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閑話 大規模戦、初体験! その2

 中央の魔素溜に到着すると、クオンさんが素早く次の指令を出す。


 当然、敵にとっても味方にとっても中央の魔素溜は重要な拠点だから、両軍が入り乱れて押し合い圧し合いとなることは必須だった。しかし、プレイヤーというのは一定のレベルを超えていればNPCからすれば一騎当千の化物みたいな扱いで、戦場にて対人要素を十二分に楽しむ為の推奨レベルである25付近のプレイヤーが私達以外にも数名いた。


「バーザル・ランディーJr.堀要員を融通して貰えないか?」


 クオンさんの呼びかけにマッチョな禿げたおっさんが近づいてくる。私はとりあえず目を合わせないように周囲を見張りながら、カレンさんと共に敵を牽制しつつ狭い範囲での押し合いに参加する。ちなみにオープンチャットの音声は周囲にいるプレイヤー全てに聞こえる。これはある程度、怒号や爆音が飛び交う中でも聞こえる仕組みになっているので非常に便利だ。シューティング系のゲームだとオープンチャットは使わないけど、声が聞こえる仕組みがあると無いとで戦略や戦法が変わってくる。


 禿げマッチョな人が率いているのは【高次元組体操】という謎な名前の人達で戦士や剣士系のビルドで育てている人が多く所属している雰囲気の傭兵団だ。なんで組体操――と、ツッコミを入れたくなったけれど出来れば関わらないでおこうと私はソッと心のスイッチをオフにした。


「三名はLv10台の初心者だ。存分に使ってやってくれ。協力申請だ! 当然、前線指揮は軍師がやるんだよな? ってか、るーこ嬢はいねーのか?」

「ちょっとした用件んがあってね、別行動中だよ。じゃぁ、申請承認。前線要員にウチから二名をそちらへ貸す。指揮はこちらの指示にしたがってくれれば問題ないよ。初心者たちって召喚経験無いよな?」

「召喚は俺が引き受けよう。一旦引くタイミングでオレとジョニーが向かう。ライダーで大丈夫か?」

「任せる……って、言いたいところだけど、向こうの召喚が来るタイミングに合わせた方がいいかな。敵がナイトで来る可能性は低いと思うから、抑えてくれればエミリアを出す」

「了解した。行くぞテメェら! 軍師がいてくれる! 蹂躙だぁ!!!」


 むさ苦しい声が響くと彼らの傭兵団に所属する人員がテキパキと行動へ移していく。


「みゃーるん。ウチらはあのゴリマッチョについて前線維持。途中で私達だけになるから、最前線での指示系統は私が引き継ぐ予定。わかった?」

「オッケーです。やることは……変わらないって感じですね」

「ともかく、敵が全体的に押して来たら引きつつダメージを受けないように出来るだけ相手の妨害をして、前線が再度上がり始めたら押し返す……まぁ、広い視野を心がけて」


 カレンさんの言葉に私はメイスを上げて答える。


「さぁ、こっからが本当の戦場って感じかな?」


 そう呟いても、相手は所詮NPCで只々人数が多いだけの雑魚なのだ。でも、召喚が出てくると話が変わってくる。召喚タイプは対人、対召喚、英雄の三種類。聞いた話によると、NPCが多い戦場では基本的に対人用のライダーが多く使われ、傭兵団ばかりの戦場だとナイトが多く使われる。


 ちなみに召喚タイプには二種類あって、自分がその召喚したユニットになって戦うパターンと召喚したモノが自動的に戦うパターンがある。対人だと戦乙女、対召喚だとガルムが召喚出来る。なお、英雄ユニットの召喚も数種類あって、自国だと対人、対英雄に強いエミリア。広域バフと対召喚に強く防御性能が高い妖精女王ナツェーリア・リン・リーリアを召喚出来る。ただ、妖精女王は常に来てくれるとは限らないところがポイントで英雄ユニットは確実に来てくれるとは限らないところが、このシステムの変わっているところだと私は思っている。


 閑話休題――


 戦場の様子に意識を戻し、押し引きを繰り返しながら敵を足止めし、吹き飛ばしを繰り返す。私の構成って幅があんまりないんだよね……スイッチで大剣も使えるけど、効果としてはイマイチなんだよね。カレンさんに師事して弓でも取得するかな?


