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私の記憶が確かなら

 彼女との決闘は既に6戦目に入っており、現在6戦5敗。正直言って負けて当然とも言えるほど、彼女はゲームというカテゴリにおいて圧倒的な強さを持っていた。


 彼女は圧倒的な暴力で相手を打ち倒すというよりも私の動きに反応して、それを覆すような手を持って仕掛けるような動きを幾度も見せてくる。


 後から考えて、まんまと乗せられていたことが分かるほどの戦巧者といえる。ただ、考えて動くタイプではなく、感覚で動いているのがよく分かるほどに柔軟で変則的だ。


「6戦目だし、少し焦りがあるのかしら? 動きが単調になってるわよ?」

「大きなお世話ですよ!」

「っと、ちえるんって、ホントに受け流すの上手いわね。それに戦い方がどちらかって言うと愚弟クオンとかに近い」


 そんな事を言いながら彼女は刀を振るって来る。当然、全力で私を倒そうとしてくるのを私は必死に受け流しつつ反撃を繰り返すだけだけれど、るーこさんはそれに反応して反撃をしてくる。先からこれの繰り返しだ。もう少し距離が開けれれば、まだ魔導機に持ち替えるなど、手はあるのですが現状では非常に厳しいとしか言えません。


 ちなみにるーこさんは私が魔導機に持ち替えてのスキルを警戒して、ずっと近距離に張り付かれている。正直、このせいで近接のみで戦うことを強いられている状況を考えると、るーこさんの方が私より上手うわてであることはハッキリしています。


 このゲームの厭らしいところは武器種によってスキル取得できるが、スキルに割り振れるポイントは限られている点だ。最終的にレベルさえ上げていけばほとんどの武器種のスキルを取得することが出来るという話だけど、最上位のスキルだけは全て取得することは出来ないという話を美弥から聞いている。


 ただし、レベル20くらいまでは大きな差も武器種にしても多くて3種類取れれば御の字で私ももう1種類、隠し球として取得している。ただし、これは相手も同様に考えている場合が存在するので要注意であること。


 全て美耶のアドバイスのお陰ですけど。


 この状況を打開するに至るかは分からないけれど、多少なりと選択肢を増やして相手に考える枠を増やすのは悪くない手だと思うのです。


 あと、美弥からこのゲームにおいて、他との大きな違いを説明されたことを思い出す。普通のアクション系のゲームやシューティングゲームにおいては、相手を掴んだり捕まえたりする為には専用のスキルみたいなモノが必要となって、それを持たない人が行おうとすると、ゲーム的補正ですり抜ける仕組みになっているらしい。


 しかし、このゲームはそれが無く、致死攻撃を行うための『掴み』に関しては自由に出来るところが特徴だということだ。そして、目の前にいるるーこさん――Luka*(ルカ)が最も得意としているのが、掴みからの投げ技。赤い暴風雨レッド・テンペストの異名はトレードカラーの赤とVR対戦格闘ゲームで数々の派手な投げ技を繰り出すところから付けられたらしい。


 その『掴み』を敢えて誘うことが第一の目標――


 先の先を読んだ刀での攻防を繰り返しつつ、当て、受け、躱してからの反撃、敢えて焦っていると思わせることで普段より少し大振りで振るう――と、思った瞬間に腕を取られ引き込まれて激しいダメージを喰らって、私は宙を数回転して地面に叩き付けられ、視界が真っ暗になる。


 少し、ほんの少しだけ……タイミングが遅かったようです。


「はい、6戦6勝。そろそろ諦めてちゃってもいいんだよ?」

「残念ながら……私は諦めが悪いんですよ。るーこさん」


 私は素早く魔動機に持ち替えて、グラビティフィールドを展開する――けれど、るーこさんはそれを手甲のスキルである特殊移動で躱す。私はそれに合わせて闇を展開してもう一度、グラビティフィールドを展開して、素早く減ったMPを回復薬を飲んで回復させつつ、刀に切り替えて『閃光』を撃ち込む。


