聖域からの使者 その1
いつもながら、遅くなり申し訳ございません。
ガンナムル城塞での戦いが終わって数日の間に様々な事が起こった。
ゲーム的な戦後処理は全てがオートで結果だけ反映される。しかし、今回もそうもいかない事情があった。と、いうか一度やった事は今後も同様に事後処理に追われることは間違い無かった。
NPCである人夫人足、傭兵に至るまで紙での契約書を作り契約書ベースで報酬支払いなど実際に必要な業務を自身で行うのにも随分慣れてきたところだった。
「ゲームってレベルじゃないな……」
しかし、思わず独り言ちてしまうレベルだ。暇を持て余していた名斬が手伝ってくれなければ下手をすると戦争をするより時間を取られる可能性もあった。
「毎度思うで御座るが仲介業者と職安の情報がなければ詰んでたで御座るな」
「確かにね。ってかまさに中間管理職の気分だよ」
「異世界転生して中間管理職に――って感じで御座るな」
「勘弁……って言いたいけど、まさに! だな。ゲームシステム上の処理ってのはマジで凄い」
今回、NPCである職安というか国の特殊機関所属の人間から紹介された仲介業者が居てくれるおかげで契約関連はある程度一元化されているので処理する書類量は大分少ない筈だ。
「それにしても、国の中枢に関わる傭兵団が幾つか増えている様子で御座るが、ネット上では殆ど情報が無いで御座るな」
「それは当然だと思う。安易に情報出したら混乱する場合もあるし、何よりも運営に修正されかねない」
「運営は把握してるのは当然だと思うで御座るが」
名斬はそう言いつつ、テーブルに置いてある湯呑を手に取りお茶を啜る。彼の言うとおりGM達も把握はしているだろう。しかし、関わっているプレイヤー達も大概キレ者が多いせいもあるだろう。情報統制がよく出来てる。
「そういえば、リンダーツで科学技術系に手を出している奴らがいるらしい」
「ああ、拙者もSNSで情報を見たで御座るよ。流石に爆薬や火炎瓶は不味くないで御座るか?」
「ある程度は想定内な気がしなくもないけどな……まぁ、銃火器に手を出すヤツがいるだろうな」
「……まぁ、αの実装テスト時に問題になったで御座るからなぁ」
「今の状態だと銃火器の実装は見送り確定だろうから、造られたら色々と問題になりそうだな」
現実である程度出来る技術は再現可能なのが、このワールドシミュレータのいいところだけど、ゲームという土台を考えるとバランス調整とかが必要だけど、そこら辺の処理において火器は問題が多い。
αテスト時にあった銃はマッチロック式で命中精度は低いけれど、ダメージはデカい仕様だった。ただし魔法や弓、その他の武器やスキルの仕様に比べてDPSは低いけれど、攻撃発生の速度が段違いで見てから躱すのは非常に困難だ。
まぁ、実際に実装されている武器であれば誰も自作しようなんて思考にはいき難かっただけで火薬を利用した罠や投擲武器は出回ってたんだよな。しかし、残念な事に魔法の方が威力が高い事が検証されたことから誰も使わなくなったという経緯がある。しかし、火薬は地雷など含めた様々な物に応用が効く……ダメージ的には燃焼効果が付くであろう火炎瓶の方が注意が必要だろうな。
「火炎瓶はまだ投擲武器だからよいで御座るが爆薬はマズくないで御座るか?」
「確かに……火薬の種類とかによるだろうけど、地雷とか戦場に置かれたら問題起きそうだな。ただ、火炎瓶は弓矢に使ったら結構マズイかもしれん」
「――確かにヤバそうで御座るな。と、いうか色々と悪用出来そうで御座るな。兎も角、リンダーツは随分と離れているで御座るから、戦場で相まみえる可能性は低いで御座ろう。それよりも我々が先に考えねばならぬのは拠点で御座るな」
「確かに」
名斬の言葉に俺は苦笑いする。拠点に関しては未だに報酬として貰えていない状況にあり、現在は仮拠点として街の中央に近いところにある一軒家を使わせて貰っている。
街中というのは便利ではあるけれど、防犯対策も出来ないし、何よりも手狭なのが問題だ。
「二階建て、そこそこ広い間取り。コレは普通の四人家族であれば驚きの広さと言える。しかし、傭兵団の拠点としては大問題だ」
「で御座るなぁ。物が多すぎると怒られておるで御座るが必要物資も多く致し方なしで御座るよなぁ」
本来、傭兵団の拠点とは所属国内のマップ上にある建築物で防衛拠点としても使用可能な場所を指す場合が殆どだ。しかし、小規模な傭兵団でも使用可能な拠点を提供する仕組みが仕様として存在している。
今回、我々が利用しているのもそういう仕様のひとつと考えられる。ただ、それに関する契約や書類などは仮想空間内の様式に合わせて手書きで書類作成をした。
「にしても、許可が下りるで御座るか?」
