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とある帝国士官の災難 その5

お久しぶりです。

忘れないでいて貰えると非常に助かります。

 私の名はジャン・シェリホフ――


 事の始まりはあの『ガンナムル城塞』での戦いだった。


 あの日、敵であるウィンブレール共和国所属の『外なる者』達に助けられた……彼らが我々を助けたのは偶然や気まぐれのようなモノだったのだろうと私は思っている。


 ガンナムル城塞は古くから難攻不落の城塞としてマイゾ王国が戦闘大陸の出入口として守ってきた大小の砦からなる重要防御拠点であった。


 ギルムレッド帝国の『外なる者』達が主導して数回のいくさにて多くの犠牲を払いながら手に入れた城塞であった。しかし、本国の上層部からはあまり重要拠点としては見られておらず、配属となった士官達もほとんどは左遷された人間が多かった。


 いくさ開始前に登場した『荒れ狂うモノ』によってガンナムル城塞は混乱を極め、配置されていた士官の多くが犠牲となったが、この混乱に乗じて多くの者達が城塞から離脱していた。


 まともに動ける士官は私くらいとなった段階で戦場となるガンナムル城塞から逃げることを選択したのだが、敵に見つかった。そうウィンブレール共和国所属の『外なる者』達だ。彼女らに助けられたおかげで今の私がある。


 それに、ガンナムル城塞に残っていた帝国兵の多くを伴い逃げることが出来たということを考えると神々の加護があったのか……本当に幸運だったと私は思っている。


 噂の真実は不明だが現在もウィンブレール共和国が占拠を続けているという……ガンナムル城塞には魔素を採取する場所が城内に無いために戦で魔素が尽きるまで使ってしまうと次の戦までに必死に採取をしたとしても、十分な魔素を準備することは出来ない為に連戦を繰り返すほどに守ることが難しくなる砦だ。


 帝国では我々『内なる者』が戦と戦の間に必死でかき集めていた。それでも数回の戦いの間に随分と目減りしていた。ハッキリ言えば戦う前から随分と不利な状況といえた。


 あの戦いの後、私はガンナムル城砦から逃げ数日かけて大森林を北上して戦闘大陸南部中央に『我が友』エイリッヒ・ヴァン・ホフマンが設置した野営地にて合流する事が出来た。


 しかし、そこで私は思いがけない報告を受ける。


「はぁ? 帝国内で内乱?」

「正確には違う。帝国から離脱した国が出たというだけだよ。親友」

「エイリッヒ、それを内乱と云わずしてなんというのだろうか?」


 私がそう言うと彼は飄々とした雰囲気で戯けてみせる。


「で、抜けたのは何処だい?」


 帝国は戦闘大陸の周辺国ではある意味で非常に歴史が浅い国である。元々のギルムレッド王国は最も西に存在する古い歴史を持つだけの潰れそうなくらいの小国であった。


 鉱物資源が豊富で巨大な魔鉱田が見つかった事から一気に盛り返していく。そして幾代に渡り戦争に強い王の登場によって周辺国取り込んでいき巨大な国へと変貌を遂げる。


 現在の冷血帝となってから、三つの国を合併し現在の帝国となったのは私が幼い頃の話だ。


 ギルムレッド帝国はアーナンシア共和国、レンゼシア王国、ハムルヘム王国の三国を合併する迄は戦闘大陸に面した領土を持っていなかった。強大な武力と経済力に臆した三国は数年の間に飲み込まれたのだ。


 冷血帝のその手腕は英雄と呼ばれるに相応しいほどの圧倒的な力だったそうだ。


 エイリッヒは小さく溜息を吐き、一度咳払いをしてから息を吐くように言った。


「我々の故郷だよ」


 我々の故郷、アーナンシア共和国は最後まで帝国に屈する事を拒絶していた国である。アーナンシア共和国は貴族はいるが、王がいない周辺では非常に珍しい国である。


 南方のウィンブレール共和国は共和制国家ではあるが、妖精女王がおりその下に議会が存在する国で我が祖国であるアーナンシアはそれとは全く違う。


「しかし、何故今なのだろうか?」

「それはなんとも言えないな。答えるだけの情報は持ち合わせていないよ。ただ祖国の理念を考えると帝国とは相容れないのは始めから分かってたハズなのにねぇ。故に我が親友である君なら想像でも答えを導き出せるかと思ったのだが……」

