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3日目の午後

 ごきげんよう。


 私はちえるん。ふざけている訳でもなく、ただ真面目に今日は朝からずっと動き続けている。


 まるで地獄、いいえ、ここは修羅。修羅が棲む国に違いないと思うレベルのスパルタです。多少ミスっても何も言われません。淡々と続くだけ、魔物を引っ張りやってくる引手ひきてとそれを無心で狩り続ける狩手かりて


 此処では強引にレベルを上げるための経験値稼ぎと同時にヘイトコントロールというモノを学ばさせられる。


 そう黙々と淡々と続けている――


 クオンさんの説明から分かったことだけど、ゲーム的な部分というのが存在する。本来、生物とは自らの死が分かっているのにあえて戦いには行かない。襲われてどうしようもなければ仕方ないのかもしれないけれど、普通の生き物は自らの危機には逃げるものだ。


 それが、この世界の生き物は自身の死を厭わず、基本的に攻撃を受けた相手に対してはずっと攻撃をし続ける傾向がある。それは自身がどれだけ傷ついても変わらない定められたルールのようなものに支配されていると言ってよいでしょう。


 優れたAIで動くこの世界の住人たちである魔物達はゲーム的ルールによって、プレイヤーが狩りをしやすいように神の手によって支配されているゲームの世界だ。私はまさにゲーム的な部分を体感していると言っていいだろう。


 引手がダメージをほぼ与えない攻撃をして敵の気を引き、狩手は敵の背後から攻撃をして倒していく。ただ、注意点として致死攻撃などの一気に大ダメージを与える攻撃はしてはいけないらしい。


 まぁ、面白くないことの繰り返しは驚くほど気力を失わせるのだけど、それ以上に私の引手が謎の忍者っぽい人なのかが、今一番気になるところ。


「姫、集中が切れているで御座るよ。作業なのは仕方ないところですが、もうひと踏ん張りで御座る」


 忍者の人が何故か私のことを『姫』と呼ぶのが妙にイラっとするのを我慢しつつ、ゴリラのような魔物を後ろから斬りつける。刺したりするのは致死攻撃判定となるのでダメなので、延々と刀を振るうだけだ。


「るーこ殿はもっと早く刀を振るうで御座るよ。気が緩んではダメで御座る」


 よく喋る忍者ですこと……と、思いながらも私は一生懸命に刀を振るい目の前の魔物に止めを刺す。そうしたら、すぐに別の個体が忍者の人の前へ送り出されてくる。


 カレンさんたちが数人で付近から魔物を見つけ出して、追い立てて手の空いている引手に渡す。と、いうのを行っているようだ。


「姫、次の獲物が来たで御座るよ。次々やっていくで御座る」

「は、はい!」


 結構なハイペースで動かされ続けているせいで自身の動きが煩雑なのも私としては少し腹立たしいところなのです。もう少し会話が成立すれば気休めになるのですけど……。


 目の前で魔物に色々な攻撃をし注意を引き付ける忍者の姿を見つつ、私はそう思いながら刀を振り続けて目の前の敵を倒した頃に忍者さんに誰かから『耳打ち』が届いたようで次の獲物に対して複数のスキルを駆使して私が手を出す前に倒してしまう。


「おっと、すまんで御座る。ちょっと中断するで御座るよ」

「何かあったのですか?」

「ああ、るーこ殿がどうやらこちらに来るようで御座る」

「る、るーこさんが来る?」

「そんなに驚くことで御座るか? ん、まぁ、どうやらレベル20に到達したみたいで御座るよ」

「早いですね」

「単発攻撃力では仲間内でトップで御座るからな。るーこ殿はどのゲームでもステータスの割振りがある作品においてはSTR=AGI型でスキルビルドも基本的に超近接高威力で御座る」


 それを聞いて少し納得する。タイプ的に美弥が憧れのプレイヤーと言っていた意味も分かってくる。タイプ的に美弥に似ていると言っていいでしょう。


「しかし、この集団は和物の武器が好きな連中が多いで御座るな」

「そういう忍者さんは全身和物という感じじゃないですか?」

「忍者さん……姫、拙者は名斬なぎりで御座る」

「じゃぁ、忍者さん。あなただって私のことを『姫』と呼ぶじゃないですか」

「うっ、それはで御座るな。うむむ……」

「ふふっ、冗談です。ちゃんと名前は憶えてますが、忍者さんと言う方が言いやすい感じなので、別に私のことも『姫』でいいですよ」

「なるほど……(かたじけな)い」


 そんなやり取りをしていると、崖の上からるーこさんが現れる。


「ってぇー、落下ダメが思ったより痛い!」

「何をやっているんですか……」

「ちょっと驚かしたかっただけだったんだけど、失敗したわ」

「相変わらず無茶をするで御座るなぁ」

「うっさいわね。御座るはとりあえず休憩で、ちえるんがレベル18くらいまでは私が引っ張るわ」


 最後までは面倒を見てくれないところが、とても意地悪な人ですね……。


 などと考えていると、忍者さんが私の前で跪き私とるーこさんは驚く。


「では『姫』、存分にるーこ殿に振り回されるがよいで御座る」


 と、言って彼は煙幕を立てて姿を消した。因みに後でるーこさんから聞いたのだが、姿を消したのはスキルの効果で姿が見えなくなる代わりに移動速度が半分以下になって、攻撃判定のある行動を取ると解除されるというスキルとのこと。ただし、足跡や足音は消せないので、地面を見ればどこにいるか分かるという弱点もあるそうだ。


