答え合わせ?
カエルの肉がいかに表現という枠で言えば鶏肉に近い雰囲気はある。だがしかし、実際の鶏肉からは随分と離れている。
だからこそ、私は何も工夫をせずに本来の風味が出るように調理していく。
料理とはこのカエル肉ひとつとっても、下味の付け方や調理方法だけで、その素材の特徴が色濃く出たりするところが非常に面白い。揚げたり焼いたりした時は特徴のある臭みはあまり出ないのに煮た時には、特徴的な臭みが出やすくなる。
これも香辛料や調理する順序で変わって来るけれど、今回はあえて元から持っている特徴を強く出す方法を用い個性的な香りでカエルに顔を出して貰おうという計画なのです。
沸々と煮られていくカエル肉と山菜。猛烈な臭みはないけれど、川魚のような独特の青臭さを殺さないように味をつけ過ぎないように煮過ぎないようにと、丁寧にスープを仕上げていく。
酒、塩、胡椒で味を付けたシンプルなスープ。
完成度はワイルド……と、いった風でしょうか?
私はそんなことを考えつつ、スープの仕上げに味噌と七味を少々いれて完成です。
「なんだか、満足そうだね」
「ええ、いい仕事をしたと言っていいでしょう。あ、美味しい美味しくないは別の話ですから、あまり期待しないでくださいね」
「え?」
「はい?」
私としょこらんさんは見つめ合い、お互い不思議そうな声を上げた。彼女はどうやら、私が『美味しく出来た』ことに満足していると思ったようだ。残念ながら、そうではないのです。
「まぁ、不味くは無いと思います」
「でも、美味しくはないんだね」
「そうですね。たぶん、野性的な味だと思います」
「野性的ね……うん、なるほど……」
しょこらんさんはそう言って苦笑しつつスープを入れる容器を取り出し「美味しいわけじゃないんだねぇ……」と、呟きつつ、スープをお玉で掬い容器についでいく。
「そこまで複雑そうな顔をしなくてもいいと思うんですけど」
「出来れば、美味しいスープであれば嬉しいのになぁ。と、思っただけだよ」
「不味いわけではないですよ。味見してみますか?」
そういうと彼女は瞳を輝かせ、私を見つめた。
このホンワリとした空気感……やるな。と、思いつつも、彼女はお椀に入れられたスープを少しだけすする。次に彼女は不思議そうな顔をして、もう一口スープを口にした。
「どうですか?」
「不味くは無いけど、美味しくも無い……んー、美味しいともいえるかな。良い出汁が出てると思う。まぁ、少し味気ない感じだけど。でも、たぶんコレがアレの正体なんだろうなって感じの臭みというか、存在感? みたいなのがあるね」
「アレの感じ分かります?」
「うん、鳥じゃ出ない青臭さ? うーん、泥臭さって言ったほうが良いかもが後味に隠れつつもしっかりとした存在として主張してくる感じ」
「ワイルドでしょう?」
私がそういうと、彼女は苦笑しつつ「確かに」と答え皆の配膳をしていく。
ただ、少し申し訳なさそうに微笑んで「レシピは追加でお願いね」と言ってきた。私は数少ないレシピからもう一品を何にするか考えている間に食事が始まるのであった。
野営地である場所にはいくつかのテントと魔導機によって照らされる光、大きい木のテーブルが2つと3人掛けの木の椅子がテーブルごとに2組つづ置かれており、テーブルの上には私が作った鶏肉の天ぷらとスープ。そして、持ってきてあったであろうパンが置かれていた。
「飲み物はお茶でいいよね」
「はい」
と、るーこさんがお茶を入れてくれる。
やっぱり、ご飯が炊けるようにしておくんだった。と、後悔しつつ私もテーブルにつく。
「トリ天ならパンじゃなくてご飯にすればよかったわね」
るーこさんはそう言った。
その通りです。すいません、気がついてませんでした。と、心の中で謝りつつ「気に入れば肉はまだあるので唐揚げも揚げますよ」と、言っておく。
「よーし! 腹ごしらえよ!」
るーこさんの号令で皆箸を取り鶏肉を頬張る。カレンさんは訝しそうな表情でチラリとみて、匂いを嗅いでから鶏肉を口にした。
「鶏肉ね……」
「どう考えても鶏肉でしょ?」
と、他のメンバーからも言われてカレンさんは疑問に思いつつも鶏肉を食べた。
「ちなみにですが、鶏が山の奥にいるわけは無いんですよね」
私が笑顔でそう言うと、全員の箸がピタリと止まる。
「もぉー、何を言ってるのよ。どう考えても味や肉感は鶏なんだけど?」
「そうですね。因みに色々な動物を食べた時の感想って鶏肉で表現しますよね」
「あー、そだね。するわ。でも、ヘビは魚っぽかったよ」
と、るーこさんは鶏肉を頬張りながら楽しげに笑う。因みに他の面子(しょこらんさんを除く)は焦りの色が見える。
「これも因みにだけど、みゃー、一番鶏肉に近い肉は何の肉だったかしら?」
「ワニさんかな」
るーこさんとしょこらんさん以外の手が止まる。これは予想通りです。
「じゃぁ、クイズです。この肉はなんの肉でしょう? 因みにヒントはスープです。後、賞品は鳥の燻製となります」
皆は複雑な表情を浮かべつつスープを飲んで微妙な顔をする。
『ね、私は答えても大丈夫かな?』
と、突然るーこさんの声が鮮明に聴こえてくる。私は彼女の方を見ると口に指を縦に当て、私に黙っていてとジェスチャーでそう示す。
『これは直接の音声チャットだから、他の人には聞こえてないよ。因みに私はクイズとかは苦手だけど、何となく知ってる味だったからスグに気付いちゃったのよね。たぶん愚弟も答えに行き着いてるわよ』
そう言ってクオンさんに視線を向けると彼と目が合うと少し苦笑しつつスープと天ぷらを食べ比べて楽しんでいる風にも見えた。
なんだか、変わっている姉弟ね。
そして、クオンさんは隣にいる答えを知っているしょこらんさんと談笑を始める。
『ね? 分かってる感じでしょ?』
と、るーこさんが言うので私は小さく頷くと満足そうにニヤリと笑った。
「そういえばさ。ちえるんはどうして俺たちにこの料理を振る舞ったのか説明して貰えないかな?」
クオンさんがそう言ってくる。彼には私の行動となっている原因に考えが行き着いているのだろうか?
