レーセン樹海と魔物の棲家
曰く、レーセン樹海とは戦闘大陸ヴェルハーサ内に幾つか存在する大森林の一つで、戦闘大陸南方に位置する霊山レクトヘルムの麓に広がっている。
霊山レクトヘルムは天界の氷山とも呼ばれており、水晶に覆われた鱗を持つクリスタルドラゴンの生息地として恐れられている。古い歴史書や逸話に登場する勇者が悪しき竜を倒しに行く為に協力し、七色に輝く水晶で出来た剣を勇者に託した存在としてマイゾ王国やウィンブレール共和国では語られているそうです。
ちなみにこの話は雇った人夫や傭兵の方々が野営中に教えてくださいました。
現在、戦場予定の砦がある場所よりも随分と北東側から樹海に入り、地図の情報を確認しながら魔物を狩りつつ目的地へ大回りしている最中です。
時間的に強行軍を強いるしかない状態ではありますが、後方から人夫や傭兵の方々が物資を運びながら必死について来ております。
「索敵系のスキルって魔物にしか使えないっていうのは勿体ですよね……」
「戦場では魔尖塔があるから、あまり意味はないのよね」
「でも、それでスキルポイントを消費するんですから、勿体ないの極みではないでしょうか?」
「弓特化だとスキルポイント余り気味になるからいいのよ。それにうち等の面々って魔物狩りによく出るから、こういったスキルは必要になってくるのよ」
「フィールドワークは重要ですからね」
そんなことを言いながら、襲い掛かってくる銀色の狼の首を刎ね、即座に武器を変更して逃げようとする狼達を重力で移動阻害を行う。そこにカレンさんが弓を撃ち込んで行き、命を刈り取っていく。
ひと段落ついたところで、みゃーは現在後方で魔物が来ないか確認しつつ、魔物用の罠を設置しに向かう。私達は若干歩く速度を抑えつつ、目印となるマーカーを設置しながら先へ進む。
「そういえば、さっき倒した魔物をみゃーるんが幾つか持って行ったけど、何に使うの?」
「後方の人達が襲われないようにするのと、別の目印として串刺しです」
若干カレンさんの表情が固まった気がしたけれど、彼女は小さく息を吸う。
「そ、そっか……で、効果のほどはどれほどなの?」
「魔物の種類によりますが、狼や熊がこの辺りでは強そうな獣ですから、それ以上の敵がいなければ効果はありますよ。匂いで警戒するので近づきません。ただ、血の臭いに敏感な獣は逆に寄ってくる可能性があるので、そこは罠との組み合わせというところですね」
「このペースで明日までに間に合うのか不安なのだけど……」
カレンさんが心配そうに私を見る、私はニコリと笑顔で返す。思っているより迷う要素が無いと自分の中で周囲を確認しつつ、特訓と称して山籠もりさせられた時より余裕があるくらいだと私は思っている。
「大丈夫ですよ、これでも予定より早いくらいのペースで移動してます。もっと強い魔物が出るのかと思っていたので、ちょっと残念なくらいです。クオンさんからの情報だと山に近づきすぎると高レベルのボス系モンスターなるものが出るそうですが、その縄張りには入らないギリギリラインを通っているので、行軍がバレるようなこともないでしょう」
「まぁ、戦闘大陸で魔物を狩るなんて奇特な人は基本的に私達くらいだからねぇ……」
「どうして、皆さんは狩りに出ないのですか?」
簡単な質問です。答えもなんとなく分かってはいるのです。戦場に出る時間が確実に減るからというのが答えだと分かっていても聞いてしまうのです。
「当然だけど、戦場に出る回数が確実に減る。それと、ショップで買える装備とガチャで排出される装備が見た目も強さもかなり良いから、態々狩りで素材を集めて作る方が勿体ない……と、いうのが大きいかしら? それに縫製技術も必要になるから、服装なら衣装づくりに慣れてないと難しいし、武器なんかは鍛冶とか、その辺りが出来ないと相当難しい」
「私達の傭兵団はそれが可能ということ……ですか?」
「まぁね。縫製は私やクオン、しょこらんが出来る。名斬はリアルでもそっち系の職人だから。ある程度ゲーム的なシステムアシストもあるけど、このゲームは専門家による専門的な知識や技術が再現できるようなシミュレータでもあるからね。魔物を自分で捌いて素材にする……なんてのはちえるん達くらいよ、出来るの」
「やろうと思えば、なんでも出来る……と、いうことですか?」
「まさにその通りね。弓とかは流石に作り方が分からないから、システム系のクラフト装備だけどね。あ、一応私はガチャ装備も幾つか持ってるけど、使ってないわね」
そう言いながら、カレンさんは普段使いの弓から別の弓に変更する。
「これって、見た目的にはカッコいいんだけど、装飾が邪魔なのよね。特に咄嗟に横で構えた時に視線の邪魔になる」
彼女は弓を横向きに構えて弦を引く。弓につけられた羽のような装飾が横に広がっている所為で視界の端を邪魔している風に見えます。確かにあれは邪魔ですね。
「でも、性能は良いのですよね?」
「残念ながらね。後、ガチャ系のアタリ装備には特殊なレアスキルが付いてる。それだけはかなりいいからって理由だけで、この弓を持ち歩いてるんだけど、まだ戦場では一度も使ってないわね」
