロゼはスマホで、御神体の画像を流我にだけ見せた。

「御神体は布だったり、ペットの死骸だったり、自分自身の爪や毛を集めた物だったりする。」

ミントには見せられない。

「1人の教祖が居ると言うよりも、寧ろ麻薬の様に『概念が流通し拡がっている』。」

「と、言うのが警察の見解。」

組織が調べ上げた【敵の能力】と、「感覚的に近い所がある」と流我は思う。

「ただし、その概念も、麻薬みたいな現物も、何も押収出来ていない。」

「そして、信者本人に話を聞こうにも、散々暴れて意味不明な事を言い、そのまま衰弱死する。」

駅が静かだったのは、「犯罪者が闊歩する中外に出たく無い。」と言う事だったらしい。

組織が持つ情報もここまでだ。

「ここね。久しぶりでしょ?」

会話の終わりはビルの前だった。

この辺りのビルは殆どが部室で、【サークルエリア】と呼ばれている。

基本的に、部活動の傾向でビルごとに入る部活が分けられ、高層が殆どだが低層もある。

流我が所属する部活は高層だ。

「部室とはお前より会ってないな。」

エレベーターに乗り、その場所を目指す。

数多くの飲食店が、日々腕を磨き、料理の味を競い合う。

そんな、食関係の部活が集められた高層ビルの一画に、全く関係の無い部活が入れられていた。

「丁度空きがあった。」

何処でも良いと言ったあの時の自分を正したい。そう反省したのも、もう何年も前のことであった。

「入るよ。」

部室のドアを開け、2年ぶりに対面する。

「先輩…?」

流我が最後に助けた後輩がそこに居た。

「後進育成だよ。リュー。」

「二人とも自己紹介して?」

一応知っている後輩と、初対面の後輩。

宮本一花(みやもといちか)です!あの時のお礼、私まだ出来てないですよね!?ちゃんとお礼したいですし、もし良ければ連絡先の交換などお願い出来ませんでしょうか!!」

ポニーテールに整った制服をきた少女が、名刺と一緒にスマホを差し出してくる。

流我はほんの一瞬断ろうと考え、直ぐにスマホを貰った事を思い出した。

ロゼはこの為に、あのタイミングで渡してきたのだろう。

友達の欄に1人増えた。

佐々木恋(ささきれん)です。碧蛇流我さんですよね?自分も交換させてください。」

こちらも、整った制服に名刺。

誠実そうな少年の願いを、流我は断らなかった。

「こっちが碧蛇流我で、この可愛い娘が妹の碧蛇旻渡ちゃんね。」

ロゼが流我達の紹介と、詳しい説明をしてくれる。

「今春休みだから、一花ちゃんと恋くんの二人しか常駐してなくて。他はまた今度紹介するよ。」

一花はお茶を入れて、恋は流我達に座るよう促す。

「ありがとう。」

「宮本さんに佐々木さん。」

流我はお茶に手を掛けお礼を言う。

「『一花』って呼んでください!」

「自分も『恋』と呼んでください。」

一花に続いて恋も名前呼びを強請る。

(距離近いな…。)

一花は兎も角、恋のそれは少し違うようだが…。

「二人は例の宗教を追ってるから、後進育成の一環で手伝ってあげてよ。」

お茶菓子を吟味しながらロゼが言う。

「じゃあ、一花。恋。よろしく。」

両親が仕事を早めに切り上げるとのことなので、今日はこれで解散して、流我とミントは我が家へ帰るのだった。

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