表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

36/86

初めての遠征

 ウィンブレール共和国西ヘレイソ平原へ向かう馬車の中――


「思っていたより大所帯になってしまいましたね」

「ま、そういうものよ。まぁ、ほとんどはインベントリに入っているから少ないハズだけどねぇ」

「考えると面倒なシステムだよね。インベントリに入れると戦闘時に使えないって制限」


 馬車数台の列をのぞき見ながら美耶が面倒臭そうにそう言った。確かにそうなのです。インベントリに入れて運べる物は戦争が始まった時から一定時間は使えなくなるという制限が設けられている為にやむ得なく自力で運ばなくてはならないという仕様のせいで、人足を雇って運ぶという目に遭っているのです。


 因みにるーこさん達も、このゲームにおいて数少ない文句どころらしく、出発前からこのネタで何度も運営をディスる発言をしています。


 装備類に関してはインベントリで装備に入っている物はそのまま持っていけるが、戦争が開始されたタイミングから武器以外のインベントリに入っている装備は換装出来ないらしいです。回復系のアイテムもインベントリから持っていける枠が決められている。一番皆が文句を言っているのはインベントリで認められている数量が余りにも少ないこと。


「普通に考えるとポーションの枠が2種類5個で計10個しか持ち込めないとか、厳しい気がするんだけど?」


 美耶は公式の資料を見ながら愚痴をこぼす。


「戦場での時間を考えれば10個あれば十分だと思うけどね。初心者とかダメージを負いやすいタンクからすれば少ない気もしなくないけどね」

「アタッカーだって同じじゃないですか?」

「そこら辺は慣れの問題もあるかも知れないけど、前線で弓や魔法の攻撃を受け止めつつ前線を押し上げるってことを考えると被弾率は桁違いだよ」

「そうなってくると平原での戦闘ってしんどそうですね」

「まぁ、確かにそうだね。今回は戦場の下見が出来ればいいんだけど……」

「戦場の下見なんて出来るのですか?」


 私がそういうと、るーこさんはよく聞いてくれた。と、いう表情を浮かべ鼻を小さく鳴らす。


「普通、戦争の開始は宣戦布告によって開始されるんだけど、同じ所属国のプレイヤーが5人いれば宣戦布告が出来るの」

「かなり少人数で出来るのですね」

「まぁね。ただ、まず布告申請が5人いれば出来るっていうだけで、実際には非戦闘中である同所属国のプレイヤー全員に通知が行くの」

「なるほど、その人たちが承認する事で宣戦布告が成り立つんですね」

「そう。それでね、布告がされてから基本的にゲーム内時間で2日の間までに布告地域へ一定人数が集まっていれば戦闘が開始される」

「準備期間が存在するんですね」

「そう、布告前と布告後に斥候を出して、地形や敵の配置なんかを調査して実際の戦闘に入るワケ」

「なるほどですね……戦場の情報収集が重要なわけですね」

「斥候専門でプレイしている傭兵団とかもいて、敵地の近くで物資の流入量とかをチェックしている連中もいるわ」

「……んー、そういうプレイが出来るようにインベントリから持ち込める量が決められているってことですか?」

「みゃーるんが言うとおりなのかもしれないけど……愚弟クオンはそこは副産物じゃないかって言ってたわね。一番の理由はNPCの人員活用と戦闘の長期化を抑制するのが目的みたいよ」


 戦闘の時間制限に関しては事前にクオンさんから聞いていたので知っている。実際に戦闘開始の合図が出された後、長くても2日という制限が存在し、準備と戦闘含め現実時間で2時間――実際、ゲームでいっても結構長い時間が必要となる。以前のテストで行った戦争でも2日間続くような戦場はほぼ無かったらしく、殆どがゲーム内時間で数時間で決着が付いたそうです。


 彼は今回はかなり調整が入っていると言っていたので、以前までの情報で必要と分かっている物資以上の量を持ち込むことになり、荷物だけを積んだ馬車を1台多く運ぶことになり、傭兵を10人、人夫を10人追加で雇うことになった。傭兵はひとり金貨2枚、人夫はひとり金貨1枚掛かっている。


「なんにしても、戦争とはお金が掛かるものですね……」

「まぁね。でも、勝てばかなりの額面が返って来るから、ある程度は必要経費ってところね」


 と、言いつつも今回、総額で言えば金貨120枚分のお金を持っていたのですが、馬車、物資、人員だけで半分以上掛かっている。装備などに使った金額を考えると既に赤字だったのです……ハッキリ言って解体で随分と稼ぎを作っておいて本当に正解でした。


 しかしながら、出発前に確認した残金は私が予想した以上に少なく思わず固まってしまい、美耶に心配そうな視線を送られることに……それは当然、美耶はいつだって可愛いのですが、心配してくれるところがなんともたまりませんね。


「何にしても、せめて移動時くらいはインベントリ制限を緩くして欲しいんだけどねぇ」

「そう言っても、結構な量の物資をインベントリに入れて運んでいますからね?」

「結局、それだと一戦終わった後に拠点に戻るとか、街に入って次の準備をしに戻らないとダメでしょ?」

「最寄の街に入って準備は可能なんですよね?」

「自国領内ならね。支配地域が違う場合は中立の都市や商人のキャラバンを見つけるしかないかな」

「手間なんですね」

「まぁね」


 るーこさんや他の人達が言っている意味がやっと分かってきました。所謂、旅団のように移動しながら戦闘に参加してまた移動するという方法が出来ない事に文句を言っているようですね。


