防衛したい理由
現在、戦闘大陸ヴェルハーサ南部の勢力は西の大国であるギルムレッド帝国が圧倒的です。隣国のマイゾ王国が戦闘大陸へ出るための重要拠点を軒並み確保している状態で、共和国との境にあったクリオファス魔鉱田を占領したのもこういった経緯があるのではないかと、推測されます。
「どうして、帝国はマイゾ王国の頭を押さえ込むな形を取っているのでしょうか?」
私は疑問に思ったことを口にする。クオンさんは「良い質問だね」と、いいながらミソスープさんへ視線を送る。彼は「オイラが説明しないとダメか……」と、言って小さく息を吐く。
「ゲームルールのおさらいになるかもしれないッス。他国の戦場への参加は基本的に戦闘大陸のみと定められてるッス。大陸への出入り口を押さえると戦闘大陸へ行けなくなるッス」
「それは分かってます」
「基本的にどの国も戦闘大陸へのルートは3種類ほどあるッス。ただし、国によっては2カ所のところがあって、一カ所は隣国とのルートに繋がってるという特殊な地形になってるッス」
「どちらかの国がそういう形状ということですか?」
私がそういうと、クオンさん、名斬さん、ミソスープさんが指をさして「ビンゴ!」と、言った。
「でしたら、そのマップだけ押さえておけば問題無い話ではありませんか?」
「ま、確かにそうッス。一応、調べてきた感じだと、共和国側と協力をしてでもマイゾ王国を戦闘大陸へ出したくないって勢力が存在してるっぽいッス」
「もしかすると、『紅白蓮』の一件を知っている人間がいるかもしれないな」
と、クオンさん。確かにそうであれば、何かを企んでいる人達を可能な限り戦闘大陸へ出てこれなくして様子を見ておきたい。と、考える人もいるでしょう。
「それにしても、かなり徹底してるッス。情報統制もかなり出来てて、帝国の知り合いに確認の為にチャットで聞いてみたッス。残念ながら軍規に反する内容は教えられない。って言われったッスよ」
「んー、なんだか、それはそれで帝国もなんだか怪しげな動きをしているってことだよね?」
「ま、そうッス。一応、名斬の方でも探りを入れてみたッス……」
「雰囲気で分かると思うで御座るが、砦の警備がかなり強固だったので周辺調査しか出来なかったで御座る……さすがに人口が多いだけあってPSが高そうなのが揃っていたで御座る」
そう言って、名斬さんは地図にマーカーを配置する。
「ざっとで御座るが、砦には複数の傭兵団が待機してるで御座る。こちらの布告人数に対しての防衛数制限があるので、過剰戦力ともいえるで御座る……」
「いや、こちらが布告したら北側かこちら側の入り口にあたるフィーゲル砦へ向かって布告する可能性もあるな」
「こちらが攻めるのに乗じて防衛している間に後方を取る……と、いうことですか?」
「作戦的にはありそう」
そんなやり取りをしながら、クオンさんは地図上のマーカーを確認する為に地図を拡大表示に切り替える。
「まさか、千人以上が防衛待機してるなんて……冗談だろ?」
「残念ながら冗談じゃないで御座るよ。100名クラスの傭兵団が複数入っているで御座る。北側の戦線を維持しながら南側を押さえる二面作戦で御座るが、勝馬ライダーがかなり多いようで御座るな」
「獣王国も堪ったもんじゃないな。こっちもだけど……」
「あ、ネットでの情報によると、全3万アカウント中、アクティブアカウントは7割くらいらしいッス。そのうち、帝国所属のプレイヤーは4割超えた所為で、現状は制限掛かってるッス。ちなみに次に人気は東側のリンダーツとラペルトっぽいッス。特にリンダーツは獣王国を狙い撃ちして帝国と共同戦線みたいッス」
ふと、会話上不思議に思うことがあります。私達が所属するウィンブレール共和国への流入はあまり無いということは分かるのですが、元々、所属人数が少ないという話を聞いていた気がします。
