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とある帝国士官の災難 その2

 神々の力によって戦場いくさばへ降り立った我々は急いで兵士達を集め、事情説明を行う。


 当然、神の領域へやって来る前の状況を知っている者達ばかりの為に話は簡単だった。しかし、城外は戦場が開かれた時点で既に北側は大混乱の状況だった。


 『荒れ狂うモノ』と戦闘を行っていた『外なる者』は殆どが排除され、常時城で待機をしている者達さえ混乱している雰囲気があった。そして、彼等には一つの問題が残されていた。


 神の領域が展開されると『荒れ狂うモノ』のような化物は消える――だが、魔物が消えるわけでは無い。かなりの数が『外なる者』達に駆逐されたが、まだスカイサラマンダー達が城の北側におり『外なる者』達を襲っていた。


 そんな中、彼等に動揺が走り私が予想していた通りの事が――いや、予想以上のことが起こっていた。


「本陣が北側の森の中にある……だと?」


 作戦指示を行う為に城にいた『外なる者』が何も見えない宙を見てそう言った。我々には見えない何かが彼等には見えるようなのは過去の経験から知っている。『外なる者』は神々より周囲の地理情報をなんらかの形で()え《・》る《・》という力を持っている。


 その彼らが敵本陣が北側の森にあると言った。


 私の予想では崖を越えてしばらく行ったところにある魔素溜りの近くだろうと予想する。私がこの城を攻めるとしても、そこに陣を密かに置き南方の本体を陽動に北から奇襲するだろう。しかし、本陣を置くには城がかなり近い為にリスクが非常に高い……ハズなのだが、どういうことなのだろうか?


「ヤバくないか? 北に本陣があるなら、北側の崖を迂回して森に入らにゃならん」


 と、バルドルド軍曹が小声で言った。


「いいえ、これはまたとないチャンスかもしれません」

「何か考えがあるのかい?」

「ええ、南方から来る場合だと我々が逃げるのは不自然ですが、現状は混乱しているわけですし……攻城戦といえど、敵の大魔尖塔(オベリスク)を攻撃しなければ最終的には勝てません。となれば――」

「森に入るのに乗じて逃げる……か?」

「ええ、後の言い訳はなんとでもなるでしょう。どうせ負け戦です」

「本当に負けるのか?」

「まぁ、相手が余程の愚か者でなければ、我が軍の勝機は薄いでしょう」

「じゃぁ、時を待つしかねぇか」

「ええ、出来るだけ前線へ向かわないように上手く動きましょう。南方の軍への対応を求められた場合は予定していた通りに」

「了解した。頼むぜ!」


 そんなやり取りをしつつ、我が軍の『外なる者』がどういった指示を出してくるのか待っていると、一人の男が私に近づいてくる。


「お前、斥侯には自信があるか?」

「いえ、残念ながら私はそういうのには向いておりません……残念なことに先の魔物襲来で……」


 私は敢えて悲痛そうな表情でそういうと、彼は舌打ちをしつつも「悪かったな……」と、小さく呟いた。


「はぁ……使えないな。クソッ、どうなってんだ? なんで南側にはほとんど誰もいない……いくらこの戦場が少人数だといっても、いつの間に移動したんだ?」


 彼は悪かったと言いつつ、その次には使えないと言う。『外なる者』達の考えることはよく分からないというのが我々の通説であるが、戦う事に関しては彼等はこの世界にいる『英雄』以外の『内なる者』と比べると圧倒的であることは間違いが無い。


「城も北側は倒壊した部分は残ったままだし……仕様上そんなことがあるのか? くそっ、設計者出てこいってレベルの問題だな。籠城する意味があまりないが、攻めるには人数不足……こいつはマズイな」


 彼等は神の領域が展開している間に死亡すると、しばらくして大魔尖塔(オベリスク)にて蘇る。これは戦場いくさばが終わりを告げるまで、彼等はこの領域に囚われている。我々『内なる者』は神の領域から出ることが出来るが、彼等は自らの意思でその外に出ることは出来ない。


