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ちょっとした一言がはじまり

 VRゲームを遊ぶ人達に御用達である、ダイナミック・リンク・ネットワーク・ダイブ・システム搭載の最新型PCが何故か置かれている。


 ちなみに置かれているという表現は少し違う。


 私の部屋には携帯型の端末しか無くVRのゲームをするような環境は無かったハズなのだ。


 でも、私のベッド脇にはいつでも遊べます。と、言いたげにセッティングがなされている。


 因みに犯人も分かっている。


「で、これは一体どういうことなのか説明してくれるんだよね?」


 私の言葉に目の前にいる妹は少し上目遣いで言うのだった。


「だって、お姉ちゃんと一緒にプレイしたかったんだもん……」


 私はその姿を見て、なんと卑怯な妹よ。と、思いつつ、仕方ないと考えてしまうダメな姉である。


 ただ、正直なところ興味がないわけでは無い。でも、私には苦手なものが存在する。


 それは先進機器と呼ばれる機械たちだ。なんとなく使っているモノも当然あるのだけど、難しい操作や設定などは私にとっては宇宙人達が別言語で会話しているところに放り込まれた状態なほどに私には理解不能なのだ。


「ちゃんと丁寧に説明するから、ね? お願い?」


 妹よ。私はキミの可愛いおねだりに勝てるほどの力は持ち合わせていないのだ。携帯型端末の時も妹に教えてもらった操作以外は未だに出来ないほどの究極機械音痴な姉で申し訳ない。と、思うレベルだ。


 それもこれも、原因は私の一言から始まっている。


 アレは数日前の話――


 リビングでテレビを家族と共に見ていた時に今目の前にあるゲームのCMを見て「よく分からないけど、楽しそうね」と、口にしてしまったのだ。


 妹の前で言ってしまった事を現在絶賛後悔中なのだけど、まさか最新型のPCを買ってくるとは思ってもいなかった。


 因みに幾らくらいするのかも不明である。


「結構するんじゃない? 大丈夫なの?」

「うん、パパに相談したら買ってくれたから、問題無いよ。因みに私のPCも新品になりました!」


 私は楽しそうしている妹を見ながら、若干乾いた笑いを返します。私達の父親はお金だけは持っているのです。どんな仕事しているかは不明ではありますが分かっている事が幾つかあります。


 父が冒険家である事と凄いお金持ちである事だけは間違いじゃ無いのです。


 因みに母は普通の主婦のハズです。


 そして、目の前にいる妹は超がつくほどのゲーマーで特に今はVR系のゲームに凝っているのです。


 彼女はプロを目指しているそうで、最近は色々なゲームの大会に参加しているようです。


「とりあえず基本設定はこんな感じかな。あ、お姉ちゃん、後は繋いでからの設定だから、そこまでは一緒にしようね」


 そう言って妹はネットダイブ用の機材をもうひとつ持ってくる。


「よいしょっと、お姉ちゃんはコレをつけてベッドに寝てていいよ。音声ガイドが始まったら指示に従ってね。私の訪問メッセージが来たら承認してよ、絶対拒否しないように注意して!」

「えっと、うん……これでいいかしら?」

「オッケー、大丈夫だよ。事前にロビーアバターとかも用意してあるし……っと、始めるね」


 妹がそう言った瞬間、私の意識はフワリとした不思議に軽く、真っ白になる――



◇ ◇ ◇



『ようこそ、千絵様。個人ロビーへお繋ぎいたします。ゆっくりとした気持ちでお待ちください』


 耳障りの良い女性の声だと思いながら周囲を見回しても真っ白でとても不思議な気持ちになる。


『チューニングが完了しました。ロビー表示します』


 そして霧が晴れるように周囲の視界がゆっくりと鮮明になっていく。


「あれ? 私の部屋?」


 フワリと私は自分の部屋に降り立つ。


 現実世界からデジタルの世界に来たハズなのに自身の部屋とは不思議な気分だ。


『訪問者[美耶]様から来訪許可の申請があります。許可いたしますか?』


 私はその声に美耶が言っていた事を思い出す。


 許可するんだったわね。


「許可します」

『畏まりました。申請を許可します』


 すると、目の前に妹が現れる。

 当然、慣れていない私は驚いた状態で固まる。


「だ、大丈夫おねーちゃん!?」

「うっ……た、たぶん……」


 目の前に広がっている世界は現実と区別する事が出来ないくらいよく出来ている。けれど、目の前に人が突然現れたりしたら驚いてしまうのは仕方ないでしょう。


 それが実の妹だとしても。


「ちょっと落ち着いた?」

「そうね。たぶん……大丈夫だよ。それにしても不思議ね、ここがデジタル世界だなんて」

「うふふ、違和感がないようにお姉ちゃんの為に用意した甲斐があるってね」


 どうやら自分の部屋が再現されているのも妹の仕込みであるようだ。なんともやる事の徹底ぶりは相変わらずというかなんともな感じ。


「っと、まずは早速ゲームのやり方は覚えようね」

「ええ、分かったわ」

「今日はログインからログアウトまで付き合うから、ちゃーんと覚えてね」

「頑張る……」


 私は新しいデジタル機器の機能をアレやコレやと思えなければいけないという苦行をしなければならないとは……と、思いながらも妹がせっかく用意してくれてやる気になっているのだから、応えなければ姉として失格だと心を奮い立たせる。


「で、で、な、何をすればいいのかしら?」

「そんなに硬くならなくていいから、まずは落ち着こうよ。お姉ちゃんここまでのログイン方法は覚えてる?」

「えっと、PCの電源を入れてVRヘッドセットを落ち着ける体勢で被って横のスイッチを入れる?」

「うん、正解! じゃ、ログアウトするときは?」

「まだ説明されてないから当然分かんない」

「だよね! 因みに電源を切るときは声でログアウト宣言すればシャットダウンするから」

「ログアウト!」

「って、すると思ったぁ――」


 視界は再び真っ白となり、気が付けばヘッドセットから見える画面だけとなる。


 ヘッドセットから見える映像には美弥からのメッセージが表示されていた。


『もう一度、ログインして。今度はゲームへのログインまで説明するから!』


 私は彼女の指示通りに再度VRロビーへログインするのであった、二度目のログインはそこまで驚いたりしないんだからね?


