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鶏肉っぽい肉

まさかの風邪で倒れておりました。

やっと復活気味……まだ完全復活とは程遠い感はありますが、

なんとか先に進めそうです。

 目の前の彼女は不思議そうな表情を浮かべて私を見ている。


 私は再び、笑顔で言うのです。


「ここには鶏肉しかありません。ええ、この目の前にある肉は鶏ですよ」

「って、そもそもにわとりじゃないよね?」

「……そうですね。どちらかと言えば鴨に近い肉だと思います」

「鶏肉じゃないよね?」

「どちらかと言えば、鶏肉に近いと思います。しょこらんさんが捌いた鳥より遥かに鶏肉ですよ……たぶん」

「た、た、たぶんって!?」

「まぁ、別に怒ってる訳じゃないですよ。ちょっぴり悪戯してもいいかな? くらいには思っているだけです。それに過去の経験から言って、多分美味しいです」


 そう美味しいは正義です。


「でもね……特別にしょこらんさんには美味しい料理のレシピをプレゼントします。クオンさんに振る舞ってあげれば得点高いと思うんです」

「くっ、そ、そんな、賄賂なんて……そうそう。カエルを見かけたけど、ここにはいなかったわね。うん、いなかったー」


 買収完了で、鶏肉カエルに下味をつけていく。本来、森などで野宿する際に使える調味料は塩と酒くらいだけど、ここでは結構色々な種類の調味料が存在する。


 インベントリというなんでも入る不思議空間のおかげで、様々な調味料を常時確保出来るというのは凄い事だと感心しつつも現実リアルではないのだと再認識するに至る。


 カレンさんと山へ行く前に準備として幾つかの店に寄ったところ、この世界では無く運営がプレイヤーのために用意したであろう素材屋を発見して、そこで幾つかの調味料を購入した。


 まずは『魔法塩マジックソルト』これは説明には塩コショウに幾つかのスパイスを加えた物で現実リアルにも似たような商品が存在する。ニンニクも入っているので使い勝手はかなり良い。


 次に買ったのは『味噌』ハッキリ言ってまんま味噌だ。あと、『醤油』と『塩』、『砂糖』、『みりん』、『酒』、『赤ワイン』と『黒胡椒』、『七味唐辛子』を購入した。


 料理関係というところでは『食用油』や『小麦粉』なども購入してある。


 今回はそこまで凝った事をする気は無い。


「骨は取ったんだね」

「骨付きでもいいんですけど、鶏肉にするためには邪魔だったので、取り除きました」


 しょこらんさんは私の作業を興味深そうに見ている。折角なので鍋の準備をしていただきましょう。


「油はどれくらいお持ちですか?」

「えっと、鍋を満たすくらいは大丈夫かなぁ」

「では、鍋に油をたっぷり入れて、火にくべて下さい」

「あ、ちょっと待ってね。携帯コンロ出すから」


 携帯コンロ? 何ですか、その凄そうなモノは!?


 私が冷静に驚いていると彼女はインベントリから四角い板状の物体を取り出し、その上に鍋を置き油を入れてから板に何かをすると板と鍋の間には不思議と暖かい光が出ていた。


「それはどこで売ってるんですか?」

「多分さっき使ってた調味料を売ってるお店にあったと思うんだけど、見つけれなかったのかな?」

「そ、そうだったんですね。調味料の量に感動していたせいで周囲が見えていなかったようです」

「設定的には魔導機だけど、使い方は普通のコンロとほぼ同じだから、すっごく便利だよ」


 不思議な話だけどゲームの世界なのだと思わされる瞬間です。美耶からは本来はご飯を食べる必要性さえ無いゲームが多いと言っていたし、このゲームはいろんな意味で変わっているのでしょうね。


 そんな事を考えている間にしょこらんさんがボウルなども用意してくれて「使うでしょ?」と、言ってきてくれる。この人は超が付くくらいに良い人ですね。


「では、遠慮無く使わせて貰います」


 まぁ、はじめから作業台なども用意されていることも考えれば予想出来る話だったのかもしれないと思いつつ私は料理を続ける。


 既に下味を付け終わっている鶏肉カエルに油を少し掛けて揉み込み暫く置いておく。次にボウルに卵を割入れ、冷水を混ぜ合わせる。そこに小麦粉を入れてザックリと混ぜて準備は完了である。