『アイツは変人で知りたがりだから、別に答えを知っているわけじゃ無いわよ。ま、幾つか考えうる答えの1つに本当の答えはあるかもしれないけど』
と、少しだけ優しい声で彼女はそう言った。
なんだか、ちょっと羨ましいです。
「まず、皆さんはどう思いますか? それに何の肉だと思います?」
「ま、そこだよね。ちなみに俺は何となく分かってるから、俺は解答をパスしてこのスープを味わうことにするよ。あ、ちなみにこういう感じの味は嫌いじゃないんだよね」
「きょ……じゃなくて、クオンくんはちょっと変わったヤツ好きだよね」
「と、いうことはしょこらん殿も答えを知ってるで御座るか?」
「一緒に料理してたから、当然知ってるよ」
忍者っぽい人が困惑した雰囲気でそう言った。因みにカレンさんは何度もスープを口に入れては顔を顰めている。
「名斬はどう? 味の感想って聞いた方がいいんじゃないか?」
「ふむ……スープは自然な感じ、いや素朴な感じがするで御座るな。特有の川魚などにある青臭さ……たぶん、これが答えに向かうヒントなのだと思われるで御座るが、ワニでは無いとなると……他に鶏肉に例えられる――」
そこまで言ったところでカレンさんが叫び声を上げるように声を出した。
「あああああぁーーーーーー!!! 分かったぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
「はい、カレンさん。お答えをどうぞ」
と、和かに返すとカレンさんは訝しい表情で答えを口にする。
「カエルね。フォレストジャイアントトードの肉ね。想像より美味しかったから、文句は言えないけど……まさか、カエルを食べさせられるとは……」
悔しそうにしつつも、天ぷらに手を伸ばすあたり、気に入って貰えて何よりです。
「でも、どうやったら、こんなに差が出るものなの?」
「えっと、こういった野生動物を食べる場合ですが、基本的には血抜きをキチンとすることと、下処理と下味の付け方で変わるんです」
「なるほど……」
「種類によっては臭みが強いモノもいるので、全てにおいて可能かと聞かれると難しいです。今回はたまたま、綺麗な場所に棲むタイプだったので、なんとかなったと言えると思います」
「な、なるほど……ね」
カレンさんは自分の所為で皆がカエルを食べさされることになった事が随分と悔しい様子だったけれど、私を責める事は違うということも理解しているようだ。
ただ、一番バツが悪そうなのはクオンさんだった。
「とりあえず、俺が謝るべきだよな?」
「そうだね。クオンくんが何も言わずに裏で色々動きすぎたって感じだもの」
「だよな……」
と、イチャイチャしている彼が謝ろうとするのを私はソッと止める。彼は不思議そうな顔をしているところに私はカレンさんが言えと言った言葉を投げつける。
「取り敢えず、言っておきますね」
「は?」
「リア充は爆発してればいいと思います」
これには周囲も大爆笑でした。
クオンさんはガックリと項垂れつつ、俺が悪かったのか? 俺は悪くない……など、ブツブツと何やら言いつつも周囲からも「だな、爆発しとけ」と、言われて遊ばれていた。
「そろそろいいですかね」
と、私は燻製機の中から鳥肉を取り出し、切り分けていきます。
「全員分は余裕ですが、まずは正解者へのご褒美です」
そう言ってカレンさんに燻製した鳥肉を差し出す。
「え? 私でいいの?」
「いいですよ。味見役だと思ってください」
「しっ、仕方ないわねっ、それくらいは私がしてあげるわっ!」
と、ツンデレ気味に彼女は肉を口に運んで数度咀嚼をして、舌鼓を鳴らす。
「なんだか、ほんのり甘い香りで肉のコクみたいなのが出てる感じ……これはクセになりそう。チーズとかも欲しくなるわね」
「って、ちえるんはマニアックだね。楓のチップを使ったんだね」
「あら、るーこさんはよく分かりましたね」
「料理はあんましだけど、舌だけは結構しっかりしてるからね」
楽しそうに彼女は笑ってパクパクと肉を食べていく。
「ただひとつ足りないとすれば……」
「すれば?」
私が首を傾げると、その場にいた男性人とるーこさんは声を揃えるように言った。
「酒、酒が足りない!」
と、訴えるのであった。
るーこ「ちなみに酒が無いわけじゃないんだよ」
ちえるん「それはそうでしょうね? 料理にも使ってます」
るーこ「ちえるんとみゃーるんに遠慮して持ってこなかったのが仇になったのよ!」
ちえるん「気にしなくてもいいのに……」
るーこ「VR内でも擬似体験させると現実で欲しがる子が出てくるからって取締りがあるんだよ」
みゃーるん「そんなのあったんだ?」
ちえるん「飲もうと思ってたの?」
みゃーるん「ちょっとくらいいいかなって……」
ダメデス( *‘ω‘)(‘ω‘`*)ショボボ




