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初勝利

 クオンさんから、戦闘における簡単なレクチャーを受けて、目の前でポヨポヨしている『ジャイアントウォーラビット』に向かって走りこむ。


 構えた刀で流れるように横凪で一閃――


 ダメージエフェクトとダメージ値が表示され、キチンとダメージが通っていることを確認、敵が次の瞬間にアクティブ化され、自動的に攻撃者を目標ターゲットにする。


 巨大なウサギは『キュキュキュー』と嘶き、興奮した様子でこちらに突進してくる。


 攻撃予測範囲が瞬間的に映し出され、その範囲より素早く移動すると同時にウサギがそこに体当たりをしかけてくる。私はそれを確認しながら、さらに二撃打ち込むことでウサギを撃破する。


「なるほど……攻撃予測範囲を見てからでもよけれる感じですね」

「遅い攻撃ならね。早い攻撃の場合は見てから反応だと確実に喰らうから気を付けて。AGIを上げれば予測範囲が表示されるタイミングが若干早くなっていく。でも、相手のAGIにある程度依存するから、あくまでも参考にしかならないよ」

「ねぇー、私もやってもいいですか?」


 と、美弥がいつの間にかにメイスをブンブンと振り回しながらそう言った。


「なかなかマニアックなチョイスだね。盾とメイス……西洋の騎士スタイルか」

「うん、後から回復系取って、前線で殴りながら回復して耐えるって感じで戦えればいいかなって!」


 そう言いながら美弥は歩いているウサギをメイスで殴る。


「後でSTR振らなきゃ……」


 反撃してくるウサギの攻撃を盾で受け止めながら、メイスで反撃をして止めを刺す。


「うん、なるほど。早く職業ジョブ戦闘スタイル(クラス)取って、スキルを使った戦闘を試さないとダメだね」

「そういえば、職業ジョブ戦闘スタイル(クラス)って、どうやって取るのかしら?」

「いい質問だね。でも、とりあえず後少しだけウサギと戦ってレベルをあげておこう」


 クオンさんの言葉に従って、私と美弥は半時ほどウサギを倒しまくってレベルを一つ上げた。


「うーん、このゲームってレベル上がりにくいんですね……」


 美弥が面倒くさそうにそう言った。


「まぁ、そうだよね。実は魔物との戦闘ではあまりレベルは上がらない仕様になってるんだ。そうしないと、結構な人数が戦場に行かなくなっちゃうから。ちなみにレベル20以上は魔物ではレベルはほとんど上がらない……まぁ、一応は魔物を討伐するクエストとか30レベル以上用のヤツが今後追加される予定だから、現状はなんとも、って感じかな」

「なるほど。でも、レベル低かったら戦場に行っても役に立たないとか――ですよね?」

「まぁね。せめてレベル15くらいまでは上げないと戦場には出れないかな」

「ちなみにだけど、あと3日って姉様あねさまが言ったのは初心者が大体レベル20にするまでの時間だから、まずはそこが目標かな?」


 初心者がレベル20にするのにゲーム内時間で約3日。でも、るーこさんはそれより早くレベルを上げる方法を知っているってことだよね。私もそれくらいやらないと……ダメなんじゃないかしら?


「戦い方を会得しつつ、レベルを20まで上げると考えると2日程度で上げないとダメですよね?」

「うーん、なんとも言えないかな。ちなみに仲間内で一番レベルを上げるのが早かったヤツは1.5日だったから、レベルをあげるだけであればやりようはあるけど。レベルをあげながら、キチンと戦い方を覚えるってのが一番いいよ」

「そう……ですか」

「そうそう。まずは一歩ずつ前に進もう。それに職業ジョブ戦闘スタイル(クラス)の説明って時間掛かりそうだし」


 そうして、クオンさんの職業ジョブ講座が始まった。


 職業ジョブは基本的に戦闘には大きな影響を与えないモノで基本職業が採掘師、きこり、細工師、裁縫師、革職人、鍛冶師、錬金術師、農家、漁師、調理師の10種類あり、レベル10毎に他の職業ジョブに転職することが出来るらしい。また、幾つかの組合せで上位職業に転職するクエストを受けることが出来るようになり、そっちはかなり専門的な職業ジョブになるようだ。


「まぁ、生産系のキャラを目指すなら基本職はフルコンプが前提となるんだけど、優先して取るのは魔法系なら細工師、裁縫師、錬金術師、調理師は取っておくことを勧めるよ」

「戦闘職なら?」

「採掘師、樵、鍛冶師、農家あたりかな。考え方としては職業ジョブでつくステータス補正が何かってのが重要かな。例えば錬金術師や調理師ならINTに補正が付く。INTが必要なステータスで考えると魔法職なんかは必然的に取る流れになる。逆に戦闘職でSTRが補正で欲しい場合は採掘師や鍛冶師、農家を選ぶ」

