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古き森の神殿にて

お待たせしました。

 ウィンブレール共和国の聖域と呼ばれる、首都からほど近い森の中に古くからある神殿――人々はラーラル・ルーラと呼ぶ神殿がある。


 神殿は蔦に覆われ、巨大な木が突き出ており森と一体化しているように見える。しかし、神殿の中は非常に整った作りになっており、外界と神殿内ではまるで別の空間かと錯覚を覚えてしまうくらいに差があった。


 神殿内は複数のフロアが存在しており、その最上階で最奥に位置する場所に彼女は住んでいた。


「また、あの男の召喚に応えたのですか?」


 その声に彼女は口を尖らせる。またその表情も魅力的である。


「良いではないですか。それに向こうは気まぐれの皇帝陛下が来ていたのですよ?」


 歌のように紡がれる声はどのような汚い言葉であったとしても、魅力的に感じてしまうだろう。解せないのは彼が召喚されていた事よりも、我が国に存在する()()()の召喚に応えたことだ。


「何だかエミリアは納得していないようですね」

「当たり前ではありませんか。『外なる者』の中でも()()()の呼び出しには確実に応えるではありませんか……」

「あら? そういう貴女だって()()()の呼び出しではキチンと仕事をして戻ってくるでは無いですか?」


 彼らの行う英雄召喚において、【管理者】からは可能な限り応えて欲しいと言われてはいるが、応えなくとも問題にはしないという、個々の英雄との取り決めが存在する。多くの英雄は場合によれば一日の間に数度も呼び出される事がある。


 姫様はとてもお忙しく、尊いお方なので日に何度も呼び出すなどという不尊な輩には躾が必要だ。敵であろうが味方であろうが関係ない、姫様を煩わせる者共は死ねばいい……と私は思っている。けれども姫様は()()()からの呼び出しの場合、私に言うのだ。『()()()からの呼び出しには応えねば』と、だから多くの場合は私が姫様の代わりに出向いてやるのだ。


 先日、呼び出された時も姫様が向かおうとしたのを私が無理に代わったのだ――それに、もし姫様が行ってしまわれたらお茶会の予定が台無しになってしまう可能性が高かった。私が即座に仕事を終わらせれば少し姫様を待たせるだけで済むのだから。


 そんな事を思いながら、私はお茶を一口含み喉を潤しつつ姫様に視線を向ける。


「別にいつも通りの仕事をしただけです。」


 私の返答に姫様は小さく微笑む。なんて可愛らしい人なのでしょう。


「あら? いつもであれば味方にも大きな被害を出している貴女が()()()からの召喚時だけ、味方の被害が少ないのはどういうことなのか? と、聞きたいのです」


 と、姫様は頬に手をあてて眩しいほどの笑みを浮かべる。


 は、はぁ~、なんと尊い……なんと尊い方なのだろう……この胸の奥から湧きいでる熱い何かが私の全身を駆け巡るようだ。


「き、き、き、気の所為でしゅっ!」


 思わず噛んでしまった。これは滝のように汗が噴き出る。マズい、ヤバイ! くそっ、()()()めっ! 次にあったら意味なく殺してやる!!!


 そう思いつつも、()()()は私の攻撃でも死ぬのか疑問を浮かべてしまう。いや、いくら『外なる者』であったとしても、彼は普通の&%$#~だ。英雄たる力を持つ私に敵うわけがない。


 そんな事を考えていると姫様が小さく声を出して笑うので私は眉を寄せて彼女を見た。


「フフッ、拗ねないで。少し意地悪を言いました。そういえば話は変わりますが、何やら下界で不思議な動きがあるようですね」

「ああ、その事ですか……」

「ええ、エミリアは把握しているのですか?」

「ま、まぁ……」


 私は言葉を濁した。


 本日、姫様に会う前に前触れもなく珍しい人物がフラリとやって来たことで私は知ったのである。我が国は戦闘大陸ヴェルハーサを中心とした位置でいえば最南端である。やって来た彼女は北西にあるライダーツ騎士団領に居を構える英雄であり、私の妹でもある。