「なんと無茶を言う」


 私が苦笑するのを彼は楽しそうに見て悪戯な笑みを浮かべた。


 本当に意地が悪い男だ。


 共和国が帝国からの体制脱却をした一番の原因は共和国貴族の大規模な粛清だろう。しかも、共和国は元より軍が強くないのが伝統と言われるほど戦争という点においては負けの歴史だ。王政だった時もあるが戦争に強かった王が君臨していた時代は非常に少ない。


 しかしながら、軍部が弱くても戦争が起きなければ良いという方針で諜報と外交に関しては優秀だった。故に三枚舌や四枚舌などと揶揄される程だ。


 そんな共和国が帝国に下ったのは当時の共和国大総督ヴィッグス・ヴァン・ルバンヤスカヤの所為だと皆は言うだろう。


 共和国議会はルバンヤスカヤを止めることが出来ず、最終的に説得される訳だが彼の巧みな話術は誰もが騙される。彼は稀代の詐欺師だ。


 そんなルバンヤスカヤだが、アーナンシア共和国が帝国に合併早々、適当な罪状をでっち上げられて捕まり何処かへ連れて行かれた。まぁ言えば粛清されたワケだが帝国も危険な詐欺師を放置する事を嫌ったのだろう。


 しかし、粛清されたルバンヤスカヤがいたお陰で、他の貴族達が大人しくなったのも事実である。それから約二十年、貴族や力を持つ有識者はいつの間にか姿を消していたらしい。


 それらは地下へ潜伏したのか、それとも帝国に捕まったのかは不明だ。


 彼等が再び地上へ出てきた? それはどうなのだろうか……共和国議会議員貴族の多くは軟禁や粛清によって帝国からやってきた者達によって挿げ替えられたハズだ。


 帝国から離反したとしても帝国には巨大な軍事力がある。果たして対抗できるだろうか?


 いくら考えたとしても意味がよく分からない。


「確かめに行くしかないか?」

「まぁ、そうなるよなぁ……」


 今、我が隊にいる人間はアーナンシア共和国、レンゼシア王国、ハムルヘム王国の三国出身が多い。ガンナムル城塞付近に駐屯していた人間は帝国軍からすれば左遷先のひとつだ。さらに身分の低い者は最前線である戦闘大陸北側だ。


「軍の最前線は北のバルナント地方というのはマズくないだろうか?」


 私の言葉にエイリッヒは苦笑する。


「これはアーナンシアの連中は帝国に嵌められた……と、いうことか?」

「いや、これは何か根深い問題かもしれない。先月までの最前線は南方だったが『外なる者』達が来てから北方に戦線が移動し始めていた。元々我々の配置も北方予定が南方になった」

「それはキミが上官を模擬戦でボコったせいではないのかい?」

「それは関係ないと思いたいが……確かに北方戦線の崩し方のヒントは与えたかもしれない。しかし、アーナンシアの地下に潜んでいる者達が古い情報に踊らされている可能性は高い。ことを起こすように仕向けられていれば、簡単に挟撃出来るような配置を作り出すことなど帝国の上部に棲む化け物たちにはお手の物なのだろう」


 さて、私達が今更向かったとして、どうにかなる問題なのだろうか? このまま傍観者として帝国に戻った方が賢いのではないか?


「我が友ジャン。我々はどうすればよい?」

「正直言って、君の方が立場が上だろう? ホフマン伯爵」

「うーん、正直爵位なんて邪魔なだけなんだけどね。それに我が家はアーナンシアが王国時代にレンゼシアから嫁いできた王女付の従者が建てた家で古くからアーナンシアに地を下ろしていたバンゼル家やルバンスカヤ家とは随分と立ち位置が違う」

「そんな話をしたら、より私は関係なかろう? 私の家は代々商家だ。それも旅商人がアーナンシアの市民権を買った者の末裔だぞ?」

「まぁ、そうだよねー。ただ、軍を率いた君の能力は確かだ、それに政治に関しても君は多くの知識を持っている」

「だからと言って、現状は戦場から逃げてきた敗残兵にすぎん。それに今、隊にいる人間の多くは程度はあれ帝国軍人だ。帝国を簡単に裏切る分けにもいかないだろう?」


 そんな事を言っていると、ひとりの男がテントに入って来る。


「何やら物騒な話が聞こえたので来ましたが、何かあったのですかな?」


 やってきたゴツくむさ苦しい男はゴーバン・ヴァン・バルドルド。彼曰く没落した男爵家の男だ。アーナンシアの古い記録にあるレンゼシアとの戦争時に鋼鉄騎士団の『大熊殺し』という異名で活躍した男と同じ家名を持つ男だ。


