崩れた平穏
回想が多いです。ちょっと書いててよくわかってない部分もあるので注意です。
あれからというもの、特に目立ったトラブルも何もなく過ごしていた。まさしく順風満帆と言った所かな。
一応、お仕事もやってる。主に取引とか、死神の皆に指示を出したり。…高校生が取引なんてできんのかって最初は思ったけど。でも今では楽しくできるようになった!進歩だよね~。
この前の取引何か、凄かったって言われたんだよ。…自覚ないんだけどね。
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「すみません、また間に合わなさそうなので、納期を延長していただけないですかねぇ~。」
ヘラヘラしながらそう告げてくる…誰だろコイツ。…まぁ、そんな男がいた。俺はその人の態度にイラッとしつつも笑顔で対応していた。隣にはテロルさんがいたので、思考伝達で少し会話っぽいのをしてた。
『テロルさん、この人の納期の資料ありますか?』
『我が主、さん付けと敬語はおやめくださいと申し上げた筈です。撤回をお願いいたします。』
『え、でも…なんかよくn『周りに示しがつかないのです。上司が部下に敬語を使っているようなものですよ。』そ、そうなんですか?わかりました、以後気をつけm『撤回してください。』…わかりま…わかったから遮るのヤメテ。地味に傷つく。…あるんだったら頂戴。』
『御意にございます、』
相手からしたらいきなりテロルさ…テロルが動いたんだから驚いただろう。だって、俺の許可なく動けば、下手したらクビになりかねないような大失態だからね。俺に思考伝達があるからそんな心配は無用だけど。相手もそれを察したのか、すぐに表情を戻して、揉み手をしながら俺に納期の延長を再度頼んできた。
「頼みますよ~」
うぜぇ。コイツはうぜぇ。ルシェイメアの奴、よくもまぁこんな奴を相手にできてたよな…。あ、彼奴、仕事はロクにやらない野郎だった。…今度会ったら卍固めだな。そう思ってると、テロルさんが早くも帰ってきた。
「我が主、此方をどうぞ。」
そういって渡してきたのは数百年間にも及ぶこの目の前の男との取引の様子が書いてある書類だ。すっごいびっちり書いてあって正直読む気失せるけど、まぁ仕方ないよね。とりあえず読もう、最近の取引の様子だけね。全部見てたらキリないでしょ!?
そんな言い訳を自分にしながら読み進めていると、この男は、ずーーっと納期を遅らせているようだ。…ふーん?よくもまぁのうのうとそんな事が言えるよね。俺は内心で真っ黒な思考を巡らせつつも、ニッコリと表面上は微笑んで切り出す。
「ふふ、そうなのか。…ところで、貴方はいつから納期を延長させ続けてたの?」
「…は?」
「ここ何十年もの間、ずーっと納期を延長してるじゃん?それって何で?」
俺が核心をつくと、相手は思わず動揺をして、顔を引きつらせている。そんな事はどうでもいい事だ。早く答えてくれないかな。と思いながら相手を見ていると、観念したように手を振り、肩を竦めていて、ぬけぬけと言い放った。
「お恥ずかしい話、私達の地域は凶作なのですよ。それも毎年のようにそうなっているのです。ですから、私がわざわざこうして毎年出向いているのです。」
はっはっは、と高笑いのような笑いをして少し大きめの腹を揺らす。あー、その仕草うざったーい。そんな事を思いながらテロルさ…テロルにコイツの地域の書類をとってきてもらおうとすると、何も言わずに差し出してくる。どうやら、先ほど一緒にとってきてたらしい。…テロルさんマジ有能。
「そうか。いや~それにしちゃおかしいな~…。」
「如何なさいましたか?」
「実は、俺達は地域別に収穫量及び町柄を調査しているんだ。貴方の地域は申し分ないほどに上出来なんだけど…。」
「…は?」
「まぁ俺の調査員が腑抜けだったんだね。貴方が嘘を吐く理由なんてないし、きっとそうなんだな。」
若干威圧を込めてそう言うと相手の顔は青ざめていく。正直見ていて面白い。ふふん、さらにダメ押しで威圧しとくか!
「テロル、調査員の指導がなってないようだけど…どうなってんの?」
「はっ、申し訳ございません、我が主。私のせいで至らぬ部分があったこと、深く遺憾に思っております故に、今日より改善していく所存です。」
「そう。だけど、一度起きた事はもう取り返しがつかないよ。…君に罰を与えるが…いいね?」
「…はっ、仰せのままに。」
そんなやりとりを聞いていた男はもう顔面蒼白、といった感じだった。真っ青を通り越すとあんな感じになるんだな。と思いながら笑いそうになるのをこらえ、発言しようとすると、オッサンが割り込んできた。
「お、お待ちくだされ!無礼を承知で発言させていただきます!」
少々苛立ったような演技をしながら男に向き直り、問いかける。
「…許す。だけど、俺はそこまで気が長くないから手短に言え。」
「違うのです、私が、私が悪いのでございます、ルシェイメア様!!」
…俺、ルシェイメアじゃないんだけどなぁ。そう言っても理解してもらえないし、いっか。そんな事を考えながら、俺は男の話を半分以上聞き流していたのだった。
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っとまあこんな感じ!テロル曰く、「あの時の我が主が見せた真っ黒なドス黒い笑顔は、どんな時よりも輝いているように見えました。取引相手にすら容赦なく対応する…。流石は我が主です。」と、真顔で淡々と褒められているんだか何なんだかうよくわからない報告をされてしまった。…俺って、サディストなのかもしれないな…。そして、やっと皆のキャラがわかった。え?遅い?そんなん知ったこっちゃないね!
