第十一話【索敵】
(何で男って分かったんだよ。)
望む未来は楽園で、望む現実は絶望で、見えたものはもう見えていた。
夢と知っても、今は切り替えなくてはいけない。
目を覚ますと、広場には人々が寝かされている。
(眠らされたのは敵の能力として、寝込みを襲うつもりなのか?)
敵の目的は直ぐに分かった。
「敵は三人。内一人がミントを連れ去った。」
抱えていた人を寝かせながら流我に伝える。
街の人は師匠が運んでいた。
ミントを攫う事自体がフェイクで、他に目的があるのかもしれない。
応援要請をしてあるのと、ミントを連れた敵以外に動きがないこと。
眠らせる能力は直ぐに解除出来たことから、急いで倒しに行くのは得策で無いと判断したからだ。
「流我はミントを追え。」
広場の人達と、動きの無い敵2人を強い方が受け持つ。
大切な一人と他人大勢なら、大切な一人を取ってしまう。
今一番危険な状態であるミントに、半人前の流我を向かわせるのには、流我が半人前だからこその理由があるのだ。
「任せてください!師匠!!」
敵を追うには、まず目を使う。
視界に情報が入らなければ音を聞く。
それでもダメなら、匂い、風、熱、感覚を研ぎ澄ませて命の軌跡を、敵の気配を辿る。
師匠が教えてくれた位置からは移動しているだろうし、仲間がいるとしても、大通りを堂々と進むとは思えない。
敵が居るであろう方向に走りながら耳を澄ます。
(聞こえた…!正面。)
街の人は皆眠り、刀を持っていても騒ぎにはならない。
敵が追われていることに気付いていなければ、不意打ちで堅実に助けられる。
さらに集中し、一点の動きを感じ取る。
(真っ直ぐ逃げてるな…。気付かれたっぽいか?)
敵は右肩にミントを乗せ、武器らしき物は持っていない。
スピードは流我が上。そのまま走っても追いつくが、不意をつくため路地へ逸れる。
ビルとビルの間、蹴り上がって敵の頭上を取り、高所から一撃。
(捉えた…!)
敵と刀の距離が縮まるなか、敵の足が止まる。
敵は左手を流我の攻撃に合わせ、刀を弾き、そのまま左足で流我を蹴り飛ばす。
(バレた!?)
受け身を取り、敵を見る。
「何故振り切らなかった?俺には躊躇った様に見えた。」
「それとも、何か策でも立ててるのか?」
敵は冷静に流我を見る。
技を使えば決着が付いた。
躊躇ったのは勇気の問題か。
ミントを攫った理由が聞きたいからか。
実戦経験が無い以上、この一撃で決めきれなかったのはかなり辛い。
敵の実力も高そうだ。
「何故妹を攫った?」
「2人で失敗したから3人で来た。」そう考えるのは自然だし、「以前1人で来て失敗した事があるのか?」とも思う。
師匠が言った様に、ミントはまた攫われそうだ。
「お前に教える気が無いなら、当然俺も教えない。」
「当たり前の事だ。」
言い切る前に、敵はミントを放り投げる。ビルの屋上に届く程。
ミントにとって、これくらいの高さなら大したダメージにならない。
ダメージにならないが、大切な妹を見捨てる筈もない。
ミントを抱える流我の首に、敵のナイフが飛ぶ。
大事なチャンスで、急所を的確に狙う冷静さを持っていると仮定すれば、流我でも凌ぐくらいは出来る。
右手の刀でナイフを弾き、屋上にミントを寝かす。
(強いな。躊躇ってたら殺られるか…。)
(弱いよなぁ、俺は。)
師匠だったらこんなに時間は掛からない。最初の一撃で決める。
ただ、今はその師匠が近くにいる。
耐えきれば勝てる。危ない選択を取る必要は無い。
気持ちを切り替え、流我は深呼吸をする。
(風圧ノ構エ…。)
風は周り、流我の刀へ吸い込まれる。
屋上、敵の上を取れており、敵の遠距離は今のところナイフ一本。
風圧なら鎌鼬が出せる。チクチクやってればそのうち勝てる。
(敵の位置はーーー!?)
真正面。ミントを寝かせている間に登って来られた。
敵は右手を振り翳し、その手は電流を纏っている。
(雷鳴ノ構エで受けをーーー)
試みるも、その圧は経験を遥かに上回り、流し切れない電流が直撃する。
(受け切れない!?)
声も出ない衝撃に襲われ、纏った電流も抜けて行く。
(逃がさねぇぞ…!)
接近してきた敵と共に落ち、ミントから突き放す。




