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クリオファス魔鉱田攻略戦 その1

 ここはゲームの世界。ネットワーク・ダイブ型の仮想現実バーチャルリアリティなのです。それを強く感じた瞬間はこれほどにはありません。


 先程、戦争が開始されましたが、そのアナウンスがシステム音声で流れたのです。


 淡々とした合成音声で『戦場の準備が整いました。開戦までのカウントダウンを開始します』と聴こえ、視線の先には30秒のカウントが進行していた。


 政治や人の思惑などを感じさせる重厚なファンタジー世界に突如として意識させられるデジタル感に焦りつつも少し緊張が解れた気もします。


「お姉ちゃん。もしかして雰囲気ぶち壊しとか思ってる?」

「さすがにそこまでは思ってないわ。せめて戦の始まりは螺貝とかそういうのでやって欲しいところはあるけれど」

「どんな戦国だよ!」

「ちえるん、みゃーるん。開始前のカウントダウンはシステム的なアレだけど、戦闘開始の合図は中々にいいから見ていて」


 と、るーこさんが悪戯っぽく言った瞬間、カウントがゼロになる。


私達が待機している陣からも見える巨大な細長い塔に魔法陣が展開され、眩い光を放ち戦場に広がっていく。それと同時に兵達の声、馬が駆ける音が響いてくる。


「始まりましたね」

「意外と落ち着いてるわね」

「カウントダウンが始まるまでは結構緊張していましたよ」

「ちえるんらしいわね。さて戦況は……」


 と、遠見の眼鏡を使ってるーこさんは前線の様子を窺うが、即座に見るのをやめる。


 それはクオンさんの言う通りに状況が進んでいたからだ。敵が圧倒的に優勢で此方の軍は瞬く間に敗走寸前の状態へ陥りそうな雰囲気さえあった。


「そろそろ、アッチが動き出すよ」


 クオンさんはそう言って、近くの部隊が動き出すのを指差す。その方向にはNPCとは違う毛色の人達が掛け声を掛けながら敵に向かって進軍を開始する。


「他にも傭兵団の方が参加してらしたんですね」

「俺達とは別経路で参加してるっぽいんだけど、この戦場は敵側にプレイヤーがいないっぽいから……」

「押し返せる……と?」

「そうだよ、ちえるん。NPCとプレイヤーの戦力の違いってのが見て分かると思うわよ」


 るーこさんはそう言って自分も行きたいと言わんばかりの表情を見せる。


「でも、命令違反とかにならないんですか?」

「戦果ポイントが若干減る程度だから、問題は無いよ……ってな訳だから、相手を押し返し始めたら予定通りこっちも動こうと思う」

「なるほどです」

「はじめの号令だけは頼むよ」

「ええ、お任せください」


 そう言いつつも私は少し緊張し始めてしまったようで心音が聴こえそうなくらいにドキドキとしてしまっているのを即座に察したのかるーこさんが私の肩を叩く。みゃーも傍でニヤニヤと微笑を浮かべる。


「大丈夫です。それに本来はクオンさんくらいにキチンと作戦を立てれるようにならないといけないと思ってますから」

「そこまでは求めてないよ。前にも言ったでしょ適材適所だって……愚弟クオンは戦略ゲー大好きっ子だから任せておいたらいいのよ」

「分かってはいますけど、自身が納得できないだけですから」

「ふふっ、ちえるんの好きにすればいいよ……」


 るーこさんは優しく言った。私は小さく頷いて、戦場の様子を見る――


 平原に存在する大魔尖塔(オベリスク)は各陣営に2つ存在している。これは戦場が2つある事を示している。現在参加している戦場から別の戦場へ移ることはシステム上出来ない。これはこの世の理であり、この世界の住人であるNPCも同様です。


 現在、私達【鋳薔薇の森】が参加している戦場はクリオファス魔鉱田まこうでん攻略の部隊で位置としては主戦場から最も東側にいる。総勢約二千で情報によれば傭兵として参加している人数は約40名だそうです。その中で私達が8名と雇った兵士が10名の18名と考えれば先ほど、前進していった傭兵団の皆さんは20数名だと分かります。しかし、その中にプレイヤーが何人いるかはパッと見では分かりません。


「アイツらなら知ってるわよ。αでも幾度か戦ってるし……戦士が中心の脳筋パーティーだけど、戦闘力だけは高いけど。突っ込むしか能がないんだけどね」


 そう言ってるーこさんは楽し気に微笑んだ。


 実際、飛び出していった部隊は真っ直ぐに敵陣に向かって突貫しているようで、目に見えて敵陣営を引き裂いていく。


「あれでは挟み撃ちにされませんか?」

「このままだと、そうなるね――でも、自軍もバカじゃないさ。まぁ、浮足立って突っ込み過ぎる未来は確定だろうけどね」

「思ったより、魔法を使う方は少ないのですね……」

「プレイヤー同士の戦闘なら、もっと派手に開幕魔法戦になるよ。ただし、ある程度距離が近い場合は弓士によって詠唱を止められるけどね」

「詠唱時間の少ないサンダー系や重力系の魔法は止めるのは難しいけどね」


 そうこうしているうちに自軍と敵軍が入り乱れるような状況が生まれ始めており、本陣に残っている部隊も少なくなっており、逆に私達に対してもどうして動かないのか? と、言うような視線が送られてくる。


