9. 「あの日の約束」
「・・・という事で、今日から進路調査の為の2者面談をする。
ま、とりあえず大学に行くか就職するかの2択を聞くだけだから深く考えなくていいぞ〜」
「進路調査かぁ・・・・・・。水希はどうするの?」
「ん?俺か?・・・・決めてない」
「ふ〜ん・・・・・」
俺は嘘をついた。
ホントはとっくに決まってる。
瞳に逢えなくなるように、留学する。
金?何とかするさ。
「水希、いいぞ」
「りょーかい」
・・・・・・・・・・・
「ガラッ」
「よし水希、座れ」
「あ〜い」
「お前は・・・進路はどうするんだ?」
いきなりかよ!
ま、いいさ。
「・・・・留学します」
「水希〜、帰ろ?」
「・・・お前、待ってたのか?」
「うん。鍵忘れてきちゃってさ」
「・・・ごめん。俺寄るとこあるからさ、先帰ってろ。ほら、鍵」
瞳に投げ渡す。
「そっか・・・・わかった」
「んじゃ、気をつけろよ?」
「大丈夫だって!」
「じゃ、な」
瞳には・・・・・自由でいてほしい。
俺なんかよりずっといい奴がいるさ。
それからも俺は瞳を避けた。
俺に対しての気持ちを強くされても困る。
それに、俺も気持ちを冷まさなきゃならない。
でも、離れれば離れるほど近くにいたくなった。
俺ってこんなに独占欲強かったっけ?
それでも離れて、「これも瞳の為だ」って言い聞かせた。
瞳の気持ちも知らずに・・・・・
卒業式前日・・・・・
留学することを母さんに伝えた。
旅費や生活費は自分で何とかすることや、
瞳には言うな、という事も含めて。
母さんは静かに泣いた。
「何でも事後報告なんだから・・・・」
と愚痴を言い、最後に「おめでとう」と言われた。
ありがとう、母さん。
こんな俺のわがままを認めてくれてありがとう。
母さんが泣きやんでから、俺は出発の日取りを言った。
「卒業式の次の日・・・・2日後に行く」
卒業式当日。
卒業式も終わり、そろそろお開きかと思ったとき、瞳に呼ばれた。
「水希!」
「・・・・何?」
息が荒い。走ってきたからか?
「留学・・・するってホント?」
「お前・・・・それ誰から・・・・」
「おばさん・・・そんな事どうでもいい!留学ってどう言う事?何で?」
「・・・俺がしたいからするんだよ」
「・・・・・・・・・」
「ぐっ」
「え?」
一瞬混乱する。
瞳に引っ張っていかれる。
「こっち来て」
すたすた歩く瞳。
「どうして言ってくれなかったの?」
「・・・好きだからだよ」
「え?」
「好きだから、離れられなくなるから」
「水希・・・・・」
そして小さくありがとう、と呟く。
「水希、約束したよね?」
「?何をだ?」
「あたしの事好きになったらあの唄、歌ってくれるって」
「・・・・ああ、いいよ」
・・・・・・・・・・・・・
伝えたい言葉はこんな唄一曲に収まらないけど、それでもいい。
瞳が俺の事を想ってくれるだけで、いつだって強くなれるから。
自信なんてないけど、誰かに認めてほしいわけじゃないんだからそれでいいさ。
初めてそう思えたよ。




