ズルをする者達の絶望 その1
あけましておめでとうございます。
今年もボチボチ頑張りますので、応援宜しくお願いします!!!
男達は地面に這いつくばっていた――そして、彼らの理解を超える事が起こっていたからだ。
「くぅっ……卑怯だぞ! どんな手を使った!!!」
「そうだ! そうだぞ! こっちはフレームカット各種は動いてるんだ……普通に考えたらチート使ってない限りは俺たちが負けるワケがない!!!」
男達はシステム上の制限を受けて倒れ伏した状態で罵声を上げる。ちょこさんが彼等を見下した瞳で見つめながら小さく溜息を吐いた。
「多分、何度やっても結果は変わらないし、彼女達は不正ツールなんて使ってない。私が手を貸してるなんてのも……まぁ、君達が使ってる一部危険そうなツールの無効化くらいだよ」
「そ、そんなわけあるか? 一部ツールに制限を受けてるといっても、フレームカットや武器交換範囲の数値、そもそも性能が壊れてて実装見送りになったっていう銃を使ってんだぞ? それに一部パラメータだって弄ってるんだ……性能差で負けるわけが無い。だとしたら対抗出来るようなチートしかねぇ」
「まぁ、言いたいことも分からなくは無い。しかし、このゲームの仕様上パラメータの差というのはあくまでもおまけみたいなものさ。逆にレベル差やパラメータ差があればあるだけ、その差を埋める為のシステム働く仕組みなワケだし、ある程度は公平に戦えるようになっている」
ちょこさんはそう言いながらインベントリから棒付きの飴を取り出して咥える。
因みにシステム的なところはイマイチ理解出来てませんが、レベル差やパラメータ差がある相手に対しては補正効果というものが戦場でのルールにあるそうで、一定範囲以上の差がある場合には弱い方は強い相手に対して大きなダメージが入るような仕組があるらしいです。
武器種やスキル、職業による補正値がある上位プレイヤーとある程度互角になるらしいですが、私の印象だとレベル差がある時は下位有利なのでは? と、思うのですが違うんでしょうか?
「ちえるんが不思議そうな顔をしてるから言うけど、別に下位有利ってことはないからね」
と、るーこさんは武器を鞘に収めようとして少し間をおいて止める。
「通常の攻撃におけるダメージやスキルの効果値なんかはパラメータやレベルの方が重要視されてて下位の補正値は大したことは無いのよ。ただし、特殊攻撃……いわゆるカウンターとか致命攻撃とかには下位から上位に対しての方が補正値が大きい」
「プレイヤーに対してだけですか?」
「ええ、プレイヤーにだけね。魔物にも有効なら面白く無いでしょ?」
「なるほどです」
そんな会話をしている間も不正利用者の方々は突っ伏したまま、こちらの様子を伺うように不審な眼差しを向けていた。
「いい加減に諦めてごめんなさいしたらどうかな? この二人を説得して戦って貰うのに私はとても苦労したんだ。ね? わかるでしょ?」
と、ちょこさんは感情のこもっていない口調で淡々とそう言った。当然のことだけど、彼等はそんなことで納得するワケはなかった。
「んー困ったな意外としぶといね。これならクオンと10分戦わせた方が納得出来る?」
「どうして、そこでクオンさんが出てくるんですか?」
「良い質問。貴女達2人なら現状の条件なら彼等に勝つのは必然。ただ、クオンの場合は勝つことは出来ないけれど、10分でも20分でも、この程度の不正利用者3人くらいなら、ずっと相手が出来る」
「えっと、クオンさんが避け続けるって意味ですか?」
「そう。アイツの特技。普通の人間より、ネットダイブ中の反応速度が速い。稀にいる伝達系の発達なのか、この世界への最適化なのか不明だけど。避けるだけなら、誰よりも優れている」
「攻撃が入ると微妙になるのが愚弟らしいところだけどね」
「そんな人間いるわけねーだろ? チートに決まってる」
エアーサスと呼ばれている男は突っ伏した状態で人を馬鹿にしたような雰囲気でそう言って舌打ちをした。
しかし、突っ伏している男の内の一人が「いや、そんなまさか……」と何かを思い出すように呟いた。
「知ってんのか?」
「昔、とあるゲームで噂になってたヤツがいて、ソイツはプロ顔負けの動き……っていうかともかく動きがおかしくてチートを疑われた」
「チートじゃねーのか?」
「俺もチートだと思ってたさ……いや、俺がチートするキッカケと言ってもいい。アイツに負けたんだ……アイツは回復支援キャラのクセに殴ってくるんだ……こっちの攻撃は当たりもしない、どうやって躱しているか分からない……ああっ……」
と、男はガクガクと震えだす。それを見たちょこさんが素早く彼に触れると、彼は凍ってしまったように動きを止めた。
「クオンめ酷いトラウマを植え付けてしまっていたようだな。ここで強制終了されるのも困るから一時的にシステムロックさせて貰った」
「そんなこと、出来るワケが……」
「だから君達は雑魚なのだよ。頑張ればA級くらいまでは行けただろうに……ま、そんな雑魚達と比べられるのも腹立たしい話だけど。私達の支配領域で勝手にしようとするのは、ある程度は許容してやってもいい……しかしだ。君達は良くない。我々の玩具を弄び壊す邪魔者だ」
「うぐっ……」