「唐揚げじゃないの?」


 と、しょこらんさんが不思議そうな顔をして聞いてくる。私は「違いますよ」と、だけ答えて油の温度を確認する為に木箸に衣を少量だけ油にのせ、様子を伺う。パチパチときざみ良い音を確認して少し温度が高いと思い火加減を下げる。


「あー、天ぷらにするんだ……」

「よく分りましたね?」

「まぁ、多少なりだけどね」

「皆さんはガッツリ系の唐揚げの方が好みだと思いますけど、そこは敢えて天ぷらにすることで、より誤魔化せるかな……と、いう計算もあります」

「えっと、美味しんだよね?」

「それは多分、美味しいと思いますよ?」

「多分が付くとすごく不安になるんだよね……」


 そう言いながら彼女は優しく笑った。


 なんだか、クオンさんがとても羨ましい気持ちになってしまいました。リア充爆発しろ! と、心の中で言っておきましょう。


 さて、実際に鶏肉カエルを揚げていきましょう。衣を纏わせた肉を鍋に滑らせるように落とし、フツフツと衣が揚るのを見つめて色が着き美味しそうになったら油から上げる。


 しょこらんさんが用意していたパットに揚げ上がった鶏肉カエルを次々と置いていく。


「コレがアレだなんて……分からないね」

「塩でいただくのがオススメです。先に試してみますか?」

「うっ……うん、だよね。鶏肉、鶏肉だから平気!」


 そう言って彼女は鶏肉カエルの天ぷらをひとつ口に放り込む。


「はふっ……んっ……ん? 鶏肉みたい。と、いうか普通に鶏の天ぷらだね」

「でしょう? この手の生き物は大抵鶏肉っぽい味がするんですよね。不思議なことに……」


 父が昔言っていたことを思い出しながら、私はそう言った。父はワニを食べた時もカエルを食べた時もウサギを食べた時も、まるで鶏のようだと大概の人間は言うらしい。故にこのタイプの肉で獣臭さが出にくいアッサリとした肉は味付け次第で鶏肉の代用になるのだと。


「特にサイズ感も肉質もこの鶏肉カエルはいい感じだと思いますね」

「なんだか、すごく遠回りな嫌がらせだね」

「だって、嫌われたくはありませんから。そういえばご飯類はあるのでしょうか?」

「お米が欲しくなるってのはよく分かるよ。今日は用意してないから、パンで我慢かな……」

「仕方ないですね。しょこらんさんに捌いて貰った鳥は燻製にしましょう」


 と、私はインベントリから燻製機を取り出して、燻製を造る準備をはじめる。


「そんな物も売ってたんだね」

「はい、スパイスの近くにあったので私の目に止まってしまったのです。それに燻製にしておけば、日持ちしますから」

「インベントリに入れてる間は時間が進まないでしょ?」

「あ、そうでしたね……」


 私はそう言えばそうだったと思いつつ苦笑する。でも、燻製にしておけば、多少クセの鳥でも鳥臭さが気にならないハズだし、問題ないと思う。サラダの上にスライスしてのせるとか、アヒージョに入れるとかもアリですね。ピザの具にするのもイケそうです。


「まぁ、何にしても燻製にしておけば、用途はあるのでよいと思います」

「鴨肉っぽいんだよね?」

「そうですね。見た目からの判断なので、実際に食べてみないと何とも言えませんけどね」

「鴨南蛮とか美味しいよね」

「そうですね。たまに鳥臭くて全てが台無しなのがありますけど……時に贅沢は言えないので全部食べますけどね」

「んー、なんだか美味しそうな香りが漂って、お腹と背中が引っ付いちゃいそうよ」


 美味しそうな匂いに誘われて、るーこさん達がやって来る。って、一体先までどこにいたのかしら?


