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一件落着? それ本当ですか?

「この通り! 本当にごめん!」


 土下座をして平謝りしているのは、るーこさんである。名斬さんが建築した巨大なフラグは見事にるーこさん、ちょこさんによって護られたのでした。


 お陰であの空間に数分間放置されたのでした。因みに、るーこさんはちょこさんが私達の事を記憶の端に置いて放置するなどと思ってもいなく、離脱する直前に気が付いたお陰で、数分間で済んだのでした。


 なお、ちょこさんは軽い感じで「忘れてたわ」と呟いたそうです。彼女にとっては大したことのない話だったのかもしれませんが、置き去りにされた側はたまったものじゃありません。


 不正利用者チートプレイヤーの人達は警察所属のハッカーさんが来るまでゲーム内に用意されている監獄サーバーに隔離したそうです。


「るーこさん、立ち上がって下さい。怒ってはいませんから……いえ、一応はちょこさんに文句だけは言いましたし――あ、次にやったら本気で怒りますよ」


 私はちょこさんに視線を向けると、ちょこさんはあまり変わらない表情でしたが多少反省の色が窺える……気がします。


「以後気をつける(*´ω`*)」

「何ですか? 顔文字が見えたような……いえ、そんなわけはありませんね」


 ちょこさんは本当に妙というか不思議な人ですね。


「あ、一応今回のミッション報酬は出るようになってるから心配しないでいい。ただ、今後はもう少し慎重に情報を集めて動くようにとクオンに伝えておいて」


 ちょこさんはそういうと消えるように何処かへ行ってしまう。


 何というか狐につままれたような気分です。


「結局のところ、よく分からないことだらけですね」

「確かにそうよね。不正チート野郎達が仕組んだとは思えないし、ちょこの言い様をみればもっと大きな何かが裏で動いてるって感じね」

「ゲーム的な話でってことですか?」


 私がそう言うとるーこさんは考え込むように首を傾げ短く唸りを上げ、「私が考えたところで分からん!」と言いきった。


「そうなるとクオンさんですかね?」

「そうなるね。とりあえず、この戦闘も終了したみたいだし合流しよう」


 るーこさんの言葉に頷き、私達はクリオファス魔鉱田まこうでんを正面から出て、戦闘終了後の味方陣営まで向かった。


 味方本陣はクリオファス魔鉱田側にあった敵の本陣だった場所に置かれ軍の編成作業や傭兵団の帰還準備に慌ただしくしている。


「あ、おねーちゃん! こっちこっち!」


 みゃーるんこと私の可愛い双子の妹、美耶がこちらに気付き、ぴょんぴょんと飛び跳ねながら私達を呼んだ。彼女はなんだか、ひと仕事終えたと言う満足そうな顔をしていて――なんとも撫で回したくなりますね。


「ちえるん。ぼーっとしてると私がみゃーるんを撫で回すわよ?」

「人の心を読まないで下さい。それに出来れば私を撫で回してくれません?」

「ちょっ、そ、それは今度ね!」


 そう言ってるーこさんは私の頭をポンポンと優しく叩いた。なんてズルイ……といっても許してしまうんですけどね。


 るーこさんは楽しそうに美耶やカレンさん達と戯れつつ普段より明るく見えるように動いていた。


 正直、私も暗い顔をしていてはいけないと思い、彼女の後を追って取り敢えず美耶を撫で回しました。



 ◇ ◇ ◇



 戦後処理はや報酬処理はクオンさんが済ませておいてくれたらしく、私とるーこさんで撫で回した美耶を程なく解放した頃に彼はやって来ました。


 そして、取り敢えずこれからのことも含めて情報共有をしようという話になったのですが――



「えーっと、どうして傭兵団全員で別の場所へ移動しているのでしょうか?」

「クリオファス魔鉱田攻略戦はキチンとした戦場経験にはならなかっただろうし。ちょうどいい戦場ばしょがあったから、本当にいいタイミングで人が集まりそうでよかったよ」

愚弟クオンそういうことは移動し始めてから言うもんじゃ無いでしょ?」


 るーこさんは私の頭をワシワシとしながらそう言った。嬉しいのは嬉しいけれど、私は知っている。彼女も説明無しでいきなり連れて行くタイプであると。


 因みにですが、クオンさんはクリオファス魔鉱田攻略戦の勝利後すぐに雇っていた傭兵や人足の再編を行った上で即座に次の戦場へ向かう準備を始めたとみゃーが言っていたので、戦闘中かそれ以前から計画していたんでしょうね。


