初陣②
長くなったのでいったんきります
黄龍眼によると、
鎧は「断罪者」
という希少種らしい。
…希少種だって!?
魔物には原種・亜種・上位種・希少種がいる。
原種は、ゴブリン種でいえば、ゴブリンやゴブリンアーチャーなどだ。
亜種は原種よりも強い個体で、ホフゴブリンやゴブリンメイジなどだ。
上位種になると、ゴブリンの特性に加え、統率能力など特異性が出てくる。
ゴブリンキングやゴブリンナイト、ゴブリンビショップなどがいる。
ゴブリンが群れをなし、統率されているなら上位種がいるといわれている。
そして希少種となると、カイザーゴブリンやパラディンゴブリンといった、一癖や二癖もあるものとなり、上位種より優れた知能をもち、危険度が跳ね上がる。
以前パラディンゴブリンが現れたときは、複数のAランクパーティーが壊滅になりながら討伐されたとなっている。
ゴブリンでさえ手こずる相手になってしまうのが希少種だ。
断罪者はリビングアーマーの希少種らしい。
Aランクパーティーが束になってかかる相手じゃないのかな?
あまりの情報に尻込みしていると
【どうした?無謀な少年よ。怖じげついたか?ならば奮い立たせるために貴様の大切なものを目の前で搾り取ってくれよう。守るものがなくなれば、死ぬ気で挑めるであろう?
我はなんと名案を思い付いたのであろう!】
鎧はイカれた提案をしてきた。
身体の奥底から感情が溢れる。きっとこれが怒りなのだろうか。僕は初めて目の前の敵を殺したいと思ってしまった。今こいつはなんていった?
【ほう…。いい殺気じゃないか。だが少し迷いがあるな。初めての感情なのかな?
それにしては素晴らしい殺気だな。我ですら委縮してしまいそうだ…。
ふふふ…楽しめそうだな。さぁ我の新たな餌としては素晴らしいじゃないか!!】
こいつはどうやら僕を餌扱いしているらしいな。
「教えてやる!僕はハクト!餌なんかじゃない。お前を倒す男だ!」
既に準備はできている。ガントレットに魔力を通して鎧に視認できない細い糸を出力して地を這わして張り巡らせる。
大丈夫。一撃で行ける。あとは特定のポイントに来るだけだ。
【来ないのか?ならば我から行こうか!】
鎧は剣を振りかぶり、風を切るように突進してきた。
「…今だ!」
糸を操作して、鎧を切り裂くように引いた。狙いは関節。ここなら鎧でも弱いはずだ。
そこを狙えばこいつでも動きを封じられる。
【…っつ!!】
鎧は不自然な動きで停止し、後ろに飛んだ。
避けられた!?でも逃がさない!さらに糸を操作して追従する。
【…糸とは珍しいものを使いおるな】
鎧は左腕の鎧がなくなっていた。
「左しか取れなかったか。それでも糸が通じることが分かった!それに!」
更に糸を操作して魔法陣を作る。最近使えるようになった氷の上級魔法のセルシウスブレードだ。
【魔法陣を描くか!面白きかな!だが遅い!】
鎧は僕との間合いを詰めて剣を振るう。僕はバックステップでよけながら魔法陣の構築する。しかし、空を切ったかと思った剣は魔法陣を切り裂く。
「…!くそっ!」
強制的に魔法陣が分解される
【ふはははっ!所詮は魔法陣。時代遅れの旧世代の技術など脆弱だ!】
鎧は高らかに叫ぶと剣先を向けて、巨大な火球を放つ。
【今の時代我でも魔法陣は不要!】
「邪魔だ!」
糸を出力し火球を切り裂きはらう。火球が晴れた先に鎧が剣を振るっていた。
急ぎ左のガントレットから糸を出して受け止める。
【素晴らし反応だな!砕かれた魔法陣から学び、強度を高めているのか!糸と思い軽んじていたが侮れぬものだな】
戦いの中なのにどうしてこんなに楽しそうなんだよ。
糸で剣を絡めて、はじき飛ばす。
「まだまだ!」
新たに土の魔法陣と樹の魔法陣で魔法を作る。
「くらえ!」
樹の根が鎧にまとわりつき動けなくなったところに地面からアギトのようなものが現れて鎧を食いちぎるように襲い掛かる。
樹魔法の「バインドルート」と土魔法の「グランドファング」を組み合わせた魔法だ「グランドファング」はトラップとして使われやすいが、束縛できるなら有効な攻撃手段となる。
