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サムライ異世界へ行く  作者: ぴっぴ
第2章 小次郎冒険者になる
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第16話 商人護衛

 小次郎は商品の護衛等はした事が無かったが、殿様の道中を護衛するのとそんなに変わらないだろうと思っていた。要は邪魔者から大事な物を守れば良いのだと、だがその考えは非常に甘い考えだった。


「おはようござる、荷主殿」


「おう、来たか! 護衛仲間を紹介するぞ。こっちが何時も世話になってる護衛専門の冒険者、ガーデアンだ、仲良く頼むぜ」


「宜しくな! サムライ! 噂は聞いてる、剣の使い手と回復魔法の使い手なんだってな」


 護衛の荷馬車との待ち合わせ場所に来た小次郎達2人、早速荷主に挨拶し、同僚の冒険者に紹介してもらう。彼等は護衛専門の冒険者チームなのだそうだ、6人で何時もこの街と首都を行き来する商人の護衛をして生活をしてる専門家だ。小次郎は経験が無いので非常に心強い相棒達だった。今回は荷車が普段より数が多いために念の為に護衛の数を増やしたかった為に小次郎達2人が雇われたのだそうだ。


「まだ冒険者に成って1年の若輩者でござるが、宜しくご指導をお願いいたす」


「おいおい、噂は聞いてるぜ。凄く強いんだってな、オークキラーって呼ばれているんだろ?」


「一応剣には自信が有るでござるが、護衛には慣れてないので色々教えて欲しいでござる」


「おう、任せとけ。俺達は護衛専門だから護衛には自信があるぜ」


 冒険者は荒っぽい者達が多いのだが、彼等は商人の護衛専門なので気さくで人あたりが良かった。共に護衛するのでお互いの能力を知っておく必要が有る為に軽く自分達の能力を教えあう事になった。


「俺がリーダーのロード、剣士だ。後の連中は弓使いが2名、槍使いが2人、そして剣士が1人だ。弓使いが広範囲の索敵をして、俺達剣士や槍使いは荷馬車に近づいてきた魔物や盗賊と戦うのが仕事だ」


「成程、よく考えられているでござるな。夜は交代で見張りですかな?」


「おう、2人ひと組で交代で見張りだ。3時間交代だから結構寝れるぜ」


「了解でござる」


「なあサムライ、噂の腕を見せてくれないか? ギルドでは凄いって噂なんだがどの位なんだ」


「そうでござるな・・・・・・この位でござるよ」


 小次郎の右手が霞んで見えた、一瞬何かがキラめいた様な気がするがリーダーには良く分からなかった。


「????」


「足元を見るでござる。今蠅を斬ったでござる」


「はあ! 何だって!」


 ガーデアンの6人がしゃがんで地面に落ちた蠅を見ている、そのハエは見事に体が2つに分かれていた。リーダー達に見えない速度で小次郎が空中を飛んでいる蠅を斬ったのだ。


「いつの間に・・・・・・こりゃあスゲ~な。噂以上に化物だぜ」

「いつの間に剣を抜いたんだ、全く見えなかったよ。つまり俺達が狙われたら知らない内に斬られて居るって事だな」

「味方で良かった、こんなのと戦う奴は可哀想だぜ」


 どうやら小次郎は彼らに受け入れられた様だった。小次郎が強ければ強いほど自分達が安全になるのだから当然の事なのだが、中には訳のわからない難癖をつけてくる頭のオカシイ冒険者も大勢いるのだ、どうやら彼等はまともな冒険者の様で安心した小次郎であった。


「所でお嬢ちゃんは回復魔法が使えるって本当かい?」


「俺本当に使えるよ、まだ初級だから怪我しか治せないけど」


「いやいや、怪我が治るだけでも有難いぜ、戦ってる最中に手当とかできね~から出血でフラフラになる時があるんだ。運が悪けりゃ出血死するしな、いや~2人とも頼りになりそうで助かったぜ」


「こりゃあ凄い助っ人だな、ギルドの受付嬢に感謝しなくちゃいけないな」


 顔合わせも済んでいよいよ出発だ、今回は馬車が6台、商人が1人と荷馬車の御者が5人で総勢14人でのキャラバンだった。何も起こらなければ期間は1週間で首都に着く予定だった。

 先頭と最後尾の馬車の二代に弓師が乗り前方と後方を警戒して、ほかの護衛は荷馬車の傍を歩いて横方向を警戒して進んでいく、ココは荷馬車の1台に乗せてもらっている。小次郎や他の冒険者は荷馬車に合わせて歩いているが全く疲れた様子もなく雑談しながら歩いていた。


