episode1 日常
友達はそこそこいて部活もクラスも居場所はある。しかし、この小さな町では一番荒れていると噂される私の中学校に、楽しく過ごすなんて権利はなかった。
女子も男子も、性格や趣味や容姿によって派手か地味かが分類されて派手な人たちの手でランクがつけられる。派手な人たちは地味な人たちから「チャラ軍団」と、地味な人たちは派手な人たちから「地味ーず」と呼ばれながらそれぞれの地位に相応しい行動をしなければならない。それがここのルール。
私は地味ーずの最低ランクだ。佐野和泉、私の名前が一番下に書かれた紙を見た。手入れしていない黒髪を三つ編みに結って、茶色い縁のメガネ、膝丈のスカート。そんな私が地味ーずと呼ばれる理由が自分でもわからなくもない。ついでに、どうやら美術部自体がどうやら地味ーずと呼ばれているらしい。
授業中に回されたランク表を後ろの席の人に渡そうとした瞬間、黒板を書き終えた先生が私を睨む。
「佐野さん、何してるんだ。」
「あ…、その……。」
言い訳をする前に私の声よりも高く響く声がかぶさる。
「佐野さん授業がつまんないから手紙回してるんですよー。いっつも先生の愚痴言ってますもーん。」
全員が私に注目し、返す言葉に困ったので、すみませんでした、と早口に告げ紙を机に押し込んだ。
逆らえない、そんな日常を繰り返していた。