「軍曹の故郷もアーナンシアか?」

「ええ、南部のド田舎ですがね」

「では、軍曹にも情報を共有しよう。どうやら我らが故郷は帝国に反旗を翻し帝国から離反したそうだ」

「なっ、……それは、マズいですな」

「そうなんだよ。軍曹……特に爵位を持つ人間からすると非常にマズい」


 エイリッヒは少しお道化た様に言ったが表情に比べてその瞳の色は笑いなどない。


「戦闘大陸の最前線バルナント地方に多くの軍が展開しているハズです。アーナンシア地方へ向けて動くのも容易な位置と考えれば……少し信じられないのでありますが」

「だよね。もし本当だとすれば帝国は現アーナンシアにいる有力者……もしくはアーナンシア人を滅ぼしたいということなのか?」


 どう考えても色々とおかしいのだ。アーナンシアの人間が帝国のやり方に異を唱えるのは当然と言えるが、圧倒的な力を持つ帝国に反旗を翻す意味が分からない。


「何かが起こっている。しかし、我々はそれを知らない」


 私がそう言うと二人はゆっくりと頷く。


「ひとつ、聞きたいのですがどこからの情報なのでしょうか?」


 軍曹の言葉にエイリッヒは周囲に視線を移してから小さな声で答える。


「これは黙っていたことなのだが、これを見て欲しい」


 と、エイリッヒは懐からひとつの魔導器を取り出した。黒曜石で作られたような小さな板で片方の面に幾つかの魔石が埋め込まれている不思議な板だ。


「遠い場所の誰かと念話をする為の魔導器だな。対となる板を持つ者と会話が出来るモノだな。帝国内でも持っている者は限られているハズだが、どこで手に入れた?」

「ヴィッグス・ヴァン・ルバンヤスカヤだ」


 エイリッヒの言葉に私は固まる。ここで大物の登場。正直言って何を言っているのか分からない……と、いうレベルの話である。


「突然の大物で何を言ったらいいか分からないよ」

「ですな……」

「まぁ、驚くよねぇ。俺も未だに半信半疑なんだ。そもそも、ことの始まりは今回の赴任が決まる前に親父から手渡されたんだ……そして、時期が来れば『とある人物』から連絡があるってね」


 そういってエイリッヒは板をちょんと小突く。その瞳はどこか死んだ魚のようでもある。


「そして、いきなりの知らせが祖国が帝国から独立をしたと?」

「ああ、先の戦いの前に俺がこの野営地を整えている時だった……ルバンスカヤとなのる爺さんかオッサンか分からないが、そいつが言うには俺の親父には随分と世話になったらしい。その恩を返す時が来たと」

「それはダメなパターンのヤツでは?」

「あー、親友殿もそう思う? 俺も思ってるんだよねー。でも、気になるだろ? 帝国と戦う? バカなの?」

「しかし、我々もこのまま帝国に戻れるのでしょうか?」


 そう言ったのはバルドルド軍曹だ。そこのところ、私も多少の不安がある。この状況下で我々が帝国に居場所があるか?


 帝国とは非常に苛烈で冷酷で残忍な皇帝に支配されている国で、その上層部の多くは皇帝に心酔している者が多いと聞く。軍の規律もそうだが、何かの罰は死に直結するほど酷い。


 特に祖国の出身者達が左遷や閑職に付けられる最たる理由が共和国は大らかで自由を愛する者達の国だからだ。王国最後の王であるクラウス四世は自由恋愛を推奨し本人も大恋愛の末に王妃を迎えたほどだ。そして様々な身分での権利を定めた法典を出し国のあり方を変え各領地の貴族を代表とした議会を設置し王制を廃し共和制の国とした。


 それから長い年月の間、貴族以外も議会へと進出する制度を設けさらなる発展を目指していたところの帝国への合併だった。当然、暴動などもあったが帝国軍によって排除され皇帝の恐怖政治に民衆たちは声を潜め辛く苦しいながらも生きてきた。