「現実時間のことを考えると一度落ちないとマズイかなぁ」


 みゃーが私をチラリと見てからそう言った。気遣いの出来る可愛い妹なのです。


「ああ、それも元から考慮しての計画だから。ちゃんと確認の連絡も家に入れておいたから。予定している戦場の中間地点付近に移動して陣営の確認と物資調達をする。それが終わったら一度落ちて……そうだな。20時くらいからの再開って感じかな」

「20時からだと私がプレイ出来るのは現実時間で無理しても2時間くらいですかね? あ、先にお風呂に入らないと寝る時間が遅くなってしまいますね」

「その辺りは叔母さんに確認取れてるから安心して。今日は落ちたらすぐにお風呂へ向かったらいいよ。たぶんご飯も早めにしてくれるだろうし」


 クオンさんの問題発言で馬車の中は静まり返る。因みに現在は移動中ということで、6人乗りの馬車内は私と美耶、るーこさん、クオンさん、しょこらんさん、カレンさんである。


愚弟クオン? 態々叔母様に連絡して説明したの?」

「まぁ、一応母さん経由で連絡をしたさ。直で電話したら後から母さんに文句言われそうだったし。お陰でちえ……るんとみゃーるんのスケジュールを押さえれたわけだし」

「しょこらん、明日リアルで殴るけどいいかしら?」

「あ、あまり、本気ではやらないように」

「大丈夫、ボディにしておくから」

「ちょ、なんで俺が殴られないとダメなんだ?」


 と、クオンさんは悲痛な声をあげる。そこが分からないクオンさんが不思議でなりませんね。とりあえずるーこさん……いいえ、現実世界リアルで眞理亜さんに思いっきりぶっ飛ばされるといいでしょう。


「なんで、みんな同意するって感じの表情をしてんの?」

「クオンくん。せめて、ちえるんちゃんに事前に確認を取った上で連絡すれば問題無いのに――どうして、面倒臭がってやらないの?」

「え、だって面倒じゃないか? そもそも、確認取るなら直接話せば済む」

「じゃぁ、どうして直接話さなかったの?」


 そう言うとクオンさんはポンと手を叩いて「確かに!」と言った。


愚弟クオン。親戚とは言え、そういう適当なことはダメに決まってるでしょうが? 事前に予定とかあったらどうするのよ」

「それを押さえようと思って……って、ダメだったか」

「普通はダメですね。まぁ、今回は仕方なかったということで良いですけど――」

「さーせんしたっ!!!」


 クオンさんは素早く馬車の中で土下座をした。一日にして、姉弟揃って土下座をさせた私ってば……うふふ。


「それはそうと、色々と説明をしてくれるんですよね?」

「あ、うん。そうだよね」


 と、クオンさんは筒状に丸められた羊皮紙を取り出し私に差しだす。私はそれを手に取り一度周囲を見回してから皆の反応を見ると、るーこさんがコクリと頷いたので封をしている飾り紐を解き、羊皮紙を広げた。


 そこには何故か日本語で書かれた文書となっており、思わず顔を顰めてしまう。


「雰囲気的に西洋ファンタジーなのに日本語が出てくると微妙な気持ちになるよね」

「分かってはいたんですけど、思わず微妙な顔をしてしまいました。それにしても、商王国の商会『熊壺商会』とマイゾ王国特別騎士団『紅白蓮』との商談などに関する取り決めを行った承認文書……って、どういうことなんでしょうか?」

「色々とおかしな言葉ワードが出てくるよね。まず、『紅白蓮』ってのはαからやってるプレイヤーのララセルが団長の傭兵団なんだ。今回の不正利用者チートプレイヤーが所属してたのも、この傭兵団で、まぁ、彼らはララセルに捨てられたような形になるのか……そこは真相はまだ分からないけど、不正利用者の摘発に関しては協力的だったから間違いじゃないとは思う。そして、同様に『熊壺商会』ってのは同じくαの時にもいたから覚えてるんだけど、熊みたいなヤツ――カイゼルって名前だったかな? が、団長の傭兵団だよ」

