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三日坊主

作者: カシマシキ

 三日坊主といえば、世間一般には、何をしても長続きせず飽きっぽい人のことを意味する。日記を付け始めても三日で止めてしまうというのが一般的な認識だろう。しかしうちでは少し事情が違っていた。

 母はいつも私にこう言っていた。


『何事も一度決めたことを三日で止めちゃったら三日坊主が出るんだからね』


 私は話に聞くその三日坊主というやつがなんとなく恐ろしくて、母の言い付け通り一度決めたことはやり終えるまで実行し続けた。

 けれどそんな私もただ一度だけ、助言に背いたことがある。それは小学四年生の頃の話だ。

 毎日自分で世話をすることを条件に、父親に買ってもらったハムスターがいたのだが、三日目にして脱走するという悲劇があった。どうやらカゴの鍵をかけ忘れてしまい、夜中の内に行方を眩ましてしまったらしい。

 私はひどく後悔した、と同時に父と母の言い付けに背いたことで凄まじい罪悪感に苛まれた。


 それから三ヶ月後、ハムスターのことは忘れ、部屋の模様替えをしようと窓際に設置していたベッドを動かしていた時のことだ。そのベッドの下から身を丸くし硬くなったハムスターが出てきた。

 私は素直に喜んだ。冬だったこともあり、冬眠中なのだろうと考え、両親に発見したことを告げた。だが父は静かに首を横に振っただけだった。


『何事も一度決めたことを三日で止めちゃったら三日坊主が出るんだからね』


 母のこの言葉は私を惑わせた。

 三日坊主……それは硬くなったハムスターのことを言っていたのではないか?


 これは大人になってから考えたことだが、もしかすると母も昔、飼っていたペットを失なってしまい無念な姿で発見したことがあったんじゃないかと思う。そしてその時の辛さを私に経験させないためにも、三日坊主が出るという言葉で私を戒めていたに違いない。

 憶測にしろ、その出来事以来、幸い私が三日坊主に出会すことはなかった。



 これを読んだ皆さんも気を付けてほしい……もしかすると明日の三日坊主は親のネグレクトを受けたアナタかも知れない。




 End....


2014年執筆。

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