 私が撃ち込んだ『閃光』がるーこさんの『矢弾き』で、私の元に返って来るのを体を少しだけずらして躱す――そこにるーこさんが闇の中から飛び出して『一刀両断』を撃ち込んでくるのを見て彼女に触れるくらいに一気に飛び込んで刀の柄頭で付いて攻撃を止める。


「やるねっ!」

「まだです!」


 私はそのままの勢いで『一閃改』を放つ。るーこさんはそれを『鞘受け』で受け流しつつ、『霞切り―ながれ―』に繋いでくる。


「厭らしい……でもっ!」


 彼女の攻撃をギリギリで躱す為に彼女に足払いを仕掛け、彼女は攻撃の態勢を崩されて尻餅を付くように倒れ――たと、思ったら身体を反らして半分失敗したようなバク転で起き上がる。


「まったく、強引ですね」

「いやー、まさかゲーム以外の動きで攻撃してくるなんて、やるねぇ」

「るーこさんも、さっき投げて来ましたよね? それもゲームシステムとは違う動きなんでしょう?」

「ちゃんと予習もしてるんだね」

「ええ、美弥のおかげで……」


 お互いに刀を向けあって、微笑みながら会話を行う。私は先までの焦りを忘れていたほどに、楽しんでいるということに気が付き思わず吹いてしまう。


「そんなに面白いことでもあった?」

「ええ、私ってば……思っている以上にこうしてるーこさんと戦っているのが楽しかったようなので」

「そう言って貰えると嬉しいわね。私もここまで戦える人って久しぶりだけど、世界にはもっと色んな相手がいるんだよ」

「でしょうね……私と一緒に戦ってくれませんか?」

「今のちえるんで、私に勝てると思ってる?」

「どうでしょう……あと少しで届きそうなんですよね」

「本気で言ってる?」

「ええ、いたって本気ですよ!」


 そう言って、私は再びるーこさんに攻撃を仕掛ける。


 彼女はそれを待っていたとばかりに受け流し、反撃を仕掛け、またそれを受けて流す。まるで、二人でダンスを踊っているように繰り返し、手を変え品を変えつつ、幾手先を思考または感覚的に判断しながら仕掛け、仕掛けられを繰り返す。



◇ ◇ ◇



「君のお姉さんは本当に凄いね……これでゲーム初心者っていうのは信じられないよ」

「んー、多分ですけど、るーこさんやクオンさん相手ならいい勝負をするようになりますよ」


 双子の妹である彼女は苦笑しつつそう言った。


 VRにおける反応速度というのは単純な反射神経だけでは出来ない、リアルチートと言われることも多々あるが、それは事実とは少し違う。結局のところ、電位的な信号を処理する能力というのは個人差やネットダイブを長時間行うことで培われる部分だったりする。


 しかし、そうでなくても仮想空間ヴァーチャルにおいて現実より早く反応出来るほど脳波コントロールに長けている人間というのが存在する。俺の場合は後天的な訓練によって鍛えた部分が大きいと思っているが、るーこやちえるんは先天的に反応が良いタイプだと思う。


 ただ、性格という点において、ちえるんは俺に近いのでは無いかと思う部分は多い。


 基本的に思考して動く感じが強い。ただ、俺との違いで言えば、俺は後方支援タイプ。彼女は前線指揮官タイプだろう。


「で、彼女はさっきから何を狙ってるんだい?」

「聞いて教えると思ってます?」


 みゃーるんはそう言いながら、俺を見る目は「答えは知ってるんでしょ」と、いった風だ。


 確かに、彼女の動きから幾つかの仮説は立てれるが、確固たる証拠が無いので『答え』に行きついてはいない。ただ、時折する大振りは『投げ』を仕掛けられる瞬間を狙っているようにも思えた。