 そんなことを考えながら、突出してきた敵をスキルで吹き飛ばし禿げマッチョの怒号に合わせて動く。


 禿げマッチョさんはどうにも指示が端的過ぎて自分で色々と考えないといけない……と、いうかニュアンス? で、判断しないといけないのは面倒かも。などと思いながらクオンさんの指示がいかにやり易いかと感じてしまう今日この頃。


 ま、何も言われなくてもある程度は動けると思うけどね!


 時折、カレンさんから前に出過ぎだと注意を呼び掛ける猫がデザインされたスタンプが飛んで来る。声に出すと面倒そうだからだろうか……それにしても可愛いスタンプだな。ってか出過ぎてごめんなさい!


 前に出過ぎる現象は他のゲームでもあったから注意が必要だ。禿げマッチョさんの指示はどちらかと言えば前に出過ぎる感じになるので、ここは一呼吸おいてから進み周囲の動きに合わせていかないと。


「敵召喚確認!」


 禿げマッチョさんのところにいるプレイヤーさんが遠眼鏡を見ながらそう言った。


「何が来る!」

「ライダーが2、ガルム1」

「敵の方がマナが豊富だからか……よし、召喚出るぞ!」


 そう言い残してすごい勢いで禿げマッチョさんは後退していく。


「ライダーは範囲攻撃の弓と突進攻撃が基本だから、盾受けを上手く使って。こっちも範囲で牽制して出来るだけ足止めするから上手く近づいてピヨらせて味方召喚に攻撃させるって展開が攻略法ね」

「やることはあまり変わらないって感じですね。とにかく相手をピヨらせる……スタン要員!」


 私は少し不満を口にしながら目の前の敵をピヨらせる。当然、次の瞬間には弓が突き刺さってお亡くなりになる。気持ちいいくらいの連携に私は小さく息を吐いた。


 楽しいけど、そうじゃないんだよね――もっと、ヒリヒリした戦いをしないと腕がこれ以上、あがんないじゃん。


 そう思っていると、巨大な戦車に乗った巨人がやって来る。


「結構迫力ありますね……」

「って、言ってる場合じゃないわよ。避けないと飛ばされるわよ!」


 戦場では一際目立つキラキラと輝く肉体を持つ巨人が乗る巨大な戦車が大迫力で迫ってくる。突進系のエフェクトが見えるので突進攻撃だと判断してバックステップを踏みながら盾でその巨体を受け流す。


 ギャリギャリと金属が擦れる音が響き、私は後方へ飛ばされ着地しつつ身体を丸めて受け身を取る。地面をゴロゴロと転がり、タイミングを計って立ち上がると周囲は沢山の人が倒れてその中心にはライダーが二体。そして、その後方からガルムが駆けてくる。