「他にも幾つか弓を持ってるんですか?」
私がそう言うとカレンさんは不思議そうに首を傾げる。それと同時にカチューシャに付いている猫耳がピョコピョコと揺れるのが、とても可愛らしくて思わず釘付けです。
「持ってるけれど、どうしたの?」
「いえ、出来れば一つ貸して頂くことは出来ないでしょうか?」
「和弓? 洋弓? クロスボウ?」
そう言いながらカレンさんはインベントリの中身を確認する。
「直進安定性なら和弓かしら、サイズは?」
「和弓といえば大弓というイメージですけど……」
「江戸時代くらいから和弓のサイズが七尺三寸、大体2メートルちょっとかな。くらいになったんだけど、さらに古い時代ではもっと大きいのから小さいのまで用途次第で色々と使っていたらしいわよ。因みに六尺三寸の半弓とさらに小さい小弓もあるわよ」
「って、仕組みは不明ですが戦場には武器種の持ち込み制限がありましたよね?」
私がそう言うとカレンさんはニヤリと笑って「あるわね」と、答える。その表情はなんとも挑戦的というか生意気という雰囲気で可愛いのです。
「宣戦布告がされた段階でインベントリの優先順の上位から自動的に武器種が確定するから、事前にインベントリを整理するのよ。そもそも、装備している武器が優先されるから、特に複数の武器を持ち込む必要が無い場合は同じ武器種を複数用意しておくってのも一つの方法よ」
「武器破壊とかがあった時用……とかですか?」
「それも一つだけど、さっき言ったように特殊な武器には専用スキルがセットされていたりするから、それ用だったり……うーん、これも用途次第、戦場次第ってところね。とりあえず、弓の経験は?」
「ちゃんとした弓の経験はあまり……急増での弓で小動物を狩った経験ならあります」
そう言うとカレンさんは苦笑いしつつ「だと思った」と、答えた。その後、インベントリを見ながらブツブツと独り言を言ってから弓を取り出す。
「ジャンル的には和弓……半弓になるんだけど、素材が特殊で随分と使い勝手がいいはずよ。ほいっ」
と、彼女はそれを私に向かって放り投げる。私はあわててそれを両手で受け取るとまるで重さを感じないと錯覚するほどに軽い弓だった。
「とても軽いんですけど……」
「私がメインで使ってる弓と同系の半弓版ね。そもそも素材が特殊だから、付与効果とか色々使い勝手がいいのよ。ただ、私的にはこっちの方が扱いやすかったから」
そう言ってカレンさんは大きな弓をクルクルと槍のように回す。打撃武器としても使ってましたね……本来、和弓でする動きでは無いと思うのですが。
「それにしても、突然どうしたの? 弓なんて使わなくても色々出来るんじゃない?」
カレンさんが不思議そうな顔をして聞いてくる。確かに遠距離移動阻害用の魔道具と近接用に使う刀と短剣二刀。ただし、攻撃範囲という点においては中距離、近距離の武器なのでこれから向かう場所を突破する上でもう少し飛距離のある武器を使えるようにしておくことが必要かと思ったのです。
カレンさんだけに頼るわけにはいきませんからね……あ、ちなみにみゃーが洋弓を持っていたので、みゃーから教わるという手もあったのですが、ここは専門職に習うのがよいと思った次第です。
「確かに色々と戦場では出来るのですが、これからの道中で魔物の棲家と呼ばれる地域を突破しないといけないので、私も弓を使えた方がいいかな……と、ダメでしたか?」
「あれ? レクトヘルム側には行かないんじゃなかったの? ん? ああ、トレバス城北側の森から奥に行ったところ?」
「はい、魔素溜りにワイバーンが住み着いているところ……ですよね?」
「ワイバーンっていうか、ワイバーンもどきね。飛行系のモンスターは面倒だからね……それに誰も狩ってないからモンハウになってそうだなぁ」
「それはクオンさんも言ってました。出来ればるーこさんが合流してから行った方がいいとも言われましたので……」
「それまでに練習しておきたいってこと?」
私は少し苦笑して頷いたのです。
ちえるん「そういえば、るーこさんは弓使えるんですか?」
カレン「追々は取るだろうけど……あの子、シューティングは苦手だからスキル前提だけかな」
ちえるん「意外ですね」
カレン「銃は使えるし使ったことがある……みたいなこと言ってたけど」
ちえるん「まぁ、今どきは多少はあるでしょうけど、何か違いがあるんですか?」
カレン「今時はどの国も正規軍が訓練に使うくらいよ?」
ちえるん「なんでしょうね?」
カレン「まぁ、今度何気なく聞いておくといいわ」
ちえるん「そうします」
放置されてんですけどぉー(*‘ω‘ )(‘ω‘ (‘ω‘ *)あら、みゃー
一度、投降したつもりになって、投降できてない事に気が付く愚か者です。
あとがきのネタはその時にぶっ飛んで行ったのだった……
さて、もいもいさんを調子に乗せるために
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