「思ったよりノンビリしてるでござるな」


「まあな、初日と最終日はノンビリだぜ。街に近いから襲われないしな」


「ほう、やはり中日と夜が危ないのでござるか?」


「ああ、中日は一番危ない。そして夜は何時魔物が出るか分からないから毎晩危ないな」


 護衛と言うのも奥が深い様だ、街の傍は巡回の兵士や冒険者が大勢いるので魔物も盗賊も居ない様だが、街から離れるに従って危険性が増してくる様だ。ベテランの冒険者と一緒に護衛を出来るとは今回は良い経験になりそうだ。


「なあサムライ、その変な靴はなんだ? 歩く時に音がしない様なんだが」


「此れは草鞋と言う拙者の居た国の履き物でござるよ。軽くて履きやすいのでござる」


「へ~、音がしなくて軽いのは良いな。ブーツは重くて煩いからな、それに履いてると足が蒸れて大変なんだぜ」


 小次郎の履いてるのは草鞋だった。この世界のブーツも履いてみたのだが重くて足が蒸れるのだ、オマケに足のサイズが合わないと足に豆が出来て痛いことこの上ない、そこで小次郎は藁を貰ってきて自分で草鞋を編んだのだ。ココやシン爺さんにも作ってやったら好評だった。


「藁が有れば作ってやるでござるよ、でもまあ長くは持たないから注意が必要でござるよ」


「へ~自分で靴が作れるなんて便利だな、金を払うから一つ頼むぜ」


「うむ、引き受けたでござる」


 護衛初日はこんな感じで小次郎は世間話を隊長としながらノンビリ歩いていた、勿論普通の旅人からすれば結構な速さなのだが、小次郎は徒歩の行動に慣れているのだ、それに草鞋の軽さは移動速度を上げるのにも適していたのだ。


 昼に1時間程の休息を取り昼食を食べた、初日なので街で買ったパンや干し肉等が出て来た。小次郎たちはそれとは別に鍋でスープを作って食べたりしていた。この時に活躍したのがココである、火魔法で簡単に火をお越して早くスープを造る。そしてスープの中身は小次郎が切った野菜や干し肉である、出汁は干した茸を使っているので中々に美味いのだった。


「へ~、嬢ちゃんスゲ~な。回復魔法の他に火魔法も使えるのか、護衛任務にゃ最適だな」


「へへへ、俺は役に立つよ」


「本当にな、俺のチームなら何時でも歓迎するぜ。サムライさんと一緒にどうだ?」


「ははは、気持ちは有難いでござるが、拙者たちはもっと世の中を見てみたいでござるよ」


「それもそうだな、あんたら2人の腕が有るならA級冒険者に成って良い暮らしが出来そうだもんな」


 それからも何事もなく旅は続いて行った、魔物も出ず、盗賊も出ない。それでも冒険者達は警戒を怠ることなく旅をする。そして日が暮れる前に本日の目的地へとたどり着いた。目的地は旅の者が野営出来る様に広場の様に成っている場所だった、先客が10人程居たので邪魔に成らないところに荷馬車を泊めて野営の準備をするキャラバン。旅慣れた者達ばかりなので30分程で竈やテントを張って直ぐにくつろぐ体勢になった、この準備の仕方等も非常に勉強になった小次郎であった。


「サムライさん、藁持ってきたぜ。本当にこんなもので靴が出来るのか?」


「うむ、出来るでござる」


 食後は暇なので草鞋造りをする事にした、小次郎の馬鹿力で造られたわら紐は普通の縄よりも引き締まって丈夫である、それでスイスイ草鞋を編んでゆく。慣れない内は結構な時間が掛かったが今では1時間もあれば良い草鞋が出来る様になったのだ。小次郎が草鞋を編んでいると暇になった連中が見学に来た、小次郎が火のそばで靴を作っているのが噂になった様だ。


「出来たでござる」


「お~、縄で靴を作るとはな~。変わってるな」


 草鞋は履き方が難しいので隊長に教える、靴のように脚を入れたら終わりという訳ではのだ、順番に紐を通して結ばなくては成らないのだ。隊長の足のサイズに合わせた草鞋は上手くできた様で、隊長は偉く気に入っていた。軽くて蒸れない所が素晴らしいのだそうだ、それと弓師の2人が欲しがった、足音がしない靴が是非欲しいそうだ、狩りの時や偵察に非常に使えるのだそうだ。


「本当に300ゴールドで良いのか? 安すぎじゃないか」


「良いでござる、旅をすると1日位しか持たないから仕方無い値段でござるよ」


「ふ~ん、良い事ばかりじゃね~んだな」


「まあ、世の中そんなものでござる」


 暇つぶしに草鞋を編んだ小次郎、今日の稼ぎは300ゴールドであった。まあこれで一人分の昼飯代にはなったので良い事にしよう、元々草鞋は蕎麦一杯位の値段で売られている物なので儲かるものでは無いのだから。


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