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ズルをする者達の絶望 その3

 駆け出したるーこさんは自身が攻撃出来ない事を思い出したのか急ブレーキをかけて地面を滑る。


「ちょっと忘れてたわ」

「ふっ、ふざけんなっ! ビビるだろうが!」


 そう言いながらエアーサスとその仲間の男が銃を構えて攻撃を行う。


 るーこさんは初撃の二発を最小限の動きで躱し、その後の二発は手にした刀の刃を滑らせて弾道を逸らせた。


「クソッ、やっぱチートじゃねーのか?」


 そう言いながらさらに二発、合計四発の弾が続く。


 それをるーこさんは再び刃を滑らせ、一発は身体を反らすことで躱し、最後の一発は余裕の笑みを浮かべながら斬り伏せた。


「はい、次弾を装填しなさいよ。弾丸は六発なんでしょ? 今時リボルバーなんて笑うわよね」


 るーこさんの言葉を聞いたエアーサスは不敵な顔をして動くと、一瞬だけ身体がブレたように見えた後に再び銃を構え銃弾を放つ。


「残念だが、装填はもう終わってんだよ!」

「そこもチートだったのね。装填時間がやけに短いと思ってたのよっ!」


 素早く放たれた弾丸をるーこさんは身体を反らせつつ流れるような動きで弾を弾いていく。もう一人の男に至ってはやけくそなのか大声をあげながら銃を撃ち続ける。


 現実世界であれば絶対に銃の弾を受けたり弾いたりなどは出来ない。しかし、あくまでもゲームの世界であり、また対人のゲームである故に銃が命中しやすいように補正が掛かる仕組みが存在する。彼女はその特性を知っている為に銃口の向く方向と放たれるタイミングを見ながら弾が来る方向を予測して動いていた。


 彼女は特に対人のアクションゲームを得意としており、読み合いにおいては高速でパズルを解くように緻密で計算された動きを感覚で行うことが出来る変人である。実弟であるクオンからしても、野性の超反応というモノはどれだけ計算しつくして動いている人間でも勝てる要素はない。と、断言するほどである。


 そんなことは知らないちえるんからすれば心配過ぎて気が気でない状態で他のメンバーがどうして落ち着いてみているのか疑問に思うほど。


「皆さん、よく落ちて見てられますね……」

「大丈夫。るーこは基本的には出来ないことはしないから。それにるーこはこのゲームで銃を使ったことがあるから」

「どういうことですか?」

「いまって、クローズドβテストよね?」

「そう……ですね」


 私は未だによく分かっていないけれど、クローズドβテストというものに参加している。と、いうことは分かっています。ちなみにβということはαやγがあるのでは? とも思ってはいます。


「αテストがあったんだけど、α時点では既に銃は初期実装しない予定になっていたのでαテストでは使用できない武器として、データベースからも一時的に取り除かれていたんだけど」

「……よく分かりませんが、それではαテストに参加していたるーこさん達が銃に触れる機会は無いのでは?」

「ほとんどのユーザーは知らないことなんだけど、実はクローズドαテストの前にプレαテストとしてプロのゲームプレイヤーや有名ゲーム実況配信者を呼んでゲームのテストプレイをして貰ったことがある」

「るーこさんはそこに含まれていた……と、いうことですか?」


 私がそう言うと、どこか楽しそうに瞳を輝かせてちょこさんは「その通り!」と、答えた。


「特にるーこは所属プロの親会社が運営会社だから、ほぼ強制参加だった。ま、その時の意見から銃の初期実装見送りが決定したんだけどね」

「そ、そうなんですね」

「そうそう。でね、剣と魔法の世界において銃って扱いが難しいってのもあるんだけど、本物の銃みたいに反動とかも含めた命中精度やダメージや効果とか、とってもバランスが難しいわけ。特に日本ではリアルで銃火器を扱った事がある人間なんて、ほんの一部なワケでしょ? それに多人数戦を売りにしているゲームにおいて多くの技術を必要とせずに簡単にダメージを与えれる武器というのはバランスブレイカーとなる可能性が非常に高い。普通に考えたらわかる話ではあるけど、今作の制作プロデューサーが銃火器が好きな人間で、どうしてもって強引にねじ込もうとしたんだ。ま、正直言って何を考えてる? って感じだけど、大手のゲーム会社ではそういう頭のおかしい人間が何故か有名プロデューサーだったりして、またまた、そんなのが有名ゲームデザイナーとかの肩書を持ってたりするワケ。ホント、笑っちゃうわね。っと、ともかくよ。ともかく。我々も忙しくて反対するタイミングを逸していたのが不味かった。気が付いたら実装まで持っていかれてたワケ」