「ホント、どうやったらあの攻撃に反応出来るのか教えて欲しいわ。私とやった時も近距離で私の矢を『矢弾き』で跳ね返して来たのよ」

「当たったのか?」

「当たってたら、私は自信を無くすところね……でも、彼女の眼は確実に私の攻撃を狙ってたわね」

「面白いね」

「確かに……」


 カレンと俺は彼女に感心しつつ、再びるーことの闘いを見る方に集中する。



◇ ◇ ◇



 お互いに軽い攻撃を喰らいながらも牽制と回避、受け流しと反撃を繰り返す。時に挑発し、押したり引いたりを繰り返しながらお互いの隙を探っていく。


 私は自身が落ち着いていることを自覚しつつ、るーこさんに対して焦っている風に印象付けつつ戦っている……必死なのは事実だけど、余裕が全くないと思わせなければチャンスはやってこない。


 そして、返しの反撃をしようとした時、るーこさんが刀の構えを数センチずらした瞬間を私は確認した――来る!


 私の動きに合わせて手首の上側に柄を突き出すように私の腕を絡めようとして来る瞬間を私は待っていた。この動きは私の記憶に存在する動きだ。


「え?」


 るーこさんが驚く声を出す瞬間に私は刀を手放し、すぐさまに彼女の腕を逆に取って投げ返す。


 捻りを加えて受け身を取れないようにしつつ、私は体を入れ替えつつすぐさま武器を手にする。


「くぅっ……っつ、狙われた……」

「ええ、よく知っている動きだったので狙わせて貰いましたよ」

「って!? た、短剣二刀流!?」

「ええ、本来は短刀でもいいのですが、短剣の方が戦いの幅が多いので……こちらの方がいいと思ったのです」

「と、いうか……ど、どういうこと……」


 彼女はあからさまに動揺しています。まぁ、動揺すると思います。私が彼女の立場であっても、たぶん同じように驚くと思います。


「何を驚いているのでしょう?」

「いや、そ、そうだよね……」

「乱れましたね……」


 私はその隙を逃しません。同じ剣士系のツリーに短剣スキルが存在することを美弥に教えて貰って三つ目の武器として私は準備していた。短剣は武器系統で唯一二刀流が可能な武器で、非常に扱いが難しいところと、ダメージ値にマイナス判定が付いている設定的に思ったより強くない戦闘スタイルとなっている。


 でも、私は刀と同じくらいに短剣の二刀持ちは得意なのである。


 そして、私は彼女の懐へ飛び込み順手で持った方で斬り込む。当然、彼女は反応して躱しつつ反撃してくるのを逆手で持った方の短剣で受け流す。


「『鞘受け』!?」

「いいえ、違いますよ。眞理亜まりあお姉ちゃん」

「は? はぁ?――」


 不思議そうな顔をする彼女の腕を再び絡めとり、再び彼女をそのまま捻りながら投げつつ短刀で追撃を入れる。


「ちょっ……うそぉ…………」


 私は彼女に刺した二本の短剣を引き抜き彼女の耳元で「久しぶりだね」と、呟いてから離れる。その瞬間に彼女はゾンビのように起き上がる。この映像もやはり奇妙で不思議な光景です。


「って、負けたぁー。っていうか、宗村もとむらの叔母様のところの千絵ちゃんなの?」

「ええ、そうですよ。私はかなり早い段階で気が付いてたんですけど……」

「あちゃー、はぁ……そうだったの……」

「そうだったんです。偶然ですけど、とても面白い偶然ですよね」

「戦い方が似てるわけね……」

「だって、同じ流派ですからね。刀の扱いから基礎的な動きは私の記憶にキチンと残ってますから」

「と、いうか卑怯じゃない?」

「そうでもしないと勝てないでしょう? ちゃんと約束守ってくださいね」


 私がそういうとるーこさんは「仕方ないなぁ」と、言って少し恥ずかしそうに笑った。

クオン「はぁ? って、ことは美弥ちゃん?」

みゃーるん「音弥おとやにぃ、気付くの遅い」

クオン「って、他ゲーでも会ったことあるのに自分も気づいてなかったじゃないか」

みゃーるん「そりゃ全身ギリースーツで顔も完全に隠れてて分かるわけないでしょ?」

クオン「そりゃそうか……」


ジー(*‘ω‘ ) (・ω・`)残念なモノを見るような目で見ちゃダメだよ

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