ズルをする者達 その3
ちょっとスポットの仕事やらで色々と忙しくて、更新が随分と久しぶりになってしまいました。
だがしかし、戦場よ! 私は帰ってきた(ΦωΦ)ノ
不正利用者である彼は苛立っていた。
ネットワーク接続にノイズが混じったと思ったタイミングで隔離されたサーバーに移動させられていた。気付くのが少し遅かった事に彼は舌打ちをする。しかし、彼は【黒い暴風雨】がある限り勝機はあると確信していた。
それにまだ仲間は数名だが飛ばされていない。
「隊長。マズく無いか?」
「ケッ、怖気付いたのか? まだゲーム内だ警察が来たわけでもねぇーんだ。幾らでもやりようはあるんだっての!」
「マジか、エアーサス?」
「ああ、それにまだ切り札も残ってるからな……」
彼はそう言ってニヤリと厭らしい笑みを浮かべた。仲間達は彼の右手に握られている黒い球体を見て、その正体を察して少し緊張の色を見せる。
【黒い暴風雨】は数年前にあったネットワークテロ事件で使用されたと噂される殺人ウィルスで要人暗殺などに使用されたともされているヤバい代物だ。彼の仲間達も、彼同様に分かっていないことがある。彼らが行ってきた犯罪行為は人の尊厳を奪うほどの行為だということを彼等は理解していない。そして、殺人ウィルスを使用することも自分達の敵を排除する為の行為というくらいの認識であった。
だからこそ、彼らは逃げ切れるかもしれないと思った。
不正利用者の対策でもっとも基本的な方法は隔離と封じ込めである。今回も当然の如く、特定のプレイヤーのみをマップ上で隔離した。通常であれば問題有るプレイヤーのみを転移させることで対応するのだが、今回、被害者となる可能性があるプレイヤーも隔離されている。
キチンとした理由があるのだが、彼女はそれをあえて説明しなかった。正直、説明するのが億劫だったというフザケタ部分もあるのだが、事前に捜査していた情報より危険な殺人ウィルスを所持している可能性を考慮し、接触のあったプレイヤーを一時的に様々な場所に隔離して影響を調べる都合があった。
しかし、急な事で用意していた隔離用のサーバーが埋まってしまった為に別の場所に隔離することが出来なかったので傍で守った方が楽だと判断したのだ。
不正利用者の目の前に人の像がユラリと現れ、彼らは距離を開け武器を手に警戒する。
「転移ってことは……」
「飛んで火に入る夏の虫ってヤツだ。GM権限持ってたとしても、データ上はプレイヤーと変わんねーんだからなぁ!」
そう言って彼は目の前に現れた人物に不正行為で手に入れた武器で攻撃を行う。当然、不正ツールを利用しているので早々躱されるなんてことは無い……ハズだが、目の前には見えない壁のようなもので攻撃はあらぬ方向へ弾かれて消えた。
「残念だけど、認識阻害もフレーム偽装も効かないんだな。プレイヤーIDを確認――478.d14.f66、364.ae8.711」
「ひぃっ!? う、うごけない!?」
「ま、まじだ……どうなってんだ?」
「ネットワーク権限であなた達の行動制限。坑道内で行動出来ずに大人しくしてて――にしても、IDがfff.fff.fff……さすがにあからさまなIDダミー偽装はやりすぎじゃない?」
「がははぁっ、天才だからなっ! 俺様に掛かればそんなもんさ! GMかなんか知んねーが、あんたも廃人にしてやんよ。まぁ、メインディッシュはあんたの後ろにいる獲物だけどな!」
男の声に彼女は不快感を露わにして眉間に皺を寄せた。男はまた別の不正データを利用して攻撃を放つ、当たるとデータ情報を狂わせる銃弾が複数飛び込んでくる――が、彼女の目の前ですべての銃弾が止まり、地面に落ちる。
「また無効化するのが面倒なデータを持ち込んでるね。IDは366.a41.fd6――照合確認完了。あら? ロックを外された……」
「簡単に捕まるわけねーだろが!」
エアーサスという人間はただの不正利用者では無い。彼自身もそう思っている。不正利用者にはいくつかのパターンに分かれていることを説明しておこう。
まず、もっとも多いのは他人の作った不正ツールを利用したプレイヤーで、こちらはゲームクライアントと別で動いている補助ツールからサーバーのデータ情報を閲覧するツールまで様々だが、リアルタイムにデータを書き換えたり弄ったりするには不向きでゲーム管理側が不正を特定するのもそこまで難しくない。これに関しては不正ツールの更新速度がそこまで早くないことで、ゲーム管理側が先回り可能になる。それでも不正ツール対策はイタチごっこで対応した先から新しい不正ツールが出現する。ウィルス対策なども似たような物だ。
