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遠い思い出と小さな別れ

 随分と昔――と、いうほど昔なんかじゃない。


 私がまだ中学生だった頃、親戚の家で小学校に入りたての双子の姉妹と出会った。


 二人とも、とても元気な女の子で母からは『驚くほど、あなたにソックリね』と、言われるくらいのお転婆だった。それもこれも、変わった職業を仕事にしている彼女達の父親に原因があると、私は即座に思った。


 彼女達の父親は特に変わり者で自身の娘達を連れて時折、()()という名のサバイバルへ向かうのだ……これについては私も数度、同行したことがあるのだけど、正直、付いて行ってはいけないと思い、高校入学以降は一度も行っていない。


 と、いうか……あそこまでの過酷な場所に子供連れていくだけではなく、殆ど放置状態で自分は楽しく冒険旅行なのだから。正直、鬼畜の所業と言って過言ではないだろう。


 そんな彼女達と仲良くなるキッカケとも言える事件があったのは、初めて会ってから数か月後のある夏の日だった――



 彼女達の家は古い日本家屋をリホームした家で、母屋と道場、そして、広い庭のある家だ。


 私の家と比べるまでもない程の広さを考えると、彼女達の父親は非常にお金を持っているのだと当時はぼんやりと思っていた。


 因みにだが、この頃の千絵、美耶の双子姉妹は二人ともショートカットで、初めて会った日がお茶会で全員和装だったから気付いたけれど、何も無い普通の日だったら女の子だと思わなかったかもしれないくらいのコだった。


 喋り方も現在のちえるんから考えると、千絵ちゃんはお淑やかのかけらも無いお転婆さんだった。


 でも、その日の千絵ちゃんはいつもと様子が違っていた。


 妙におどおどとしていた事に私はスグに気が付き、何かあったのか尋ねると彼女は強めに何もないと主張した。


 私はスグに、何か『悪い事』を隠している……と、感じた私は、その場では「そうなんだぁー」くらいに言って、彼女を泳がせることにした。


 状況次第では母達に教えなければいけない分けだから、とりあえず現行犯でとっ捕まえようと私は、いつもながら調子に乗り過ぎてしまうのだ。


 私から逃げるように千絵ちゃんはコソコソと道場の裏に向かって歩いていく。


 私はコッソリと追いかけはじめる、彼女達が住む家は街からは少し離れた山側の高級住宅街で、道場の裏手は近くにある神社が所有する土地らしいけれど、手付かず森が広がる山となっている。


 彼女は周囲を確認しながら、森の中へ歩を進める。


 私は道場の影に隠れてそれを確認しつつ、気付かれないように一定の距離を保ちながら追いかける。


 千絵ちゃんは小慣れた様子で森を駆け、随分と古く半壊しているお堂のような建物の側で足を止めた。


 彼女は再び周囲を警戒する様に見回して、お堂の方へゆっくりと足を向けた。そして、しゃがみ込み何かをしていた。


 余程夢中なのか彼女は私の足音にも気がつく事なく、何かに話しかけ背負っていたリュックから何かを取り出そうとして、私の存在に気がつき「ひぃっ」っと、小さな悲鳴を上げた。


「ま、まりあお姉ちゃん!?」

「はーい、眞莉亜お姉さんですよー。で、お転婆千絵ちゃんはこんなところで何をして……」


 私は視線に入ったモノのせいで言葉を止めた。


 正直、珍しいわけではない。目の前にいたのは1匹の狸だった。しかも、何かに襲われたのか、それとも車に轢かれたのか分からないけれど、随分と酷い怪我をしており、グッタリとしている様子から医者に見せなければ危険な状態だというのが一目で分かるほどだ。


