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ズルをする者達の絶望 その2

長くなりそうだったので分割(ΦωΦ)

ペース上げたい、ペース上げたい……

 絶望的な状況に追い込まれたエアーサスと名乗る男はるーこさん、ちょこさんを罵倒しながら喚き散らす。幾度もるーこさんは彼を黙らせる為に顔面に蹴りを入れていた。ちなみに、ちょっとでも口を動かした瞬間に蹴りを入れだしたので彼も喋ることを諦めたようで静かになった。


「急に静かになるのも腹立たしいわね。もう少し蹴っとく?」

「ぐっ……や、やめて……くれ、い、いや、くださっ――ぐほぉっ!」

「私の許可なく喋るなと言わなかったかしら?」

「ぐっ……」


 ゲーム的な仕様上、痛覚なんかはほぼ無いに等しいハズなので蹴られたとしても、痛くは無いハズなのだけど……どうして、あんなに派手な反応を示すのかしら?


 そんなことを考えながら彼等のやり取りを眺めていると、ちょこさんと目が合う。


「るーこ、彼女がこの愚かしい雑魚がるーこの蹴りを嫌がる理由を聞きたいようだ」

「んー? 大したことじゃないと思うけど……ま、身体のどこかなら効果は大して無いわよ。顔面は一時的に視界不良になるし、痛くは無いけど腫れあがった感じとか――特に打撃の衝撃に関してはダメージは無くても感覚として不快なのよ。その辺りも本格的な格闘技とかの経験があったりとかで変わってくるみたいだけど。彼等みたいなインドア派にはキツイでしょ?」

「……そういうものなんですか?」

「ちえるんなら、無心で打撃を受けそうね……」

「反射的に目は瞑っちゃうかもしれませんね。でも、痛くないなら大したことありませんね……」

「でしょ? 私もそう思うんだけどねぇ。男は痛がり屋が多いからねっ!」

「うぐっ……」


 そう言ってるーこさんは頭をワザと揺らすように再びエアーサスを足蹴にした。


「で、そろそろキミ達に謝って欲しいのだけど?」

「謝って……どうなんだよ……クソッ」

「簡単に言えば、私が満足するからに決まってるでしょ? 既に起こったことや過ぎたことを謝られても、私が直接被害を受けてたわけじゃないし。まぁ、許す気は無いわけだけど……ただ、アンタ達を謝らせることで私の心が少しだけ晴れる――でもね、私が怒ってるのはアンタ達が私の大事な仲間を壊そうとした事よ。絶対に許されることじゃない。それに関しては心に刻みこんであげる」


 そう言ってるーこさんは再び彼を蹴ろうとすると、彼は腫れあがった顔で焦りながら謝罪の言葉を口にした。


『因みにるーこのアレはただの嫌がらせではあるけれど、かなり効果は高いということは過去の事象で実証済み。ゲーム上の仕様より、この空間の方が多少感覚が鋭敏になる副次効果がある』


 と、ちょこさんから個人用の音声チャットで声が届く。


 私は少し戸惑いつつ、前に美弥から教えて貰ったチャットの切替を行ってちょこさんに返事をする。


『そういうモノなんですか?』

『特に感情に関わるところは鋭敏に反応をしてしまうのは脳の機能的な部分だと考えられている。恐怖や怒りなどの感情は特に如実だ。本能的な部分ほど出やすい傾向にある。まぁ、普段から理性的に抑える訓練をしている場合は別だが、ネットダイブにおいて深いところへ行けば行くほど、本能的な部分を抑えるのが難しくなる』

『なんだか、不思議ですね。でも、深いところへ行き過ぎると時間や感覚がぼやけるんですよね?』

『そうだ。一定より深い場所は時間という概念や個人という概念があやふやになる。それは理性や思考する行為が本能的なモノでは無いことに由来するのでは無いかと考えられているが、立証は出来ていない』

『自ら戻ってこれないところへ行こうとするほど、無謀なことはないですものね』

『その通りだ』

『それにしても、痛みはほとんどないのにあれ程に嫌になるのでしょうか?』

『自分が暴力で圧力を受け続けるというのは、そこに現実的な痛みが無くても結構辛いモノだよ。それにこちらが本気になればいつでも現実リアル仮想空間バーチャルでも命を奪えるという脅しが拍車を掛けているのさ』


 ちょこさんはほとんど感情を見せずにそう言うと少しだけ表情を緩めた――気がした。


 そんなことを思っていると、るーこさんがちょこさんに向かって彼らを起こすように言い出す。


「何度やっても変わらないハズですよ。それに彼等から挑んでくるなら分かりますけど、無理に立たせて……張り倒すのはただの暴力ですよ? 怒っているのは分かりますけど、るーこさん――」