テロルはルシェイメア信者だった。なんかもう崇拝してるし敬愛されてる感じがした。勿論ライクね!ラブは死んでもないから安心して。何かめっちゃ溺愛?されてる。いろいろ甘やかされてるけど、この人といるとダメ人間…基、ダメ死神になってしまいそうな気がする。サンドラはトラブルメーカーだった。何処でも何時でも何度でも。トラブルのおかわりなんていらん!と思うほどだ。何よりテンプレとも言えるべき残念要素があった。それは、料理ができない、だ。美人にはよくあるテンプレ設定だ。でも実際にやるのは勘弁願いたい。彼女の料理はもう二度と口にしないと誓った。所謂「残念枠」なんだろう。ライラスはぶっちぎりの苦労人だった。それはもう疲労で死ぬんじゃないかってレベルの。主にツッコミの疲労で死にそうになってる。会議とかしててもボケてくる人(無自覚だからタチが悪い)がいるから、放っておくと進行に影響が出るから仕方なくやってるらしいけど。お疲れ様です。レオノールさんとは仲良くなれた!頑張った甲斐があった。レオノールさんはやっぱり脳筋らしく、あまり常識が通じなかった。作戦とか殆ど無視してくからなぁ。その辺は問題児だ。でも格好いいから良し!アルデンテさんは謎だった。なんかもうすげぇ…神秘ヴェールっていうの?そういうのに包まれてる感じがするんだよね。ちゃんと話してみようかな、と思って話しかけたら、「ん~?僕の事がもっと知りたい?あひゃひゃ☆それって口説いてるつもりかな?だとしたらまだまだだよーん!あひゃひゃ☆それともそういう趣味なのかな?」って揶揄われて、そのまま曖昧に誤魔化されちゃった。…そういう趣味なんかじゃないのに。そこは誤解しないでほしい。決してそんなんじゃないからな!!ポタミアはのほほーん、って感じでマイペース、天然かな。見た目通りの性格だった。でも絶対怒らせちゃダメなタイプ。この前部下であろう妖精が手元が狂わせたらしく、俺にお茶をぶっかけてきた。それにたいして、笑顔でブチ切れてた。「ふ、ふふふ。私の顔に泥でも塗りたかったのかしら?ふふふ、だとしたらもう十分に塗りたくってるわよ?あら?何を固まっているのかしら?私の大切な主にお茶、それもまだまだ渋みの多いものをぶっかけたというのに?」とか真っ黒な笑顔でとてつもなく不機嫌オーラを発して言うものだから、その妖精が泣いちゃって。俺が慌てて止めると、「いえ、これは必要な「教育」ですわ。ご心配なさらなくとも平気でしてよ。ふふふ。」と、言うからそれ以上何か言うのはやめておいた。シルヴィアはクールビューティー。あまり笑わないし、口数も少ない。俺が話しかけても「ええ、そうね。」とか「興味ないわね。」とか、つめたーい反応が返ってくるのである。結構心にくるんだなぁ、なんて思ってたら、レオノールさんが「シルヴィアは緊張してたりすると口数が極端に少なくなるんだよな。」って教えてくれた。ツンデレなのか!と思えば納得できた。俺なんかが相手でも緊張するのか、って思ったけど、ルシェイメアが相手だったら緊張するよな。だって彼奴キチガイっぽかったし。その後、レオノールさんはシルヴィアに頭をガッチリ掴まれて悲鳴をあげてたけど。ご愁傷様、レオノールさん。
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そんなこんなで楽しく生活してた。でも、平和って案外あっけなく崩れていくものなんだと思う。
ドゴォオオオン!!
地面に何かが叩きつけられるような音がする。仕事をしていた幹部たちにどよめきが起きる。
「なっ…!?此処は結界が張ってあって簡単には入れないのに!!」
誰がそう叫んだのかはわからない。俺は音が聞こえた場所に転移する。そこで見たのは、地面が抉れているのと、何人かの種族が巻き込まれている様子だった。俺に続いて転移してきたのか、幹部たちが光景を見て、息を呑んでいた。誰もがこう思ったのだろう、「悲惨だ」と。この光景を作り上げた本人たちが姿を現した。
「うぃ~…っと、お。皆さんせーぞろいじゃねェの。」
「あらあら…その団結力、妬ましいわね。」
「ハハハッ!!何だよ此処…?いーかんじに発展してやがる!こりゃ奪い甲斐があるじゃねーか!」
「やだぁ…いい男がいっぱいじゃない…!はぁ、ん、んんぅっ、なんだか興奮してきちゃったわぁ…」
「腹減ったんだなぁ。なーなー、飯くれよぃ!」
「ふん、余自ら、何故このような辺境地に降り立たねばならんのだ…。」
そこには、六人の悪魔がいた。それぞれがなんだか異様だ。…悪魔ということは、彼奴に関係あるんじゃないか?俺のその思考は見事に当たった。
「な、んで…此処に?」
振り絞るような声。若干震えているのではないか?と思えるほどにその声は頼りなかった。
その声を発した本人を見るとニタァ、と口角をあげて声をかけてくる悪魔。その絵図はまさしく蛙と蛇だ。蛇に睨まれた蛙のように動けないのがライラスだ。蛇のように睨んでいるのが最初に声を発していた男。名前はわからないが、とてつもなく強いのだろう。発する雰囲気が他の五人と全く違った。
「やはり此処にいたのか。探したぞ、怠惰。」
「何で、今更来るんだよ…ッ!憤怒!!」