 と、薄い抑揚で驚くほどの早口でちょこさんは語った。因みに内容の大部分はよく分からない話でしたのでスルーさせて頂きます。


「それで……有識者を集めたテストをやって実装を止めるようにと画策したんですね」

「そう。理解力が高くて満足だわ」


 そうこう言っている間もるーこさんは二人の不成者ならずものが放つ銃弾を躱し、弾き、受け流していた。


「かなりの猛攻なのに、まだ余裕がありそうですね」

「まぁ、そうッスね。特殊移動とかスキルを使ってないッスからね」

「そういえばスキルとかありましたね」


 ゲームだという認識はあるけれど慣れには至っていないせいで、ついついそういったことを忘れがちです。


 刀で銃弾を受け流しながら払い、その銃弾を他の弾に当てるのはどう考えても尋常じゃないでしょう。それにどうやってタイミングを測っているのか全く分からない。


「銃をゲームに実装する為にプランナー達が必死に考えた仕様なんだけど、銃の種類を限定する。因みに初期実装は短銃で装填数は六発。弾丸の装填をクールタイムの代わりにしてダメージはある程度高めに設定。実銃に比べて射出速度が遅い、代わりに命中精度は高い。こっちは簡単にいうと反動は薄くてとにかく真っ直ぐに飛んでいく。この辺りが実装に向けた設定で本来ならばβテスト時に実装するかどうか? と、いう話もあったのだが運営計画上実装項目から外したという経緯はあれど、サーバー内にデータを残していたのが今回の失敗だと思う。ああ、そうだ。私がしたかった話はそうでは無い。ようは命中精度が高くて弾が真っすぐ飛んで来るということは、相手の動きからある程度射線が読み取れる。と、いうことだ。そう考えると、そこまで難しくないのだろう?」


 そう言われると、何となく納得出来てしまう自分がいる。確かに相手が撃つタイミングと弾が飛んで来るタイミングさえ分かれば()()()()()()()ということを前提に考えれば現実味が帯びてくる。


「難易度の話であれば、アレだけの猛攻を防ぐにはかなりの技術が必要となるので、難しいと言える話だと思います。ただ、やろうと思えば出来なくはないかも……くらいです」


 私は素直に感想を述べる。妙に饒舌だったちょこさんは「そう?」と、あまり感情の籠っていない返事を返し、るーこさんの方に目を向けた。


 正直、彼女の饒舌スイッチはどこらへんなのか不明ですね。


 そうこうしている間も、るーこさんは流れるような動きで彼等の銃弾を躱し続けていた。


「それにしても、すごい集中力ですね。それでも10分は厳しいと思うのですが……何か秘密でもあるんでしょうか?」

「まぁ、普通の人は長くて3分くらいッスよね。クオンにしてもそうッスけど、あの手のリスクが高い状況に酔うというか……下手をすると1時間くらいは同じように集中出来るッスよ」

「私だと5分くらいが限界ですかね。うーん、意外と楽しみながらで考えたら……出来るのでしょうか?」

「あー、団長も素質はあると思うッス。さすが同系統の血を持つ者達ってところッスね」

「なんだか、褒められているようには思えませんが?」

「気のせいでござるよ。それにしても、るーこ殿の剣捌きは相変わらずで御座る。同じ流派なのでござろう?」


 と、名斬さんは私にチラリと視線を移す。


「確かに流派は同じですが、私は父に教わったので多少動きが違うんです。るーこさんやクオンさんは祖父から直接教わっていたハズですので、るーこさん達の方が源流と言えると思います」

「そうなのでござるか?」

「はい。それに私の父はアメリカ人ですから、力業を用いるクセが多々ありまして。その影響もあって、結構強引な立ち回りになってしまうのです。るーこさんを見ていると、そういう点を反省しないとダメだなぁ……と、思いますね」


 私がそう言った後、名斬さんとミソスープさんはお互い視線を合わせてから、どこか遠くへ視線を移した。いったい、何があったのでしょうか?


 そんなやり取りをしながら、観戦しているとちょこさんが設定したタイマーの数字が10分経過したことを伝えるアラームを鳴らした。


「くっ……な、なぜ……当たんねーんだ…………」


 エアーサスと呼ばれていた男はあきらめずに撃ち続けていた。しかし、目の前にいる女に決定的なダメージを与えることが出来ずにいた。こちらはフレームカット、装填短縮、弾数無限、スタミナ消費0など、特に戦闘に有利なプログラムが走っているハズなのに……だ。


 自身のコンソールで確認しても、禁止されていないプログラムは正常に動作している。


「くそっ! チートじゃなきゃ! なんだってんだ!!!」


 彼の叫びと共に放たれた銃弾をるーこは真っ二つに斬り裂く。


「簡単に言えば、ただの個人的な技術よ。ま、リアルチートと言われても仕方ないところもあるんだけどねぇ」


 と、るーこさんは意地悪そうに笑って彼等を絶望へと誘う爆弾発言を行うのであった。

ミソスープ「あれ? まだ引っ張るッスか?」

名斬「ミソ殿、それは言ってはいかんで御座る」

ミソスープ「いやぁ、でもなぁ……」

名斬「我々はソッと後方腕組で見ておくのが一番安全で御座るよ」

ミソスープ「正直言って、後方腕組おじさん的な動きって苦手ッスよ。オイラはいつでも煽ってくスタイルッスよ?」

名斬「わかってるで御座る。しかし、ここは黙って、黙っておくで御座る」

ちえるん「一体、何を言っているのでしょう?」

ちょこ「放っておくに限る」


気になります(*‘ω‘ )(‘ω‘ *)時に我慢も必要よ



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