ガンムナル城塞攻防戦 その4
お待たせして申し訳ないです。
地下はどこまでも続く一本道で薄暗い、地下道といっても洞窟と言った方が表現的には正しいのではないかと思われます。
私ってば前回の戦場でも洞窟探検をしていた事を思い出し、普通の戦場に立つ日は来るのかと少し不安な気持ちになりましたが、口にすることはしませんでした。
クリオファス魔鉱田の時と比べて、この地下道は非常にカビ臭いというか妙な異臭がするというか。原因となるのは地下道に流れる小川ではないかと思われます。多分ですが古い時代に作られた下水でしょう。
古代でも上下水道が作られていた事例はあるワケだし、人の意思が随分と発展に関わっているとすれば、これも考えられる話ではないでしょうか?
そんな事を考えながら地下道を進む。私達の進む道に灯を点しているのはミソスープさんが何故か持ち込んでいたトーチの灯りです。
彼曰く、念のためにアイテムの中に常に幾つか灯りを点けるアイテムはあったほうがよいそうです。周囲から感心の声が上がったのは言うまでもありませんが、何故か彼はバツの悪そうな表情をしていました。
「言われ慣れてないから、どう反応すれば良いか分からないだけよ」
と、るーこさんはサラリと言った。因みにミソスープさんはそれを肯定しつつ小さく溜息を吐いた。
その後はほとんど会話も無く、皆周囲を警戒しつつ足速に進んだ。表示されているマップの方角を頼りに複雑に入り組んでいる地下道を通り、小一時間ほど進んだ時に先頭のみゃーがメイスを持った手を上げて、全員に止まるように合図を送ってくる。
声を出さずに止まったという事は何かの気配を感じたか、もしくは目視したかです。
後ろの方では誰かがぶつかったようで「あイタ」と間の抜けた声が聴こえます。それと同時に私は全員に壁に寄るように促し様子を伺うと、るーこさんがみゃーへ確認を取るために近づきます。
「なるほどね」
と、るーこさんが小声で言ってから私の側へ顔を近づけて来ます。うん、近いですね。ドキドキです。
「開けたところに出たみたいだけど、ちえるんならどうする?」
少し意地悪な質問ですが、答えは決まっています。
「とりあえず、出たとこ勝負でしょうね」
「ま、そうよね」
そう言ってるーこさんはカレンさん、ミソスープさんへ視線を送る。この辺りは付き合いの長い彼女達は察した事でしょう。
私は美耶へ視線を向けるとOKのサインを出してくるので、素早く動きます。
飛び出してすぐに武器を構えて警戒しつつ周囲を確認。
「クリア」
「クリア」
個々がそう言いながら周囲の安全確認を行い、問題が無さそうなので後方に控えていた人達を呼び全員で付近を確認します。意外と統制された部隊の動きっぽい雰囲気があって楽しいですね。
そんな事を考えながら周囲を観察します。
そこは地下道を抜けたところにある場所なのですが、天井は変わらず低く、下水が流れている溝が四方に伸びているくらいで用途不明な場所であることは確かです。
ただし、明かりのない地下空間とは違い、薄く蒼い色合いを持った空間となっています。前回クリオファス魔鉱田へ向かう時の洞窟と似ています。
「魔素の光っぽいですね」
「確かに魔素の光っぽいッスけど、魔素溜りにしては暗いッス。魔素壺使っても回収出来ないくらい微量ッスね」
そう言ってミソスープさんは魔素壺を使って魔素を収集しようとする。幾度か試してから「ダメッスね」と、呟き魔素壺を仕舞った。
私はその様子を見ながら再び周囲を見回してから、マップを広げて現在地を確認する。
ガンムナル城塞の東側、広く囲まれた城壁を超えて城内の東側に位置する場所に自身と味方のマーキングが表示されている。
魔尖塔の効果範囲が有効な事を考えると、まだ魔尖塔が倒されいないという事です。相手が別働隊に気が付いていないという事は考えにくいのですが、現状では別部隊を向けるほどの余裕は無いという事でしょうか?
