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シリンジのケツを一番下まで押しこむと体の中に異物が這っていくのがわかった。それはアメーバ……寄生虫、とにかくそんなものだった。僕は体のすぐ隣に置いてあったギターを手に取り歌った。その出だしはこんな感じだ。
あるベイビーがこう言ったんだ。あなたに会えて本当に良かった
そんな事が僕の人生で一度たりともありえたのだろうか?
そんな思い出は一つもなかった。いつも周りに空気の色みたいなものがあって、その空気より少し透明になるようにしていただけだった。
赤い空気の味方をすれば紫色の空気を吸う人が怒るし、その逆ならまったく逆なだけだった。僕は皆元気だなと思った。
経口摂取に比べると大分、楽だった。紙巻き煙草をほどき、取り出した葉を煎じて茶を淹れた事がある。まるで、ペニー・ロイヤル・ティー……それは一滴口に入れただけで茶に触れたところがひりひりして、毛虫を飲み込んでいるような気持ちになった。
ギターを弄ぶことに飽き、煙草を一本吸ったころ、ニコチン中毒の症状、吐き気とめまいが襲ってきて僕はその場におう吐した。赤色のなにかだった。僕は震える右手を左手で支えてやりながら、またシリンジで瓶からニコチン溶剤を吸いだした。