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とある帝国士官の災難 その1

長くなりそうだったので分割しましたー(ΦωΦ)ノ

 ギルムレッド帝国がマイゾ王国を戦闘大陸へ向かわないように死守せねばならないと命を下したとされる。そんなガンムナル城塞に派遣された名もなき兵士の一人が私である。と、言っておこう。一応はこれでも、それほど多くない人数ではあるが、部下を持つ士官だ。遺憾ではあるが数か月の間、城塞勤めを終え帝都に戻れば大隊を束ねる立場へ移動となることも確約されている立場でもある。


 私は元々、人気が全くといって無い田舎町の雑貨屋の息子だった。私は勉強が得意で、帝都にある大学へ行く道を選びたかった。自分で言うのはアレだが、それほどに勉強が好きで自信もあったのだ。


 しかし、問題は多かった。


 特に金が掛かり、平民では優秀者であってもパトロンが付いていないと到底、無理な話だった。そこに、ひとつの光明がさした。たまたま観光に来ていた軍務省の将官と話す機会を得て、私は軍務省管轄の兵員学校へ入ることにした。兵としての働きが必要になるが、この話は私を魅了した。なぜなら、帝都の兵員学校では帝都の大学にも引けを取らないほど歴史書が集められているというのだ。


 私は歴史の勉強をしたいが為に職業軍人となったのだが、その日をこれほどまでに後悔したことは無い。


 ガンムナル城塞は戦闘大陸にある帝国の支配領域において、激戦区と呼ばれるほどに定期的にどこかの国が攻めてくる場所のひとつで、特にマイゾ王国が戦闘大陸に出れない為に躍起になって攻めてくることもしばしば。


 この城塞は特に守りに特化した作りになっており、元々は別の時代にあった王国が作った城なのだが、完全に南側からの侵攻に対して考えられた形になっている。


 しかし、これには古くからの前提がある。


 北の森に棲むスカイサラマンダーが我々のような『内なる者』を襲うことは基本的に無い。他にもいくつかの魔物がいるが、その多くは人を襲うことは滅多に無い。ただし、『外なる者』に対しては違う。


 私は今回、赴任してきた時にまず思ったのだ。『外なる者』が主となる戦が起こる時に北側はあまりにも脆弱ではないのか?


 しかし、残念なことに私は彼等にとって名も無き兵士でしかなく、彼らの言うことに従順な上官たちは私の意見書を見ることもせずに償却してしまった。


 我々にとって戦というものは非常に神聖性を帯びたモノである。戦場というのは《神の領域》と呼ばれる結界で魔尖塔オベリスクと呼ばれる神の創造物を奪い合う聖戦だとされる。敵の領域にある魔尖塔オベリスクを破壊すると、大いなる力の一旦を得ることが出来る。我々は英雄と呼ばれる人間に近づくことが出来ると云われている。


 だから、魔素の多いこの戦闘大陸では戦が止まないのだと、数百年も昔に掛かれている歴史書にさえ記載されている。私はなんと馬鹿らしいことだと思っているが、残念なことに私は帝国の軍に所属する軍人なのだ。


 だから故に戦わねばならない――


 はい、そう思っていたさ。しかし、目の前の惨状ではそうはいかない。


 『外なる者』は神から遣わされた代行者であり、執行者であり、戦士なのだ。だから、死んでもまた蘇る。しかし、我々は違う。一つしかない命を無駄に散らすなど、本当に馬鹿らしい話なのだ。


 戦なら、仕方ないと言えば済む。


 まだ、戦は始まってさえいない。敵兵が現れたわけではない――


 北の森からさらに行ったところにある霊山レクトヘルムを棲家とする『荒れ狂うモノ』が城を襲ってきたのだ。


 巨大で狂暴な魔物であり、人や自らより弱い魔物を襲う暴君が獲物を追いかけて来たが如く勢いで北の崖を飛び降りて来たのだ。


 私は今回、戦が始まると聞いて北側の警備を行うことを上司に再び意見したが、笑われ、一蹴された。そして、何気なく城の南側テラスから外を眺めていた時――森が騒がしくなり、スカイサラマンダー達が何かから逃げるようにやって来た。


 この騒動にいち早く反応したのは流石に神の使いとも伝えられる『外なる者』達だ。しかし、彼等を見た途端、普段は大人しいスカイサラマンダー達が狂ったように彼等を攻撃し始める。


