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告げる夜

閲覧ありがとうございます。

家に帰ってきてからは早かった。


家族で食事をして、スキルの話をして、日が沈んできたので就寝の準備だ。


平民の夜は短い。灯りを作る道具は限られているし、魔道具は高額だ。



それでも俺は父さんと母さんに伝えないといけない。



そう決意し、父さんと母さんの寝室に向かおうとすると、リビングから灯りが漏れていた。



こんな時間まで起きていたのだろうか?




扉の影から恐る恐る除いて見ていると…


「入っておいでハクト」


「!」


俺がいることがわかっていたかのように父さんが声をかけてくる。




俺は観念したように扉を開ける


「どうしてわかったの?」




父さんと母さんは可笑しかったのか、笑いながら


「聖堂から少し考え込んでいたと思ってね。息子のことは親だからわかるのさ。」


「そうね~けどもっと前から悩んでいる気もしたわね。一年くらい前かしら?」


当然のように語る二人に驚きながらも、顔に出てしまっていたのかと思うと恥ずかしいな




俺は意を決して、

「実は相談したいことが・・・・」




俺は今回の聖堂で見えたスキルのこと。これからのことを語った




「・・・ってなわけで、俺は王都で学んでから世界を旅する冒険者になりたいと思っている」




父さんと母さんは合いの手を入れることなく聞いていた


おもむろに父さんは

「そうか…それで悩んでいたのか。」


すると母さんは机をたたきながら

「私は反対よ!外は危険しかないわ!」


やや過保護な気もするが、しかたがない。母さんの兄が昔冒険者をしていて不慮の事故で無くなっているらしい。それ以降、身内に対し過保護な部分がある。

普段おっとりしている母さんだが、身内のこととなると少しだけ激情家になる。




危険について力説する母さんをよそに父さんは考えながら


「最近になって畑仕事以外にも、勉強や訓練をしていたのはそのためだったのだな。


当然だが、私たちは子供の意見を尊重したい。旅にでるのもよし、農家として村に残るのもよしだ。」


俺の意見を尊重してくれる父さんに対し母さんは


「それでも反対よ!ハクトを兄さんみたいに失いたくないのよ。」


まくしたてるように声を荒げる母さんに対し、冷静に父さんは


「子供は親の所有物ではない。立って歩き前を見て夢を持ったなら、後ろから手を添えてやるだけでいいんだよ。ハクトはもう自分で立っているのだから。」


「でもっ…!…そうね。もうハクトは一人で歩けるものね…」




渋々だが納得してくれた母さんは改まって、


「た・だ・し!条件があります。」


といってきた。俺も父さんも不思議そうに続きを待っている。




「私たちより先に逝かないことよ。それだけは守りなさい」

と言い放った。




「……わかりました。必ず母さんや父さんより一日でも長く生きます。」


俺がそう答えると、


「よろしい!」


と母さんは胸を張って応えた。




父さんは母さんの姿が微笑ましかったのか、微笑いながらそして申し訳なさそうに眉尻を下げて


「村の外に出るというのは問題ないが…間違いなく忌諱な目を向けられる」


神妙そうに父さんは言う。心なしか母さんも困っている。


心当たりがある。勉強中に知ったことだがこの世界には疎まれる種族がある。






混じりし者といわれる存在だ。

簡単に言えば異なる種族の間に生まれた存在だ。




俺は人族とエルフのハーフだ。父さんが人族。母さんがエルフになる。ただし、森の住人といわれ長寿のハイエルフではなく、寿命が人族と同等だが、見た目だけが成人後変化しないアースエルフといわれる種族らしい。




それでもハーフはハーフ。


少し長い耳を持ち、母さん譲りの蒼眼。父さん譲りの金髪を持つ。


周りと比較するとあべこべだ。




両親の心配をよそに


「大丈夫だよ。俺は父さんから輝かしい髪と母さんからは澄みきった眼をもらっている。


周りがなんと言っても俺は二人から受け継いだものを誇りに思っています。」


これは本心だ。忌み嫌われる可能性のある中、それ以上の愛情をもって育ててくれたことに感謝している。


「「ハクト…」」


父さんと母さんはうれしいそうにつぶやくが、再び顔が曇った。




「そんな風に思ってくれてうれしいよ。だが、もう一つ問題がある」


改まったように、そして申し訳なさそうに、父さんは言う。

「…家にはハクトを王都で試験を受けさせる金がない」








そういえばそうだった。


家は辺境の平民だ。王都まではかなり距離があるし、貴族でもなんでもない。



盲点だった・・・・・・なんてことはない。




「安心してください。王都の学院での試験は、平民は無償で受けられます。現国王の側近の一人に平民出身がいるそうです。それもあって、平民で才能を持った人材を囲い込むため、


平民は無償で試験を受けられるそうです。爵位を持つ子供のみ有償だそうです。」


これは、聖堂の神官から聞いた話だ。




「それに移動については、月一で来る行商人に既に頼み込んでいます。移動中に無償で働く代わりに王都まで連れて行ってほしいと」


移動の足についてはかなり前から、行商人とコンタクトを取って頼み込んでいた。


移動中、最低限の衣食住を補う代わりに行商に協力するという約束でだ。




「そこまで進めていたのか…」

父さんは感心しながらつぶやく。


「私たちが許可しなくても勝手に行ったんじゃあないでしょうね」


ジト目で母さんが睨んでくる。そ…そんなことはないよ。




ジト目の母さんが怖いので、話題を変えるべく。


「とにかく、王都まで行く手段はできましたので、俺は行きたいと思います。」

俺はそう宣言すると。後ろ扉から、




「さみしくなるね。」


眠そうな兄さんがやってきた。兄さんは母さんの髪に父さんの眼の色を受け継いだ容姿をしている。


顔も整っており、ハーフでなければ引く手数多だろう。


「最近色々やっているなぁ~って思ったけど、これが理由だったんだね。」


納得したかの様につぶやく。ちなみに兄さんのスキルは「農業B」「豊作B」と農家になるために生まれた様なものだ。顔とスキルが全く一致していない…。




「起きていたの兄さん?」


この家族はなんて勘が鋭いのだろうと思っていたが、


「そんなことないよ。母さんがあれだけ大きな声を出していれば起きちゃうよ」


明らかに眠そうに言う。




「あら?ごめんなさいね。」

母さんはあまり悪いとは思っていない様だ。




ため息をつきながら兄さんは


「はぁ~まぁいいや。とりあえずハクトは自分の夢を追いなよ。僕は幸い農業も好きだし、跡を継ぐつもりでいるから家のことは気にしなくていいよ。」


そういって俺の頭をなでてくれる。




場を〆るかのように父さんは

「話はまとまったな。ならハクト、自由に生きなさい。ところで、次の行商はいつだったかな?」




前回行商人に確認したときは

「確か…明後日の朝に到着予定だったと思います。」




父さんは驚きながらも心配そうに


「かなり急だな…幸い家にはあまり荷物がないから明日までには準備は終わるだろう。もう準備はできているのか?」




「問題ないよ。準備はできているよ。」


あいにく荷物は少なく、着替えくらいだ。食事の方は行商の方で準備があるそうであやかろう。




話を進めていると、不意に母さんが、


「明後日!!もう時間がないじゃない。こうなったら今日はお母さんと寝なさい!ほら行くわよ」


細い腕のどこに力があるのだろうか。俺は引っ張られながら寝室へ連れていかれた。




その日は前世の知識もあってか、おっぱいが脳裏に浮かんで寝不足だった。






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