 我が家は元々旅商人の一族であったが故か、商人の図太さか、うまく立ち回れている方だった。豪商達と比べれば小さな商売でなんとか暮らしていたので貧乏ではあった。共和国の貴族階級だった者達はそうでは無い。


 エイリッヒのホフマン家にしてもそうだ。アーナンシアでは侯爵、伯爵、子爵、男爵、騎士爵と存在する。騎士は評議会騎士などの騎士団に所属するか、国が栄誉として与える爵位であり、その爵位を持つ者は特に騎士とは限らない。既に爵位や貴族という存在が形骸化していたので子爵や男爵の爵位持ちは家として没落しているところが多いので粛清対象にあった者達は少ない。


 侯爵家の殆どは粛清対象となり、領地没収の上、処刑された。伯爵家も多くがその対象となりエイリッヒの家は三代前から没落しており、政治的にも議会票を持っていなかった為、粛清対象から外されていた。


 複数回の粛清によって共和国内にあった182の貴族は名ばかり貴族だけになった。しかも、侯爵家は1家だけ、伯爵家だと6家のみで大きな屋敷を持つ者はいない。子爵家が10家程度……男爵や騎士においては爵位返上をして野に下った者が多くハッキリと所在が分かる者は少ない。


「君たちの家族は?」


 私の言葉にエイリッヒと軍曹が暗い顔となる。正直、私の家族は帝国内にはいない。大学に通っている間に父が病死し、そのころに妹が獣王国ライゼガングへ向かい、そこで出会った男と結婚をした為に母も獣王国へ向かった。私だけが帝国に残り配偶者もいないので、帝国と祖国を捨てたとしても失うモノはあまりない。


「両親や親戚もいる。それに妹はまだ成人もしていないんだ」


 エイリッヒの顔色は優れない。チャラけているが家族思いの男なのである。


「私も家族がおります……小さいながら古くからの土地もあります」

「君は土地持ちなのか?」

「ええ、ホフマン伯爵は領地持ちではないのですか?」

「ああ、我が家も没落貴族だからね。元々はエイセン州に領地を持っていて領票を持つ貴族だったが、商売に失敗してね。借金の形として売ってしまったのさ。だから、命を繋いだともいえるけどね……」


 多くの疑問と問題を抱えているが、現状の立場を考えれば動かなければ軍事法廷に立たねばならない可能性が高い、かといって祖国の反帝国勢力に付いたとしても帝国に対抗しうるだろうか?


 もちろん答えは否だ。


「どのような状況にしても情報が少なすぎる」


 私の言葉に彼等も同意する。


「先のいくさから付いてきた者達が我々と行動をどこまで共にしてくれるかも不明だ」

「確かに……我らが祖国の者達は理解を示してくれるでしょうが、レンゼシア王国、ハムルヘム王国の者達は分かりませんね」

「彼等の意思を確かめて、もし付いてくるようなら来てもらう。無理ならこの場で別れよう」

「人夫や非戦闘員はこちらで聞いて回ろう」

「では兵士は私が……」

「頼むよ。こちらは次の動きを考えるよ……」

「ああ、任せたよ我が友」


 そう言ってエイリッヒは立ち上がり、テントを出ていく。


「さて……どうしたモノか……」


 私は考える。自身が生き残る道を――

るーこ「ねぇ、ちえるん。暇じゃない?」

ちえるん「放置されすぎて、忘れられている気がします」

るーこ「ずばり、暇ってことよね」

ちえるん「そうともいいますね」

るーこ「ってなわけで、とりまカフェにでも行きましょー」

ちえるん「は、はいっ! よろこんでぇ!」


カレン「でぇ……って」

みゃーるん「すごい勢いでしたね」

カレン「ま、私達も行くわよ」

カレン「よろこんでぇー!」


ヤルワネ(*‘ω‘ )‘ω‘ )(‘ω‘ (‘ω‘ *)ヤルワネ



お久しぶりぶりざえもん!

もいもいさんです。


忙しいってのは言い訳にならないです、

頑張りが足らんと日々思う今日この頃。

次話もメインキャラ放置で話が進行予定です。


引き続き応援よろしゅーおねがいしまっ!

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