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カフェ「サザーランド」

お待たせです!

 ファンタジー・クロニクル・ウォーには幾つかの「専門店」が存在する。


 初期選択出来る各国の首都にあるプレイヤー専門のカフェや寿司、洋食など、現実に存在する有名店の味を再現した料理やお菓子が楽しめる特殊サロンである。


 カフェ「サザーランド」は都内にある有名パティシエの店舗と提携して、提携店のパティシエが実際にネットダイブして調理提供を行っている。


「まさか、ゲーム内でお菓子作りをすることになるなんてね」

「自分もそうですよ。って、いうか見習いの奴らとか大変そうですなんで、ちょっと同情しちまいます」

先生パティシエも珍しい物好きで有名だし、即座に喰いついたそうよ。にしても、私が店長ってのもどうなの? いや、当然嬉しいんだけどさ」

「先輩、何言ってんです? 先生パティシエにもその腕は認められてたじゃないですか」


 確かにその通りではあるけど、私はまだ先生の元では働き始めて3年目なのだ。同店の先輩方と比べれば、私が……現実リアル世界では無いにしても、店を持つというのは違和感が半端ない。


「他にも有名店が何店舗か協力してるって考えると、先輩みたいな人が何人もいるってことですかねぇ」

「まぁ、それは分かんないけど……」


 知り合いの某有名ホテルで働いている料理人も違う国にある店を任されているという話を別のゲームで聞いた。


 私が納得できていないのは自身の腕前より、ネットダイブを利用したオンラインゲームのプレイ経験で選ばれているということが分かっているからだ。


「今時、ネットダイブの経験なんて殆どの人がしてると思うんだけど……どうなんだろうね?」

「確かにネットダイブ未経験の人なんて小さい子供くらいのもんでしょうねぇ。でも、オンラインゲームってなると色々と勝手が違うとか思ってるんじゃないんですかねぇ」

「正直、現実リアル仮想現実バーチャルかの違いしかないんだけどね……特にこのシステムって、ほとんどゲームって感じしないし」

「確かに、よくあるRPGの製作クラフト系の仕組みとは違いますよね。でも、スキルで作る料理とかは製作クラフトで調理過程なんて無かったですよ」

「それは知ってる。一応試してみたよ。ゲーム内で設定されてるアイテムを作るだけのスキルだったわ。まぁ、味は意外と美味しくて微妙な気持ちになったけど。勤務って形でゲーム内にログインしてるけど扱いはプレイヤーなのよね。バトルとかも出来るのには少し笑っちゃったわ」


 一応、勤務時間外にプレイしてレベル上げとかしているけれど、正直、ソロだと微妙なのよね。


「そういえば、ここの店に来る客ってαテストからのプレイヤーが殆どらしいですね」

「まぁ、それは仕方ない気もするわね。プレイして思ったけどチュートリアルなさ過ぎて、始めは凄く戸惑ったもの」

「プレイヤーズガイドとか読み進めてますけど、内容が膨大すぎて笑いますよ。読ませる気ないな。と、思ってます」


 彼はそう言って笑う。因みに私は序盤チラ見してその後は一度も開いていない。今時、あんな文字ばかりのドキュメントを読むなんて物好きは少ないだろう。


「そういえば、リアル時間で数日後にある課題ってどうするんすか?」


 彼の言葉に私はあまり思い出したくない件を思い出し、小さく息を吐いた。


「あの件かぁ。正直言って困ってるんだよね。店内の食材関連のデータって運営から用意されているものじゃない?」

「確かにそうっすよね。ゲーム内でも他の食材とか、ゲームにしかない食材なんて見た事も無いですよ」

「そうよね……このゲームに詳しそうな人に聞けないかな? って、さっきの君の話はそこに繋がるのか!?」

「いやぁ、察しのいい上司で良かったです」

「……何だかイラッとしたわ。ラグランジェ君」

「何ですか? ユーナ・ナナキリ先輩」


 私は戦場で彼に会ったら絶対にボコボコにしてやろうと心に誓いつつニコリと微笑んだ。部下として先生パティシエに付けられた私の監視役あり補佐役なんだけど、かなりのゲーマーで私もプレイしていたゲームでも上位クランのエースプレイヤーなのは知っている。