「崖を登る? 馬鹿か? 序盤は防戦だ! 薄くなったところを押し返すまでしばらく我慢だ、マナが溜まったら速攻召喚で対応! 順番はいつも通り……いや、ここは戦乙女を中心に回せ! ガンガン溜めてドンドン出していこう。ヴェルスまで出しゃ、ワンチャンあるだろ! おい、そこの兵士たちも魔素集めて、付近にいるプレイヤーに渡してくれ!」


 『外なる者』達は『プレイヤー』という言葉をよく使う。彼等のような人間のことを表す言葉だと歴史書にも書かれており、私は初めての戦場でも似たような指示をされた時に歴史書に書かれていることが事実だったと知って興奮したのもだ。しかし、自国の皇帝を呼び捨てにしているあたり、彼等はやはりそれ以上の存在ということなのだろうか? 私は思考の渦に入っていこうしかけて、マズイと思い身を正してから彼に返事をした。


「わかりました。曹長、共に来てくれ」

「了解であります」


 そう言って我々は城内にある魔素壺が置いてある部屋へ急いで向かう。彼等がいう『魔素溜り』とは全く別物なのだが、言っても仕方ないと思っているので放置する。


 この城の近くには幾つかの魔素溜りが存在するが、防衛戦時で軍が打って出る際には絶対に押さえなければならない場所ではあるが、籠城に近い状況の場合は魔素溜りまで魔素を確保しに向かうのは非常にリスクが高い行為である。


 故に、城にはかなりの量の魔素壺を用意して、魔素溜りのように使えるようにしている部屋が存在するのだ。これも日々、多くの兵士達が堀り運んでいる物だ。それを彼等は湯水のように使い、減った分は我々が補充する。彼等はそんな我々の行動を知らないのだろうか? いや、多分知らないのだろう。


 そんなことを考えながら、魔素壺を管理している部屋へ到着すると残された兵士達の多くが集まって大量の魔素を結晶化させて『外なる者』達へ渡していた。


「よーし、召喚出るぞ!」


 そんなことを言いながら彼等は城の外へ向かって走り去っていく。


 彼等が神から遣わされた能力として知られている召喚術だ。彼等は大量の魔素と自らの魂を融合させて神獣や神使へ肉体を転身させる。強靭な肉体や人並み外れた化物に変身して戦う術だ。そして、ひとつだけ違うのが英雄召喚……これは所属している国により呼び出せる英雄が違うという話を小話で聞いた。そして、一度だけ、我が国の冷血帝としられるヴェルス・ヴェス・ヴェイバルト・ギルムレッドが召喚されるのを見たことがある。


 輝く金髪の美しい男だった。そして、彼が現れた途端世界が一変する――


 彼は『死を支配する者』とも呼ばれている男で、簡単に人の命を奪うことが出来る。彼の通る道はまさに血の道(ブラッドロード)だ。彼の中には化物が棲んでおり、その黒き化物は常に血を望むそうだ。そして、彼は自国の人間以上に他国の人間の血を望む。


 大規模な数千いや、万単位の人間が戦う戦場で彼は闇と共に血を浴びる……黒と赤の世界だ。


 そこに彼の金髪だけがキラキラと輝いて見えた、アレは恐怖でしかなかった。そして、彼は殆ど表情を変えずに――いや、どこかほくそ笑むような風でもあった。冷血帝とは言われているが、意外と感情に富んだ人間ではないか? と、思ったのは私だけだろうか?