「そういえば、静かだったのでどこか行ってたんですか?」


 と、しょこらんさんがナイスタイミングで聞いてくれる。


「まぁね。ちえるんの邪魔しちゃ悪いかと思って、ちょっと離れたところで模擬戦してたら、いい匂いが漂っててフラフラと来たってわけ」

「不思議だよな。腹が減ってるわけでもないのに、美味そうな匂いで腹が減って来る気がするんだから」


 クオンさんがそう言ってお腹をさすりながら登場する。と、いいますか、皆さん期待に満ちた表情をしていらっしゃるのです。うふふ。


「お、お姉ちゃん。大丈夫だよね?」


 と、そっと近づいてきた美耶が小声で私に聞いてくるのを私はニッコリと笑顔で返事を返す。


「大丈夫。ちゃんと美味しく出来てるわよ」

「いや、そう言うことじゃないんだけど? って、変なことしてないよね?」

「ええ、してないわよ。美味しい鶏肉カエルを美味しく天ぷらにしただけだもの」

「なんだぁ。鶏肉かぁ……ん? と、鶏肉??? あ、ああ……」


 美耶が不思議な顔をして首を傾げ、鶏肉が何の肉か分かり納得の表情をする。


「んー、どうなんだろう? それって、嫌がらせなの?」

「嫌がらせでもあり、そうでも無い……かな? 美味しいことには変わりないわよ」

「どったの?」


 と、るーこさんが既に鶏肉カエルを摘み食いしつつ不思議そうな顔をして聞いてくるのを私は「なんでもありませんよ」と、笑顔でそう言って幸せ顔のるーこさんを堪能するのであった。


「筋っぽいところも無くて、あっさりとした美味しい鶏肉だね」

「ええ、唐揚げや天ぷらにする時はキチンと筋も切ってあるので……ただ、この肉はもしかしたら小さな骨があるかもしれないので、気をつけてくださいね」

「……ね、ねぇ。すっごく美味しんだけど……私、ちょっと気になってることがあるんだけどさ」


 と、声を出したのはカレンさんだ。


「どうしたんですか? カレンさん」

「鶏なんていたっけ?」


 広がる沈黙、私は察しの良いカレンさんに感心しつつ、周囲の様子を伺う。るーこさんは不思議そうな顔をしつつ「ま、おいしーし、いいんじゃない?」と、言ってさらに一つ口に放り込む。


「鳥系なら、コカトリスとかビッグバード……あとはグリフィンか。現状レベルじゃ狩れない敵だな。って、ことは野生動物系とか?」

「野生動物って狩れるの?」

「私には何が野生動物で魔物かの差は不明ですけど、鴨っぽい鳥もいたのでシメて、しょこらんさんに手伝ってもらって、現在は燻製機の中で燻されてますよ」


 と、燻製機の扉を開いてぶら下げられている鳥を見せると、カレンさんとクオンさんが「アレ捕まえれるのか!?」と、感心した声を上げていた。ちなみに美耶と2人で他にも色々と検証したことがあったのだが、それに関しては言う必要も無かったので何も言わないでおく。


 なお、揚げ物が終わった後、鍋の油を容器に入れてインベントリに戻すと食用油(9/10)と、記載されていた。10回までは使えるということなのだろう。


「そう言えば、ウサギも鳥っぽい味がするのよね」

「そうですね。ウサギも鶏とよく似た脂身の少ないあっさりとした肉質ですので、似たような味付けをすれば鶏だと言って出されても、よほどウサギを食べ慣れてなければ気が付かないでしょうね」


 と、私はそう言いながら、鍋に水と山菜、今回の肉の答えの一部を入れて煮込む。ずっと黙っていても問題は無いと思うのだけど、それでは逆に信頼を失うような気がしたので、私はちゃんと答えを用意して答え合わせをするべきだと思ったのである。


 それが面白い結果を生み出すとはその時は露とも思ってもいなかった。

みゃーるん「鶏肉でいえばカエルよりアレだよね」

ちえるん「みゃーの言うことはよくわかるわ、アレよね。カエルってサイズ的に小骨が多いから」

みゃーるん「あー、ここでのカエルは大きかったから誤魔化せてるってこと?」

ちえるん「正解よ。たぶん、アレもいると思うから、また同じチャレンジが出来るかもね」

みゃーるん「なんで、みんな鶏肉っぽいって言っちゃうんだろうね」

ちえるん「さぁ? ちなみに、英語圏でも同じように鶏肉みたいだと表現するのよね」

みゃーるん「あれって不思議だよね」


ねー?(*‘ω‘) (‘ω‘*)ねー?


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