 っと、閑話休題だ。


 とりあえず、クローズβテストの中間地点であるタイミングでゲーム内で新作スィーツを作る課題が先生から出されている。しかも、現実には無いこのゲームだけに存在する素材を使ってという条件付きの課題だ。


「って、言っても問題が多いのよねぇ」

「まぁ、ですよねぇ」


 一部プレイヤー達の間では話題になっていた特殊サロンではあるのだが、大人数参加型の対戦ゲームなせいで、コミュニティツールとして街でのんびり。みたいなプレイヤーが少なく、店は常に閑古鳥が鳴いていた。


「何度か来ているアベックに聞いたらどうですか?」

「アベックって、いつの時代の言い回し……って、いうかフランス語だったわね」

「先輩もフランスで修行してたんでしょう?」

「まぁ、それはそうだけど、日本では英語でいうカップルの方が一般的でしょう」

「そーなんですけど、個人的にアベックって言う方が気に入ってるんですよ」

「まぁ、いいけど……で、キミが言ってるのは定期的に来るリア充プレイヤーね。何だか許せない感じよね。しかも、どっちも結構可愛いのがイラッとする」


 そんな話をしていると、ホールから客が入って来たと知らせが来る。


「リア充なの?」

「え?」


 私の怒気が篭った声にホール担当の子が怯えた眼差しを向ける。


「あ、ごめん。ちょっとイラッとしてただけよ。別にアナタが悪いわけじゃないから。強いて言うなら間が悪かっただけよ。で、注文は?」

「す、すいませんっ、これからですぅー!」


 と、涙目で彼女はホールへ戻って行った。


「何だか私が苛めたみたいじゃない?」

「大きくは間違ってないと思いますけどね?」

「マジで?」

「大マジですよ」


 後輩であり、私の監視役のプレイヤーネーム、ラグランジェ君はいつもの気怠そうな表情に悪戯っぽい雰囲気を漂わせてそう言った。なんだか、とてもショックである。


 まぁ、よく人にあたりが強いだとか、勘違いされやすい性格だよね。と、言われることがある。私の容姿にも問題があるのは知っている。目つきが悪いとか、先輩達にも言われることがある。


 私的にはそこまで……キツイと思っていないのだけど、他の人達がそう思うということはそういう部分なのだろう。


 そんな事を考えていると、オーダーを取りに行った娘が戻って来る。


「プリンアラモード2、白桃のケーキ、ザッハトルテお願いします」

「はいはい、ありがとね。ラグランジェ君、オーダーよろしく。私はちょっとホールの様子を見てくるから」

「え? ま、まぁ、いいですけど……」


 私は彼の返事を聞くより早く動き出す。


 特にホールに出る必要は無いのだけど、ハッキリ言って暇だったのだ。わざわざ私がパフェとケーキの盛り付けをする必要もない。正直なところ、彼がやる必要も無い作業だ。私達は朝早くに規定分は既にお菓子達を作ったし、追加で作る必要性がないのも分かっているのだ。


 ホールに出ると一組の客が4人掛けの席に座っていた。当然、他の客はいない。


 二人ともプレイヤーレベルは私より上のレベル32だ。レベルって20後半から上がりにくくなってる仕様って、結構な回数戦場に出ないとダメなんだよね。あと、傭兵団【鋳薔薇の森】の所属か……私はまだ傭兵団には所属してないのよね。まぁ、仕事でもあるからプレイするにしても時間的拘束はキツイしね。


 プレイヤーの情報確認はプレイヤーネームとレベル、傭兵団の所属と職業は確認出来る。ひとりはモンク、ひとりは……料理人? 基本的にゲーム内の職業というのはスキル的な面が大きくて、この職業だから強いとかいうのはあまり無いハズだから、無くはない。攻撃手段にしても基本的には武器種によるスキル取得とステータスの割り振りが基本だ。


 だけど、料理人を選択してるって……どういうことなのだろうか?