そして、もう一つが自身で不正ツールを作っている場合のプレイヤーだ。他のプレイヤーが使用することを前提にしているか、してないか、によって変わってくるのだが、こちらも日進月歩のイタチごっこだ。但し、こちらの場合、多くは他人が使うことを前提にしていないことでゲーム管理者が気付きにくいという利点がある。特に優秀な不正ツール作成者は不正ツールを認識させない為に様々な方法や別のツールを使用している場合が多いのだが、複数のツールを使用すると通信のヘッドが大きくなる為に本来ゲーム側で扱う通信量を超えるデータのやり取りを行うことで特定出来る場合がある。
ただ、この時代の通信速度とパケットの巨大さを考えるとコンパクト化された不正ツールを認識するのが難しい場合がある。優秀なハッカーなら、いとも簡単にやってしまうところが困った点だ。
このエアーサスという男もそういったハッキングやクラッキングを得意とするプログラム知識が豊富な犯罪者であった。本来、ゲーム内のデータに干渉して書き換えなどをリアルタイムに行うのは非常に難しいプロセスを必要とする。
本物の肉体は現実世界にあるが、脳としては心も身体も非現実世界に存在している状態で、脳波や思考のみで別のハッキングプログラムを制御する行為は複雑なマルチタスクを行うことが必須となり、普通の人間では出来ないだろうと言われている。
しかし、多くの優秀なハッカーはこれを難なくおこなってしまうのである。肉体コントロールと脳波コントールをある程度使い分けることが可能な新人類とも言われている。エアーサスという犯罪者はそういう部類の人間であった。
ただし、『井の中の蛙大海を知らず』でこのネットワークの海にはそういうモノを遥かに凌駕する化物が存在することを彼はまだ、知らない――
「なんとも上の下といったところかな」
彼女は目の前の男を観察した上で感情の籠っていない――あまり興味がなさそうにそう言った。当然、自分に自信を持っているエアーサスと呼ばれる男は激高する。
「っざっけんな! 誰が上の下だ!!!」
一見、ただの会話でのやりとりにしか見えない空間だが、データ領域の話で言えば激しい攻防戦が繰り広げ……いや、男の攻撃をスルスルと躱し無力化し続ける存在に男は焦りを覚えていた。
そもそも、近年においてはハッカーという存在は不正を行う者よりも、政府公認の取得免許を取って官庁や企業の中で職業としてなりたっている。情報を守るためには彼らのような特殊な技能を持った専門家が多く必要なのである。
正式名称、公認特殊情報処理免許1級(A級ハッカー)や特1級(S級ハッカー)などの免許を持つハッカーは国防に関わる仕事に就き、さらに報酬も超高収入である意味子供達からも憧れられる職の一つである。この時代はヤクザさえも政府の公認免許で『任侠』という文化を守る文化人扱いである。とうぜん裏組織としてのヤクザもなくなってはいないが、完全に地下犯罪組織と化している。
結局のところ多くのハッカーは正規の道を選んではいる。その中で犯罪と分かっていながら非正規のハッキング、クラッキングを行う人間は人格的にかなり問題があることは言うまでもないだろう。
「クソがクソがクソガァ!!! なんで躱せるんだよっ! クソっ!!! 使ってやる……アレを使ってやるぅぅぅっ!!!」
「なんだ? 【黒い暴風雨】のことか……全く、碌でもないモノを持ち込んでくれる――まぁ、無効化しておいたけど」
「なっ、そんなワケが……あるかっ!」
「ここ数年で最大級の国内第一級サイバーテロによってデータ的に死亡34。一時的サーバーロック状態に陥った者21,000強。その他接続障害30万。行方不明者数名。原因はネットワークテロ組織ゼロサムによる基礎システム破壊系プログラムの拡散――キミ達が【黒い暴風雨】と呼んでいるプログラムのことだ」
「そうだ! アレは一度動けば誰も止めれない……俺にだって止めれない……俺はさっき起動したハズだ! それなのに、どうして動いていない?」
男は左手にある黒い靄を眺めながら言葉を吐き出した。困惑、疑問、焦燥――複雑な思考が混ざり合い、浮き出て消える。
「残念だけど、二度もそれを使われるワケにはいかないから。ま、一度やられたことがあるから、対応も対策もバッチリだよ。悪いけどただの不正利用者などには負けることなど万が一にもあり得ない」
「くそがぁ!!!」
男は素早い動きで目の前にいる女の肩を掴んだ。そして、男は勝ち誇った表情を浮かべ厭らしく笑う。
「捕まえたぜぇ、狂わせてや――」
勝ち誇った表情の男は突然時間が止まったように固まる。
ちえるん「動きながら、他のことをするって凄いですよね?」
るーこ「まぁ、確かにそうだよね。意識的に複数のことを同時にこなすってヤバいわよね」
ちえるん「ちょこさん、マジヤバい(*‘ω‘ *)」
るーこ「マジヤバい(*‘ω‘ *)」
ちょこ「なんだか、とてもイラっとする」
ちえるん「気のせいですよ(*‘ω‘ *)」
るーこ「そうそう(*‘ω‘ *)」
ちょこ「………………」
なんだか、怒ってます?( ̄ー ̄(*‘ω‘ )(‘ω‘ *)怒ってない……たぶんね




