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蛍の光。

 ある日の朝。


「オッス! ……あれ? 奏恵は?」


 ハイテンションでリビングに入り挨拶をした俊也である。


「寝てますよ」


 目を擦り、あくびをしながらリビングでご飯を食べている美帆。


「そういえば、アイツ、俺が休んでから何かあったのか? 全然俺に話し掛けて来ないんだけど」


「さぁ、あたしに聞かれてもわかんないです。クラスで何かあったんじゃないんですか?」


(けっ、警察に連れて行かれたなんて、口が裂けても言えない!!)


「…………? まぁ、いいや。もうそろそろ時間だし、俺、先に行くから」


 と俊也は言うと、玄関に向かい、靴を履き、ドアを開けると、「行ってきまーす」と言って行ってしまった。


 残された美帆は、


「あっ、待ってくださいよ、俊也さん!!」


 と言うと、急いで玄関に行き、靴を履き、ドアを開けて、「行ってきまーす!!」と言って、出ていった。


 ―――


 その後。


 廊下からリビングのドアが開いた。


 開けたのは、奏恵であった。


「おはよう」


 鈴は残った朝ご飯を奏恵に渡すと、奏恵は無言で食べた。


 そして、何事もなく、「行ってきます」と言って出ていった。


 ―――


 その後、奏恵は(美帆とは話すが)俊也と会話をしなくなった。


 ―――


 そして、その夜。


 俊也は依頼を確認するため、パソコンを開いた。


 ―――


 Light killers様


 生きる希望を失いました。

 殺してください。


 □□県△△市20代男性


 ―――


 俊也はこの文を読むと、ため息をつき、「短いな」と独り言を言った。


 そこに、ノックの音が聞こえた。


「俊也さん、夕ご飯、出来ましたよ。食べませんか?」


 声の主は美帆だった。


「あぁ、食べるよ。だが、食べる前に、お前に見て貰いたいものがあるんだ」


「えっ? 何ですか? 『見て貰いたいもの』って」


「とりあえず、入れ」


「……はい、わかりました。じゃあ、失礼します」


 美帆は俊也の部屋に入った。


 ―――


「で? 『見て貰いたいもの』って何ですか?」


「この文を読んでくれ」


 俊也は言い、パソコンを美帆に見せた。


「短いですね」


「あぁ、情報が少なすぎる」


「こういう場合、いつもはどうしてるんですか?」


「明日、休日だから2人で調べる」


「えっ! ……『2人で』ですか……」


「あぁ、そうだ。……何か文句あるか?」


「いや、無いですけど、ただ、ちょっと……」


「何だよ! 言いたいことがあるならはっきり言え!」


「なっ、なんでもないです」


「……じゃあ、明日な! おやすみ」


「おやすみなさい…………ってちょっと!! まだ夕ご飯、一口も食べてないでしょう!!」


「あぁ、そうだった。すまない」


 と言うと、部屋を出る俊也であった。


 ―――


 翌日。


 2人は□□県△△市に行った。


「ところで、どうやって調べるんですか?」


「とりあえず、それらしい人物を探る。それから、こっそりそいつの写真を撮る」


「写真を撮って、どうするんですか?」


「今までは偶然、依頼者と接触出来たが、今回は違う。まぁ、情報が少ないからな。

 だから、情報屋に頼む」


「えっ、情報屋!?」


「あぁ。俺たちが住んでる町に1つあるだろ?」


「あぁ。あの怪しそうなところですか」


「あそこの主人、俺の知り合いでな。金は必要だが、安くしてくれるんだ」


「へぇ〜、そうなんですか」


「……まぁ、そういうことだから、カメラで写真を撮ってくれ」


「はーい」


 2人は別れた。


 ―――


 夜。


 自分の町に帰った二人は、情報屋に向かった。


「おーい」


 情報屋に着くと、俊也はドアを叩きながら叫んだ。


「何だよ、この時間に。……合言葉は?」


「菜の花食べたい」


(なっ、何それ!?)