「いったいどういう事だ?」


 近くにいた兵員学校の同期である同僚が驚きの声を上げる。残念ながら彼は知らなかったようだ。魔物は人を襲わないが『外なる者』は襲われるのだ。


 どんなに大人しい魔物でも、その多くは『外なる者』を排除しようとする傾向が強い。特に自力がある大きな魔物にとって彼等は襲わずにはいられない敵なのだ。


 この城は南側に城壁を持つが北側は崖を城壁の代わりとしているため、『荒れ狂うモノ』を一時的にでも抑える為の城壁は存在しない。


 しかも、バリスタなどの兵器も南側に集中して配置されており、ただ蹂躙されるだけだ。


 私はここを守らなければならない任務を帯びている兵ではあるが、あんなモノと戦って勝てるワケが無い。我々より遥かに強靭な肉体やスキルを持っている『外なる者』がゴミ屑のように蹴散らされているのだ。


「アレは我々が相手を出来る存在では無い。ここは兵を動かして最も近い砦まで引こう」

「そ、そうだな、上の奴らも文句は言うまい」


 そうして、私達は上司であるガンムナル城塞防衛隊の詰所へ向かうのだった。暴れるドラゴンの攻撃によって城自体が崩れゆれるなか、急ぎ詰所として使用している部屋へ入ろうとしたところで、自分達よりも随分と年齢が上の下士官に声を掛けられる。


「おおっ、よかった……貴殿達なら、まだ話が出来そうだ」


 男は帝国兵の下士官服を着た男は歴戦の兵士といった風貌で腰には手斧ハンドアックスをぶら下げ、背中には両手剣を背負っていた――が、すでにあちこちに生々しい傷が出来上がっていた。


「一体……どういうことですか?」

「残念ながら、詰所には誰もいない……いや、いません。現状、この砦にいる将官はあんた達くらいなもんさ」


 その言葉を聞いた瞬間、私は同僚と目を合わせた。


「冗談だろ?」


 同僚はすぐさま男を掴みかかるような勢いでそう言った。ちなみに彼が掴みかからなかったのは私がすぐさまに手を出して止めたからだ。


「冗談では無いさ。アイツ等の半分は既に砦を後にした……そして、もう半分はこの世にはいない。『外なる者』達に命令されてついて行ったのさ」


 因みにではあるが、戦闘大陸で死んでしまった『外なる者』は戦場いくさばでは神の御力によって大魔尖塔(オベリスク)付近で蘇る。しかし、戦場でなければ、帝都にある大聖堂で復活するらしい。幾つかの特別な方法で転移してくることは可能らしいが、幾つかの条件がなければそれは叶わないらしいと書物にて読んだことがある。


「『外なる者』であっても勝てない敵がいるのもそうですが、この動きはもしかすると……」

「察しが良さそうだな……ああ、アンタはアレか北から敵が攻めてくる可能性を言ってた兄ちゃんか?」

「ああ、そうだ! さすがは我が友ジャンだ!」


 と、同僚が『我が友』アピールをして自慢気に言った。彼はエイリッヒ・ヴァン・ホフマン。帝国貴族であるヴァンの称号を持つエリートなのだが、何故か私を友人だと言ってついて回る変わった男だ。


「ジャン……ああ、サボり魔ジャンで有名なジャン・シェリホフか?」

「私は好きでサボったことは一度も無いのだけど……そもそも、サボってもいない。上司に恵まれなかっただけだ」

「ぱっと見、冴えない感じがパネェし、そいつに色々と面倒な進言をされりゃー、上司たちとすりゃ嫌にもなるかもな」


 荒くれ者が多いと聞く軍曹の男は白い歯をみせて笑う。正直、見た目が冴えないと言われて気分を害さないヤツはそうはいない。まぁ、確かにそうだとは思っているが、そこまで不細工だとも思っていない。兵員学校時代は意外とモテた方だと思っている。


「で、ジャン。君ならどうする?」

「はぁ……いいかい? 正直、時間が無い。出来るだけ戦わず全力で逃げるのが先決だ。『荒れ狂うモノ』が北の崖を飛び降りて来た? こんな冗談のような話、人為的でなければ起こりえない。そして『荒れ狂うモノ』は神の領域には入れないんだ。答えは全て揃ってる」