【ぬるいわ!】
紅黒い影のようなものがアギトを食い止めている。
【魔法の練度といい、応用力もあるな。だが実践経験が足りないと見る!目線や気配でバレバレであるぞ】
アギトから逃れた鎧はさらに距離を詰めてくる。
痛いところをついてくるがその通りだ。
僕は有力なスキルを持ちながら、狩猟経験などは皆無だ。
「だとしても!ここでお前を倒す」
無詠唱で可能な聖魔法を発動する。おそらく鎧は僕が魔法陣による魔法の発動しかできないと思っている。更に、魔物に聖魔法は有力だ。
接近する鎧に逼迫するように駆け出し、黄龍眼で動きを読み懐に入り込み聖魔法の「聖光拳」を叩き込む。
【…っつ!聖魔法か】
とっさに距離を取ろうとするが遅い。拳は横腹をとらえている!だが相手の反応も早く、浅い入りとなってしまった。
【いいぞ!いいぞ!!魔法の腕もあり、近接でも私の死角に入り込む技術。更に聖魔法を使えるときた。ここで貴様を吸収すれば、向かうところ敵なしだ!】
鎧は笑いながら歓喜する。攻めあぐねているはずなのにどうしてこんなにも余裕なのだろうか。
【…そろそろ剣が振りにくいな】
急に冷静になったかと思った瞬間。切ったはずの左腕が生えてきた。
【これで先程より力を出せる!】
さっきまでのがお遊びだったかと思うスピードで再び剣を振るってきた。
「っつ!」
咄嗟に糸を盾にして防いだが、僕の身体は耐えきれなかったのだろう、森の方に弾き飛ばされた。
「がっぁ!!」
樹の幹に身体を強打する。一気に肺の中の空気がなくなり呼吸が乱れる。もっと鍛えておけばよかった。
一度整えないと!僕は気配を消して潜めることにした。
「聖魔法は効果がある。それに相手の手札は剣と火魔法だ。おそらく依り代が、火魔法を覚えていたのだろう。」
状況を整理して次の手を考える。
【潜んだか?あいにく気配察知には優れていないな。……そうだ。ここはこいつを試してみるかな。】
鎧は天を仰ぐと
【ワォーーーーン!!】
ウルフの様な遠吠えを発した。
「遠吠え?どうして鎧が……まさか!」
そうだとしたら絶対に僕は負けるわけにはいかない。
あの鎧吸収した存在のスキルを使ってやがる!
遠吠えが響き渡ってから数分で
鎧の周りには多くウルフが集まっていた。
【こんなに潜んでおるとはな。さて、良質な餌との鬼ごっこといこうではないか。】
そういってウルフを撫でる鎧
【だか、我の部下というのにただのウルフでは物足りないか?であるなら少し調整しよう】
鎧は身体中から赤黒い煙を出しウルフ達に浴びせる。
ウルフ達も煙に最初は警戒していたが、自分たちの強化につながると気が付いたらすぐに受け入れた。
体毛は茶色だったのが黒くなり、血管が浮き出ているかの様に赤い線が身体中に走っている。
【我に相応しくなったな。では、餌をとってこい。】
変質したウルフ達は、ハクト目掛けて森の中へ駆けていった。
とりあえず、呼吸も回復したし作戦も考えた。
後は再び挑んでこちらのペースに持っていくだけだ。
そう思いながら森を進む。
ふと感じる。先程の鎧が出す殺気の様だが、気配が多く個々の殺気が薄い。
「まさかさっきの遠吠で……」
嫌な想像をしていると、横の茂みから
『クガアァァ!!』
予想通りウルフが飛び出してきた。
「やっぱりな!」
あらかじめ魔方陣を作っておいたフレイムソードで、切り裂く
はずだった
切り裂けないだと!?
ウルフはフレイムソードに絡み付いてくる
というかこいつ見た目が全く違う!まるであの鎧みたいだ。
まさか?黄龍眼でウルフを解析する。
やっぱり眷属化してやがる!
あいつはウルフのスキルを奪っていてそれを使って集めたウルフ達を眷属にしやがったな。
けど所詮はウルフだ。
フレイムソードを解除して、糸で首をかっ切る。
地道だが全部処理しないとな!
20頭くらいだろうか?
あたりには首と体が切り離されたウルフ達が寝そべっている。
魔素が薄い地域でよかったな。
身体も動くようになったし再戦だ!
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