 ただ、彼女は自由すぎるが故に姫様を裏切った裏切者で、彼女の事を姫様に言うのは色々と面倒が多い。


 そんな面倒事の塊である妹曰く――


『帝国に下っていたアーナンシア共和国が反旗を翻したっぽいよ。なんだか、とっても楽しい感じになりそうな予感がするのよね』


 本来、他国に干渉することは現状、禁忌として【管理者】から通達があったハズだ。ただ、幻想のエルフ・ライラには……たぶん、無理だろうな。あの子は意味が分からないレベルで自由なのだ。ライダーツ騎士団領には、もう一人英雄がいるがあの子は滅多に召喚にも応えないし、そもそも自身の拠点にいるとも限らない。


 今回、私のところへ突然やって来たのも、放浪中なのだろう。


「私は動く気はありませんが、どなたか様子を知らせてくれる方はいないかしら?」


 姫様は落ち着いた雰囲気でお茶の香りを楽しむように翡翠色の瞳を閉じてそう言った。


「私が……」

「それは問題が多いので、ダメです。ちょうど良い人物が今朝方貴女の家に来たのでしょう?」


 姫様は知っていますよ。と、言わんばかりにそう言う。考えなくとも当然の事である。姫様は神域、聖域――彼女が統べる領域の事を大まかに把握する事が出来る。我がウィンブレール共和国内の重要な土地の殆どが聖域と呼ばれる特別な結界領域であり、姫様の支配領域なのだ。


 『古き存在』と呼ばれるのはこのヴェルハーサを中心とした世界の中でも稀な存在である。


「当然、姫様は知っておられると……」

「はい。ですから、貴女は彼女を通じて今後起こる騒乱や新たな英雄の誕生を追ってください。隣国でも妙な気配と動きがあります。そこに関しては()()()……いえ、他の『外なる者』に頼ることにしましょう」

『私も混ぜて貰えると助かるんだが――』


 と、抑揚の薄い声が聴こえたかと思うと姫様の隣の席に歪んだ空間が生み出され、それが人の形へと変化する。現れた女性はまるで心の籠っていない人形のような印象を人に与える。その姿は『外なる者』と非常に良く似ているが、似て非なる存在――


「あら、お久しぶりですね。貴女の場合は全てを把握していらっしゃるのかと思っていましたが?」

「残念ながら4割7分というところだよ。本来は全てを掌握した方が世界の安定性はあがるんだけどね。そうすると意味が無くなる。我々は基本的なルールと道を示すだけで、キミたち世界の住人が決めていくものなのさ……ただ、本来は7割把握を目指していたハズなんだけど、ここ最近、急激に色々なところで妙な動きがあるせいで、予測は出来ていても実際にどういうことが起こっているか把握しかねているのさ」

「それでよく【管理者】と名乗っているな……」


 私は思わず呟いてしまう。不味いとは思ったが、【管理者】は特に表情を変えずに「やりたくなくても、やらねばならないのだから仕方ない」と、抑揚なく言い、姫様に「私の茶はないのだろうか?」なとどトンデモ発言をした。


「あら、そうですわね」


 と、姫様は小さく微笑み、彼女の為にティーカップをひとつ追加して、お茶を入れる。


「想定通りの味……言い方が悪いな。思っていた通り美味いお茶だ」

「お褒め頂き光栄ですわ」


 いつもの事だが【管理者】が現れると空気が重くなる。彼等、彼女等は基本的に『外なる者』と近い異質な存在だ。思考性や言葉、人物に至るところまで、どこかオカシイ。いや、我々のような英雄もこの世に住む者達からすると異質だ。しかし、その異質な存在から異質だと思われている存在である。


 神に等しい存在と彼等は名乗っている。姫様がどうお考えなのかは分かり兼ねるが、私は神とはそういった存在なのだと理解することにしている。


「【管理者】様、先ほどのお話ですが、貴女様も混ぜて欲しいというのは具体的にどういったことなのでしょうか?」


 姫様の言葉に【管理者】は首を傾げ、ポンッとワザとらしく手を叩く。それは何とも愛らしい動きである。くっ、【管理者】め……私と姫様の楽しい二人きりのお茶会を邪魔しおって!