「でも、今回の依頼に成功すれば拠点が手に入るのですから……旅団と、いうか旅をしながら戦争に参加していたら拠点に戻る事自体あまり意味がないのでは?」

「ま、そうなんだよね。拠点にもいい点と悪い点があるってことよね」

「るーこさんはどちらがいいんですか?」

「正直言えば、戦闘回数というか回転数をもう少し上げて欲しいわね。大陸中央へ進んだ場合、場所によっては準備期間内に到着出来ない場所が出てくるから」

「その場合は近くの街などで物資調達をして移動しながら……と、なるワケですよね?」


 そう私が訊くとるーこさんは小さく苦笑する。少し困った質問だったのか私には判断がつかなくて私は気が付かれないように静かに息をのんだ。


「拠点って、基本的に砦だったり、城だったりするワケなんだけど……」

「もしかして、場所によっては他国から攻め入られる可能性があるという事ですか?」

「そう。だから兵力が揃うか、拠点が安全な場所にないと長期間離れるのはリスクが高くなるのよね」

「前線から遠くても問題がありそうですね」

「まぁね。因みに最前線で幾つもの国が争っている場所なんてのも別の意味で悲惨よ」

「あー、それは分かる! 補給出来ないパターンだね!」


 と、美耶は元気いっぱいにそう言ってピッと指を立てた。うん、ウィンクをするところもポイントが高いです。


「何だか、いつもちえるんはみゃーるんを見て楽しそうに笑うわね」

「まぁ、そんなこともあります。妹大好きっ子ですから」

「何だか羨ましい限りね」

「そうですか? るーこさんも昔は随分とクオンさんのことを可愛がっていたと母から聞いてましたけど?」

「まぁ、小学生低学年頃までは超可愛かったわよ。見た目も女の子みたいだったし、でも、10代から陰キャまっしぐらだったからねぇ」

「そういえば、上のお兄様って会ったことが無かったですね?」

「あー、母方の親戚には会いたくない宣言しちゃってるからね。因みにこの世で最もどうでもいいヤツの代名詞よ」

「あ、あまり関係が良くなかったのですね……」

「そんなにしょぼくれなくてもいいのよ」


 彼女はそう言って苦笑しつつも私の頭をクシャクシャと撫でた。ふ、不意打ちです。これは不意打ちです。多分、今の私は完全に赤面状態です。


 激しくなる鼓動の音と上気する頬の熱さだけが意識的に分かります――



◇ ◇ ◇



「あ……あれ?」


 次に気が付くとどこかの古く小汚い感じがする宿の天井が見えます。


 意外と木目って夜に見ると怖いのですよね……と、ふと、傍に人の気配がして私は勢いよく飛び起きますが、そこにいたのは美耶と眞理亜さんが心配そうに見ていた。


「強制切断されたのかと思ったけど……はぁ、無事で良かった」

「って、いうか私オンライン上で気を失う人って初めてなんだけど……普通、ショートサーキットが働くから自動的にオンラインからオフラインに切り替わってネットから切断されるよね?」

「うーん、その辺りは愚弟クオンに調べて貰うとして……千絵ちゃん、大丈夫?」

「は、はい。大丈夫だと思います。多分ですけど……」


 私はそう言って自身を視認し、肩を回したり腕を回したりして見せてから、ベッドから出て身体を伸ばし一呼吸する。ふと、意識を失う前のことを思い出すと鼓動の揺り動きを感じ深い深呼吸をして呼吸を整え何事も無かったように振舞った。


「一応、念のため今日はゆっくり寝て……明日、朝早くに出発しないと間に合わないかもしれないけど、そこは何とかするから」

「は、はい……ご迷惑お掛けします」

「いいわよ。寝て、落ち着いて、体力、精神を回復させてね? ま、戦は明後日からだし、うまく調整してね。みゃーるん、ちえるんの代わりに打合せに出てね?」

「え!? ま???」

「とりあえず、話を聞いておくだけでいいから」

「りょーかいー」

「じゃぁ、また明日ね。おやすみ」

「は、はい……」


 そうして、美弥と眞理亜――るーこさんは出て行った。


 部屋にポツンと残された私は小さく溜息を吐き、ベッドに腰掛ける。


「なんだか、不思議な現象が起こった……と、いうことなんだろうけど。何も覚えて……」


 と、言いながらるーこさんに頭をワシャワシャと撫でられたことを思い出し再び顔を真っ赤にしながら、私は逃げるようにベッドに入って、気が付けば次の日の朝だった。

るーこ「ねぇねぇ、私の所為ってことは無いよね?」

みゃーるん「どうなのかな?」

るーこ「ちえるんの反応が時々分からないんだよね」

みゃーるん「お姉ちゃんはるーこさんの事、昔から大好きだよ」

るーこ「んー、本当?」

みゃーるん「たぶん」

るーこ「(´・ω・`)」


なんとなく(*‘ω‘) (・ω・`)どゆこと?



どうも、もいもいさんです。

なんとも、テレワークヤバイ。テレワークヤバイ。

各ペースをゴリゴリ削られるってどういうこと?

とりあえず、連休を乗り越えて……もう少しペースを上げれるように何か考えねば!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