「あ、あの。突然すいませんが、少しいいですか?」


 私は思わず話しかけてしまった。一体、何をしているのだろうかと、自身で思いつつ。


「どうされました? このお店の方……ですよね?」


 彼女は黒髪の美人で年は十代なのは確か……いや、意外と若くみえるだけ、ということもありうる。


「え、ええ……私、この店の店長を任されているユーナ・ナナキリといいます」

「そのユーナさんがどうされたのでしょうか?」

「えっと、あー、なんでしたっけ? っと、思い出しましたよ。そうそう、職業が料理人となっていたので気になって思わず声を掛けてしまいました」


 私がそう言うと、彼女はとても不思議そうな表情を浮かべる。それと同時に向かい側に座っていた銀髪の女性が訝し気な表情……と、いうか異常な殺気を放っている。ってか、怖いんですけど!?


「見たところ、貴女も料理人のようですけど?」

「まぁ、私の場合は強制といいますか……契約上必要な取得でして」

「ってか、オンライン上でちゃんと作ってたのね」


 と、異常な殺気を放っていた女性が会話に割って入って来る。機嫌が悪そうなので……退散した方がいいかもしれない。


「え、えっと、そうなんです。一応、仮想現実ヴァーチャルベースで一定量をキチンと手作業で作っているので、デジタルベースで作られているモノとは違うんですよ……技術的な事はよくわかりませんけど」


 よくよく考えると、基本的にゲーム内のデジタルデータで作られている物というのはモデル製作とか、専門的なデータとして作られている物だと思うのだが、素材や作る過程など現実世界と同じ工程を得て、最終的な形としている。考えれば考えるほど不思議なゲームだと私は思う。


「あの……製作クラフトスキルって使ったことがないのですが、違いがあるんですか?」


 黒髪の美少女は不思議そうな顔をしてそう言った。


「ちえるん、使ったことなかったの?」

「はい、よく分からなかったので……それに捌く時も調理する時も自分でするものだと思っていました。ただ、料理人の職業スキルを使っていると現実との乖離が怖そうです」


 彼女のいうことはよくわかる。料理人のスキルは調理時の行動補正や切れ味の補正など多岐に渡るけれど、現実リアルより時間短縮されたりと感覚のズレが生まれる。そういう部分の補正は非常にゲームらしいと私は感心したものだ。


 それにしても、普通のプレイヤーは捌いたりとかしないと……と、いうか何を捌く???


「あのー、捌いたりとかするようなモノありました?」

「はい?」


 なんだか、不思議そうな顔をされてしまった。


「ちえるんは普通とはちょっと違うから、と、いうか普通のプレイヤーは狩り獲った魔物を捌いたりはしないからね?」

「何度も言われているので、分かってます」

「ちょ、ちょっとたんま! 魔物って捌けるってどういうこと!?」


 私の言葉に黒髪の美少女は不思議そうな顔をして首を傾げた。


「狩った獲物を捌けますよ。木の実や果実なんかも採集して調理すれば普通に使えますし」


 衝撃の事実判明。彼女はごく当たり前のようにそう言った。これは課題に出されていた内容をクリアすることも出来るのではないだろうか。


 ただ、序盤に魔物狩りとかクエストとかで採集とかもしていたけど、素材アイテムとして取得していたので……なにか操作的な部分が違う?


「ユーナさんだっけ、もしかして採集クエの時、素材獲得のコマンド使った?」

「ゲームなら普通では――」

「るーこさん、なんですか? 素材獲得のコマンドって?」


 私の言葉を食い気味に黒髪の美少女はそう言った。それに私は思わず「へ?」と素っ頓狂な声を上げてしまう。


「うん、まぁ……ちえるんはそう言うと思った。採集の場合は素材獲得コマンドってのがあるんだけど、正直これは面倒くさがり屋用の操作って感じで特定のクエスト時とかに使えるようになる操作なんだけど、例えば薬草とかも自分でキチンと手で取れば同様に獲得出来るんだけど、素材獲得コマンドを使ったら、イチイチ調べたり確認しなくても、その素材がある場所で使ったら獲得出来るってヤツ」