 我が帝国内では彼は恐怖の象徴であり、力の象徴であり、帝国そのものだ。


「恐ろしいですな。オレはあの金髪の野郎があまり好きでないもんで……ま、大きい声じゃ言えませんがね」

「曹長。キミはそんなのだから、家が没落したんじゃないかい?」

「まぁ、当たらずとも遠からず……か? 貴族位が残っているだけでも救いかもしれん。でも、実のところ、そんなのもどうでも良かったりする」

「キミはアレか……」


 他にもいる帝国兵士にとって危険な言葉は避けるべきと私は視線を向けながらワザとアレと言った。彼は少し反省の色を見せながら頭をボリボリと豪快に掻いてから白い歯を見せる。


「あんたからは同じ匂いがしたもんでね」

「それは、この戦場を生き残った時に酒でも飲みながら話すとしよう」

「フッ、約束したぜ?」


 そんなやり取りをしながら、魔素壺に手をかざして魔力を集める。我々『内なる者』からすれば、これもかなりの重労働だが、『外なる者』達は魔素を集めるということを呼吸をするかの如く行う。ただ、その速度は速いわけでは無いのが、また不思議なところだ。


「さすがに曹長は慣れているな」

「まぁ、軍人としての生活は意外と長いからなぁ……」

「まさかとは思うけど、キミは若い頃に家出をしたのがキッカケで兵士になったのかい?」

「まさに! さすがだな。よく分かってる」


 時折いると聞いていたのだ。兵員学校でも時に戦場には面倒臭い部下が存在するという話は昔からある話なのだ。下士官の中で最も面倒な場合が、何故か下士官をやっている貴族だ。多くは後継ぎでは無く、貴族と言っているが爵位を持たない貴族令息や令嬢。ただ、中には貴族位を正式に持っているが、様々な事情で下士官をやっている人間だ。


 私の中で、彼は後者だと睨んでいる。


 口調や見た目はどう考えても貴族というより山賊か荒くれ者が多い冒険者だ。しかし、その所作などに貴族特融の動きや反応が垣間見える。それに彼の指にはめられている帝国貴族287家の内でも128家に入る古株の家紋が付いている。


「どうしてキミは家出がキッカケと言っていたけど、軍で下士官なんてやってるんだい?」


 私は魔素を集める作業をしながら、彼に質問を投げる。彼は作業をこなしながら、白い歯を見せて言うのだった。


「たまたまって言ったら信じて貰えるのかい?」


 残念ながら、彼の本心は見えてこない。これが最も貴族らしい言動だ。言っていることと考えていることを相手に読ませず、自分が優位にあろうとする。貴族特融のクセの一つだ。多分だが家出も偶々というのも嘘だと私は思っている。別の理由がそこにはあるが、今は教えたくない……もしくは教える気も無い。なのだろう。


「ま、そういうことで納得しておくさ」


 私達の会話はそこで終わり、しばらく黙々と作業を続け『外なる者』達に結晶化した魔素を渡し続けた。


 しばらくして、残りの魔素が随分と減った頃に『外なる者』の男が誰かからの声を聞いたのか、大きな声を上げる。


「軍師殿からヴェルの召喚許可が出たぞ!」


 その声に兵士達は慄き、『外なる者』達は歓喜するのだった。しかし、私はその光景が妙に滑稽に思えてならなかったが、嫌な予感だけはどうしても拭えなかった。

るーこ「また私達は放置みたいね」

ちえるん「るーこさん、戦闘中に何を言ってるんですか?」

るーこ「だってさぁー、だってなんだもーん」

ちえるん「それじゃぁ、何も分かりませんよ?」

るーこ「あ、そっち敵来るから足止めて」

ちえるん「私のフォローもよろしくです」

るーこ「はいはい、任せて」


◇ ◇ ◇


みゃーるん「ずっとあの感じだねぇ」

カレン「ま、よく喋りながらあの動きが出来るわ。器用すぎでしょ……」

みゃーるん「そう言いながらヘッショ決めないで下さい。あ、バッシュ入れたんで、皆よろー」

名斬「ハッキリ言って、皆似たようなもので御座る」

ミソスープ「まさにッス!」


え? そんなことありませんよ(*‘ω‘ )(‘ω‘ *)そうそう、何言ってんの?




次回は視点戻す予定です。

さぁ、ジャン達はどうなるのか? どうなっちゃうの?

それは神のみぞ知ることである。


もいもいさんを調子に乗せて、執筆速度を上げさせよう!

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