貴族との開口
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新しい子はちょくちょく出てくる予定です
「おい!!そこの混じり物!!」
後ろの方から詰るような声が聞こえてきた。俺以外にハーフはいたのか。
可哀想に変な貴族かなんかしらない馬の骨に絡まれてしまったのだろう。
「おい!!無視するとは何事だ!!」
無視するとかよほど腕に自信があるのだな。入学した後に見つけたら一度手合わせを願いたいものだ。さて、受験会場に入って精神集中でもしようかな。
「貴様――!!そこの金髪だ!この私をコケにしてただで済むと思うな!!」
金髪か…俺と一緒じゃないか、気が変わった。ここは同じハーフ同士助け船でも出してやろうじゃないか。
一目見ようと振り向いたら、大きく道が空いており、遠目でもこちらに対して指を指している一人の少年がおり、後ろに従者にように控えている2人の三人組がいた
「やっとこっちを向いたな混じり物!」
……あれ…俺だった?
「混じり物の分際で、この私を無視するとは嘗めた真似を…。ふん、まぁいい。
おい貴様。お前のような混じり物がこの格式高い第1学院にはふさわしくない。むしろお前みたいな混じり物が入学したとなれば第1学院の品位が下がるってもんだ。さっさと辞退しろ。そうだ!せっかくだし奴隷として遊んでやろう。」
まくしたてるようにけなし、挙句の果てには俺を奴隷にするといってきた。
俺が呆れて固まっていると、
「おいどうした混じり物。俺がお前を買ってやると言っているのだ。喜ばしいことだろ?」
貴族らしき俗物に買われることがハーフとしての幸せだと?
無理難題を突き付けられているような気がするな…。差別撤廃は嘘だったのか?
そう思って周辺の気配を確認すると。
身なりの良い受験者達の一部からは目の前の俗物と同じような視線を感じる。
平民の様なものからはこの騒動に関わりたくないという空気が見て取れる。
どうやら、差別はまだまだありそうだ。
この騒動をどう対処しようか考えていると、取り巻きが
「おい。貴様、せっかくシガト男爵家長兄のケイト様が飼ってくださるといっているのだぞ。」
「誰だ?知らんそんなもの?」
あっ…つい思ったことが
「き・・・貴様!」
いらだつ雰囲気がひしひしと伝わるが、言ってしまったので仕方がない。
「そもそも、男爵家の息子がどうした?本人は何か武勲などを成し遂げているのか?偉いのは、国から認められているのは親の方だろう?貢献していないのであれば、只の平民と一緒だぞ?それを弁えているんだろ。ケイト?だっけ」
事実を突き付けるように告げる。
ケイトは図星だったのだろう。少したじろいでいる。だが、従者達は
「無礼だぞ!…これは少し躾ける必要がありそうですね…。」
よほど、主君を貶したのが癪に障ったのだろう。腰にぶら下げている剣に手をかけて
「利き腕は勘弁してやろう。せっかく奴隷になるというのだから少しは楽しめないといけないだろう?」
今にも抜剣しそうな雰囲気だ。勝手に絡んで正論を並べたら逆上するとは…
もう殺してもいいんじゃないか?あいにく視認しにくい糸でやってしまえばいいだろう。
証拠なんてないだろうし、疑われていても偽装で隠しているのでバレないだろうし。
よし、決まったなら実行あるのみだ。目立ちたくはないけど闇討ちとかされるなんて御免だからな。
糸を出して、従者たちを切断するため張り巡らせようとしたとき。
「やめっ「威勢がよいではないか若人たちよ」」
一瞬ケイトが止めようとしたが、被せる様に低く威厳のありそうな声が後ろからした。
声を聴いた瞬間、ケイトや従者、周囲の人々が姿勢を正した。
振り返ってみると、聞こえた声から想定できる風貌のおっさんがいた。
見た目はシンプルで貴族とは思えないが、雰囲気や佇まいで貴族と判る。
「貴族は種族で差別をしない。奴隷の開放を提唱している。なぜ貴族の長兄であるケイト君がそれを知らないのかね?」
不思議そうにおっさんが尋ねてくる。
「あっ…あの……その…」
ケイトはあからさまに動揺しているな。
「ふむ…いやケイト君が悪いわけではない。責任については法を浸透しきれなかった国と、君に教育ができていなかったケイト君の父上にある。私から後で伝えておくよ」
随分と下手にでるんだな
「…っ!!父上には…」
「ん?どうしたのかね?まさか君は奴隷解放を宣言していることを知った上で、国に秘密裏に奴隷を得ようとしたのかね?」
「い…いえ。そのようなことは…」
おっさんは安堵したかのように
「それはよかった。いくらお忍びだからといって、私の目の前で法を犯すような行いを見過ごしてはいけないからね。いらぬ血を流すわけにはいかないからね」
ケイトはうなだれて了承していた。
「ほら、従者の君たちもだ。剣を抜いて害のない国民を襲ったとなれば、処分されるのはどちらか明白だろう?」
睨みを効かせながら、従者を止める。
「「はっ!!」」
「よし。……そして君もだ」
ほう…。気が付いていたのか。
おっさんは笑いながら
「あいにく殺気には過敏でね。君が出した程度の殺気でも気づいてしまうのさ」
「わかりました…。」
糸を消して、これ以上争わないことを告げるように両手を挙げて降参のポーズをとる。
ケイトは驚きながらも
「おい!!貴様…この御仁を誰だと…」
おっさんは発言をとめながら
「いいんだ。この場では名乗っていないからね。私は息子の受験を見守りに来た、ただのお節介やきのおっさんだよ」
おっさんはさらに大きな声で、
「さぁ!みんなももうすぐ試験だろ?油を売ってないで試験会場に向かうといい」
おっさんは改めて俺を見て
「いらぬお節介だったかな?まぁ血が流れるよりはマシだと思ったからね」
俺は飄々と、
「どうでしょうか?サーディンマウスはノーブルキャットを噛むとも言いますしね」
おっさん豪快に笑い
「はっはっはっ!男爵家となれば武勲で成り上がりも多い。シガト家も同様武勲で成り上がったものだ。その従者を前にしてサーディンマウスとはな!将来有望だな」
ひとしきり笑った後、おっさんは用事が終わったらしく。
「さて、お節介は去るとしよう。願わくば君みたいな新しい風をもつ子が、息子の友となってくれればと思うよ」
終わったか…。奥から「陛下!何をしておられるのですか!?」等の声が聞かなかったことにしよう。
先程のことはなかったかのように俺は試験会場に向かった。
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