「似通った薬草を間違って採集する可能性が無くなるんですか?」

「そうなんだけどね。コマンドでの取得をすると必然的に品質が下がる。ちゃんと調べて目で見て手で採集すると見た目の品質になるってメリットがあるのよ」

「では、ちゃんと手で刈り取った方が良いということですね」

「まぁね。素材によっては最適な道具を使って自力で採集するのが一番良いって仕組みね」

「って、そんな事はどこにも書いてなかったですよね?」


 私がそう言うと銀髪の女性は「そうだったっけ?」と、どこか悪戯っぽい表情を浮かべる。


「っと、私達が注文した品が来たみたい。とりあえず、ユーナさんは邪魔だから奥に引っ込んでおいてくれないかな?」

「ちょ、ちょっと待って。そ、そうだ、隣座らせて! 邪魔かもしれないけど、もう少しだけ話を聞かせて!」

「るーこさん、良いのでは……ないですか?」

「んー、どうかな。細かい説明は実際に見せた方が早そうな気がするから、こっち時間で明日とかに時間作って貰って拠点に来てもらった方が早いんじゃない?」

「……そうですね。るーこさんがそう言うなら、その方が良いでしょうね」

「ってなわけで、明日でいい?」

「え、あ……んー、こっち時間ですよね」


 このゲームは現実リアル時間30分がゲーム内時間の1日ではあるけれど、仕込みなどは現実リアルでの勤務時間ベースで考えられていて、8時間勤務となっている……実際は残業とかも含むと10時間くらいは働いているけど。


 ゲーム内でも8時間勤務みたいな動きをしているので、なんとも言えないけど……現実リアルより短い時間で大量にケーキやお菓子が作れ、午前中にある程度の予定数を作り、それ以降は店内で待機か人員がいれば自由行動である。


 さて、ゲーム内で明日と言えば、既に数日分の在庫を作っている。しかも、現実リアルと大きく違う点として、ゲーム内倉庫に入れると、時間や状態が保存されるので、生クリームをたっぷりと使っている商品であっても品質は落ちない。売れなかった在庫はそのまま残るので、現状の閑古鳥状態で実はかなりの不良在庫を抱えている状態を考えると――


「分かったわ。明日ね……何時くらいにどこに行けばいいの?」

「朝の準備の後が良いと思うので8時くらいでどうでしょうか?」

「8時? 早くない?」


 そう言ったのは銀髪の女性だ。


「ちょうど朝食時ですから、悪くはないと思いますよ。るーこさんは私が責任もって起こしましょう」

「えー、それは……うーん、いや、いいのか? 悪いのか?」

「と、いうわけでラックラー郊外……えっと、南西側です。そこに聖域ヴィンの森と呼ばれる地域がありますので、そこにある屋敷に来てもらえますか?」

「うーん、まぁ、なんとかなる……と、思う。とりあえず、フレ登録お願いしてもいい?」


 そう言って、私は目の前にいる二人にフレンド申請を送って、邪魔をした事を謝って私はその場を離れた。

るーこ「やっぱプリンアラモード最高!」

ちえるん「ザッハトルテも濃厚で素晴らしいです。お土産で貰ったあの店と本当に同じ味で驚きですね……」

るーこ「何度目かしら?」

ちえるん「何度食べても言ってしまいそうです」

るーこ「白桃のケーキもいい感じだわ」

ちえるん「私にもください」

るーこ「はい、あーん♪」

ちえるん「…………あ、あーん」


かわいい(*‘ω‘ )(‘ω‘ *)意地悪ですね……もう、まったく





どうも、もいもいさんですよー。

話があっちいったり、こっちいったり……

自身でもこんがらがって、こんがらがって~


ってな感じで複雑怪奇になりつつも、

色々な動きが色んなところで動いているのです。


引き続き応援宜しくお願い致します!


評価などなどして貰って、もいもいさんのテンションを上げて貰えると非常に助かります!!!

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