「ふふっ、早く私達にも動いて欲しそうに見ているわね。なんとも我儘な事ね。……そろそろ時間ね」

「ええ、行きましょう……私達の初陣を、勝利という形で終わらせましょう! 出撃!」


 私の号令と共に団全員が一斉に前に進む。本陣近くまで敵が来ていたことを考えても押し返したとはまだ言い難いタイミングではあるけれど、即座に最前線へたどり着く。


 ミソスープさんが素早く魔法詠唱に入り、私は前方に重力場を築き、さらに名斬さんとカレンさんが魔法詠唱を止めようと弓を構えていた敵を狙い撃って妨害する。


「ほいっ、ファイヤーストームをお見舞いッス!」


 ミソスープさんが構えた魔杖の先から光が走り、上空から敵に向かって突き刺さり、次の瞬間には地面から炎が吹き出て敵兵を一瞬にして排除する。


「NPCの人達は脆いのですね……」

「まぁ、プレイヤーと同等、それ以上ってのは英雄と呼ばれるキャラだけね。SP消費の大きい詠唱付きの魔法ってのは威力だけは凶悪だし、回避はすごく難しい。今度、闘技場で回避練習もしようか?」

「範囲が結構広い感じですものね……タイミングだけなら、そこまで回避するのは難しくなさそうに見えますけど?」

「単発ならね。プレイヤーが多い戦場なら、確実にタイミングをずらして複数の魔法や弓の攻撃が来るから、そういうのを想定して回避するんだよ」

「なるほど……いわゆる『公明の罠』的なヤツですか?」

「ちえるんから、その言葉が飛び出してくるとは少し意外ね」

「……るーこさんに意外と言われるなんて……いや、でも……まぁ、確かに……」

「って、お姉ちゃんもるーこさんも、そこ突破しますよ!」


 みゃーに注意されて、私とるーこさんを目を合わせて小さく笑い、正面に広がる戦場に向かった。


 事前の調べで分かっている谷へ向かうにはこの乱戦状態の場所を抜けなければいけない。みゃーやクオンさん達が私達が通りやすいように、敵を排除しつつ人が密集した状態を緩和する為に動く。


「皆さん、いいですか? 一気に駆け抜けます!」


 私の言葉にるーこさん達が同意の声を上げ、私は全速力でこの戦場を抜け出した。


「ちょっ、団長ってば思ってる以上に速いッスね」

「あら、味噌らしくないわね? ステをINT(知能)に振り過ぎて素早さが足りて無いんじゃない?」


 一応、ステータス以外に武器種などによって、色々と影響仕る部分があると美耶が言っていたので、そのひとつなのだろうと私は密かに納得しておきます。


「純粋なアサシン構成のビルドは検証してないので分からないで御座るが、そっち系のステータスボーナスを得ているのではないで御座るか?」

「あー、なるほどッス。理解したッス。姉御と団長には戦闘を挑むな。が、真理ッス」

「あら? 闘技場なら幾らでも相手してあげるわよ?」

「それでしたら、私も……」

「いいッス。どっちもいらんッス。自信無くしそうになるんでやめとくッス」


 そう言ってミソスープさんはしょんぼりと谷の入口へ向けて歩を進めた。


「ちなみに、開戦中は魔物モブは出現しない仕様になってるッス」

「そういうところはゲーム的なんですね」

「αテストの数日間は出現してたのよ。でも戦闘中に色々と想定外の事態が起こったから修正されたのよ」

「想定外ですか?」


 私が不思議そうな声を上げると、他の3人は苦笑する。


「戦争のシステムでは、1回の戦争が終わるまでは本来経験値取得は想定されてないのよ。それに戦場に設定されている場所には基本的には魔物モブは存在しない」

「しないけれど、連れてくることは出来た……とかですか?」

「ビンゴ! そのせいで戦闘中にモブを倒してレベルが上がるなんてことが起きたりしたわけ。戦闘中に突然、敵のレベルが上がって新しいスキルを使って来たりしたらどうする?」

「対処が難しそうですね」

「そ、しかも、レベルアップ時は……」

「あ、体力回復ですか?」

「そ、戦争のシステムとしては限られたリソースしか持ち込めないのにそんな事が起きるのは勘弁でしょ」

「確かにそうですね。しかも、どこかのおバカさん達がボス敵を引っ張れるか実験したわけ」


 るーこさんはそう言いつつ、視線を遠くへ向けた。


「で、結果は引っ張れたのですか?」

「特殊出現条件じゃない、野良湧きする中ボスクラスは引っ張れたわね」

「って、姐さん!」

「あ、べ、別に私達だけがやってたわけじゃないんだからね?」

「いえいえ、納得です。で、結局どうなったんですか?」

「まぁ、流石に戦場は大荒れ。運営は苦笑い状態で即時緊急メンテ入りしたわよ」

「るーこさん達が暴れ回ったのが原因ということですね」

「違う違う。私達はテスター何だから、ヤバそうな不具合を見つけてあげるのも重要なことなんだからね?」


 そう言いながら彼女は誤魔化すように口笛を吹くのであった。

ちえるん「因みに今回もそういう計画があるんですか?」

るーこ「さすがにあからさまな所は大部分は修正されてるっぽいし、特には無いけど……」

ちえるん「ないんですか?」

るーこ(あ、圧が凄まじいわ)

ちえるん「(´・ω・`)」

るーこ(ちえるんもテスターっぽいことしたかったのね……)


何嬉しそうな顔をしてるんです?(´・ω・) (*´꒳`*)何でも無いわよ

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