「そうそう。先程、説明した通り。現状把握を詳細にしておきたい。他の【管理者】はそこまで干渉すべきでは無いという意見もあったが、少し気になることもあるから。出来れば『こちらの者』である程度()()を持った者からの正確な情報を欲している」

「態々【管理者】様がそこまで気になさるなんて、珍しい事もあるのですね」


 姫様は素敵な笑顔でそう言った。この素敵な笑顔は表面的にはとても素敵なのだが、非常にご機嫌斜めな時に出る笑みだ。


 『古き存在』たる姫様は様々な誓約を【管理者】と交わしていると聞いている。【管理者】は誓約の中で『内なる者』達の国や政治には介入しない。と、いうモノがある。


 予想の域を出ない話ではあるが、【管理者】の求める情報の収集というのはかなりグレーなのではないだろうか? 情報を欲することは間違っていないと姫様も考えているだろう。しかし、下手をすると本来介入することはしないという【管理者】が介入してくる可能性も考慮しなければならない。


「ナツェーリアの心配も分からなく無いが、残念ながら……最近起こっている不可思議な政変にキミ達のいう『外なる者』が関わっている可能性がある。故に我々が介入せざるを得ない場合もあると理解してもらえると助かる」

「…………そんな事が起こりえるのですか?」


 姫様は笑顔を崩さずにそう言ったが、随分と動揺が感じられます。


「まぁ、考えると起こりえる話だった。しかし、そんな面倒な事をする者がいるとは思っていたなかったのは我々の落ち度ともいえる。『外なる者』が介入可能な範囲というのが存在しているのだが……」

「まさかとは思いますが……」

「まぁ、現状可能性の話。ただ無いとは言わない。起こりうるとだけ言っておこう」

「その場合、どうされるのですか?」

「多少の干渉で済むならそれでいいかと思っている」

「干渉されることは確実なのですか?」

「断言は出来ないが、彼等がもしそうなったなら問題が多い」

「我々の存在を脅かす可能性もある?」

「なんとも言えないけど、世界のバランスが崩れる可能性もある……私としては、この世界のシステムを歪めるようなことは既に出来ないくらいの歴史を紡いでいるが、最悪の場合は時間を戻す」

「相変わらず簡単に言うのですね」

「【管理者】とはそういうモノだとも言ったと思う」

「そうですね。覚えています……」

「正直な言って時間を巻き戻すのは、根本解決にはならない」


 私は姫様達の会話をただ聞くことにした。色々とおかしな会話が展開されているのだ。それに姫様は察している事がありそうだが、私には到底分からない。


「時間を巻き戻したとして……解決にはならない?」

「ああ、これからさらに『外なる者』が増えてくる。それまでに解決策を模索したいと考えている……ナツェーリアの事は友人だと思っている。だから、最悪の場合はキミに不文律を冒して貰うかもしれない」