「よく耐えたわね……」


 と、少し呆れた風にカレンさんは言った。


「自分でも驚きですけどね」

「もう少し早いタイミングで引かないと、もろに喰らうと溶けるわよ」

「リスポンって大魔尖塔(オベリスク)でしたっけ?」

「そう。そこから前線に移動するのは結構ホネが折れるから」

「出来れば、溶けずに継続して戦う方が有利なんですね」

「そ、だから無理は出来るだけ避けて、確実に攻めるのが定石かな。みゃーるんが盾やってくれてるから、継続戦闘能力はかなり高いと思うけどね」

「でも、スタンだけって結構暇なんですよね」

「あら? それを言えば私だって案山子を撃つだけの簡単なお仕事よ?」


 カレンさんも面白みがイマイチと言いたいようで、そんなことを言いながら衝撃波を放つ弓攻撃で敵のライダー達を怯ませる。


「ちなみに紙装甲だから、この状況では攻めないわよ」

「私だって、あんなの相手するのは無理ですよ……」


 どんなものか一度攻撃を受け止めてみたけれど、バランス的に対人用のユニットといわれるだけはある。正直、2体に対して攻撃に出たら確実に返り討ちに合いそうだ。


『ここはオレらに任せろ!』


 やって来た禿げマッチョさん達が召喚変身したナイトが二体。警戒状態で周囲を駆けながら攻撃のチャンスを伺っている。


「あの馬も巨人も本当に強そうですよね」

「まぁ、体力ゲージも約10倍だからね。でも、ナイトって一番召喚コストが低いのよね」

「それは何か間違ってますね」

「まぁ、対人能力が低い設定だから。人に向かって攻撃してもダメージが10分の1以下になるようになってるわよ」

「それはそれで、設定的に理不尽な気がしますね」

「そこはある程度システマチックな話だからね」

「お姉ちゃんなら納得しないだろうなぁ」

「あー、確かに――って、タイミング見計らってスタン攻撃しかけるわよっ!」

「りょー」


 カレンさんはやや前線に移動しながら範囲攻撃可能なスキルを使ってから、敵のライダー一体に鈍足効果を追加する矢を射かける。


 それを回避しようと動いたもう一体の通り道に私は移動して、やや斜め側から盾での攻撃とメイスでの攻撃でスタン効果を付与して相手の足を止める。それを見計らっていた禿げマッチョさんが巨大なランスでライダーを串刺しにしたけれど、そこにガルムが突っ込んでくる。


『甘い甘い!』


 そう言ったのは禿げマッチョさんで、もう一体のナイトがガルムの横っ腹に攻撃を行うと、ガルムは『きゃいん』と意外と可愛い声をあげてゴロリと転がってから怒りの表情を浮かべたように立ち上がる。


 後はこの繰り返しで倒せるわけだけど、前線でスキルをバンバン撃って戦える人数があまりにも少ない為に決定打が少なく結果、お互いにただウロウロするだけという状態で膠着する。


「突破力も防御力も妨害力も不足してますねぇ」

「まぁ、ウチもメインが数名別行動だしね」


 そんなやり取りとしていると、大魔尖塔(オベリスク)から巨大な光の柱が立つ。


「ああ、まさか……」

「そうそう、あれがまさかの……」

「英雄召喚」


 光の柱が収まったほどのタイミングでクオンさんのフィールドチャットが届く。


『これからエミリアたんが行くから、出来るだけ近づかないように気を付けて!』


 そう聞こえた私はカレンさんに視線を向けると、既に彼女は移動し始めていた。


「え、ちょ、ちょっと待ってくださいよー! どういうことですか?」

「エミリアは英雄の中ではちょっと特殊だから。戦場をひっくり返せるんだけど、近くにいるとこっちも溶ける! さっさと後退するよ!」

「召喚の禿げマッチョさんたちは?」

「エミリアたんに溶かして貰う! ともかく、彼奴等の役目はエミリアたんの壁!」

「ど、どういうことですかぁ???」


 そんなやり取りをしながら後退していると、一度森であったエルフのお姉さんが凄い勢いで最前線へ駆けていくのであった。

みゃーるん「エミリアさん、ヤバいッス」

カレン「ええ、そりゃもうヤバいッス」

みゃーるん「英雄ユニットって、みんなあんな感じなんです?」

カレン「何キャラか、似たようなのがいる。獣人ライオットとエミリアだけは特別というか、オカシイ設定」

みゃーるん「味方も巻き込むって乱戦に突貫させたら地獄ですね」

カレン「その地獄戦略が得意な軍師がいるんだけど?」

みゃーるん「あー、あの人ですか……」

カレン「そ、アイツ……」


ん? なに?( ‘ω‘ )(‘ω‘ (‘ω‘ *)なんでも無いよ、クオン


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