「我が国への流入はどんな感じなのですか?」
私の疑問にミソスープさんは苦笑する。想像通りの反応ではありますが、知ると微妙な気持ちになりますね。
「まぁ、帝国を押さえるのが精いっぱいなところだしね。西側、東側とも国同士の関係も良くないってところ、元々傭兵の数が少ないウィンブレール共和国は不利な立地なんだ」
そういいながら、あえて不利な立地の勢力でゲームを開始する意味がるーこさんやクオンさんにはあるのだろう。ちなみに美弥もその辺りは何か言っていた気がしますが、現状記憶の端っこにあるようで思い出せません。
「やけに北側には人がいませんね」
「ああ、このマップが防衛有利な理由の一つッス。砦の北側には森林が広がっていて、さらに北は山ッス。これによって北側から攻めるにはリスクが大きいので、平野部である西側ルートが最も警戒している感じになるッスね。東側は川があって……流れも速いので簡単に渡れないという理由からある程度、侵攻ルートが制限されてるッス」
「この南側にある砦みたいなところはなんですか?」
と、私が地図上を指し示す。
「砦だね。たぶん、このマップは幾つかの小砦と大砦の構成で出来てるって感じじゃない?」
みゃーが自慢げに別の場所にある私が指している場所と似たような場所を指差した。
「ああ、ここは三つの小砦と本拠地となる砦……と、いうか規模で言えば城だね。それを攻略するマップになっている。でも、小砦を取っても攻略成功にはならないから、結局のところ砦の扉を開けて、そこにある大魔尖塔を破壊することが目的となる……かな」
「戦闘開始ってどこからになるんですか?」
「宣戦布告を行ってからゲーム内時間で12時間後に大魔尖塔が本陣に設定した場所に出現する。本陣の設置場所としては定番なのが3カ所。ここと、ここと……ここ、かな」
そう言ってクオンさんは地図上にマーカーを追加する。クオンさんが指示した場所は南方から攻めあがる形で小砦を攻めながら、真正面から砦を攻略する作戦がもっとも定番として用いられているにだろう。
「ちょっといいですか?」
私はこの地図を見ながらあることを考えていた。ただ、それが可能な行為なのか確認を取る必要があった。私にはゲーム的なことなど分からないのだから。
クオンさんは私の言葉を聞いてから、周囲の面々に視線を送ってから「いいよ」と、返事をした。
「ちえるんの意見を聞かせて欲しい。君なら、この砦をどうやって攻める?」
そう言って彼は悪戯っぽい瞳を輝かせた。
◇ ◇ ◇
るーこさんとしょこらんさんが戻って来たのは既に日が低くなり始めてからだったそうだ。因みにカレンさんはテントでの話が終わってからスグにやって来て私とみゃーが捕まえた。
大概の準備に関してはクオンさんや名斬さん、ミソスープさんが行うような流れで、私とみゃーは作戦上必要な行為として、カレンさんを連れて狩りへ向かうことにした。
「で、なんで私が付いてこないといけなかったワケ? 何が食べれるとか分からないし……あと、料理とか出来ないタイプなのは見た目通りだから」
カレンさんは少し不機嫌そうにそう言った。話が終わってテントから出たとたんに捕まえて、ついてこさせられたのだ。ちなみに何も言わずについて来てくれることを考えたら、とても良い人なのです。
「で? 私は話を聞いてなかったんだけど、そろそろ教えてくれてもいいんじゃない?」
「そうですね。この辺りは地図上ではラッツェル平原で、それをさらに北上したところにあるレーセン樹海へ向かいます」
「あの樹海は今回の戦場の北側に広がる森と繋がっているわね……」
「さすがに日帰りは無理そうなので、予定を若干変更して貰いましたが食料など物資調達をしながら樹海の奥を西側に向かいます。予定としては明日の夕方には目的地に着きたいですね」
「まって、さすがに傭兵20人ばかり連れて来ているけど、森を抜けるのはヤバくない?」