ちょこさんは相変わらず上下しない口調で話しながらも機嫌が悪いのかゴミを見るような視線で突っ伏しているエアーサスを睨んだ。
睨まれた彼も、彼女の恐ろしい雰囲気を感じたのか言葉に詰まったような声をあげた。
「くっ……なんだよ……ち、チートだろ?」
「チート? 何を言っている? ただの圧じゃない。データ的には何もしていないのにチートという? やはり雑魚はダメだな」
「どういうことだよ……なんでハッキング出来ないんだ……」
「お前より上手だからに決まっている。正直、お前の紡ぎ出すコードなんて、単純すぎて詰まらない詰まらなすぎる。まぁ、戦いながらも私に向かってハッキングを行おうとしていたことだけは褒めてやる。しかし、貴様らが行ってきた罪が消えるわけではない。まぁ、いきなり警察が来て逮捕されるわけではないだろうけど」
「た、逮捕なんかされてたまるかっ!」
男達は焦りの声を上げる。しかし、ちょこさんもるーこさんもそれを嘲笑うように彼等を見下してその様子を見ている。
「あんたらさぁ、今までやってきた違法行為を考えたら逮捕なんて生温いと思わない? いっその事こと、現実世界に戻れないようにしてあげても構わないわよ?」
そう言ってるーこさんはエアーサスと呼ばれている男の頭を踏みつけた。
「やっ、やめろっ! ま、まだ……殺しはやってない! それに女達だって充分に楽しんだ筈だ、極上の快楽なんてそうは体験出来ないんだからな!」
「ちょこ、やっぱコイツら処分しよう。すごくムカつくわ」
「るーこさん、ちょこさんも私刑はダメです。どんな理由があっても間違ってると思います」
「ちえるんはいい子だねぇ……」
そう言ってるーこさんは優しく微笑んだ。
「でもね、コイツら……まぁ、ネットの世界では結構いるであろう電子ドラッグを使った犯罪行為だけどね。ネットダイブ中の人間の感覚を勝手にいじり回して普通ではありえないレベルの刺激に反応するようにする行為はマジで最低で最悪だ」
彼女はそう言いながら、踏みつけた足に力を加えていく。
「ぐぅっ、やっ、やめろぉっ……」
踏みつけられている彼は苦しそうな声をあげるけれど、るーこさんは止める様子は無く、その瞳には怒りの色が濃くあらわれていた。
「人間、普通というのは健常な状態だから普通と思うものよ。異常な状態が普通になると心と身体のバランスが著しく歪むとどうなる? 因みに殺しはやってないって言ったよね? この犯罪における自殺率の高さは異常なの知ってるでしょう? まさか、知らないっていうの? アンタの犠牲者に自殺者がいないとは限らないよね? アンタら原因でこの世を去った人間が少なからずいる。幸い私の知り合いにはまだ居ないけど、今後はあるかもしれない……お前達が生きてるだけで、お前達が自分の欲を満たすだけで……やっぱり処分すべきよね?」
「ヒィッ、や、やめろぉっ、そ、それに……ここで殺してもアバターが死ぬだけで俺は死なないから意味なんてねぇ……分かってんだろ?」
「仮想現実で殺しても死なないのは当然知ってる。でも、私の傍にはヤバイウィルスさえも無効化出来る超凄いハッカーがいる? さて、現実的な死をデジタルの中で呆然と受け入れる準備は出来ている?」
そうやってるーこさんの脅しに彼は「ぐっ」と苦しそうな声を出す。しかし、何かを思い出したのか再び焦った声でちょこさんに向かって声をあげた。
「そ、そうだ……ハッカーのアンタは逮捕されるわけじゃないって言ったよな? ま、まだチャンスはあるってことだろ?」
「あー、確かに言ったね」
「な、なら助けてくれよ! 損はさせない!」
「うーん、キミ……何か勘違いをしてないかい?」
そう言ってちょこさんは踏まれている男の目の前でしゃがみ彼を侮蔑するような冷たい視線で見下ろす。
「まず。すぐには逮捕され無いとは言ったけど、すぐにってだけだ。元々警察とも連携してあった案件だからね。キミらが逮捕されないワケは無い。そもそもだけど、この空間から不正利用者を逃す気なんて一ミクロンも無い」
「なっ!?」
「それにるーこが怒っている同様に私も怒っていると伝えた筈だが? まぁ、心優しい私は死などと生易しい罰は与えないさ……お前達のように現実から逃避するのは構わない。一向に構わない。どちらかと言えば推奨したいくらいだ」
そう言ったちょこさんの瞳には少し狂気にも似た輝きがあったが、それ以上に感情の上下が非常にわかりづらいので淡々と言っているだけにしか感じない。怒っているという言葉が信じられないくらいで、どこか愉快そうにも見えるせいで彼女の発する言葉を理解するには相当に冷静分析が必要そうだと私は思いなら、成り行きを見守ることにした。
ちえるん「あの人、踏まれてるわりには余裕がありそうですね」
ちょこ「時にああやって綺麗どころに踏まれることを喜びに思う奇天烈なヤツもいるのよ」
るーこ「そう言われると早くこの汚物から足を退けたくなるんだけど」
ちえるん「るーこさんに踏まれる……」
るーこ「ち、ちえるん?」
ちえるん「素足……黒タイツなるーこさんに優しく踏まれる……なんでしょう……この不思議な感じ」
るーこ「らめぇ! 変なのに目覚めちゃ、らめぇぇ!!!」
ウフフ、冗談です♪(*'ω')(´꒳`*)ならいいんだけど