「どちらもプレイヤーなんですね。それにしても、商王国の商会とマイゾ王国の特別騎士団ってどういうことですか?」

「うん、それが分かってれば話が早いんだけどね。どちらも傭兵団のハズだから、国の所属とは少し意味が変わってくるハズなんだけど、この証書は商王国とマイゾ王国の特使達が交わした物でちえるんに渡したのはそれの写しだよ」

「ゲームのシステム的にそういった国同士が関わるようなやり取りが行われているということですか?」

「まぁ、ワールドシミュレータの色が強いこの世界では知らないところで国々に所属する人々が政治的なやり取りを行っていたりとかするだろうね。ただね、そこにプレイヤーが介入することは基本的には出来ないハズなんだ」


 クオンさんは基本的に出来ないと言った。しかし、彼が基本的に――と、言った場合。抜け道が存在して、その方法を実現すれば出来るようになる。と、考えるべきでしょう。


「基本的には出来ないんですね。でも、それをやっているプレイヤーがいる……と、いうことですか」

「たぶんね。気が付いたんだろうね……このゲームの欠点に気が付いたんだろうね。システム上の制約がある筈なのに、それを無視して動く方法に」


 クオンさんは苦虫を噛んだような表情をしながらそう言った。彼らと同じ部分に関しての情報をクオンさんは持っているんですね。


「国の所属が基本的には変えれないハズなのに変更出来る方法があったり、色々と抜け道の多いゲームなんですね」

「まぁね。このゲームのシステム上で必要なキャラクターに英雄がいるんだけど」

「戦場で召喚出来る的な話をしてましたね」

「そう。その英雄はNPCではあるんだけど、その権限はプレイヤーに近い――いや、どちらかと言えばGMの方が近いかもしれない」

「意味がよく分からないわね」


 るーこさんが呆れたようにそう言ってから溜息を吐く。私も聞いていて正直、さっぱり分かりません。


「GMみたいにゲーム内の色々にアクセス出来る権限があるってことです?」

「みゃーるん、なかなか鋭いところを突いてきたね。英雄キャラは基本的にこの世界の住人からすれば、ありえないくらいのスペックを持つ人間だ。正直、英雄次第ではプレイヤーより遥かに強い。さすが、召喚アルバイトで戦場を荒らしまわることが出来るだけはあるよ」

「でも、それくらいなら、ただパラメータが高いキャラってだけですよね?」

「次がポイント。この世界はある程度はシステムで管理しているけど、国や組織……他にもそこに住む人々の生活はシステムが完璧に管理しているわけではないんだよ。そして、英雄は強い以外にも国の根幹に関わる人物も多くいる。我々が所属しているウィンブレール共和国の英雄を例に挙げてみよう。まず、森の守護者エミリア。数少ないエルフにして、古き英雄とも呼ばれている。彼女はこの共和国においては政治には関わらず、森に引き籠っているせいで他の英雄とは少し違うとは言えるね。そして、もう一人。妖精女王ナツェーリア・リン・リーリア。彼女はこの国の最高機関である妖精議会の議長でもあり、国の元首。アルバイトで呼び出せたときはロリコン達が喚起する国のアイドルにして唯一の存在!」

「そこ、力説するところですか?」

「と、すまない。エミリアは森にいるから簡単に会えるけど国政には関わっていないし、国を動かせるようなことは出来ない。でも、もし妖精女王とお友達だった場合――」

「それでも国政になんか手は出せないんじゃ?」

「まぁ、英雄による……と、しか言えないね。でも、可能性としてはありえる。システム上、NPCと関係を結んでそこに住まう人間として優位になるというのは、特にプレイヤーという枠を逸脱しているわけじゃない」

「そのプレイヤーが国の貴族として認められて爵位を得たり……ですか?」

「爵位で済めばいいけどね……」


 と、言ったクオンさんの表情はどこか少し暗かった。

みゃーるん「結局のところよく分からないよね」

ちえるん「そうね。話があっちに行ったり、こっちに行ったりだし」

みゃーるん「自分が英雄になるなんてこともあったりしてね」

ちえるん「さすがにそれは無いんじゃないの? すごく面倒そうじゃない?」

みゃーるん「確かに! でも、アルバイトで召喚されるってちょっと面白う」

ちえるん「他の戦場で戦ってる時に呼び出されたり、寝ているときに呼び出されたら嫌じゃない?」

みゃーるん「あー、やだね」



でしょ(*‘ω‘ )(‘ω‘ *)だね

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