ガンムナル城塞攻防戦 その2
ほわりと温かい空気に包まれたような気持ち、どこからか力が湧いてくるような錯覚を感じ周囲を見回す。
私と同じような表情を浮かべる他のプレイヤーさんもいるようで少し安心しつつ、るーこさんに視線を向ける。いつものように少し意地悪な表情を浮かべていた。
「不思議な感じでしょ? 妖精女王のバフ効果が有効になっている空間……特に外周の効果は最大値だから、この感覚を忘れずにいてね」
「分かりました。でも、あのヌメヌメ方向に近づくんですよね?」
「そうよ。効果相殺のエフェクトが出るけど、ヴェルスのパワーが上がらないと完全相殺は無いから十分に遠距離攻撃が可能な範囲までは近づけるハズ」
そこからの展開は非常に早かった。
冷血帝ヴェルスは妖精女王の姿を見る間もなく、対召喚用のナイトと魔法や弓の雨霰になす術も無くお帰りいただきました。
少し可哀想な気もしますが、あのヌメヌメした感じの黒いオーラを纏う姿はかなりの嫌悪感を覚えます。
因みに、難なくとは申しましたが結構な数のプレイヤーがヴェルスにやられて死に戻りしている点を考えると実は微妙では無いかと私は思います。
しかし、英雄を倒した勢いに乗って私達は再び崖側から降りて城を攻めます。
「そういえば、ヴェルヴェルが帰ったらウチの女王様も帰ってったよね?」
と、みゃーが不思議そうな顔をして言った。それは私も思っていた。あの二人の間には何かあるのかしら?
「妖精女王が王として立つ原因になったのが皇帝ヴェルスらしいッス。ちな、ヴェルスが皇帝になれたのも妖精女王と関わりがあるらしいッス」
「ミソスープさん意外と物知りですね」
「まぁ、普通に公式のストーリーボードに載ってた情報なんで、みんながちゃんと読んでないだけッスよ」
私はそもそも公式サイトさえ、ほとんど見ていません。ある日、突然にネットダイブ可能な高性能なPCとゲームが用意されたのですから。ネットダイブだって、それまでしたことがなかったわけですし。
「お姉ちゃんは公式サイトさえ見たこと無いと思います!」
「だいたいみゃーの所為でしょう?」
「事前に調べる気さえなさそうだったじゃん」
それを言われると厳しいところです。家にあるラップトップや携帯端末をいじるのだって、あまり得意では無いのですから。
「ちえるんはアレね。機械に触れるとよく分からないけど機械が壊れる系ね」
「流石に壊れません。それに現在進行形で仮想空間でゲームをしているわけですし」
「あー確かにそうねぇ」
と、るーこさんが意地悪そうな音を含ませてそう言った。
「でもウチのママはガチで機械に触れただけで壊した事がある特殊能力者だよ」
「マジッスか?」
「みゃー、冗談が過ぎるわよ。あの端末は調子が悪いって話をしていたでしょ? 滅多に触らない母がその日は急に何かを思い付いて触ったタイミングで壊れただけの話で偶然です」
「なんッスか? 偶然ッスか?」
ミソスープさんはがっくりと項垂れつつも崖の方に向かって進み範囲魔法を放つ。爆雷系のスキルは発動までの時間が長く動いている相手に当てるのは非常に困難だそうですが、密集状態の相手には非常に効果的なようです。
「そう偶然なんですよ。ただ、調子が悪くなった機器を最後に触るのが母なだけで」
そう言いながら、私達も崖を降りて行く。効果範囲に入ったところで相手の動きを鈍らせる重力場を作り、後方にいる敵をカレンさんと名斬さんが弓で攻撃。
迎撃に向かって来る人をみゃーが盾で殴り、動けなくなったところをるーこさんが斬り刻む。
各メンバーが連携しながら敵を刈り取って行くけれど、流石に城の内部へと進むことは出来ずにいると、倒された人達が再びやって来る。
「何だか面倒ですね」
「復活地点近いからね。仕方ない――にしても、自陣の損耗率も高くなってきたわ」
るーこさんがそういって私に指示を仰ぐような視線を向ける。と、いうことはそろそろですかね。私は小さく息を吸ってから、ゆっくりと吐き出してコクリと頷いてみせた。
個別に用意していた合図を使い自軍の他傭兵団の人達も我々の動きに気が付き、少しづつ連携をはじめじわじわと後退するように見せかけて罠満載の森へ敵軍を誘導する。