 再びフワリとした浮遊感と視界が真っ白になる不思議な感覚に戸惑いつつも、私の部屋が再現されている空間に降り立つ。


「やっぱり不思議な感じね……」


 私は思いっきり考えていることを口にしつつ、誰も見ていないから問題ないだろうと思っていると、美弥からメッセージが届く。


『誰も見てないからって独り言とか言ってちゃダメだよ。とりあえず、ファンタジー・クロニクル・ウォーの起動アイコンが机の上にあるから、タッチしてみて(*‘ω‘ *)』


 美弥の指示通り、私は自分の机の上を確認すると、色々なアイコンが並んでいるのを確認する。


「この表示やアイコンは携帯端末でも似たような感じなのね……でも、机の上にアイコンが並んでいるってなんだか不思議ね。えっと、美弥が言ってたのはこのアイコンかしら?」


 アイコンを指で触れると部屋が光の粒子になって崩れたかと思うと、突然に地面が現れて私はその上に立つ。正直言って何が起こっているか分からないので思考が止まりそうな勢いだ。


『ようこそ、ファンタジー・クロニクル・ウォーの世界へ――現在、キャラクターデータが存在しません。キャラクターメイキングを行いますか?』


 音声ガイドの声の後に目の前に『Yes』『No』の文字が表示される。何も無い空間に文字が浮かんでいるのはとても不思議な感じだけど、これはVRならでは……と、いうヤツだろう。私は少し戸惑いつつも『Yes』の文字に触れる。


 再びやってくる浮遊感――


 この感覚はなかなかに慣れることが出来なさそうで思わず苦笑する。


『メインロビーアバターからデータコンバートを行いますか?』


 はい? 一体何を言っているのかさっぱりです。

 困りました、どうしれば良いのでしょう?


 そんなことを思いつつ思い悩んでいると美弥からのメッセージが飛んで来る。


『メインロビーアバターからコンバートするって聞かれると思うけど、OKして問題ないよ!』


 美弥は私のことをどこからか見ているのだろうか?

 それにメッセージってどうやって送るんだろう?


 そんなことを考えながら、美弥からのメッセージ通りに『OK』を選択する。


『コンバートを開始します』


 今度は視界が真っ暗になっていく。


 青や白、緑といった色合いの文字や線が沢山飛び交う、まさにデジタル空間といった雰囲気の映像が流れる360度見渡す限りの映像に私は驚きながら、ボーっとしている間にコンバートが終了し、再び出現した大地の上に私は降り立つ。


「なんだか、何も変わった感じはしないわね……」


 私は小さく呟きつつ、目の前にある巨大なディスプレイの前に立つ。

 そこには『現在のあなた』と書かれた画面が表示されている。


「キャラクターメイキング……ゲーム内での私ということね。髪色や瞳の色、肌の色とかも変えられるのね。身体的なところは弄れないみたいね……なるほど、ステータスというのはどういうことかしら?」


 HP、MP、STR、VIT、AGI、INT、DEX、LUKと書かれている文字にそれぞれに数値が書かれている。


「HPはヒットポイントで体力、MPはマジックポイントで魔力……で、後はよく分からないわね」


 そんなことを考えていると再び美弥からメッセージが届く。


『初期ステータスはある程度適当でいいけど、たぶんお姉ちゃんには言葉の説明を書いた方がいいかな? STR:筋力ストレングス、VIT:耐久力バイタリティ、AGI:素早さ(アジリティ)、INT:知力インテリジェンス、DEX:器用さ(デクスタリティ)、LUK:幸運ラックだよ。お姉ちゃんにはAGIとかSTR特化でもいい気はする。ネタならLUKかな? ちなみにポイントの割り振りはレベルが上がるごとに割り振れるから、初期の割り振りは適当で大丈夫だよ~』


 美弥ってば、本当にどこからか私のことを見ているんじゃないでしょうね?


「うーん、このゲームって幾つかの国がひとつの大陸を賭けて戦争をしているって話だったわね。えっと……私自身も戦場に出て戦う一人ってことよね。現実リアルを考えるとAGIとDEXが高い方が生き残れるような気がしなくもないけど……LUKというのも楽しそうね」


 独り言をいいながら、美弥が適当で大丈夫というので本当に適当に割り振って行く。



HP:760

MP:200

STR:1

VIT:1

AGI:9

INT:3

DEX:7

LUK:2


「こんな感じね……髪色はやっぱり黒かしら。瞳の色は……うーん、美弥に笑われるかもしれないけど、この色で……これで完成かしら?」


 と、私は[決定]と書かれているボタンに指を触れる。

 再度やってくる浮遊感――うーん、これってばどうにかならないかしら?


 そんなことを思っている間に視界が開けていく。


『ファンタジー・クロニクル・ウォー クローズドβテストへようこそ!』


VR系の作品をもう一作書いてるんですが、書きたい衝動に負けた。

負けたんやでー。

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