十二話 課外清掃③
メリークリスマス。皆さん、いかがお過ごしですか?
作者は今年もクリぼっちです。
うわあ……憂鬱だ。
俺は重い足取りで学園へと向かっていた。
ズル休みでもしようかと思ったが、遅刻した昨日に引き続いて休むだなんて、これ以上目立つ真似をするわけにはいかなかった。
「お、おい直之……」
「大丈夫だ。大丈夫」
「そうは見えないが?」
「ハハ」
「笑って誤魔化すなよ」
冬馬が先程から何事かと心配してくれている。
持つべきものは同志だなぁ。
さて、課外清掃だが今のところ流れとしては班員がゲームと同じという点ぐらいしか、分かっていないが、清掃場所はどうなんだろう。
ゲームでは冬馬が「課外清掃か……」と心の声が表示されて、次のシーンでは課外清掃のシーンに飛んだからな。
つまり班員を決めたシーンもクジを引いたシーンも、ゲームでは存在しなかったのだ。
まあ、そんなシーン特に需要もないからな。
そんなわけで直之が「公園かぁ!流石は委員長!」なんて言って佐渡沙苗をイラつかせた上に、冬馬と遊具でふざけて修羅場にさせるイベントであるが、昨日俺たちが遅刻したせいでどうなったのかは分からない。
つまりまだ希望はある。学園に着くまで分からない。
なんとかの猫というやつだ。
そう思っていたのだが……
「私達は公園の清掃になってるから」
学園に着いて早々に木ノ下桜からそう通達があった。
はい終わりました。
なんでも、佐渡沙苗がクジを引いて当たったらしいです。
ゲーム通りですね、はい。
乱数調整をもっとやっとけば良かったなどと思いながら、渋々と言った形で俺は皆と公園へと向かったのだった。
例の公園は主人公の幼少時代に木ノ下桜と一緒によく遊んだという、思い出の詰まった場所である。
タイムカプセルもあるんじゃなかったか?
そんなことを考えているといつの間にか公園に着いていた。
「ほぉ、公園とはついてるな!」
公園に着いて早々に冬馬がそんな事を言う。
やめろ、修羅場にさせる気か!
本来であればここで直之がそれを言う場面であったが、俺が何も言わなかったために冬馬が言ってしまった。
恐る恐る俺は佐渡沙苗の方へ視線を向ける。
「ふふ、でも掃除だからちゃーんと真面目にやりましょうね?七夜くん?」
彼女は微笑みながら冬馬にそう言った。
ヒエ……笑顔が怖いです。
おこなの?ねぇおこなの?
「そ、そうだぞ。いくら遊具があるとはいえ、これも授業なんだからな。早く始めよう」
すかさずフォローを入れる。とにかく修羅場にならぬように努めなくては。
「連れないな、直之」
「ほら、影宮くんの言う通り、皆掃除道具を持って始めるわよ」
そう言って俺たちは持ってきた箒やチリトリ、あとはトングを手に取る。
「それじゃあ、私と影宮くんは南側、木ノ下さんと七夜くんは北側をお願いできるかしら?」
「ええ、いいわよ」
「「え゛」」
な、なんだと……!?
俺と……佐渡沙苗が二人きりに!?
やめてくれ!なんでだよ!?
こんな展開、ゲームに無かったぞ!?
「男子が二人だと絶対真面目に掃除をしないでしょ?」
ごもっともな意見です。流石は学級委員長。
「い、いやでもさ……」
「何か?」
冬馬が反論しようとするも、佐渡沙苗が目だけ笑ってない笑顔でそれを一蹴する。
ヒエエ……怖え!
これを委員長スマイルと名付けよう!
って、そんなこと考えてる場合か!
「な、なんでもないです!」
おい!もう少し頑張れよ主人公!
「行くわよ、冬馬」
「あ、ああ」
「え、ちょ待……」
待ってくれと言おうとしたが、引き止める良い理由が思いつかず、そのまま冬馬は木ノ下桜と北側に行ってしまった。
この場には俺と佐渡沙苗だけが取り残された。
「さ、私たちも始めるわよ。影宮くん」
「……アイアイサー」
弱々しく返事をして俺たちも掃除を始めた。
できる限り俺は距離を置きながら、必死になってゴミ拾いやら箒をはいて掃除を行っていた。
佐渡沙苗に話しかけられないように、目を合わせないように、そして真面目に掃除してるように見えるようにと、俺は必死だった。
「あ、影宮くん」
「は、はい!?」
急に話しかけられ俺はビクッとした。
「そっちは、もう大丈夫だから、次は反対側に……」
「分かりました!」
俺は食い気味に返事をして、指示された場所へダッシュで向かう。
佐渡沙苗をイラつかせないように、せめて真面目に掃除をいたしましょう。
お掃除大好きダイスキダイスキ……
この時の俺は一つのトリップ状態で周りを気にするどころか、佐渡沙苗の顔色がおかしかったことに気づきもしなかった。
そうしているうちに課外清掃は順調に進んでいったように見えたが……
「終わりましたっ!」
「ご苦労様、次は……」
一応、指示された箇所の掃除が終わったので報告がてら次の指示をもらいに佐渡沙苗の元へと戻った。
そういや、冬馬達はちゃんと掃除してるのかね。
いくら男女ペアで別れたとはいえ、相手はあの木ノ下桜で、ここは思い出の公園だ。
何かしら俺の知らないイベントが起きててもおかしくない。
こっちの掃除が終わったら呼びに行く形でこっそ覗いて見ようかな。
そう思っていると佐渡沙苗から、指示をまだ言われないことにふと気づく。
「ハァ……ハァ……」
「い、委員長?」
何やら息遣いが荒い。
え、何?まさかとは思うが、今アソコに玩具でも仕込んできてんの?
え、え、え……?
そう思って俺は黙って耳を澄ますも、別にブイーンなんて音は聞こえてこない。
だ、だよな!こんな時に何考えてんだよ俺は!?
この時点で佐渡沙苗が外で一人玩具プレイなんて真似をするわけないだろ!
男嫌いだぞ!?好感度もマイナススタートだぞ!?
そんな彼女がこんな時にそんな事をするわけないだろ!?
「か、影宮く……」
佐渡沙苗はそう言ってその場に崩れ落ちた。
俺はすぐさま彼女の体を支えて、地面に倒れ込むことだけは防いだ。
「い、委員長!?どうした!?」
「ハァ……ハァ……」
息遣いが荒いだけでなく顔も赤いし、なんだか辛そうだ。
もしかしてと思い額に手をやると、かなり熱があった。
マジか、もしかして今朝から体調が悪かったのか?
こんな状態で学園に来て課外活動に参加するだなんて、本当に真面目なんだな。
というか、こういう時ってどうすればいいんだ!?
冬馬達は……呼びに行くのは後にして、救急車でも呼んだ方がいいのか!?
で、でも熱だけだし、風邪っぽくても呼ぶべきなのか!?
救急車を呼んでも、到着に時間はかかるだろうし、それから俺が担いで学園に戻った方がいいかもしれない。
ここから走れば五分もかからないし、そっちの方が早いだろう。
で、でも俺が担いで行ったら、佐渡沙苗はどう思うんだ?
う……今はそんな事を考えてる場合じゃない、男嫌いがどうとか、気持ちがどうとかよりも、人命を優先すべきだろ!
そう決意して俺は佐渡沙苗を背中に担ぐ。
流石にお姫様抱っこする勇気は無かった。
「しっかり掴まってろよ!」
俺はそのまま学園に向けて走り出した。




