第十二話【電流】
電流の強さに、一瞬死の恐怖を抱いた。
(今のをもう一度出されたら終わる。)
しかし敵は動かない。弱った流我を攻撃して来ない
(…何故追撃しない?追撃出来ないのか?)
(だが助かった。今は落ち着く時間が欲しい。)
流我が体制を立て直すと、敵は電流の攻撃を仕掛けてきた。
先ほどと比べて威力が低い。これなら充分受け切れる。
(こいつに限って舐めプは無いと思うが。さっきより明らかに電流が弱い。)
牽制程度の電流。雷鳴のカウンターを嫌った立ち回りだと言えなくも無いが、電流を扱うなら耐性があるだろうし、そもそも刀に対して素手、電流無しなら不利なのは敵の方だ。
(やっぱり弱い。大技は連発出来ないんだ。多分溜めるタイプ…!時間稼ぎか…。)
フルチャージの状態ならさっきの火力が出せる。
最初の不意打ちで電流を使わなかったのは、大技で一気に決めるため。
しかし大技は耐えられてしまった。
再び大技を放つため、警戒しているであろう電流をこまめに出し、時間を稼いでいる訳だ。
ただ問題は、本当はもっと強い攻撃が出来る可能性。流我が屋上の大技をフルチャージだと思っていれば、電流が溜まり切る前に勝負を決めようと隙を見せる。その時に本当の最大火力を確実に与えるため、ワザとそういうブラフを貼って、ミスリードを誘おうとした可能性がある。
(どっちにしろマズイな。構えを切り替えると隙が出来る。)
流我に大技を受け切れる実力があれば、カウンター狙いで楽に突破できる。
今一番火力が出る構えは風圧。今の構えは雷鳴。
構え直す隙に大技を叩き込まれれば負け。
(時間を稼いだとして、俺にも師匠と言う切り札がある。ただ師匠の進捗を確認する余裕はないし、師匠が間に合わなかったら終わり。)
(対してコイツは稼ぎ切った時点で勝ち。下手に今の状態を続けるよりも、ここは思い切った方が良い…!)
流我は敵に背を向け、逃走。
当然背後から攻撃されるが、大技を放ってからまだ1分も経っていない。ブラフ説は捨てるとして、弱い電流なら耐えられる。
距離を取れさえすれば、風圧に変える余裕が生まれるし、屋上の受けが間に合っていることから、この敵の速度は流我より遅いはず。
(風圧ノ構エ…!)
構えを変え、刀を振り上げ風を纏う。
逃げた訳ではなく、距離を取ったと言うことに気付き、急いで距離を詰めようと向かってくる敵に技を放つ。
ーーー裂風ーーー
放たれた風圧は光を裂き、空間に歪みを作る。
その歪みに触れた物もまた、引き裂かれる。
敵の右手首は引き裂かれ、動脈から血が溢れ出る。
(躱された…!追撃をーーー!?)
敵は取り出したナイフに電流を流し、それを切れた手首に押し当てる。
(焼いてんのか…!?止血なんて、そこまでするかよ!?)
血の水溜まりが拡がらない。
(奴にはあるんだ。勝って生き残る覚悟が!!)
精神的な強さで、敵は流我を圧倒する。
ここでハッキリした。長引かせれば不利なのはこっちだと。
(速く!正確に!技を打て!!)
(れーーー!?)
身体中に衝撃が走る。
2回目の大技が内臓を焼く。
赤黒い流動体が目の前の地面に拡がり、久方振りの刺激で成長痛が息を吹き返した。
(ヤバい。死ぬ。)
今の攻撃で敵の能力は粗方分かった。
【電流】体力を電力に変換し、電流として放出する能力。
大技を放った敵は地面に手を突き、肩で呼吸している。
1回目と違い、流我との距離が離れているにも関わらず、同程度の威力と高い出力を両立していたため、相当の体力を消費したはず。
「お前に…恨みは無い。だが、死んでくれ…!」
壁にもたれ掛かりながら、倒れ込む様に流我へ近付き、ナイフを突き刺す。
止めを刺すため、消えゆく意識を電力に変換する。
(師匠は俺に行かせてくれたんだ…!この俺に!)
髪の毛一本から足の爪まで、雷鳴の流れを感じる。
(師匠は俺を信じてくれた。弱い俺に期待してくれたんだ…!)
心臓の鼓動が、肩から流れ出る。
(期待は裏切るものか!?違うだろ!?)
今日までの思い出が、頭の中を流れて行く。
(期待は裏切るものでも!応えるものでもなく!)
命が今まで進んできた、自然の流れが分かる。
「超えて行くものだ!!」