名斬はそう言って処理済みの書箱に書類の束を置いた。
「それなぁ。許可が下りればいい場所だとは思うんだけど、俺的にはもっと首都に近い場所の方がいいと思うんだけどな」
「それは確かで御座るな。防衛拠点という部分で考えると悪くない場所といえるで御座る」
彼女らが指定したのはウィンブレール国内でも戦闘大陸に近い場所にある湖にある城で、実際に使えるならば優秀な防衛拠点ではある。問題はあそこは色々と問題がある。そもそも城に入るための方法が無い。一応この国の歴史から言えば数百年放置されている場所で運用可能かどうかさえ分からない。
「一応、ウィンブレール内の歴史的な建物って話なんだよな。それに湖に掛かっていた橋も壊れていて渡れないらしいし、橋を掛け直して城の補修保全も考えると、たぶん物資なんかも大量に必要だろうから厳しいよなぁ」
「るーこ殿が言い出したで御座るよ。ちえるん殿も見に行って気に入ったと言ってたで御座るからなぁ」
そんな事を話していると呼び鈴がなり、仮拠点に誰かが訪れた。俺は小さく溜息を吐いて立ち上がり、訪問者を確認しに行く。
玄関の扉を開けると、そこにはエルフの少女? が一人。記憶が確かであれば彼女達の部下でララミーだったか――向こう側から連絡なしで使いの者が来るパターンというのは初めてだ。
「えっと、キミはララミーだったよね」
と、言いながら一応キャラクターネームを確認する。『聖域守備管理者ララミー』と記載されている。彼女は少し戸惑ったような表情をしながら俺の言葉を肯定する。
「で、聖域守備をしているハズのキミがラックラーの特に人通りの多い区域に来るなんて、珍しいにもほどがあるんじゃない?」
実は妖精女王が治める国の首都であるラックラーの中ではエルフという存在は殆ど見かけることは無い。それは殆どのエルフは聖域付近、もしくは妖精女王がいる聖域の神殿にいるからだ。
「本来は滅多に街に入ることはありませんが、どうしても直接呼んできて欲しいと頼まれましたので」
「まさかとは思うけど、ナツェーリアに?」
「ええ、我が君がお待ちなので……その、ちえるん様、るーこ様はいらっしゃいますでしょうか?」
ララミーは申し訳なさそうにそう言った。こちらも俺自身に用があると思っていたなかったので、別に申し訳なさそうにされても困る。普段ならば、呼び出されるのは俺としょこらんではあるけど……。
「申し訳ないな。今は二人とも不在なんだが――ちょっと待って貰えるかな」
一応、傭兵団のメンバーリストを確認してオンライン状態を確認する。
残念ながら、二人ともオンライン上にはいない。しょこらんも予定としてはゲーム内時間で今日は来ない予定だったハズだ。ここは手間だが一度ログアウトして
「仕方ありません、出直しましょうか?」
「いや、少しだけ時間を貰えるかな。連絡を……と、いうか名斬頼んでいいか?」
「畏まりで御座るよ」
と、言った瞬間、光の粒子となりその場から消える。プレイヤーとすれば見慣れた光景ではあるが、目の前のエルフ娘は少し驚いたような雰囲気でその姿を見ていた。
「分かってはいましたが、目の前で見ると驚きますね」
俺が思っていた事を察したのか、彼女は苦笑しつつそう言った。そして、小さな咳払いをひとつする。
「ひとまず、我が主から召喚状が出ています。書の方は後程お渡しします」
「召喚状……か」
「ええ、あなた方の場合は正式な手続きで呼び出す方がよいと仰っておられたので」
正式な手続き。と、彼女は言った。それは『この世界』いわゆるゲーム内に存在するウィンブレール共和国のトップである妖精女王ナツェーリア・リン・リーリアからの正式な招待ということだ。
中々に面白そうな展開だと思いつつ、名斬が戻って来るのを待つのであった。
ちえるん「休憩中にみゃーから声を掛けられたのですが……」
るーこ「名斬から連絡があったけど、ちえるんに通話入れたんだけど不在設定になってたみたいだから」
ちえるん「ああ……確かにそうですね」
るーこ「ちえるんは時間大丈夫?」
ちえるん「ええ、問題ありませんよ。予定より早めに終了しようとは思いますが……」
るーこ「おっけーおっけー。でも急な用ってなんだろうねぇ」
ちえるん「ですねぇ。サザーランドでタイムセールとか?」
るーこ「さすがにそれは無いんじゃない?」
ちえるん「ですよねぇ」
おなかすいたわ(*‘ω‘)(‘ω‘ *)わかります
どもども、もいもいさんでございます。
なかなかに眠気との戦いの日々ですが、
非常にゆっくりペースですが、ぼちぼち執筆しております。
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