一般傭兵の皆さんは後ろから付いて来て、陣地の設営やルート整備、後は物資輸送が主な役割となります。一応はクオンさんから情報を得ているので、出会う可能性がある魔物は理解しています。
「一般兵の方々は基本的に輸送や雑務がメインです。戦闘は私達で行います……後からクオンさんが他の傭兵団に依頼して攪乱なども行ってもらう予定ですから、宣戦布告前までに配置に付いておきたいので申し訳ありませんが強行軍で行きます。それに、後でるーこさんとミソスープさんが来てくれるらしいので問題無いかと思ってます」
「……攻城戦ルールを逆手に取った攻めってこと?」
「皆さんの話を聞いた感じでは森側は魔物が多く、一般傭兵の損耗率が高くなりすぎるのと、森の特性を考えると戦場に向いていないので斥侯程度で宣戦布告後はほとんど放置だと聞いたので」
「防衛側は配置人数が限られるからね。マップ上有利なのも森側は魔物が出るから面倒って理由で森側にはある程度の兵士配置で放置するパターンが多いわね」
「それも聞いたところ、多くても20名程度だそうですね」
「まぁね。このマップの最大人数が1000人。クオンからも聞いてると思うけど、大規模戦と小規模戦で言えば、小規模戦になるわね。参加比率が4:6で布告側の参戦人数によって制限が掛けられる。一見、防衛側が不利なルールのハズだけど多くの防衛有利マップではそれでも防衛側が有利になってる」
馬上で隣を進むカレンさんがそう言った。音声チャット機能というのはとても便利です。多少離れていてもキチンと声でのやり取りが出来るのですから。
「特に目的の城周辺は北側が森、東側が川になっていますからね。しかも、少し高台になっている所為で西側と南側への視界が非常に遠くまで見れます。城へ続く道や要所になる3カ所にある小砦も防衛有利に働く要因ですよね……本当に意地悪な配置だと思います」
「特にあそこの砦はバリスタが幾つか置かれているから、近づくとマズいわ。装填時間が思ったより長いけれど、衝撃波と貫通が付いているのは反則じゃないかしらね。なので、通常戦略時は出来るだけ召喚なんかを使って撃破する流れが正攻法かな。ただ、戦闘開始時は敵戦力は城の入り口付近からの開始になるから、小砦までのレースが決め手になる場合もあるわね」
「結局、それも本陣を置く場所から考えると不利な場合が多いんですよね」
「そうそう。一応、攻撃側は本陣ともう一カ所、開始位置が設定出来る……って、まさか?」
「ハイ。そのまさかですよ……私達は森の中に陣地を作って北側から強引に攻めます」
少人数で且つ、森の中に棲む魔物さえなんとか出来れば、良さそうな場所が森の中にあったのですから、利用しない手は無いのです。問題はそこに行くためには山や森を歩く知識が必要なだけです。そこから城までは下るだけの簡単な仕事なんですから……出来るハズ。
「問題点があるとすれば……入口ですかね」
私は地図上の城の作りを思い出しながら、そう言いました。私の言葉にカレンさんも「ああ、確かにね」と遠いところに視線を向けながら同意するのでした。
ちえるん「結局、どうして帝国の人達は防衛したいのでしょう?」
カレン「んなこと、私には分かんないわ。ま、碌でも無いことを考えてるヤツがいるってことじゃない?」
みゃーるん「確かに確かに!」
ちえるん「意外とお城の近くで取れる野菜が美味しいから……とか?」
みゃーるん「川で取れる魚が美味しいとか!」
カレン「森で取れるキノコかもしれないわよ?」
ちえるん「でしたら、北側に警備を増やしますよ?」
確かに?(*‘ω‘ )(‘ω‘ *)キノコ狩りいいですね。
さぁ、もいもいさんを調子に乗せるのです! それがいいと思うのです!
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