「た、食べたら……ダメだから!」


 千絵ちゃんは両手を広げて、瀕死の狸を守ろうと必死に訴えかけてくる。


 食べるってどういうことなんだろうと、思わず冷静さを取り戻させてくれる要因ではあったけれど、あまりの突飛さに思わず笑ってしまう。


「食べるって? 狸って食べれるの?」

「タヌキ鍋が美味いってパパが言ってたもん」

「んー、あの人は食べそうね」


 サバイバルにおいて生き残る為に、食べれる物を知って、キチンとした方法で処理をして自らの糧とするのは自然の摂理だと言っていたのを記憶している。


 それにちょっと前に読んだ小説に狸鍋の話があったので、地方によっては食べる物なのかもしれない。


「だから、言っちゃダメなんだよ」

「でも、そのままだと、その狸は死んじゃうよ?」

「それもダメ!」


 私は考える――



 目の前で苦しんでいる動物を放っておく事は出来ない、その前に千絵ちゃんを如何にして説得するか……なんだけど、私の言葉を素直に聞いてくれるか不安だった。


 当時、千絵ちゃん、美耶ちゃんのどちらにも、何故か凄く警戒されていたのだ。この件と後のサバイバル旅行で随分と打ち解けたのだが……。


「まずは、この子はちゃんとお医者様に診てもらおう。そうしないと、このままじゃダメだよ」

「…………」


 千絵ちゃんはジッと私の目を見つめて黙ってしまう。しかし、彼女はどこか愚弟と同じような雰囲気の表情をしていた。


 何か思案を巡らせる時の弟とソックリな雰囲気私は思わず吹き出しそうになるのを必死に堪える。


「誰も食べたりしない?」

「お医者様は食べないと思うわよ?」

「本当に?」

「ええ、本当に」


 そして、彼女は再び黙る事数分。ソッと私に道を譲ったのだ。私は着ていたパーカーを脱ぎ、狸それに包んで立ち上がる。


「っと、まずは近くの動物病院へ……」




 ◇ ◇ ◇



「……そんな事、あったかしら」

「って、覚えてないのお姉ちゃん?」

「結局狸鍋にしたんでしたっけ?」

「しないわよ!」


 私は思わず大きな声を上げて、しまったと思い周囲の様子を伺うけれど、賑やかな喧騒は私の声など、どうでもいいと言わんばりだ。


 因みに、あの後は本当に色々と大変だった。


 色々と勝手して動いたせいでパパにもママにも怒られてしまった。まぁ、それはいいとして兄貴には嫌味を言われ、弟は……当時はまだ小学校の高学年だった……けど、ムカつくところがあるのは、今も変わらないわね。


 と、兄貴は既に有名高校に入っていて、来年が受験だと既にピリピリしていたのは分かるけれど、私や弟が何かすると、いつも面倒臭い嫌味を言われるのだ。


 この時はお祖父ちゃんが随分と助けてくれたので、随分と助かった。お祖父ちゃんにはいつも感謝しか無い。


 因みに獣医さんを紹介してくれたのも、そこまで車で連れて行ってくれたのもお祖父ちゃんだ。


 弟曰く、旧世代のゲーマーで超絶マニアのど変態らしいが、私にとっては家族の中で一番優しい人という印象だ。


 この件で最も気がかりだったのは千絵ちゃんが怒られていたかどうかだったのだが、それ以降で狸の件が話題になる事は無かった。


 数年会う機会が無かった間に千絵ちゃんは髪の毛を伸ばして丁寧な口調で話すようになっていた。


 これについて当時、まだ高学年なのに随分と大人びた雰囲気に驚いた記憶があって、どうしたのか聞いたら「何のこと?」と、はぐらかされてしまったせいで、未だにその理由は分からない。

ちえるん「やっぱり狸鍋を食べた気がするわ」

みゃーるん「そうだっけ? 覚えてないや」

ちえるん「だって、あの人に京都まで連れて行かれたもの」

るーこ「なんで、態々京都まで?」

ちえるん「さぁ、あの人が考えていることなんて分かりませんよ」

みゃーるん「まぁ、パパだしねぇ」

るーこ「それは仕方ないわね」


(*'ω'*)


さてさて、ご無沙汰してしまいました。

環境的、忙しさ的に遅くなってしまいました。

来週末まではかなりペースが落ちるかもですが、生暖かく見守って下さい!


オラに力を分けてくれ!

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