兎も角です。
現在地を考えると、既にガンムナル城塞の敷地には入っている。と、言えるでしょう。
「城塞の近くまでは来てるみたいね」
「ですね」
るーこさんはどこか楽しげに言ってから、何かを考えるように首を傾げた。
「どうかしましたか?」
「んー、出入口があるってのは確実だけど、この地下道が迷路だったら嫌かな。って考えてた」
確かにこの広間へ来るまでは一本道でしたが、この場所から行ける方角は残念ながら複数あり、分岐点となりそうです。実際、聞いていた話では地下にある遺跡という話しでしたので迷路のように入り組んだ構造になっている可能性はあるでしょう。
クリオファス魔鉱田の時も非常に複雑な構造になっていた事を思い出しつつ面倒だな。と脳内だけで言葉にはあえて出さずにおきます。
「あ、でも、そこまで難しく考える必要は無いかもしれませんね」
私は地下空間のある点に気が付いてそう言う。すると、るーこさんを含め周囲の人達の視線が一斉に私へ集まる。
「とりあえず、どういうことか聞かせてもらえる?」
るーこさんが興味深そうな瞳で私にそう言った。そういう子供っぽいキラキラした目で見るのは反則です。と、思いつつ私は小さく咳払いをして指を指す。
「下水ですよ。キチンと流れている事を考えると機能しているのではないかと思うのです」
「なるほど、位置や方角的に流れてくる上流へ向かえば城へ着くかもってことね」
「はい」
「それにしても下水道がある遺跡って、なんだか不思議ッスね」
「あら、そんな事は無いわよ」
と、ミソスープさんの言葉に異を唱えたのはカレンさんです。
確かに中世、近世でも下水道が無い場所というのがあったくらいですから、遺跡にあるというのは不思議に思っても仕方ないと思います。因みに古代の遺跡でも下水道がある遺跡というのは多くあるので、それほど不思議では無いと思います。
「有名なところだと、ローマ水道ね。時代的には紀元前300年くらいから3世紀。古代インダス文明のモヘンジョ・ダロ遺跡にある下水道なんか紀元前2000年とかって言われてるわよ」
「へぇ、そうなんッスね。中世とかで糞尿垂れ流しで疫病が蔓延したヨーロッパの印象が強くて不勉強だったッス」
「ま、どーでもいいけどね。で、先に進む?」
と、カレンさんは微妙な表情をしつつ私に視線を向けそう言った。
何にしても、此処でゆっくりとしている場合では無いという事だけは確かであり、時間的猶予もクオンさんや他のプレイヤー達が時間を稼いでくれいている間に何とかしなければ数的劣勢でポイント負けという可能性も論じられていた事を私は思い出す。
「そうですね。私個人としては進むべきだと思っています」
「私もその意見に賛成かな。なんにしても此処で人数を割いて会敵した場合は面倒だから全員ついて行くべきと思うんだけど、どう?」
るーこさんがそう言うと、【ガリガリボーイズ】の方々が異を唱えた。
「オレ達は正直なところ、どうすりゃ最適なのか判らん。と、いうのが本音だ。あんたらのところは有名プレイヤー揃いだろ? オレ達みたいな弱小傭兵団として出来る事を考えると、別れて別方向も探索した上でマップを埋めた方がいいんじゃないか? と思っている」
「リーダーの言う通りだと私も思ってるわ。ここは人数を割くのも一つよ」
【ガリガリボーイズ】の団長は確かササクレさんでしたか、発言した女性は副団長のスモアさん。確かにマップを埋めるというのは今後を考えると重要なことなのかもしれませんが、私達だけで城内に潜入するのは厳しいのではないかと思うのです。
「【ガリガリボーイズ】の皆さんのお考えは理解しましたが、これから敵地へ潜入することを考えると少しでも人数がいた方がいいと私は考えています」
「そう言われるとなぁ……」
「リーダー? 美人相手だからって甘く無い?」
「そんなことたぁねぇって。【棘薔薇の森】の奴らがいうことも確かではあるんだ」
そう言うとササクレさんは太い腕を組んで首を幾度か傾げつつ唸る事30秒程度。閉じていた瞳をカッと見開いて「決めた!」と声をあげた。
「スモアとダブルチョココロネ、黒糖バリ増しきなこ、キツネスープは【棘薔薇の森】に着いてけ。オレとササカマは探索だ」
「ちょっとリーダー?」
「戦力で考えたらアタッカーは何人いても困らない。オレとササカマは特殊系に分類される。純粋な戦闘職じゃねーからな。頼んだぜスモア」
そう言って、ササクレさんは一番背が高い男性を連れて歩いて行く。
「ちょっ、リーダーってば! 勝手に決めてぇー!」
ササクレさんは振り返る事なく、右手を上げて拳を握る。
「はぁ……仕方ないなぁ。でも、この貸しは高いからね?」
なんだかよく分かりませんが、残されたスモアさん達は納得した様子です。2人分の戦力はどこまで影響を及ぼすか正直なところ想像出来ませんが大きいのではないかと思いつつ、私達は先へ進む事にしたのです。
ちえるん「そう言えば【ガリガリボーイズ】って、あたり付きアイスのヤツですか?」
スモア「リーダー達の好物らしいわよ」
るーこ「あ、私も結構好きよ。夏場は冷凍庫にある程度の数を確保しているもの」
ちえるん「私はあまり食べた記憶はないですが、時折り不思議なフレーバーが販売されてますよね?」
スモア「アレはアレでクセになるのよ」
るーこ「いやぁ、ハズレもあるでしょ?」
スモア「リーダー達は『たまらん』って言ってたし……」
ちえるん「そ、そうなのですね」
るーこ「流石にナポリタンとかボルシチはないでしょ?」
ないわぁ(*'ω')('ω'*('ω'*)デスヨネー
ちえるん「…………」
スモア「な、ないなんて言ってないんだからっ!」
言いましたよね(*'ω')('ω'*)言ったね
スモア「(*´꒳`*)」
どうも、もいもいさんです。
ちょいと色々な事情で更新できなくて申し訳ありません。
もう少し一定ペースを保てるように計画中であります!
と、言うわけで応援宜しくです!




