モンハウと荒狂うモノ その1
予定よりかなり早いペースで目的地付近まで到達することに成功したおかげで、るーこさん達とは合流出来ずな状態です。
私とみゃー、そしてカレンさんを中心に森の中で休息を取っていると、北側の森の更に奥がざわざわとした空気が漂ってきます。
「やっぱり、これ以上は厳しいわね。るーことミソがいりゃある程度はなんとか……ただ時間もそこまで掛けてはいられないでしょ?」
カレンさんは森の奥を覗き見るような視線を向けたまま言った。サーチスキルと遠視スキルの組み合わせで通常では見えない距離を見れるというスキルです。ただし、見た目以上にマナを消費するらしく乱用は厳禁だそうです。
「どっちも低レベル用のスキルだけど、遠視は弓系では必須スキルだから取得しておくといいよ。因みにだけど他の武器種でも一部使えるスキルだから」
「そういうのもあるんですね……」
「まぁね。でも、メリットもあればデメリットもあるから、そこのところはみゃーるんとかに聞いて、ちゃんと教えて貰いなさい」
そう言ってカレンさんは私に取引依頼を出してくる。目の前の空中に浮かぶウィンドウに記載されている[はい][いいえ]の[はい]を指で触れると、自動的にインベントリが表示され、カレンさんから幾つかのアイテムが枠内に表示されていく。
「とりあえず、弓を使うのに必要なアイテムを一通りだけど、渡しておくわ。矢は装備とか違うアイテム扱いだから、数は気にしなくても大丈夫よ」
「矢の補充はどうするんですか?」
「作る方法もあるけど、面倒だから買う」
「なるほどです。物資のリストに矢が結構量あったので、そうかな。とは思っていました」
「武器類の耐久という観点において、矢は強力な武器の類に分類されている代わり耐久性が低いから定期的にメンテナンスが必要になるっていう事も忘れないで」
「でもカレンさんって武器の修繕費はそこまで掛かってなかったですよね。防具の作成に関してはかなりの額面になっていましたけど……」
私は傭兵団内の予算報告書を思い出しつつ言った。カレンさんは少し首を傾げ猫耳を揺らす。思わず視線を奪われてしまう猫耳なのですが、カレンさんもそのことに気が付いている様子です――が、何も言われないので良しよしましょう。
「ま、そのおかげでちえるんが可愛い恰好をしつつ、性能も求めれるわけよ。デザインはクオンなのを忘れずに」
「クオンさんって、るーこさん……Luka*名義でのモデルアーティストっていうんですっけ? 本職のデザイナーなんですよね」
「所謂、ネットダイブを用いるゲーム用のアバター製作者ってヤツね。基礎部分はるーこ本人からのコンバートで衣装とか髪色やメイク……細かいところだと、技のモーション自体の動きとかも含むんだったかしら?」
「技の動き……と、いうと特殊な移動とか、そういったヤツですか?」
「まぁね。因んじゃうけど、彼女がプロリーグで出場してるスターファイターってシリーズは基本動作部分はゲーム固定でキャラクターに動作をコンバート掛けて、モデルアーティストとプレイヤーが調整して完璧なキャラクターに仕上げるって流れだから。かなーり、面倒で大変な作業らしいわよ」
「でも、そこまでして作っていくのであれば、一般参加は難しいのでしょうね?」
「プロリーグはプロプレイヤーだけのリーグだけど、一般参加も出来る大会だって存在してて、るーことかも出てくる試合があるのよ」
「それは楽しそうですね」
「まぁ、また今後、教えてあげてもいいわよ……彼女には内緒で」
と、カレンさんは猫耳を揺らしつつ、猫のような瞳で楽しそうに微笑んだ。猫耳メイドさんの威力――恐ろしいものです。
「あ、私も出たいんだけど。格ゲーって敷居が高いじゃないですかー。でも、プロプレイヤーを目指すなら一度はスターファイターの試合は出てみたいです!」
「みゃーるんはシューター系のプロを目指してるのかと思ってたけど……」
「目指す先は複数のジャンルでプレイするトッププロですよ」
と、美耶が自慢気にそう言った。複数の競技で上を目指すというのは非常に難易度が高いような気がしますが、どうやら美耶は本気のようです。
「Luka*が目標ってのは本気なんだ」
「当たり前ですよ。格ゲー、シューティング、脱出ゲー、アスレチックで複数のタイトルを獲得してる数少ないプレイヤーですからね。まぁ、チーム戦のゲームタイトルでの大会にはほぼ出てないのは不思議ですけど」
