見分け方
尺の都合上、短めです。
自慢げに微笑むるーこさんは通りを歩いている人をソッと指さす。
「さて、問題。あそこを歩いているのはNPCかプレイヤーどちらでしょう? あ、みゃーるんは何も言わない方向で」
「はいはい、何もいいませんよー」
そう言って美弥は指で×を作って口の前にあてる。うん、なかなか可愛いじゃないですか……。
さて、指差された人はこちらに気が付いた様子もなく店の中に入って行った。
周囲を歩いている人を見ても、パッと見では特に違いを見つけることは出来ない。職業案内所にいた職員さんのお仕着せは見て分かるけれど同じ服を着ているプレイヤーが居たとして、私に判別出来るかどうかと聞かれれば分からないとしか言えない。
困りましたね。
「時間切れー」
「何だか悔しいですね」
「ふふっ、でも判別方法を知れば、そんなこと? ってレベルの話だから」
そう言ってるーこさんは悪戯っぽくウィンクをする。自然とウィンクが出来るあたり、この人は何て『タラシ』なんでしょうか? 全く、心拍数が上がりました。
「で、どうやって判別するんですか?」
「まず、私をジッと見てみてくれる?」
「え? あ、は、はいっ……」
私は少し焦りつつ、るーこさんを見つめる。こうして見ると雰囲気として若干の血の繋がりが見える気がします。
母も叔母様も目がよく似てると言っていたのがよく分かります。私達姉妹は父の血が入っているので瞳の色が少し違いますが、現状キャラメイクの関係上るーこさんの赤い瞳を見ると奇妙な気もしなく無いですね。
「って、気付かない?」
「えっと、やはり親戚だと言うのが分かりましたが……」
「うーん、今そこに気付くのか……じゃなくて、視線の端の方にプレイヤー名とか表示されてない?」
「あ、確かにありますね」
「意識しないと中々気にならならいから、確認に慣れがいるけどね。他に何が見える?」
るーこさんの言葉に私は表示物に意識を向ける。キャラクターネーム以外にはレベルと紋章のような物が確認出来ます。所属を示すであろう傭兵団の紋章も確認出来ます。
「プレイヤーはキャラ名、レベル、所属国、加入傭兵団の情報が見れるのよ。で、これがNPCの場合はキャラ名と所属国しか表示されないから、そこで判別するの」
そう言われたので、私は通りを歩く人に視線を向ける。すると視線の端に名前と国の紋章が表示され、私は確認出来たことに喜びつつも違和感を感じて首を傾げた。
「違う国の人もいるんですね……」
「あんまりいないけどね。因みにこのあたりは、かなり多国籍な感じね」
「国の紋章って覚えるの面倒だよね」
と、美耶がそう言いながら手元でWebコンソールを立ち上げて資料確認を始める。
「因みにだけど、愚弟が確認したところによれば、NPCとの違いを言えば彼らは所属国や所属、キャラ名を私達のように確認する事は出来ないみたい」
「何だか私達ってズルしているみたいですね」
「まぁ、彼らからすれば確かに異質な存在ね……」
と、るーこさんは何かを言い含めたような言い方をする。どういう事なのか私は不思議に思い再び首を傾げると、彼女は小さく息を吐いて私を見つめる。
「あくまでも、ココはゲームの中だからね? いくら精巧な仕組みで生み出されたAIで動くNPCであっても、ただのデジタルデータよ? そう考えれないとこれからが辛いわ。戦場に出れば、沢山のNPCも殺さずにはやってられない」
「それなら止めろ……ですか?」
そう言うと、るーこさんは寂しそうに笑って小さく頷いた。
「私は止めませんよ? まだよく理解してはいませんけど、私達だって今はデジタルデータで生身は現実世界に置いてきている状態ですよね?」
「愚弟がいたら『厳密には違う』とか言いそうだけど、確かに千絵……ちえるんの言う通りね。ただ、私達は現実に生身を持っていて、死んでも直ぐに生き返る。彼らは運営が意図的にデータを弄らない限りは殆どのNPCは死んでしまう」
「それは理解しているつもりですけど……」
「うん、ちえるんは理解していると思う。でもね、戦場に出るとなれば、その意識が少し変わるかも知れない。中にはそういう子がいるから……」
そう言ってるーこさんは少し寂しそうな表情をする。私は何だか酷くモヤモヤした気持ちが生まれて来るのを必死に抑えつつ言葉を返す。
「どうして……どうして、今そんな話をするのでしょうか?」
「そう、だよね。国主体の戦争とプレイヤー主体の戦争ってのは随分と違うのよ」
それは既に既知の話だ。国主体の戦争はNPCが多く参加するチュートリアル的な戦場でプレイヤー主体の戦争では傭兵団基本的にぶつかり合う感じだった筈です。
「大小あれ傭兵団ではNPCを雇うことも多いから、NPCキャラがいない戦場なんて、ほぼ無いと思って」
「そうなのですか?」
「うん、特に傭兵団では人数を集めないと参加できない戦場なんてのもあって、兵を雇ったり、徴収したり出来るの」
そう言ったるーこさんは、何かを思い出して寂しげな微笑を浮かべる。
「でね、これが結構キツイこともあるのよ。好感度システムなんかあってさ。せっかく愛着が湧いてきたキャラが死んだり殺されたりするわけ」
「経験した事が無いので分かりませんが……辛そうですね」
「まーね。愚弟とかはありえないくらいにそういうところはドライだけど、そりゃーもう、しょこらんとか私はガチ凹みよ?」
何だか、その誰かさんはとても羨ましいですね。と、美耶は私が考えている事を察したようで微妙な表情をしているわ。
「多分ですが、私は大丈夫ですよ。どちらかと言えばクオンさん寄りなのかも知れませんね」
「そう? 私の記憶が確かなら、あの頃と変わってなければみゃーよりちえるんでしょ、そういうの苦手なの?」
そう言われて私は思いっきり、そんな事を言われるような記憶が無く先よりも深く首を傾げた。
ちえるん「全く記憶に無いんだけど?」
みゃーるん「それを私に聞く?」
ちえるん「あー、うん。ごめん」
みゃーるん「全く、眞莉亜さんって、意外とどうでもいい事を覚えてたりするんだね」
ちえるん「んー、本当にそうなのかしら?」
みゃーるん「さぁ? わかんない」
ちえるん「…………」
ジーッ( *'ω'*) (๑╹ω╹๑ )だって覚えてないしw




