第十五話【試験の島で】
「では行ってきます。師匠。」
湖の辺り、車の横で深く頭を下げる男が居る。
「これを。」
師匠は流我に首飾りを渡す。
後々必要になる物で凝った装飾などは無く、そら豆程の透き通った石が鎖に繋げられているだけだ。
「お守り程度に思っておきますよ。」
ミントにも行って来ると言い、流我は湖に飛び込んだ。
流我は成長仕切った事で、組織に入る為の試験を受けに来ていた。
試験は湖に浮かぶ人工島で行われる。その内容は島に入るまで知らされないが、敵を倒せば良いということだけ、事前に教えられる。
「碧蛇流我さん。一週間この島で生活して下さい。以上です。」
島に着くと放送が流れた。
一週間なら、飲まず食わずでも生きられる様に成長している。
(これが擬似敵か?)
島には偽物の敵が無数に存在し、受験者に襲い掛かる。
一週間集中し続けなければならないのだ。
(これくらいなら技を使わなくても倒せるな。)
流我が立った砂浜にも敵が数体居たが、そのどれもが弱く、流我の刀でも簡単に斬れる程だった。
(ロボットか?これ。凄い技術だな。使い捨てか?)
敵は精密機械の集まりで、人工知能が搭載されている。
性能が低い順に多く配置されており、性能が高いものはこちらを探知する機能を有している。
(真っ直ぐ向かって来てる…。体力を温存させる為には、こっちから探せってことか。)
敵を倒せと言われたが、目標が分からない内は体力を残した方が良い。
一週間の生活が試験内容なら、弱い敵と戦って永遠増援を送られるのは避けたい所だ。
流我は隠れ場所を探しに森へと入って行く。
(足跡がある。擬似敵のじゃ無いよな、他の受験者か。)
敵の足跡に混じって人のものがある。
かなりの数を相手にしている様で、ここ一帯に敵の気配を感じない。
流我が足跡を追っていると、島の中心で大きな爆発音が鳴る。
(自爆機能も付いてんのかな。)
呑気に隠れ場所を探していると、爆発音は段々と距離を詰めて行き、流我から100m程の地点で止まる。
「オレと闘え!!!!」
木々を薙ぎ倒し、そのままの勢いで大剣を打ち付ける。
真っ直ぐな攻撃で簡単に避けられたが、その代わりに地面が裂けてしまう。
「待て、俺は受験者者だ。敵じゃない。お前とは闘わない。」
流我が知っている人達は皆んな冷静で、こんなバーサーカーは組織に居ないと思っていた。
思っていただけで確かめたことは無かった。
「そりゃ悪ぃことをしたな。すまん!」
攻撃と同じく、性格まで素直な奴だ。
身の丈を超える大剣を持ち、デカい=強い思考の単純明快な漢に見える。
「で、ジュケンシャって何だ?強いのか!」
話が見えて来ない。
思えば、試験を受ける人は少なく、試験時期が被るのはもっと少ないレアイベントだと聞いていた。
そして、試験を受けるには相応の実力を有している必要があり、組織、社会、敵、それぞれの事をそれなりに知っておく必要がある。
つまり、強くて賢い人間だけがここに居るはず。
しかし目の前の少年に教養は見られない。
どう言う事だろうか?誰か説明してくれ、もう訳分からん。
「…組織の事、知ってるか?」
関係者ならこれで通じるはず。
組織にも表向きの名前はあるが、師匠やヘビと同じ側の人間は使わない事にしている。
知っているなら組織の人間。
どの組織か聞いて来たら部外者の人間。
合言葉の様なもので、流我もこんな所で聞くとは思っていなかったが、これでハッキリする。
この少年が何者なのかが。
「知らん。」