「友人だと思ってたのですか?」

「悪かったか?」


 姫様は普段見せないような訝し気な表情をしつつも、少しだけ嬉しそうな瞳を彼女へ向けた。なんだか、羨ましい……私にもそういう表情をしてくれませんか、姫様。


「昔、私に説教をしに来た貴女にそれを言われるとは……しかし、あの時に理解出来たのでは? 他でも起こりうることだと」

「それを言われると困るな。ともかく、私達【管理者】だけでは見えない情報がありそうなのだよ。協力を頼む」

「仕方ありません。貴女が私の事を友人だと言ってくれるのであれば、協力いたしましょう。エミリア、お願いしますね」

「畏まりました。我が君……」


 私はそう言って席を立ち、その場から移動しつつ妹へ意思伝達スキルを使うのであった――




 ◇ ◇ ◇




「さて、私もそろそろ……」

「あら? もう少し雑談でもして行ってくれません? どうせ、貴女にとって時間は大した問題ではないのでしょう?」

「……意外と意地悪な、キミは」

「そういう風に育てたのも貴女でしょうに……さ、お菓子もありますわ」


 そう言うと彼女は何もない空間からお菓子の皿を取り出す。


 NPCでありながら、プレイヤーと変わらない機能を持つ、この世界ゲームにおいて3人しかいない、プロタイプNPCであり最古の英雄……私の友人であり、娘のような存在である。


「サザーランドの焼き菓子。キミはアソコには入れないだろう……」


 そう言いながら、瞬時に脳内データベースからNPCは入れない店内に入ることが出来る存在で彼女と繋がりを持っている人物。


「いや、アイツ……ん、彼女か?」

「正解です。時折、あの方と一緒に持ってきてくれるのです」

「非常にグレーなアレだな……彼等は確信犯か?」

「貴女にバレても何も言われないと言ってました。それに実験なのですって……」

「確信犯か……と、いうか……」


 言っても無駄な事だと思い途中で止める。アイツは【管理者】権限を拒否した。『ゲームが楽しめない』という理由だ。


「それにしても、あの方の周囲は楽しそうですね」

「そうだな。ああ、これからもっと面白くなりそうだ。アイツの姉もそうだが、同列レベルでその従姉妹と組んで傭兵団を作っている」

「存じています。王都でも話題になってましたよ、解体姫だとかなんとか……」

「ああ、あの件か……狩った獲物を自身で解体するプレイヤーが現れるとはね」

「そういえば、リンダーツでは科学技術という物があるそうですよ」

「その件は把握している。そこは想定内だから、私は関与するつもりは無い」

「これもですか?」


 そう言って、彼女はインベントリから奇妙なモノを取り出す。


「ん? マジ?」

「マジですよ。先日、珍しいモノを持っていた商人から買い付けたものだそうです。残念ながら、まだ実用化には至ってないという話ですよ」

「データ周りとログを洗い直しが必要だな。ログ担当者は数日は徹夜だな……これは預かっていいかい?」

「ええ、使えない道具なので、お持ち頂いて問題ありません」

「助かるナツェーリア……申し訳ないけど、もう少しゆっくりしたかったけど、急いで戻らないと」

「ええ、それでは……また、お待ちしてます」


 彼女の笑顔を確認して【管理者】権限で転移する。やはり、色々と出来るようにしているシステムは予想外だらけだ……素直に戦闘大陸で戦争してればいいのに。と、思いつつ私は本部サーバーへ移動するのだった。

るーこ「なんだか、随分と放置されている気がするわ」

ちえるん「ですね」

るーこ「ま、いいけどさ……とりあえずサザーランド行ってプリンパフェでも食べない?」

ちえるん「!?」

ちえるん「(るーこさんとデート!? デートなのでは!?)」

るーこ「ダメだった?」

ちえるん「ダメなわけ、ありませんよ。さぁ、行きましょう! すぐ行きましょう!」


カレン「って、戦闘中なんだけど……」

みゃーるん「どうしたんです? なんだか、おねーちゃんが張り切って無双してるんですけどぉ」

カレン「まぁ、さっさと終わりそうだしいいんじゃない」


いいんですか?(*‘ω‘)(‘ω‘ *)いいのよ、ソレで




どうも、もいもいさんです。

先週中に投稿するつもりが、月曜日すぎてんじゃん!!!


申し訳ないと思いつつ、適当ペースで頑張ります!

皆様、応援よろしくお願いします!!!

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