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流刃争記  作者: スマイロハ
開幕編
2/26

第一話【接敵】

2024年 4月

少年は大型商業施設に来ていた。

家族で旅行に来ているのだろう。ここは全国的に有名な場所であり、観光地になっているからだ。

「お兄ちゃんトイレ行ってくるから、ここで待っててな。」

少年のその言葉に、妹らしき少女は小さく頷く。

少女と少年は全く似ていなかった。両親二人にも、だ。

両親は旅行好きだ。しかし最近、主に妹が来てから色々忙しく、遠出できなかったのだ。

久しぶりの旅行を楽しませてあげようと、少年は両親を二人残し、妹と店を巡っていたのだった。

少年は『碧蛇流我』と言うが、何とも読み難い。馴染みの無い文字列だ。『あおいりゅうが』と読むらしい。

これから先の時代では、適応力が求められるのだろうな。

「…ミント?」

流我がトイレから戻ると、予想と違う光景があった。

待てと言った妹は、そこに居なかった。

ポケットのスマホに手をかける。

(…まだ早いよな。)

妹…ミントと言う妹。漢字では旻渡。…眩しい名前だ。

ミントは少しばかり特殊で、迷子で無いのは勿論、待てと言って待たない事は無いはずだった。

辺りの店を回ってみても、特に痕跡は残っていなかった。

「父さん、今2人?」

心臓の焦りは声に出ていなかった。

「流我のおかげでな。『気を使わなくていいんだぞ?』と、建前を言っておこう。」

「ありがとうな。」

父親にとって家族は大切だ。だが男にとっては、惚れた女も大切だろう。

これで、ミントの行方は完全に分からなくなった。

「なぁ、兄ちゃん。人探しか?」

流我よりも、幾らか背の高い男が話しかける。

「さっきまで一緒にいた嬢ちゃんか?だったらこっちだ。こっちに行ってた。」

場所だけでも良いのだが、お節介な人の様だ。

「ありがとうございます。」

流我がお礼を言うも、

「いーのよ。助け合いだろ?」

と答え、男は歩みを進める。

「ここ…?」

立ち入り禁止の立て看板が置いてあった。倉庫の様だ。使われていないのだろう。

何でここにミントがいるんだ?と疑問に思うも、男は先へ進む。

(一応鍛えてるし、フィクションじゃないんだ。安心して良いはず…。)

映画ならこの男に連れ去られるんだろうなと思う。そもそもこの男、怪し過ぎる。冷静になって考えてみるとよく分かる。しかし付いてきてしまった。ここまで来たなら、この先に何があるのか気になる。なってしまう。

好奇心は身を滅ぼすそうだ。当たってるな。

「連れてきたのか。」

デカい。250cmはあるだろう巨漢が、倉庫の物に座っていた。

「どうせ1人居なくなるんだ。」

「0と1に超えられない壁があっても、1と2には無い。そうだろ?」

案内をしてくれた男と、巨漢は知り合いの様だ。

この時点である程度予想できる。流我も同じ様に、状況を理解する。

「俺の妹、返して貰えますよね?」

怒りか恐怖か、緊張からか、流我の声には確実に棘があった。

「返さねぇよ?妹ちゃんも、お前も。」

その言葉を聞いた瞬間、意識が途切れる。突然の事に、脳の処理が追いつかなかったのだ。

流我の体は積み上げられた物たちと一緒に、倉庫の壁に倒れていた。

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