「帝国を攻めれる『外からの者』からの宣戦布告か!?」


 エイリッヒとむさ苦しい感じの軍曹が同時に声を上げる。恐ろしいほどに綺麗なタイミングであったことは驚きだ。


「ジャ、ジャン!? それはマズく無いか? この領域に残っているだけで確実に巻き込まれるぞ!?」

「だから可能な限り巻き込まれない……いや、もう無理かな。斥候兵からの話だと、南側では既に多くの人員が動いているという情報があったハズだ」

「そいつは確かだが、『外なる者』はせいぜい100か200くらいだぜ? 人夫や傭兵たちを合わせても多くて1,000人くらいって話だ」

「だから問題なんですよ……」


 私の言葉に軍曹は不快そうな表情を浮かべる。


「一体、どういうことだ?」

「この地は昔から防衛に特化した形で一度占領した国が長期間守ることが出来る場所なんですよ。戦場いくさばである神の領域に招聘されるはここに駐屯している一部の者達だけです。相手が総勢1,000人だとすれば、300人程度です。内『外なる者』は100名から200名……城の駐屯兵は帝国では上位から選出される。そして、『荒れ狂うモノ』は神の領域である戦場には侵入出来ない」


 男は難しそうな顔で「むぅ」と声を出し、息を吐いた。


「と、いうことは運よく『荒れ狂うモノ』から逃れられる可能性がある者がそれだけ……と、いうことですかな?」

「いや、それは『荒れ狂うモノ』から逃れる可能性があるだけで、敵から逃れられるわけでは無い……ですよ。とりあえず、時間が惜しいので人夫や一般兵は早急に城から出て、レーセン樹海を北側から西へ向かって逃げるように指示して下さい」

「俺が? ですかい? いや、行くなら貴族位を持つそっちの兄ちゃんが行きな」

「ボクがかい? んー、出来ればボクはジャンについて行きたいんだけどねぇ」


 エイリッヒはそう言いながら私の方を見る。残念ながら、立場的にはキミの方が上なのだが……と、私は思いつつ小さく溜息を吐いた。


「エイリッヒ、キミに頼むよ。キミなら貴族の立場で人を動かすことが出来るし、この策にはキミの力が必要だ。頼むから可能な限り誰も死なないように逃げ延びてくれ」

「……仕方ない。キミの魔法がボクは見たかったけど、後から英雄譚を楽しみにしているよ」


 そう言って彼は走り出す。彼は逃げることに関しては誰よりも巧いのだ。彼も二つ名持ちで『逃げのホフマン』と言えば帝都の兵員学校同期達の間では有名なのだ。


「さて、我々はどうすればいいですかい?」

「残念ながら、我々は戦場に出ることになるでしょうね。ただ、我々もこの負け戦で死ぬわけにはいかないので、上手に逃げることにしましょう」

「撤退では無く、逃げる……ですかい?」

「ええ、そんな綺麗なもんじゃありませんよ。命令も簡単だ。『外なる者』達に戦場を任せてつつ、そっと全力で逃げます」


 私がそう言うと目の前に立つ厳つい男は大笑いをして私の肩をバンバンと叩いた。


「なるほど、なるほど……気に入りました。私、ゴーバン・ヴァン・バルドルドと申します。ヴァンは付けども没落した男爵家ですから、気にせんでもらって結構」

「ヴァン持ちの曹長ですか……これまた変わった御仁だ」


 そう言って私は彼の前に手を出した。厳つい没落貴族の男は白い歯を見せて笑い、痛いほどにガッシリと私の手を取って握手をした。


 ――宣戦布告の鐘が響く。


 神々の力をあからさまに感じる瞬間である。幾つか渡り歩いてきた凄惨な戦場へ私達は招聘されていくのだった。

るーこ「あれ? 知らない話が始まってるんだけど???」

ちえるん「これが神の力……と、冗談ですよ」

るーこ「あー、うんうん。言いたかったのね」

ちえるん「もうっ、なでなでしないでくださいっ」

るーこ「ハイハイ、ちえるんは可愛いわねぇ~」

ちえるん「もぉもぉー、やめてくださいよー」


いいなぁ(*‘ω‘ )(―ω― )てぇてぇで御座るよ

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