五話 ヒロイン①
「一二ッ、一二ッ!」
準備運動を終えて、俺たちはグラウンドを走っていた。
最初の授業ということもあり集団で走って、そのあとは自由時間だ。
俺は前世じゃ体育はどちらかといえば苦手な科目だった。
だがゲームの直之は運動神経は悪くなく、女子風呂を覗いたのがバレても走って逃げ切れたり、プールの授業でも冬馬に泳ぎを教えたりしていた。
運動の苦手な中身と運動が苦手じゃない外見だと、どうなるのか。
答えはーー
「ゼイ……直之、息苦しくないのか?」
「いや、意外とまだ行ける」
「マジかよ……」
適用されるのは外見の方のようだ。
どうやら直之はそこそこ鍛えていたみたいで、このくらいじゃ全然平気だった。
この体力なら女子風呂を覗いてダッシュしても逃げ切れるのは納得だ。ご都合主義かと思ってたが、そんなことはないようだ。
まあ結局あとで絞られてたけどね。
冬馬だけはヒロインに庇われてバレずに済んでたがな。これは主人公特権というやつです。
どのみち修学旅行編はまだ先の話だ。今は授業に集中しよう。
「さて、冬馬。先ほども話したが、女子の体育着姿を見てどう思う?」
「ゼイ……とても、エロいと思うぞ」
「そうだな。そしてもう一度、あちらを見てみるが良い」
男子が走り終わった後、次は女子がグラウンドを周回している。
「汗水垂らして必死に走る姿もなかなか良い。何より、汗が張り付いてーー下着が、透けて見えるのだッッッッ!!」
今日は春にしてはかなり暖かく、少し運動するだけで汗だくになるのだ。
そんな中、思春期の女子が体操着を着て、運動をして、汗をかけばどうなるのか。
すなわち透けるということなのだ!
「中々良い眺めではないか?」
「遠目からだと俺は少し見辛いが、素晴らしき光景であると断言できよう」
「そうだろう、そうだろう」
ウチのクラスには美人な子が多い。エロゲ世界様々だ。
何よりウチのクラスに所属するヒロインの二人を見てみろ、サイズもあるし形も良い、何より下着も他のモブなんかよりも質がいい!
ちなみに佐渡沙苗は白、木ノ下桜は水色の下着をーーって、なんか木ノ下桜がこっちを睨んでいる気がするぞ?
「おい、直之……ちょっとやべえかもしれん」
「どうした?」
「桜がこっちを見てやがる……」
「こ、こっちを見てるからなんだというんだ?」
「俺たちの会話が聞こえてるのかも……」
「い、いやいや流石にそんな事はないだろ?ここから結構離れてるぜ?」
と、そんな事を話してると走り終えた木ノ下桜がこちらへと歩み寄ってきた。
「な、何の用だ、桜?」
「何だか嫌な気配をアンタたちから感じたわ」
「き、気のせいだろ?なぁ冬馬」
「そ、そうそう。別にやらしい事なんて話してないぞ?」
おい!木ノ下桜は『やらしい事』なんて言ってないだろ!
「ふーん。まあいいけど」
危なかった。
ゲームだとここで直之が「良い眺めでした!」と堂々と言って、制裁食らってたからな。余計な事は言わないものなのだ。
「汗かいちゃったわ。下着の中も蒸れてるわね」
「「何っ!?」」
俺と冬馬はほぼ同時に木ノ下桜の胸元へと視線を向けた。
「…………」
「「しまった、罠か!?」」
さっきから息ピッタリだな、俺と冬馬。
「罠か、じゃないわよ!この変態共がぁ!!」
バチンバチーン!
ビンタ、ありがとうございます!
