恋するコイノボリ?‐2
タマちゃん、行こうよー。今度の日曜日さぁ~
と言いながら私との距離を一気に詰めてくる。さっきまでソッポを向いて知らんぷりを決め込んでいたのだか、流石に彼女は強敵だ。そんなことはお構い無しにグイグイと攻めてくる。そもそも行き先を言ってない事は突っ込みを入れるべきなんだろうか?
仕方がない、という顔をして振り向いてやると、彼女の顔が絵にかいたように明るくなる。ホント、分かりやすいやつだ。
「今回はコイノボリじゃ無いよ。あ、でもコイノボリかな?でもいつものじゃ無いの、ものすごく大きくてね、だけど5匹しかいないから、だから良いでしょ?」
結局コイノボリじゃないのか?
フンっと小さく鼻を鳴らしてまたソッポを向くのだが、心の片隅では強い興味を否定できない。大きいと言うことは、民家の軒先は望めないだろう事は容易に想像できる。仮に川にかかる大群のようなスタイルだったとしても、許してしまうのではないかと思われる。
仕方がない、詳しい話し位は聞いてやろう、と振り向くのだが、そこにはもう抱き締めたくなるほど可愛い仕草で丸くなって落ち込んでいる彼女がいた。な、何なんだコイツは!こんな一瞬で私の思考回路をフリーズさせるとはかなりの強者!
そっと肩に手を触れようとしたら、驚いて後ろに跳び跳ねてしまった。