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こんな夢を観た

こんな夢を観た「柿の木に登る」

作者: 夢野彼方
掲載日:2014/09/25

 庭でバドミントンをしていたら、シャトルが柿の木の枝に引っかかってしまった。

「あれくらいなら、ちょっとよじ登って取ってこれるよ」わたしは言い、幹にしがみつく。

「よしなって、柿の木はもろいから、ポキッといっちゃうかもしれないよ」中谷美枝子は心配したが、わたしは「平気、平気」と聞く耳持たなかった。

 今はまだ青いけれど、熟すと甘い柿が成る。それを毎年、子供の頃から登ってはもいで、その場で食べてきたのだ。

 曲がりくねって節くれだらけの木は、どこに手をかけ、足を絡めたらいいか、頭にすっかり入っている。


 いつものように、コブに手を当て、両足で幹を挟み込む。そのまま最初の太い枝にまたがった。

 だらんとぶら下げた爪先が、中谷の頭が触れるかどうか位の高さである。

「あんた、まるでサルみたい」中谷がわたしを見上げて言う。

 そんな中谷は、登れずに悔しがるイヌを思い出させた。改めて中谷を見てみると、確かにイヌに似た顔立ちをしている。大きな耳が立ち気味なところなど、パピヨンにそっくりだ。

「やーい、パピヨーン」わたしはそう言ってやった。高いところに立つと、なぜだか急に自分が偉くなったような気がする。

「なによ、パピヨンって」中谷にはパピヨンという犬種がわからないらしかった。


 柿の木には去年も登ったけれど、何だかずいぶんと久しい感覚だった。もう、10年も登っていないような、そんな妙な気持ちがする。

 どうしてかな、と考えてみたところ、それは枝の幅が関係しているようだった。

 こんなに枝が太かったろうか? それとも、1年のうちに成長したのかな。

 枝先に見えているシャトルを追って、またがったまま進んでいく。

 ところが、行けども行けどもシャトルに近づけない。シャトルそのものは次第に大きく見えてくるのだが、距離がいっこうに狭まらないのだ。


「変だなー、ちょっと前まで、手を伸ばせば届きそうだったのに」わたしは言った。

「ちょっと、あんた、むぅにぃ。こっちから見ると、おかしな感じになっちゃってるよ」そう、中谷が指摘する。

「おかしいって、どんな?」わたしは聞き返す。

「あのね、縮んでるっていうか……。目の錯覚じゃなければ、あんた、確かに小さくなっちゃってる」

 そんなことあるものか、と枝を見ると、幹よりも何倍も広くなっている。乗り移る時にはまたがっていたはずなのに、今は正座をしているのだった。

「あれ? どうなってるの、これ」

 

「試しに、後ろに下がってみなさいよ」中谷が言う。

 わたしは後ずさりをしてみた。すると、枝が少しだけ細くなる。

「ああ、やっぱり気のせいじゃなかった」中谷が合点してうなずいた。「枝の先へ行けば行くほど、あんたの背が小さくなるなぁ、ってずっと思っていたの。なんだろうね、これって」

 わたしはもう1度前進してみる。また枝が太くなり、シャトルがぐんと大きくなった。

 なるほど、そういうことか。これではいくら登っても、シャトルは拾えない。

「降りてきなさいよ。シャトルは、棒でかき落とせばいいじゃない」

 けれど、わたしはちょっぴり意地になっていた。


「ここからなら、シャトルまで飛びつけそうな気がする」下で見守る中谷に向かって断言する。 

「ちょっと! やめなって、そんなの。絶対に落ちて大怪我するに決まってるって」中谷が慌てて止めた。

 わたしは身構え、えいっとシャトル目がけてジャンプをする。宙を飛んでいる間にも、わたしは自分の体がどんどん小さくなっていくのを感じていた。

 あわや、というところで何とかシャトルの羽に手が届き、必死の思いでしがみつく。その時のわたしは、ケムシほどの大きさもなかった、と後になって中谷が証言した。


 シャトルはわたしごとバランスを崩し、そのまま一緒に枝から落ちていく。

 地上では、半ばパニックに陥った中谷が、両手を差し出しながら右往左往しているのが見えた。

 次の瞬間、どすん、と衝撃を感じ、わたしは地面の上にいた。

 正確には、中谷の上で尻餅をついた状態だった。手には、小さなままのシャトルを握りしめている。

「早く、降りてよ、むぅにぃ。重いじゃないの」

「あ、ごめんね」わたしはよっこらしょ、と立ち上がる。「落ちながら、すっかり元の大きさに戻ったんだね。どうなることかと思ったけど、助かった」 

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― 新着の感想 ―
[一言] 私の一族が代々住んでいる土地に、昔は甘柿の木が生えていたと、大叔父に聞いたことがあります。井戸のそばに生えていたと。どんな味だったのかなと、ふと思いました。
[良い点] 昔、うちの庭にあった柿の木は、熊が冬眠前にかっぱらったため、以降作らなくなりました。 パピヨンは犬の中で一番かわいいと思います。(見た目オンリーですが) 総合的には、ミニチュアダックスフ…
[一言] おはようございます!今日はなんだか楽しい展開ですね。 小さくなったままシャトルにぶら下がって、そのまま飛んでいってしまったらどうしようと思いましたが、どうやら枝に魔力があったようですね。木は…
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