「ちえるんに言われなくても分かってる。だから、私は攻撃しない……そうね、二人を相手に10分だけ耐えてあげる。それで私を倒せれば見逃してあげてもいいわ。ただし、10分経過したら確実に倒すよ」

「る、るーこさん!?」


 私が声をあげると、彼女は優しく微笑んだ。こういう時にそういう顔をするのは本当にズルい。


「ちなみに私は愚弟クオンより強いわよ。と、いうか弟に出来て私に出来ないわけなんて無いのよ。特にこの世界ではね」


 そう言ってるーこさんは男を踏みつけるのを止めて私の傍へ歩いてやって来る。自信にあふれる瞳はどこかギラギラとした輝きを持ち、不敵な笑みを浮かべる姿はどこまでも頼もしかった。


「無茶なことを言い出すのはるーこの悪いところ。でも、こういう時の彼女は誰も止めれない……例えネットの海に棲んでいる化物でも彼女の速度を超えることは出来ない――人という枠の中にいる限りは」


 と、意味深なことをちょこさんは言いながら、システムコンソールを開き新たなバトルステージを用意する。


 周囲の環境が光の粒子に包まれて、新しいバトルステージが現れて私達はその上にフワリと降り立つ。正直、何度体感してもこの感覚は慣れない。


 ここはまるで戦場の真ん中に作られた闘技場のようで、直径50メートルの円形に有刺鉄線と木で出来た杭に囲まれており、その真ん中に立つ人間を絶対に逃げることが出来ないようにしていると、言わんばかり。


 その周辺は荒れ果てた戦場で白骨化した死体や腐乱死体、馬の死体などがあちこちに転がっており、凄惨で陰鬱な気持ちになる場所です。私は戦場の空気感に少し緊張しつつ、あまり周囲を見ないようにと小さく息を吐いた。


「とても趣味の悪い場所だろう?」


 と、ちょこさんはそう言いながら、どこか寂しげな表情を浮かべた――かもしれない。正直、なんとなくそう思ったと言った方が正しい。


「嫌な空気のする場所ですね」

「全くだよ。ただね、るーこに頼まれたんだよ。一番死の臭いが強い闘技場を頼むってね。あの人は自分を追い込むのが好きだね。弱い相手を蹂躙するのも好きなクセに、自分より強い相手をする時が一番ワクワクするっていうくらいだから……困難を愛する変わり者さ。クオンも似たようなモノだけどね」


 そう言いながらもとても楽しそうなちょこさんを私は少し嫉妬しながら見ていた。


「私にはキミもどちらかというと、そちら側の人間だと思っているんだけど?」

「――まぁ、当たらずも遠からず。ですかね」


 私は私を最も理解している。私は……眞理亜まりあさんに憧れて生きてきた。彼女みたいになりたくて頑張って来たわけなのだから、当然、るーこさんに似た思考をしている部分がある。ただ、私の知っていた彼女と今の彼女には随分とギャップがある。本来の私に近しいところのある『るーこ』という人間と、幼い頃に印章強かった『眞理亜』という人間の違いを感じている。でも、私の視線、鼓動をいつも搔き乱すのは『あの人』だ。


「なるほど、言い方を間違えたようだな。キミはるーことは少し違う、どちらかと言えばクオンと近しい系譜なのか。いや、親戚と言っていたな――なるほど、面白い一族だな」

「そうかもですね。私の双子の妹はどちらかと言えばるーこさんに近しい系譜ですよ」

「なるほどね、興味深い」


 見た目はしょこらんさんに瓜二つなのに、全くと言って似ていないちょこさんに私は親近感を感じていた。そうだ、私も見た目は似ているが似ていない姉妹なのだから。


「双子で『クオン』と『るーこ』に似ているなんて、興味深すぎる案件だ」


 ちょこさんのそんな呟きを聞いている間に男達がるーこさんに向かって駆け出していた。

ちえるん「結局、この戦場だ誰が作ったんですか?」

ちょこ「残念ながら、それは言えない。ただ、この闇は深い」

ちえるん「確かに闇が深そうですね。ひとつ気になっているのですが……」

ちょこ「なんでも言ってみ」

ちえるん「あそこからどうやって出るんですか? 出入口がなさそうです」

ちょこ「だよね。ゲーム的な都合ってヤツだよ」

ちえるん「なんとなく、そう思っていました(*‘ω‘ *)」


意外とよく分かってるね(*‘ω‘ )(‘ω‘ *)日々勉強です!


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