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手が震え視界が霞む。何かに自分が侵食されていく。それはとても冷たい。それは多分、死ぬという事だろう。視界の隅から写真のネガのような紫色を基調とした薄いフィルムのようなものが中心に向かって広がっていく。薄い膜に包まれたような気分だ。ずっと昔からこうだった気もする。
吐き気を催し体を起こそうとするとその瞬間に胃袋がいっぱいになって僕はゲロを吐いた。みじめな気分になった。だからジーンズのゲロがかかった所を舌先で舐めた。酷い味がした。みじめな人間だと思った。まだ、誰かに期待しているのだと思った。そうしていればどこかで見ている神様がシーソーのバランスを取るように僕の元に美しい女を持ってきておまんこが出来るのだと思った。
ゲロの染みたジーンズが夜風に当たると凍ったように冷たかった。
我慢できなくなり僕はそのまま横になった。脚を伸ばすと枯葉が黒いジャックパーセルに当たってかさかさ鳴った。そのまままたゲロを吐いた。体が自然にひきつりを起こして、数秒毎に僕の体は跳ねた。
結局善人も悪人もなく、自殺志願者だろうが、皆自分の事しか考えていないのだ。
僕は点滅の中に母親の顔を見つけた。それは長く目を閉じると見えたが、ずっと閉じているとうっすらと消えていった。長く目を閉じると、視界の膜は少しの間消えた。
僕はなんとかニコチンの入った瓶とシリンジを見つけ、もう一度おなじことを繰り返した。