◇
体育が終わり、更衣室から教室への帰り道。
「まだヒリヒリするよ」
「まあ、さっきのは俺たちの自業自得だ」
「ったく、桜の奴。やけに機嫌が悪いな……」
それはお前に原因があるんだろーが。
「……なぁ冬馬」
「何だよ」
「お前さ、木ノ下の事どう思ってる?」
「別にただの幼馴染だよ。少し見ない間に随分と暴力的に育ったとは思うが」
まだここでは異性として意識はしていないのか、微妙にゲームの展開と違ってはいるけど、この辺りに変化はないようだな。
「ところで、知ってるか?この学園に伝わる噂を」
「噂?」
「ああ、中庭デッカい桜の木あんだろ?あの木の下で、告白すると両想いになれるって話だ」
サクラユメに出てくるヒロインの何人かはその桜の木の下で告白イベントが行われる。
キャラや分岐によって別の場所で行われる場合もあるが、エンディングは決まってその場所で迎える事になる。
「眉唾な話だな」
「だが実際に何組ものカップルが誕生しているのはマジらしいぜ」
噂や設定の真偽はわからんが、カップルが誕生しているのはマジな設定。
実際にマジなのだとしても、プラシーボ効果とか思い込みによる成功だったりするだろう。
まあゲームの直之はこれを鵜呑みにして何人もの女子を呼び出そうとしてことごとく失敗してるんだがね。
「で、気になる女子はいないのか?」
「まだ入学して二日だぞ?そんなの出来るわけないだろ」
まあそうだろうな。
「ならこの俺が独自に調べ上げた桜樹学園のヒロイン達を紹介しようではないか」
「何だよヒロインって、ゲームじゃあるまいし」
ゲームキャラが言うな!
と大声で突っ込みたいのを抑えつつ、ここで直之が主人公にどのヒロインがどんな奴なのかを教えるイベントが発生するのだ。
正直、教えないという手もあるがそんな事をして今朝みたいな事態が起きたら嫌だしある程度はなぞる事にしよう。
「何だ?知りたくないのか?」
「誰もいらないとは言ってないだろう」
冬馬は眼鏡をキリッと光らせる。
このエロ眼鏡が。
「まずは、そうだな。木ノ下桜と佐渡沙苗だ」
「桜もか?」
「ああ、この二人はウチのクラスでは群を抜いて美女だと断言できる。さっきの体育で他の女子達と見比べて確信した」
「やけに女子の方見てると思ったらそんな事をしてたのかよ……」
俺は汗をかく女子がエロいと思って見てただけだ。ゲームの直之が言ってたんだよ。
「木ノ下はもう知ってるとして、佐渡さんこと委員長だ。彼女はお前と同じ眼鏡キャラで真面目なしっかり者だぞ」
「誰が眼鏡キャラだ。さっきからゲームっぽい表現をするよな、お前」
おっと、うっかりサクラユメを他人に勧める時のノリで話してたぞ。
「わりーわりー、そんで趣味は見た目通り読書好きだ」
伝記だったり小説だったり、様々な本を読む彼女だが、沙苗√に入ると図書室の隅で官能小説を読みながら、机の角で自己発電するようになり、その場面を冬馬が目撃してしまい、ハジメテを捧げてくれるのだ。
男嫌いとか言っときながら随分と積極的だなオイ、と思ったもんだ。
ちなみに家ではオモチャを使っており、引き出しの二重底に隠してあるとか何とか。
沙苗√後半では授業中に冬馬がスイッチを入れたりとかして反応を楽しむというものがある。
意外と変態プレイもお好みだったりするのだ。
「そして次は担任の千夏先生だ」
「アネ……教師もか?」
「そうだ。他のクラスと比べて物凄い美人だろう」
「それはまあ……否定しないが」
冬馬の歯切りが悪い。そりゃ実の姉だもんな。
「何より特大のスイカを二つも抱えていやがる。あの谷間に挟まれたいと思わないか?」
「…………思う」
少しの間が開き、冬馬はうなづいた。
この時、心の中で「実の姉だし……いやでも、あのデッカい谷間に顔を埋めてみたいし……でもな……」と葛藤して、最終的に男の本能に勝てずに肯定したのだ。
千夏√では教師と生徒という事もあり前半は学園内でヤるシーンはあまり無いが、冬馬の希望により放課後に屋上でというものがある。
この時、千夏が手すりに手をかけバックで冬馬がするのだが、「みんなに見られちゃう!」と言いながら矯声をあげるシーンが何より抜けた。
これをきっかけに千夏√後半では学園でするシーンが増え、放課後の教室でその大きなスイカでアソコをパ○ズリしてくれるシーンも中々良かった。
教師という立場上、教壇では凛とした様子が印象深いが内心では意外と冬馬に甘えたがったりするのだ。
だって、姉と弟が関係を持つんだぜ?どっちかがブラコンかシスコンじゃなきゃ考えられんよ。
「おっと、そろそろ教室に着くから続きは後でな」
「はいはい」
「随分と興味深い話をしているね、君たち」
不意に声をかけられ後ろを振り向くと、そこには腕組みをした二年生と思しき女生徒が立っていた。