「入れ」


 と言うと、ドアが開いた。


 戸惑っていた美帆に俊也は、


「高野も、入れ」


 ―――


「で? 今回の依頼は?」


「こいつらを調べて来てほしい」


 俊也はそういうと、俊也と美帆の携帯を取り出し、撮った写真を見せた。


「今回は5人か……。わかった。引き受ける」


「料金は?」


「2000円」


 言われると、俊也は財布を取り出し、2000円を支払った。


「毎度、あざっす!!」


「期限日は、明後日でいいか?」


「お安い御用っす!」


 と言い、2人は帰ろうとすると、


「あっ、お嬢さん」


 美帆だけ引き止められた。


「ここに入ったからには登録してくれるよね? ここ、会員制だからさ。あぁ、大丈夫。入会金とか無いから。情報料支払ってくれればいいんだ。とりあえず、お名前と合言葉を」


「……わかりました。

 高野美帆。合言葉は……じゃあ、『消えろDV』で」


「ずっ、随分面白い合言葉を考えたね。……わかった。それで行こう。引き止めてすまなかった。帰っていいよ」


 そう言われると、美帆は礼をして、帰って行った。


 ―――


 翌日。


 俊也は珍しく勉強をしていた。


 その様子に驚いた美帆は、「俊也さん、調べなくてもいいんですか?」と聞いた。


「あぁ、情報屋に頼んだから大丈夫だ。アイツはそういうののプロだからな」


「でも……」


「言っただろ? 今まで俺たちは偶然、依頼者と接触出来たって。でも、今回は違う。だからああいうのに頼るしかないんだ」


「…………」


「それに、下手に介入しても失敗するだけだ」


「……そう、ですね。わかりました。待ちます。失礼しました」


 と言い、美帆は部屋を出た。


 ―――


 翌日。


 俊也は家を出て、情報屋に行った。


 ―――


「調べたよ、例の5人」


 と言うと、情報屋は写真とその人物の情報が書いてある紙が挟んであった。


 俊也はそれを受け取ると、「ありがとう」と一言言い、帰った。


 ―――


 家に帰り、美帆と写真を見ていた。


「あたし、今回の依頼人はこの人だと思うんですよね」


 美帆は言うと、スーツ姿の男の写真を取り出した。


「何で?」


「だって、ヤクザを辞めて新しい人生歩もうって頑張ってるのに、未だ就職出来てなかったら、そりゃ、生きる希望も無くすに決まってますよ」


「……そうだな」


 と俊也はいい、何かを考えていた。


 ―――


 夜。


 指定場所で。


 1人の男が立っていた。


 美帆が言っていた元ヤクザの男だった。


 俊也はLight killersとなってそこに現れた。


 男は気配を感じ、後ろを振り向き、


「俺を……殺してくれ」


「……殺す前に、1つ問う。あんたにとっての『生きる希望』って何だ?」


「自分が認められること……」


「……そうか。じゃあ、努力してみてはどうだ?」


「無理だ!! 俺は元ヤクザだ!! その過去は消せない……」


「確かに過去は消せない。……だから何だ!? そうやって理由付けて、逃げているだけじゃないのか!?」


「…………!!」


「過去と向き合え!! 全てはそこからだ!!」


「でも……、この先どうやって……」


「あんたと同じ境遇にある奴らの働いている場所を知っている。ついてこい」


 そういうと、俊也はある場所に向かった。


 そこは、情報屋だった。


「ここはいったい……」


「情報屋だ」


 と言い、俊也はドアをノックした。


「合言葉は?」


「菜の花食べたい」


「入れ」


 ―――


「話は美帆ちゃんから聞いている。じゃあ、就職試験、始めますか」


「えっ? えっ?」


「あんたは秘密を誰にも話さない自信があるか?」


「……あります。友達とかの秘密を誰にも話した事は1度も無いので」


「……合格」


「……えっ?」


「合格だ。明日からここに来い。大丈夫。ここの職員はみんな元ヤクザか元暴力団員しかいない。だから困ったときは相談できるしな」


「あっ、ありがとうございます、ありがとうございます!!」


「じゃあ、俺の仕事終わったから、帰る」


 俊也はそう言うと、「着替えたいから部屋を貸してくれ」と続けて言い、美帆と一緒に帰って行った。


 ―――


 後日。


 サイトには感謝状が届いていた。


 それを見た2人はニッコリと笑い合った。


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