自軍の一部はそのまま一旦本陣側まで引いて、召喚などで牽制をしながら次に総攻撃をかけるタイミングを待つ。私達を含めた傭兵団は打ち合わせ通りに森に入って素早く身を隠す。
樹海とも呼ばれるだけあって、広く深い森は簡単に身を隠すポイントが幾つも存在する。狼や熊などの獣……のような魔物も狩りをする時は獲物から身を隠す術を身に着けている場合が多い。
そうなると、普通は遭遇戦となるハズですが、ほとんどの場合はそれは起こりえない。敵が私達に遭遇した場合のほとんどは、相手は罠に掛かった後ですから。
そんなことを考えながら、追ってきた敵が幾つかの罠に掛かり驚きの声をあげる。一部のプレイヤーは悲鳴のような声を上げていた――たぶんですが、ミソスープさん達が主導で仕掛けたブービートラップに掛かったのでしょう。
私達が用意したのは簡単な足罠ですが、力の強い150㎏もある猪でさえ逃げることが出来ないような物です。跳ね上げ式の足罠は獲物が踏めば足に輪が通り、相手の動きを止める単純な罠です。一応、対人仕様として、木の上側へ蔦を通し、相手のバランスを奪うように調整してあります。刃物などの武器があれば簡単に解除される事も見越してありますが、相手を混乱させ、足を止めさせることが出来れば問題ないのです。
そうして、罠に掛かったプレイヤーが動きを止めたところへ矢を撃ち込む。
「致命攻撃というのは恐ろしいですね」
私はそう呟いて、敵に見つからないようにソッと次のポイントへ移動する。仕掛けた罠が通用するタイミングは時間的には非常に短いので効率よく獲物を狩らなければいけない。
罠に掛かった味方に驚いて逃げようとしたプレイヤーが草むらを通った瞬間、何かに足を取られて派手に躓く。それを見た瞬間、私より早くるーこさんが飛び出して相手の首を刀で刈り取った。
「ダウン中は致命判定。無防備なタイミングであれば、首ちょんぱもあっというまよ」
そう言って楽しそうに次の標的に向けて走っていく。私は小さく溜息を吐きながら、私も他の獲物に向かっていく。キチンと後方から援護射撃で矢が飛び、怯んだ敵を仕留めていく。
ちなみにブービートラップが張り巡らされたポイントには近づきません。あの手のトラップは一度使った後で組換えなどで再利用出来る利点がある為、再度トラップの張り直し作業をやっているとチャットで言われたからです。
「るーこさん、深追い禁止です。各隊も、そろそろ引きますのでよろしくお願いします」
私のチャットに合わせて、ゆっくりと静かに逃げていく敵に合わせて距離を空ける。全員屈んだ状態で素早く木々に身を隠しつつ、再び敵から気配を立つ。
敵の方から、怒り狂った怒声が聴こえてくるが、私は気にしない。るーこさんは小さく笑っているに違いない。美弥とかも楽しんでいそうね。
そんな事を考えていると召喚がこちらに来ると報告が入る。
「では、ポイントBに誘導お願いします」
潜伏部隊の一部があえて見える位置にやや冷静さを失った敵が追ってくるように移動を開始する。
報告にあった召喚は戦乙女を中心にした騎士4体の召喚5体ということです。クオンさんの話ではそろそろ召喚するための魔素が尽きるらしいので、これが最後の召喚かもしれないですね。
戦乙女は翼の生えた女性の姿をしていますが、召喚のナイトと同様に非常に大きな躯体を持つ天使のような感じですが、持っている雰囲気は死神ですね。この辺りは元ネタになっている北欧神話的で語られているような意味で英雄の魂を集めているのでしょうか? あ、でも、召喚した存在はプレイヤーが操作しているので、固有キャラクター的なヤツではないのですね。
そんなことを考えつつ、私も次の場所へ移動を開始する。
るーこ「罠の設置しなおしはいいの?」
ちえるん「必要ないかと。警戒させるだけでも効果は十分じゃないですか?」
るーこ「確かにね」
みゃーるん「え? そうなの? 数人が罠作り直してたけど」
ちえるん「まぁ、それはそれで」
るーこ「味方が掛かったりして」
ちえるん「ありえそうですね」
あるある(*‘ω‘ )(‘ω‘ (‘ω‘ *)ねーw
今週はあと1話更新予定です!
体調崩してたり色々とバタバタしておりますが、
がんばりますので、応援よろしくです!!!