「なるほどです。器用さ(DEX)が欲しければ細工師……と、いうわけですか?」

「ま、そんな感じかな。なお、取得は首都にある職業案内所で聞いてみてくれ。次は戦闘スタイル(クラス)についてだ」


 そう言って、クオンさんは戦闘スタイル(クラス)についての説明を始める。


 戦闘スタイル(クラス)というのは戦士ウォリアー剣士ソードマン弓士アーチャー闘士セスタス魔術師ウィザード僧侶プリーストの6スタイルを基本としており、戦場では戦闘スタイル(クラス)によって、その動き方というのが大体決まってくる。そして、新しい情報としてるーこさんは闘士セスタスから始めるのは確実らしい。


 美弥はるーこさんの情報に納得の表情を見せる。そして、私の視線を感じたのかニッコリと笑って納得した理由を話してくれる。


「るーこさん――Luka*(るか)って格闘系のゲームでプロ選手として戦ってるプレイヤーで、得意な戦闘スタイルは打撃と投げが主体のテクニカルプレイヤーなんだよ。他にも、いろんなゲームをプレイっていうか、対人メインの超攻撃型ギルドとかを作ってランキングを荒らしまわってるって感じなこともしてるみたい」

「なるほど。クオンさんも、そのお仲間ということなんですね」

「まぁ、そうだな」

「ちなみに、クオンさんってLuka*(るか)の専属アバターデザイナーなんだよね?」

「……まぁ、そうだな」


 るーこさんの専属アバター……デザイナー???


「お姉ちゃんが――怖い顔してる!?」

「ハッ、いけないわ。な、なんでもないから」

「ふっふっふっ、スターファイターとかは出場選手ごとに専用のアバターが認められていて、アバターデザイナーが毎シーズンごとに数パターンのアバターを作って、そのアバターで大会に出場するんだよ。ちなみにLuka*(るか)の人気は強いだけじゃなくって、アバターの衣装とかも毎回可愛かったり、かっこよかったりって、すごいんだから」

「なんだか、照れるな……」


 くっ、なんでしょう――この気持ち。

 落ち着かなきゃいけない。あの人の弟に嫉妬なんかしても仕方ないんだから。まずは、今回出された条件をクリアして一緒に戦場を……うーん、どっちかというと二人で冒険にとかの方がいいかしら?


「――お姉ちゃん? おーい、お姉ちゃんってば!」

「ハッ、妄想が妄想で独走気味で大変だったわ」

「大変!? お姉ちゃんが壊れた!」

「壊れてなんかいません。っと、とりあえず戦闘スタイル(クラス)はどうやったら取得出来るんですか?」

「お、おう……いきなり話が戻って来たな。戦闘スタイル(クラス)は基本的に武器に紐づいてるんだ。魔法職であれば、杖や魔動機に使用可能なスキルが封入されていて敵を倒してレベルが上がった時に新たなスキルが開放されるって感じだな。剣や盾も同様に装備して戦闘を行って、敵を倒してレベルが上がれば新しいスキルが覚えれる。ちなみに最初にスキルが取得されるのはレベル3だから、あと一つレベルを上げたら覚えることが出来るよ」

「なるほど……あと、ひとつだけ聞きたいことがあるんですが」


 私は出来るだけ心を落ち着かせながら、彼に聞いてみる。


「傭兵団ってどうすれば結成出来るんですか?」


 彼は何やら怯えた風に身構えていたが、私の質問に「なんだ、そんなことか……」と、つまらなさそうに言った。私にとってはとても大事なことなのだけど、なんだか少しイラっとします。


「傭兵団の結成はまずレベル20以上にすること、他国の戦場に1回以上参加することだ」

「1回でいいんですか?」

「ああ、1回でいいけど……他国の戦場へ行くのには自身の足で向かわないといけない。移動に結構な時間を要してしまうんだ。だからはじめは自国の戦場を移動しながら渡って行って、他国同士が争っている戦場を目指すのさ」

「なるほど」

「ちなみにだが、傭兵団の話。本気なのか?」


 彼は突然に真面目な表情で私を見つめて言った。


 そこには先ほどまでの柔らかいイメージは一切なく、るーこさんとよく似た圧力プレッシャーを感じて驚く。でも、でも――私の答えは決まっている。


「本気ですよ。あの人の挑戦を頑張って受けようと必死になるくらいに」

「……………………」


 少しの沈黙の後、クオンさんは優しく笑ってから再び真面目な顔になる。


「キミには不本意かもしれないけど、るーこがキミの団に入るってなったら俺達の仲間がもれなく付いてくる。確実に上位を目指す為だけの対人戦闘マニア達がね」


 少し引きつつも私はワクワク感も感じていた。


 きっと、何か面白い事が起きるんじゃないかという漠然としたモノだけど。

みゃーるん「ひぃっ、お姉ちゃんがバトルジャンキーになっていくぅー」

ちえるん「誰がバトルジャンキーですって!?」

クオン「…………」

みゃーるん「あー、クオンさんが言いたいこと私分かっちゃったー」

ちえるん「私も分かったわ。この人何気に失礼よね」

みゃーるん「ねぇー」

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