「全く、あいつは後でシメておこう」

「ふふっ、ほどほどに……あの方は所謂ロールプレイがお好きな人なんですね」

「そうね。どのゲームであっても忍者の恰好をしているわよ。一度、人外オンリーのゲームをやった時なんか、亀の種族で忍者の恰好だったわ。思わずツッコまざるを得なかったわね」

「あー、米国ステイツにいるアレですね」

「そ、まさにアレ。にしても『姫』ってのはお似合いね」

「なんだか、そう言われると照れますね」

「まんざらでも?」

「うーん、残念ながら言われ慣れているだけですね。正直言って、何故そう言われるのかについては自分ではよく分かっていません」

「ふーん、そうなんだ」


 と、るーこさんには思い当たる節はあるようですね。


 あれ? もしかして、分からないと言っているのは私だけなのではないでしょうか?


 以前、美弥が「お姉ちゃんは姫が似合うよね」と、言っていたことを思い出し思わず苦笑してしまう。


「ナニナニ? 自分では全然分からないって感じなの?」

「ええ、そうですね。るーこさんの方が似合うんじゃないですか?」

「冗談でしょ? 私の場合、ただのお転婆って感じでしょ?」

「そんなこと無いですよ?」

「そんなことあるから言ってんの。私みたいなガサツな人間はそういうお淑やかな方向性の真逆なのは自身でも分かってるんだから……まぁ、しょこらんみたいな子は()()()って感じだけどね」

「あ、それは分かります」

「って、和んだところで――続きやっていこうか?」


 そうして、私は忍者さんが言った『振り回される』をまさに体感するのであった。




◇ ◇ ◇




「ハァッ、ハァッ……」


 実際に息切れをしているわけじゃない。気分や感覚の問題でしょう。脳がそういうシチュエーションだと命令を出していると考えれば納得だ。


「ちえるん、どうしたの? ほら、次行くわよ」

「は、はいっ!」


 忍者さんの倍くらいの勢いで魔物を狩らされる。色々と考える暇さえも与えられないと本当に只々、作業の繰り返し、機械のようになって敵を殲滅していくのみ。


 一応こちらのペースを窺うような仕草も見せるのだけど、数度目からは私の限界値を見計らっているのではないかと思ってしまうほどの勢いで狩りを行っていく。


「よーし、ついでだし……あっちも行こうかなぁ」

「え? ど、どこへ行くんですか?」

「ふふんっ、行ってからのお楽しみに♪」


 そう言って彼女はマイペースに魔物を引っ張っていく。


 私は必死に彼女の後ろから、提供されていく魔物を次から次へと倒しつつ、突き進む彼女の背中を必死に追いかける。


 彼女を言い表すとすれば、まさに暴風雨テンペストだ。荒れ狂う嵐のような人だと思い知らされる……でも、なんとも言えない高揚感。この人は何でこんなことが簡単に出来るのだと思うほどに可憐で苛烈だ。


 そうこうしている間に野営地からは随分と離れた山の頂近くにある、広い岩棚に到着する。


 感覚的に言って50メートル四方くらいの広さで奥に見えるのは山頂である岩山だ。態々こんなところに来たということは、ここに獲物がいるということに違いない――だって、彼女の眼は非常に好戦的で楽しそうだったのだ。


「実はね、このゲームって基本的にPvP(対人戦)がメインのゲームなんだけど、実はあまり知られていないけど、幾つかはボス級の魔物が棲んでいる場所があるの」


 彼女はそう言った――


「と、いうことは……」

「そ、その通り。さぁ、来るよ! 私に合わせて踊って見せて!」


 次の瞬間、空から翼がはためく音が聴こえ、現れたのは大鷲のような頭、獅子のような体躯を持ち、巨大な翼で舞い降りてくる魔物だった。

ちえるん「ハァハァ(*´Д`)」

るーこ「どうしたの? しんどい?」

ちえるん「尊いです……」

るーこ「は?(; ・`д・´)」

ちえるん「冗談ですよ(*‘ω‘*)」

るーこ「冗談かぁ(*‘ω‘*)」


うふふ(*‘ω‘)(‘ω‘*)あはは


次話はガッツリ戦闘回です!

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