美耶がそういうとカレンさんは少し考えるような仕草をして猫耳を揺らしてからゆっくりと何かを思い出すようにして口を開いた。
「色々とあったし、好きと仕事は少し違うんじゃない? あの子は超人じゃない……まぁ、常識からは随分と逸脱した存在ではあるけどね」
そう言ったカレンさんはとても優しそうな表情をしていて、私は思わずドキリとしてしまいました。
そこで私は時間が思ったより無かった事を思い出しました。冷静にならなくちゃ。
「っと、そろそろ本題に話を戻しましょう。どれくらいまで近づけば魔物がこちらに気づくでしょうか?」
彼女はポンと手を叩いて「そうだったわ」と、少しとぼけつつも悪戯っぽい雰囲気でそう言った。
「距離的には後……そうね200メートル程度は離れていれば問題は無いと思うんだけど、慎重に慎重をってことを考えれば、300メートルかな。但し、上空にいるヤツに見つかる可能性があるから、現在位置でも正直なところ……微妙ね」
「そうですか。城からこちら側は見えるでしょうか?」
「こっちから南側は結構な起伏があるみたいだし、城の手前は崖と坂ばかりだから、見えるとは思えないけど……上空にいるワイバーンもどきは見えてるだろうから、あまり派手に動くと何かが戦闘をしているとは考えるかもしれない」
「それは問題ですね……」
たぶん、ここまでの道のりは森の外側からは認識出来ないハズだし、森の中を人が通った気配は無かったことを考えて、気付かれることは無いと思う。でも、山側に近い場所で高いところを飛ぶワイバーンの姿は見える……見えるよね。いい手はないかな?
そんなことを考えていると、音声チャットの呼び出し音が聴こえる。
「は、はいっ!」
慣れないことはあまりするべきではないのですが、思わず声が上擦ってしまいました。恥ずかしさをごまかしつつ、聞こえてくる声を聴いてさらにドキドキするのです。
「ごめんね。ちょこーっと、色々あって遅くなったわ。後……そうね、10分程度で到着するから」
「最短距離では来ないでくださいよ。敵にバレますからね」
「分かってるって。山側からダッシュで向かってるから! じゃ、また後で!」
そう言ってるーこさんは音声チャットを終了した。ちなみに私の耳には聞こえてはいけない音声がハッキリと聞こえて来ました――
『助けて欲しいッス』
と、アレはミソスープさんの悲痛な叫び声でした。
「嵐の予感がします。と、いうか嵐が吹き荒れます」
私の言葉にみゃーとカレンさんに緊張が走ります。私は忘れていません、強引に山籠りさせられた時の事、彼女が山側から来ると言った事。
霊山レクトヘルムにはクリスタルドラゴンが生息しており、かなり広い範囲を縄張りにしているせいで、このレーセン樹海に魔物が多いというのです。山に住めないが山を生息地にする魔物が広い樹海でクリスタルドラゴンから身を潜めるて犇き合っている。だから、この森に入るのは面倒で問題が多い故に誰も森から城を攻めないのです。
そして、ボス敵は戦場には入れないのです。彼女はそれを知っている筈です。クオンさんから注意があった筈です。ドラゴンは流石にフルメンバーでもキツいから戦わないように……と。
「あー、ドラゴン引っ張ってるのか。それも戦闘が開始される前に仕掛ける気だわ」
と、更に不穏な言葉をカレンさんが呆れたように言うのです。流石にそれはダメでしょう?
みゃーるん「トレインって違反行為じゃないんですか?」
カレン「内容によるわね」
みゃーるん「内容次第なんですか? このゲーム」
カレン「戦場での雑魚を引っ張るのは問題ない。と、いうかマップによってはそれが定石な場所もある」
みゃーるん「アリなんですね」
ちえるん「なるほど」
カレン「で、ボスを街に引っ張って行くのはダメ。低レベル帯の場所に解き放つのもダメ」
ちえるん「街はダメなのは当然ですね」
カレン「でも、大体の砦とか城はアリ」
みゃーるん「えー? 意味不明なんですけどぉー」
カレン「商業施設とか住人がいないでしょ?」
在住の兵士は住人では(*'ω')('ω'*)その辺りは気にしたら負けよ
さぁ、今日も今日とて、もいもいさんを調子に乗せるのです!
ホントソレしかないと思うのです!
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