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四話 ブルマ


「あーでもないし……こーでもないよな……」


冬馬はブツブツと独り言を呟きながら歩いていた。


ゲームだとここでは心の声で表示されていたが、俺がヒントを言わなかった影響なのか全部声に出ている。


何で分からないのか不思議でしょうがない。


久しぶりに帰ってきたこの街で、久しぶりに会った幼馴染に、言うことといったら一つしかないのにな。


「大きくなった……?いや、三年も経ってるんだし当たり前か……」


選択肢1の『大きくなったな。』を選択すると「当たり前でしょうがっ!ばかぁ!!」と罵られながらご褒美(ビンタ)をされます。


「にしても、エロい体つきになってたよなぁ……」


分かる。超分かる。何せ『エロゲの』ヒロインなのだから体付きがエロいのは当然だ。


ちなみに選択肢3の『エロくなったな。』を選択した場合、顔を真っ赤にして「こんっっの変態!!」と罵られながらご褒美(ビンタ)をされます。


全部がハズレの選択肢の中で一番のハズレの選択肢である。


「うーん……」


腕組みをしながら本格的に考え込む冬馬。


そこまで難しい問題じゃないだろ。展開を知ってる知らないに関係なく、分かるだろ。


ちなみに選択肢2の『可愛くなったな。』を選択したら、顔を真っ赤にして「えっ……冬馬が可愛いって言ってくれた……?まさか夢じゃないかしら?」と頬を抓ったのちに「ううん、夢じゃない!嬉しい……」としばらく酔ったあとハッとなり「って、そうじゃないわよぉ!!」と罵られながらご褒美(ビンタ)されます。


三つの選択肢の中で一番マシな選択肢でさえビンタを喰らう運命は変えられないのだ。


だが我々の業界ではご褒美です!


このシーンだけ何度もロードしてプレイしたものだ。


動画投稿サイトでは罵倒集や耐久動画が投稿されている程だ。


とかなんとか考えているうちに学園に着いてしまった。


そして、校門前には木ノ下桜が立っていた。


「……!」


木ノ下桜はこちらに気がつくと駆け寄って来た。


イベント発生です。


このくだり何回やるんだよとゲームで思ったけど、実は後もう一回だけあるのだ。


そこでやっと主人公は「ただいま」を言って機嫌が良くなる。


そして記念すべきサクラユメのCG一枚目を回収できる。


主人公たちには背中を見せてるが、こちら側には満面の笑みを浮かべて嬉しそうにする木ノ下桜のCGだ。


「……偶然ね」


いや完全に待ってたじゃねーか。


冬馬はそう思っている事だろう。


「……で、何か言うことはあるかしら?」


今、主人公の目の前に三つの選択肢が浮かんでいる事だろう。


ここでセーブしてロードで選び直しても、好感度に変化があるわけじゃないから、好きなのを選択して大丈夫だ。


だがそれは影宮直之が主人公にヒントを言っていた場合の話で、俺は何も伝えていないのだ。


何が起こるか楽しみだなぁ。


「……えーと」


冬馬は頭を掻きながら言葉を探している。


それをワクワクしながら見守る俺。


「何と言いますか……久々に会えて俺も嬉しいというか……」


そうだな。それはあっちも同じだろう。何せ三年も想いを募らせてたんだからな。


「お、大きくなったなぁ、と……」


選択肢1か、随分とあっさりした選択をしたか。


と、ここで木ノ下桜を見るとゆらりと怒気のようなオーラを醸し出していた。


「じゃなくて!なんていうか、その……か、可愛らしくなったよなぁ……」


おや?ここで選択肢2も言うのか?


そう言うと怒気のオーラが引っ込み、木ノ下桜は顔を紅潮させていく。


なるほど、選択肢を複数答えるわけか。


だが結局、この後の展開はビンタを受ける流れになるだろう。


「か、可愛いですって……?」


木ノ下桜は顔を赤くながら体を震わせる。


お?これはいい流れか?


「そ、そう!可愛く!『エロくなったな!』」


その瞬間、空気が凍りついた。


冬馬のバカ!いい感じだったのに余計な事を言うんじゃねえ!


しかも声がでかい!登校中の生徒がこっちを見てるだろうが!


「な、な、なななな何言ってんのよぉ!!この変態!!」


木ノ下桜は顔を真っ赤にして右手を振りかぶった。


「ぐはぁ!?」


あーあ、余計な事を言わなきゃ、いい感じに収まったかもしれ……


「ごふぅ!?」


俺の脇腹に木ノ下桜のスクールバッグがクリティカルヒットした。


どうやら勢いがつきすぎたせいで鞄ごとぶん回されたらしい。


「馬鹿ぁ!!」


そう言って木ノ下桜は校門を駆け抜けていった。


「ぐ、痛ってえ……大丈夫か、冬馬?」


「そっちこそ平気なのか、直之?」


俺は脇腹を押さえながら何とか立ち上がる。


くそう……直之がヒントを言わなかったら、冬馬は全部の選択肢を答える上に、俺にも被害が来るとは思わなかった。


これならまだゲーム通りの行動を取った方が良かったよ。


「お前の幼馴染、随分と暴力的だな」


「悪い……あんなに変わってるとは思わなかった」


「いや、冬馬が謝る必要はねえよ」


悪いのは分かってて言わなかった俺にも非がある。


まあたかが一言もらえなかっただけで暴力振るう方もどうかと思うけど、ヒロインだから許す。





「なぁ、冬馬よ」


「何だ?」


「貴君は『胸』と『尻』、どちらが好きかね?」


「何を言うかと思えば、そんなの『おっぱい』以外に何があると言うんだ」


「フッ、意見が合う…………な!」


どこかの尻好き理事長みたいな喋りで返答する。


「だがな、冬馬。あの光景を見て、どう思う?」


俺はグラウンドの反対側でストレッチをしている女子達を指差す。


「素晴らしい光景だ」


「そうだ。とても素晴らしい光景なのだ。そして、何より素晴らしいのは……」


俺は一呼吸おいて答える。


「ブルマ、だ!」


現在、俺たちは体育の授業でグラウンドに集合しており男女それぞれ別の場所でストレッチをしていた。


男子の服装は一般的な白のTシャツに紺色の短パン。


そして、女子は白のTシャツに紺色の…………ブルマを履いているのだ!


曲線の美しい太もも、綺麗な素足が露出され、ぴっちりと張り付いたブルマが大きな尻を強調しており…………エロい!


「アレを見て、本当におっぱいだけがエロいと思うのか?」


「フッ、直之よ。生憎、俺の目は節穴ではない。当然、エロいと思うっ!」


メガネをキリッとさせて冬馬は答える。何か背後に炎のようなものが見えるのは気のせいだろうか。


「そうだろう、そうだろう。あんな素晴らしいモノを拝める体育というこの授業。最高の時間(ショー)だと思わんかね?」


「最高だな」


ガシッと力強く握手を交わす。


「お前たち……真面目にストレッチしろっ!」


「「ヒエッ!」」


そんな事をしてたら背後に体育の男性教諭が立っていた。


ちなみに冬馬にヒント与えても直之の立ち位置的にスクールバッグは命中します。

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