第二十話【受付】
社長室を出て、流我はミントにパンフレットを渡す。
「これから自由時間だそうです。もう予定は無いんですか?」
ここまで引率して来た師匠は最後に一言。
「食事が残っているだろう。」
地下3階の構成員用食堂は、メニューの豊富さ、栄養調整の正確さ、そして何より美味しさで、全ての構成員を満足させる。
それは流我達も例外無く。
「やっほー!」
久々の栄養補給を遮る様に、1人の事務員が声を掛けて来た。
「受付嬢の………リリリちゃんだよ〜!!」
その、リリリちゃんはカワイイポーズを決めて初登場を果たした。
「流我くんに、有空くんね。よろしく!」
流我は直ぐに挨拶をしようとするが、師匠に止められる。
「時間を無駄にするな。」と言うことらしい。
「流我くんは、休めたら任務を受けてもらうよ?」
「有空くんは、お勉強からだね。」
受付嬢は任務の話をしに来た。
有空が勉強からなのは、色々例外と言うことなのだろう。
「オレは勉強なんかしねぇぞ。」
飲み込みながら、有空がお気持ち表明を行う。
「最低限の知識が無いと任務は与えないよ?」
「良いのかなぁ〜?お友達はどんどん任務に行って強くなる!方や自分は地下施設で筋トレ三昧…。これじゃ差は広がるばかりだよ〜。」
有空の扱い方もよく知ってるみたいだ。
「受付嬢が居るんですか?」
流我の疑問に受付嬢は、
「カワイイでしょ?」
自称受付嬢の後は何も無く。
師との生活が終わり、妹との生活が始まり、友達と切磋琢磨し成長して行く生活が…
「流我!!オレと闘え!!!!」
いつに無く焦った顔で言ってきた。
一日中勉学に励む生活は、ストレスが溜まり過ぎて仕方がない。
「初日くらい頑張れよ…。良いけど。」
流我の方はトレーニングルームで木刀を振る生活。
師匠のところだと、体力の限界まで動き回ってぶっ倒れる生活だったので、こっちはこっちで別のストレスが溜まっていた。
「木刀使うか?それとも組手か?」
トレーニングで本気を出して負傷。肝心の任務に行けない。施設破壊。装備破壊。が多発したので、備え付けの木刀等を使うか、素手での組手のみが許されている。
「木刀!!!全力で来い!!!!!」
地下5階トレーニングスペースには、体育館と言うか戦闘用の広い空間が設けられており、水場や足場等の障害物に木製の武具まで、トレーニングに充分過ぎる設備が整えられていた。
「ではリリリちゃんが審判をしてあげよう。」
腕を組んだ受付嬢が、自信に満ち溢れた表情で、さも当然の様に立っていた。
「お前強いのか?」
ただの事務員が、二人の動きを追える筈がない。有空はそう思っていた。
「いや、強いと思うぞ?かなり。…多分俺らより強い。」
流我は何となく分かっていた。師匠と同じ様な感覚を、この受付嬢に感じていた。
実力への信頼と、それによって起こる自信。
見た目は14やそこらの少女。
背は低い。筋肉は無い。
だが確実に強者と呼べる。それだけの余裕を感じていた。
「ほらほら。離れて離れて。」
リリリちゃんは手を叩きながら開始を促す。
「流我くんが太刀。有空くんが大剣。勝敗は審判であるリリリちゃんの、独断と偏見で決めま〜す!」
リリリちゃんは二人を見て…見て何故か開始の合図を出さない。
「ホントに全力で行くぞ?」
流我が掛け合いを始めると、リリリちゃんは満足そうに頷く。
「ガチじゃねぇと意味ねぇだろ!!!!!!」
木刀の時点でガチでは無い。
「よ〜い…始め!!」
初撃は有空が取った。
真っ直ぐ突っ込んで勢いのまま振り下ろす。
「そこまで〜。」
有空の首元には剣先が優しく触れていた。
「流我くんの勝ち!」
流我は木刀を元に戻す。
「有空くん、動きが単調過ぎるね。」
有空は「じゃあな。」と一言残して帰った。
「で!流我くん!」
リリリちゃんは笑顔で言う。
「剣まだ出来てないけど、初仕事ね。頑張って!」




